第113話 狼の紐 ~その1~(2)
それを見たコンスタンツェは……。
(๑ÖㅁÖ๑)ドキュ━━━━━ン♥ฺ
……心臓が破裂しそうになった。
裸体画は、大事な部分を含む、本当の全裸だった。
例の腰布はつけていない。
心臓がバクバクするのを耐えながら、コンスタンツェは大事な部分を興味深く観察した。育ちのいい彼女は、実物はもちろん、絵ですら見たことがなかったのだ。
カールの絵は、彼らしく、細部に至るまで忠実に描かれている。
(男の人のあそこって、あんなことになってるんだぁ……でも、あれが普段はどうやってパンツのなかに仕舞われているんだろう?)
あまりに、まじまじと見言っているコンスタンツェを見て、少し心配になったカールは感想を訪ねた。
「姉さん。どうかな?」
コンスタンツェは、ハッと我に返った。
咄嗟に通り一遍の感想を言う。
「ローゼンクランツ卿の肉体の躍動感が見事に表現されていると思うわ」
「姉さん。ごめんね。実は、姉さんが席を外したときに、腰布をとってもらったんだ。姉さんがいるときに、とってもらった方がよかったかな?」
(どういう意味よ、カール。私がリアルのあそこを見たかったとでも言いたいの?)
「いえ。気にすることはないわ。ローゼンクランツ卿も女性の前では遠慮したと思うし……」
「そうかな? 頼めば脱いでくれそうな感じだったけど……」
(何を言っているの。本当に見せられたら、私は卒倒していたわよ!)
「いいのよ。もう終わったことだから。気にしないで」
「ありがとう。ところで、この絵は姉さんに献呈したいんだけれど、受けてくれるかな?」
「ええっ! 私に? この絵を? それは……ちょっと……」
(毎日彼の裸を見て過ごせと……いや、そんなぁ。絵とはいえ恥ずかし過ぎる……)
「僕は、ローゼンクランツ卿を愛している人に献呈したいんだ。姉さんがいやなら、ツェルター嬢に……」
「ええっ! あんなぶりっ子にやるくらいなら、私がもらうわよ」
「なんだ。だったら最初からそう言えばいいのに……」
「とにかく、あの絵がやたらな人に見られるのはいやなのよ」
「わかったよ。じゃあ、あの絵は姉さんの部屋に運んでおくから」
そして……。
コンスタンツェは、部屋のどこに飾るか悩みに悩んでいた。
結局、恥ずかし過ぎるので、絵は扉正面からは見え難いところに飾り、普段は布を被せておいて、気の向いたときにこっそりと鑑賞することにした。
……といいつつ、ほぼ毎日だったりするのだが。
(これは……裸体画を見る男子たちのことを笑えないわぁ……でも、私の場合、男子たちと違って誰の裸でもいいわけじゃないのよ……)
◆
ルードヴィヒがRote Ritter(赤の騎士団)への入団を承諾した翌日。
コンスタンツェは、思い出したように言った。
「そうそう、ローゼンクランツ卿。Rote Ritter(赤の騎士団)への入団は、私の紹介による縁故採用とはいえ、いちおう入団試験は受けてもらいます。
推薦した私の顔に泥を塗らないように、しっかりと実力は示してもらわないと困りますからね。お願いしますよ」
「ええっ! まあ、言いてえこたぁわかるども……」
「何なのよ。はっきり言いなさいよ」
「爺さの教えもあって、真の実力は、滅多に他人に晒すもんでねぇっちぅんがおらの主義だんなんが」
「そんなこと言って、入団試験の試験官にボロ負けしたら承知しないわよ」
「すっけんこと、わかっとるてぇ。要するに、負けねぇばええがぁろぅ」
「それは、そうだけれど……とにかく、今度の土曜日が入団試験だから、必ず出頭すること。わかったわね」
「おぅ。わかったっちゃ」
(もう……本当にわかっているのかしら……)
コンスタンツェは、リーゼロッテと違って、今までルードヴィヒの剣の腕を見る機会は、入学試験くらいのものだった。その意味では、疑っても無理はないことではあったが……。
そして、翌土曜日にルードヴィヒが出頭してみると……。
Rote Ritter(赤の騎士団)の面々は、意外にバラエティに富んでいた。
騎士団といえば、騎士道精神を重んじるし、剣術も帝国式正統剣術を使う者ばかりだと想像していたのだが、Rote Ritter(赤の騎士団)の面々を軽く見渡したところ、帝国式正統剣術の使い手は、半数を少し超えるくらいだった。
あとは、リリエンタール一刀流やローゼンクランツ双剣流の使い手もいるし、槍使いもいる。
騎士は、突撃槍を騎士道の象徴的な武器の一つと考えているが、これは馬上で使うものだ。地上では、剣が騎士道精神を象徴する武器である。このため、騎士で剣以外の槍などの武器を使用することは異例であった。
(こらぁ面白え衆がいっぺぇいそうだもぅさ……)
ルードヴィヒは、少しばかり期待でワクワクした。
ルードヴィヒは、武闘場へと案内され。いよいよ試験が始まるようだ。当然、コンスタンツェも観戦に来ている。
試験官は、装備からするに、ノーマルな帝国式正統剣術の使い手で、鑑定したところ、レベル45の剣士だ。
チャクラは第2チャクラ(丹田)が開容れていることを示す橙で、これは身体強化に加え、社会性を備えていることを示す。要は、部隊の指揮能力もあるということだ。
(まあ……そこそこの実力のある中堅どころっちぅとこだぃのぅ……)
試合に先立ち、ルードヴィヒは試験官に確認した。
「武器はどうせぇばええろか?」
「何を言っている。君は、ローゼンクランツ双剣流ではないのか?」
「そらぁそうだども、おらぁ帝国式正統剣術も使えるすけ、聞いとるがぁてぇ」
「どうせにわか剣術なのだろう。無理に合わせる必要はない」
「そんだば、おらの流派でいかしてもらうすけ」
「そうするがいい」
試験官は、鑑定スキルを使う。
(レベル20の魔法剣士で、オーラの色は赤か……小手調べをする必要もないな……)
試験官は、これがフェイクであることに気付いていない。
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