第111話 カール大公子の望み(2)
そして、翌土曜日。
学園の休みの日に大公女宮に行くことになった。
大公女宮からは、わざわざ上級使用人が馬車で迎えに来てくれた。
ルードヴィヒは、従者になった火竜のペーターを伴って、大公女宮に向かう。
ルードヴィヒの美貌は周知の事実であり、それも想像以上であったが、門番は、なにより、ペーターの姿を見て仰天した。
パッと見はロマンスグレーの頭髪の品のいい初老の紳士だが、体格が尋常ではない、身長は2mくらいあるし、筋骨隆々とした体格は歴戦の戦士のようだ。
(従者じゃなくて、護衛騎士の間違いじゃないのか?)
大公女宮では、わざわざコンスタンツェが出迎えてくれたが、彼女もペーターの姿を見て驚いていた。が、そこは人ができている。すぐに気を取り直して挨拶をする。
「ローゼンクランツ卿。わざわざ出向いてもらって悪いわね」
「そっけんことねぇてぇ。こっちこそ、わざわざ大公女様に出迎えてもらわんでもえかったがんに」
「そういうわけにはいかなわ」
「そうけぇ。悪ぃのぅ」
そして、コンスタンツェは、おもむろに腕を差しだした。
そこはもう慣れたもので、ルードヴィヒは、さっと腕を組む。
目的の場所へ向かう途中で、コンスタンツェは、今日やってもらうことを説明する。
「実はね。弟のカールが絵画を趣味にしているのだけれど……」
「へえ。カール大公子様がけぇ」
「あなたに絵のモデルになってもらいたいらしくて、来てもらったのよ」
「なんでぇ。すっけんことけぇ。わかったっちゃ」
「ありがとう。じゃあ、お願いするわね」
「おぅ」
そして、カール大公子の部屋に入る。
カールはルードヴィヒを見るとパッと顔を輝かせ、歩んでくると手を差し出した。
ルードヴィヒは、意を察して、ガッチリと握手を交わす。
そして、感動したように、自分の手をしげしげと見つめた。
そして、慣れた手つきで筆談帳にさらさらと何かを書くとルードヴィヒに見せた。
『本日は、おいでくださりありがとうございます。心待ちにしておりました。先ほどの握手は、力強くて、感動しました。モデルの方をよろしくお願いいたします』
『モデルの件はお引き受けしました。お安いご用です』
……とルードヴィヒは、筆談帳で答える。
そして、コンスタンツェに尋ねた。
「服装は、こんまんまでええがぁけぇ?」
「あら。言ってなかったかしら。カールは、あなたの裸体画が書きたいそうよ」
「おらっ? 裸になれっちぅことけぇ。まあ、ええども……」
「よろしくね」
やおら服を脱ごうとして、ルードヴィヒは、確認した。
「脱ぐって、全部かぃのぅ」
「ええっと……そこに腰布があるでしょう。それを付けてもらえれば……」
見ると、陰部がやっと隠れる程度の小さな腰布が置いてあった。
「ああ。これのぅ。わかったっちゃ」
ルードヴィヒは、本格的に、服を脱ぎ始めた。
「じ、じゃあ……せっかくだから、私も絵を描かせてもらおうかな」
「ええっ! 大公女様もけぇ。この間は、シャツを脱いだだけで怒ってたでねぇけぇ?」
「ソレとコレとは別よ。絵画は神聖なアートなんですからね。誤解しないでよね」
「へえ。そっけなもんかぃのぅ」
ルードヴィヒは、あっさりと納得した。
(そうよ……別に下心なんてないんだからね……)
……とコンスタンツェは、自分に言い聞かせる。
その間にも、ルードヴィヒは、どんどん服を脱いでいく。
\(◎o◎)/!
これを目にしたコンスタンツェの瞳孔は、見事に広がりっぱなしである。
顔の火照りも、胸の鼓動の高鳴りも、シャツ越しに大胸筋を見たときの比ではなく、未だかつて経験したことのないレベルに達している。
が、コンスタンツェは、もはやルードヴィヒの裸から目が離せなくなっていた。
さすがに、パンツを脱ぐときは、コンスタンツェに背を向けていたため、大事なものは見えなかったが、替わりに、尻の見事な大臀筋が目に入ってきた。
(๑ÖㅁÖ๑)キュ━━━━━ン♥ฺ
コンスタンツェの血圧が上がり、脳の血管が切れてしまいそうだし、顔からは火の出る思いがするが、コンスタンツェは、大臀筋を凝視した。なにしろ、腰布をつけたら隠れてしまうのだから……。
そして腰布を付けたルードヴィヒは、前を向いた。
キターーー(✪̼o✪̼)ーーー!!!
(なま大胸筋+伝説のシックスパック、キター―――!!!!!)
コンスタンツェの女の情念は、満たされるどころか、かえって燃え盛った。
彼女は、本人や弟に、これを悟られてはならないと必死に平静を装った。
「どっけぇポーズにすりゃあええがぁろぅ?」
すると、コンスタンツェは、ハッと我に返った。
「ああ。カールが事前にこれを用意していたのだけれど……」
……と言うと、クロッキー帳を見せた。そこには、いろいろなポーズが書いてある。
「何かいっぺえ書いてあるども……」
「実際にポーズを付けてみて、カールが気にいったものでいいかしら?」
「おぅ。わかったっちゃ」
ルードヴィヒは、クロッキー帳を見ながら、ポーズを付けていく。その度に、腕や胸などの筋肉が強調されて見えた。
ヽ(♡>∀<)ノキュンキュ-ン
コンスタンツェの胸は、その度にいちいちキュンキュンと高鳴った。
そして、カールが気に入ったポーズが決まり、彼は真剣な目つきで絵を描いていく。
コンスタンツェも描こうとするが、ルードヴィヒの体に見惚れるばかりでいっこうに筆が進まない。
しばらく経って、昼食の時間が近づいてきたとき……。
「ちょっと私は、昼食作りを手伝ってきますね」と言って、コンスタンツェは、席を中座した。
どうやら、”男をつかむなら胃袋をつかめ”作戦は、今日も継続中のようだ。
すると、ルードヴィヒは、カールから筆談帳を見せられた。
『姉さんがいない間だけでいいので、腰布をとってもらえませんか?』
『承知いたしました』
男どうしなので、ルードヴィヒは、何の躊躇もなく、腰布をとり、大事なところを含めて、文字どおりの全裸となった。カールは、その姿を目に焼き付けた。
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