表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/259

第109話 史上最大の作戦 ~その1~(2)

「ならばローゼンクランツ卿に頼めるかしら?」

「おぅ。わかったっちゃ」


 そう言うと、ルードヴィヒは、コンスタンツェをひょいと持ち上げ、お姫様抱っこをした。


「ひやっ!」


 コンスタンツェは驚いて声を上げた。

 いきなりの展開に、教室中が(ざわ)めいている。


「ちょっと、ローゼンクランツ卿。いったい何を……」

「何言ってるがぁだ。難儀くて、眩暈もするがぁろぅ。歩かせて階段から落っこちでもしたら、容易じゃねぇことんなるすけ」


「そんな大袈裟(おおげさ)なぁ……」

「そこは、遠慮するなてぇ」


「はあ……」


 そして……。

 教室を出ていくとき、リーゼロッテと一瞬視線が合った。

 その冷たく刺すような視線が痛い。


(いい気味よ。いつもの私の気持ちが少しはわかったでしょう……)


 コンスタンツェは、少しばかりの優越感を覚えた。


 ルードヴィヒは、コンスタンツェを軽々と運んでいるように見えるが、彼女はふと不安になった。今日の作戦に向けたストレスで、ここ2、3日は過食ぎみとなり、少々太ってしまったからだ。


「あのう……私、重くないかしら……」


 だが、ルードヴィヒは何ということはないと言った感じで答える。


「すっけなもん、()でもねぇ。女(しょ)なんて(はね)みてぇに(かり)ぃもんでぇ」


 言い方からするに、強がっている感じはない。


(私の杞憂(きゆう)だったようね……でも、よほど鍛えているのね……)


 そして保健室へ着いた。


 お姫様抱っこで両手が(ふさ)がっているだけに、一度降ろされるかと思ったのだが、ドアは、自動ドアのようにパタリと開いた。


「あれっ! 誰かいるのかしら?」

「んにゃ、おらが念動力(サイコキネシス)の魔法で開けたんでぇ」


「えっ!」


(聞いたことのない魔法なんだけど……かなりの難易度の魔法なんじゃあ……それをいとも簡単に……)


 保健室に入るが、誰もいない。


「おらっ! 先生はいねぇんけぇ」

「そのようね……」


「しゃあねぇのぅ……」


 そう言うと、ルードヴィヒは、保健室のベッドまでコンスタンツェを運び、ベッドへと寝かせた。


 二人きりというシチュエーションを狙っておきながら、コンスタンツェは、一瞬不安になった。


 誰もいない密室、ベッド、そして今、コンスタンツェはそこに寝かされるとき、ルードヴィヒがそれに(おおい)(かぶ)さるような体制になっていた。


(どうしよう! このまま彼に覆い被されて、押さえつけられちゃったら、私……抵抗できないかも……)


 あらぬことが、コンスタンツェの頭をよぎる。


 しかし、当然、ルードヴィヒに、そんなことをする気はない。

 なにしろコンスタンツェは具合が悪いと言っているのだ、そこにつけ込むようなルードヴィヒではない。


 結局、想像したようなことは起きず、ホッとしたのも(つか)の間……。

 ルードヴィヒは、コンスタンツェの顔に自分の顔を近づけてくるではないか。


(ああん。私、キスされちゃうの……)


 コンスタンツェは覚悟を決め、そっと目をつぶった。


 だが、彼女の額に何かがコツンと当たった。それはルードヴィヒの額だった。彼は、熱を測っただけだったのだ。


 またも、あらぬことを考えてしまっていたコンスタンツェは恥じ入った。


「う~ん。熱はねぇみてぇだのぅ。息苦しくて、眩暈がするっちぅことは……ん-ーん?」


 コンスタンツェは、ちょっとばかり罪悪感を覚えた。

 なにしろ、仮病なのだから、原因がわかるはずはない。


「ちょっと疲れただけだと思うの。少し寝れば治るわ」


「そんだば、一人で眠れるけぇ?」

「密室で一人なんてちょっと怖いわ。あなたも一緒にいてよ」


「おぅ。わかったっちゃ」

「ありがとう」


(こうして弱みをみせて、男に頼るのもアピールの方法なのよ……by 恋愛小説)


 ルードヴィヒは、近くからベッドの脇に椅子を持ってくると、これに座り、長期戦の体制に入った。

 そして、コンスタンツェの顔に見入っている。意識すればするほど、その視線を熱く感じる。


(いやん。どういうこと? もしかして、お化粧が崩れちゃってるとか……まさか、見惚れてるわけじゃないわよね……)


「んーん? 顔色も悪くねぇしのぅ……何が原因なんだろか……」


(な~んだ。こんどは顔色かぁ……)

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ