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第102話 ペッツの来訪(1)

 意外なダークホースがいた。


 闇精霊のダルクである。

 ある晩。ヌシサマンチウムの摂取に来た彼女は、唐突に言った。


「主様の分身体……可愛い……」

「おぅ。そらぁそうだのぅ。おらも、だんだん愛情が湧いてきたっちゃ」


「我も……主様の分身体を……希望する……」

「はあっ? 何言ってるがぁだ」


「ついては……本来の摂取器官の使用解禁を……我は……要求する……」

「いやぁ……均衡を回復するだけなら、それを使う必要はねぇろぅ」


「否定……本来の摂取器官の方が……××よりも……摂取効率が……倍以上高い……」

「本当けぇ、そらぁ?」


「これは……自然の摂理であり……真理である……」

「まあ……そらぁ、そうかもしれんが……今である必要はねぇろぅ」


「分身体を見て……我の闇の情念に……炎が(とも)った……この情念を……鎮めるためには……本来の摂取器官の使用しかない……」

「しゃあねぇのぅ。そらぁわかったすけ……だども、おらが学園を卒業するまで、待ってくれや」


「それは……条件付き肯定……と我は解釈するが……」

「おぅ。それで構わねぇすけ」


「了解した……闇の精霊との契約は……絶対不可侵……これが履行されないとき……現実世界が無事である保証は……ない……」

「お、おぅ。わかったっちゃ」


「では……今日は……いつもの××で摂取する……」

「お、おぅ……」


     ◆


 その後、予想どおり、カタリーナもやってきた。


「ルー坊。あたし言ったよね。”身請けされた以上、あたしはどんな卑猥(ひわい)なことでも、やれと言われればやる”って……まったく……いつまで放置プレイをする気なんだよ。あたしはもう限界だよ!」

「いやっ。おらだって”すっけんつもりはねぇ”って言ったろぅ」


「くっ……やっぱり、あたしは女として賞味期限切れっていうことかい?」

「そりだすけ、すっけんこたぁねぇよ」


「だったら、何だっていうんだい?」

「タリナ(あね)さが一生おらの愛人でええっちぅならともかく、誰かいい人を探して、添い遂げるっちぅ道もあるんでねぇんけぇ」


「そんな……娼婦だったあたしを選んでくれる人なんて……この世にいるはずないじゃないか!」


「そりだば、ローレンツさんは、どうなんでぇ?」


「あれは、ただの元客ってだけさ。タダでやろうっていう虫のいいことを考えている蛆虫(うじむし)だよ」


「タリナ姐さ。いい加減にしろや。元娼婦っちぅこだわりを捨て切れてねぇんは、姐さの方だ。ローレンツさんは、本気で姐さのことを想っとると思うがんに」


「そんな……バカな……あの脳筋がかい……?」

「バカだのぅ。脳筋だからこそ、一途(いちず)なんでねぇけぇ。そりでねぇば、わざわざおら()まで()んろぅ」


「それは……」


 カタリーナは、そこで口ごもり、考え込んでしまった。

 そして、深刻そうな顔をしながら、退室していった。



 さらに、懸念されるのは恋愛好きのニュンペーたちであったが……。

 結局、誰も何も言ってはこなかった。


 彼女たちは恋愛好きであるから、エッチも愛するが、再び夢幻界へ戻され放置プレイの憂き目に遭うことをおそれたのだろう。それだけ皆が"かまってちゃん"ということだ。

 ルードヴィヒは、そのことを改めて実感した。


     ◆


 実は、鷹の爪(ファルケン・クラーレ)傭兵団のローレンツについては、こんなことになっていた。


 ある日。ローレンツは、デリアの迎えに来たダリウスと一緒にローゼンクランツ新宅を訪れた。


 不思議に思ったデリアが、ローレンツに尋ねた。


「あれっ? ローレンツさんじゃないですか。どうしてここに?」

「いやぁ、ダリウスの話だけじゃわからねえから、おめえがちゃんと働けてるかどうか、様子を見に来たんだよ」


「そうですか……見てのとおり、皆さんに良くしていただいていますが……」

「そうか、それは良かった。安心したぜ。ところで、せっかく来たついでだから、何か力仕事でもあれば、手伝ってやるよ」


「でも、今日はもう遅いですから」

「なら、明日出直すさ」


「いえ。ローレンツさんに、そこまでしてもらう訳には……」

「いや。気にしないでくれよ。そこは俺が好きでやることだから」


「そうですか……では、力仕事といえば庭仕事ぐらいしかありませんので、庭師長(オーバーギャートナー)のフェルセンさんに伝えておきますね」

「おう。よろしくな」


 翌日。本当にローレンツはやって来た。

 フェルセンが仕事の指示をする。


「力仕事といっても、今日は堆肥(たいひ)の天地返しくらいしかないからね。あれは大変だけど、あんたの体格ならだいじょうぶだろう」

「よっしゃー! 任せとけ」


「ほう……元気だけはあるようだね。じゃあ、頼んだよ」


 ローレンツは、一見一生懸命に仕事をしているようだが、チラチラと母屋の様子に注意をはらっている。

 そして、カタリーナの姿を見つけると駆け寄っていった。


「おい。カタリーナじゃないか。久しぶりだな」

「あれっ? ローレンツさん。何でこんなところに?」


「いやあ。デリアに頼まれちまってな。力仕事を手伝っているんだよ」

「ええっ? デリアが?」


 カタリーナは不審に思った。堆肥の天地返しなどの仕事はトネリコ友愛会がやっているから、人では足りているはずだ。しかも、キッチン担当のデリアがそれを依頼するというのも不自然だ。

お読みいただきありがとうございます。


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