表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

157/259

第83話 翼竜会誕生!?(1)

 翌日。

 ヘルミーネは、黒竜会がお礼参りに来るのではと、ソワソワしていたが、その気配はないまま、店の営業は続いていた。


(このまま何もなければいいな……)


 ヘルミーネが、そう淡い期待を抱いたとき、店の扉が不自然にゆっくりと開かれた。

 そこに、ドサリと太っちょの男が倒れ込んだ。ジェラルドの弟分のフレーデガルである。


 フレーデガルは、腹を押さえて「ウンウン」と(うめ)いている。


「大丈夫ですか? フレーデガルさん」


 ヘルミーネが思わず駆け寄って声をかける。

 それを聞きつけて、ジェラルドとヤスミーネも厨房(ちゅうぼう)から出てきた。


 フレーデガルが、ジェラルドの顔を見ると、弱々ししい声で言った。


「兄貴。面目(めんぼく)ねえ。黒竜会の奴らに腹を刺されちまった……」


 挿絵(By みてみん)


 どうやら黒竜会は、クーニグンデが強いと見て、本人ではなく、仲間と目される弱い人間に仕返しをしたということのようだ。いかにもならずものらしい卑劣なやり方だ。


 呻いているフレーデガルにクーニグンデが近寄ると、冷たい声で言い放った。


「きさま。男のくせにだらしがないぞ。きさまの締まりのない腹の脂肪のせいで、傷は内臓まで届いていないではないか。そのようなかすり傷は、(つば)でもつけておけば治る程度のものだ。

 主様など、腕の1本や2本失っても平気な顔をしておったぞ」


「そんなぁ。クーニグンデさん。それはなんでも冷たすぎますよう……」とヘルミーネが抗議の声を上げるが、クーニグンデは相手にしない。


 フレーデガルに近づき、服をめくりあげると、(あらわ)になった傷口に、自らの唾を塗りたくった。


 すると……。

 傷口がみるみるうちに(ふさ)がっていく。


 “毒を制する者は薬をも制する”ということで、クーニグンデの唾にはちょっとしたポーション並みの治癒力が備わっているのだった。


 フレーデガル本人を始め、一同は狐につままれたように、ポカンとしてしまった。


 時間が止まったような空気を引き裂くように、クーニグンデが口を開いた。


「それより、きさま。聞き捨てならぬことを言っておったな。”黒竜会”とは何だ?」

「それは……俺らと敵対する団体の名前で……」


「なんだと! 奴ら、誰の(ことわ)りを得て“黒竜”を名乗っている?」

「そんなこと、俺が知るかよ」


「ならば、その黒竜会なる団体の頭目のところへ案内しろ」

「俺たちだけで殴り込みをかけるってか? そんな無茶苦茶なぁ」


「できないと申すか。ならば黒竜に逆らうことの意味を、きさまから教えてやる。まずは、きさまから死ねぇ!」


 そこへジェラルドが割って入った。


「ま、待ってくれ。姐さん。俺たちが案内するから。

 どの道、フレーデガルの借りは返さなくちゃならないし、それが遅いか、早いかの問題だ」


 そこに、テオバルトも駆けつけて来たので、ジェラルド、テオバルト、フレーデガルの3人はクーニグンデを案内して黒竜会の本部へと向った。


     ◆


 黒竜会の本部にたどり着き、建物に入ろうとクーニグンデが進み出ると、門番が誰何(すいか)した。


「このアマ! 何者でえ? ここを黒竜会と知っての狼藉(ろうぜき)か?」

「きさま。死にたくなかったら頭目を呼んで来い。3分間だけ待ってやる。我は気が短い故、それ以上は待てないからな」


「なに血迷ったことを言ってやがる。このクソアマがあっ」

 と言いながら門番は殴りかかってくるが、クーニグンデが手を一閃させると泡を吹いてぶっ倒れた。


「黒竜会とかいう奴らは頭が弱いのか? それとも黒竜が舐められているということか?」とクーニグンデは(ひと)()ちた。


 後ろに控えていたジェラルドたち3人組は、震えあがった。


 建物に入り、進んでいると、構成員が次々と出てくるがクーニグンデの敵ではない。彼女が通った後には、泡を吹いてぶっ倒れた男たちが累々と横たわっている。


 それでも、まだ次々と出てくるので、クーニグンデは(しびれ)れを切らした。行く手の廊下一面に毒の霧を張り巡らす。

 すると構成員はバタバタと倒れ、失神している。

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ