第69話 淑女の苦労(1)
ルードヴィヒは、リーゼロッテがあまりに可愛らしい声を出すので、ついつい調子に乗ってしまった。
耐えられそうなギリギリを狙って、足ツボをグリグリと刺激していく。
「ンゥ……ダメェ……イタッ……ハァ……ハアッ……アッ……ヤメッ……ンゥ……ヤメッ……テッ……アァァ……」
リーゼロッテは、ついには涙目になって、止めるよう訴えている。
(こら、やっべぇ。やり過ぎたかぃのぅ……)
「ハハッ。悪ぃ悪ぃ。こらぁ、強すぎたかぃのぅ」
ルードヴィヒが手を止めた途端、リーゼロッテは涙目のままふくれっ面をした。
「んもぉぉっ……ルード様ったらぁっ……」
リーゼロッテは、ルードヴィヒをポカポカと叩こうとする。
が、リーゼロッテのヘロヘロなパンチなどルードヴィヒは軽々と避けてしまう。
「当たらなければ、どうということはねぇ」
「なんですってぇ!」
リーゼロッテは、ついに本気で怒りだしそうになったので、ルードヴィヒは、慌てて謝る。
「悪ぃ悪ぃ。ほれ。一発殴ってええすけ」というと右の頬を差し出した。
リーゼロッテは、却って躊躇したが、希望どおり殴ることにする。
「それなら……えいっ!」
ポコッ☆ c=(・ェ・o)ヘナチョコパンチ!!
情けない音をたてて、リーゼロッテのヘナチョコパンチは命中した。
(ん? 当たっても、どうということはねぇのぅ……だが、こらぁ言わんどこぅ……そんだば、いちおう……)
「痛ってぇ!」
かなり臭い芝居だったと思うのだが、リーゼロッテは信じてしまった。
「あっ! ごめんなさい! 痛かったですか?」
「いやいや。これでお相子だすけ……」
「(^.^)エヘッ♪。そうですね……」
漸く、少し機嫌を直してくれたようだ。
「ところで、足の方はどうでぇ?」
「じつは……なんだか、ちょっとヒリヒリします……」
「そうけぇ。悪ぃかったのぅ……そんだば、今度は痛くしねぇすけ、足を揉んでやらぁ」
(ええっ! またですかぁ! もしかして……ルード様って……足フェチなの……?)
呆れたリーゼロッテをよそに、ルードヴィヒは、足裏を揉み始めた。
(はうーっ……今度は大丈夫なようね。普通に気持ちいいわ……)
そのうちに、足の指を引っ張ったり、指の間を広げたり、関節を曲げたりしている。
リーゼロッテは、意味がわからず、戸惑った。
(気持ちいいことは、気持ちいいのだけれど……)
「あのう……ルード様。私の指でなにを遊んでいるんですか?」
「はあっ! "遊んでいる"とは失敬な! 普段靴を履いていると足指が固まっちまうすけ、ほぐしてるがぁてぇ。健康にもええがぁよ」
「あぁぁ……そうなのですね……」
リーゼロッテは、素直に引き下がる。
だが……。
ルードヴィヒは、そのうちに調子に乗って、ふくらはぎまで揉み始めた。
(いやーん。気持ちいいけれど……やっぱり足フェチなの?)
そして……膝の端から指4本分下にある足三里のツボを押した。
「くっ・・・・・・・ぅっ」
かなり効いているようだ。
そこで、リーゼロッテは、解放された。
「はーーーっ」と長いため息をつくリーゼロッテ。
そこに追い打ちをかけるかのように、ルードヴィヒは言う。
「本当は、太ももや臀部もほぐした方がええがぁだども……」
(で、で、臀部って……おしりのことよね? いくらなんでも、いきなりそこまでは……)
さすがに、これ以上の刺激は、もはや耐えられそうにない。
「いえ。もう充分楽になりましたから……」
「そうけぇ……そんだば、やめとくかのぅ」とルードヴィヒは、少しばかり残念そうだ。
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