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第68話 マッサージ(1)

 リーゼロッテは、視線の行き場がなくなり、思わずルードヴィヒの方を見つめてしまう。


 するとルードヴィヒは、頭を()きながら、バツが悪そうに言った。


「まあ……あいつぁ、ああいう台風みてぇな女だすけ、勘弁してくれや……それはともかく、足が痛ぇがぁろぅ。まずは、そこん椅子に座れや」


 なんだか話をはぐらかされたと思いつつも、リーゼロッテは、勧められた椅子に腰を下ろした。


「でえでえ、見してみぃ」


 ルードヴィヒは、リーゼロッテの右足の(くつ)()がしにかかる。


(いやぁぁぁ! さっきまで歩きどおしで、靴の中が()れているのにぃ! 足が臭っちゃうじゃないですかあ!)


 だが、ルードヴィヒは、止める間もなく、靴を脱がすと、靴下まで脱がしてしまった。


 リーゼロッテは、力なく訪ねた。


「あのう……ルード様……私の足……臭ってないですか……?」

「はあっ! 何言っとるんでぇ。男の(くっせ)ぇ足じゃあるめぇし、女(しょ)の足が(くせ)ぇわけなかろぅ」


 それでもやはり、リーゼロッテは自信が持てない。


「本当は私に気を使っているのでは?」

「すっけんこたぁねぇ。(しょ)の足なんてきれいなもんだすけ。おらぁ()めてもええよ」


(ひえぇぇぇっ! それはあまりにも……)


 リーゼロッテは、思わずドSな女王様がとんでもない美少年を足蹴(あしげ)にし、冷たい目線で見下しながら足を舐めるように強制している場面を想像してしまう。


(さあ……女王様の臭い足をお舐めなさい! このクソ豚がっ!)


 天使のように美しいルードヴィヒの姿は、見事過ぎるほどに、その場面に当てはまるようにも思ってしまう。

 もちろんリーゼロッテにそのような嗜好(しこう)はなく、聞きかじりの話である。


 その感情は、顔に出てしまったらしい。


「もちろん冗談でぇ。本当に舐めたりしねぇよ」


 そう言われて、リーゼロッテはホッとした。

 が、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、(舐めてもらったら気持ちいいのかな?)と想像してしまった自分に気付き、心の中で恥じ入った。


 ルードヴィヒは、そのままリーゼロッテの足を観察し始めた。


「しっかし、ロッテ様の足はいい形しとるのぅ。指もスラリと(なげ)ぇし、爪もきれいだし、爪に塗ったペディキュアも豪儀(ごうぎ)似合ってるもぅさ。見えないところまで、ちゃんと手入れしてるたぁ、さすがだのぅ」


(いやだぁ……素足って普段は人に見せないところだから、じっと見られるのってかなり恥ずかしいな……)


 それに……ペディキュアを塗っているということは、靴下を脱ぐケースに備えているということで、それはすなわち……。


(ルード様に変に勘繰(かんぐ)られなければいいのだけれど……ふしだらな女だと思われたらどうしよう……)


 観察を続けていたルードヴィヒは、肝心のアキレス腱の靴擦れの様子を注意深く見ていた。


「まあ、赤くはなっとるども、皮は破れてはいねぇようだのぅ。そんだば……」


 リーゼロッテのアキレス腱を柔らかく暖かい光が包む。

 それにより、あっという間に痛みは引いていき、赤い腫れも見事に引いていた。


「えっ! ルード様。これって……?」

「おぅ。治癒(ヒール)の魔法だども、どうかしたけぇ?」


「ルード様は、光の魔法も使えたのですね」

「まあのぅ」


 ルードヴィヒは何の気負いもなく答えたが、光魔法の使い手は希少だ。それに四つの元素(エレメンツ)魔法が使えることは既に知っているから、併せて五種の使い手、すなわちクインクということになる。

 これは幻の大賢者と言われるマリア・テレーゼと同じということになる。


(血筋は争えないということね。それにしても、デュプルでさえ数百人に1人と言われているのに、クインクなんで……どれだけ希少か想像もつかないわ)

お読みいただきありがとうございます。


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