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第54話 女男爵(1)

 アウクトブルクの町には"黒竜会"という暴力団的な犯罪集団があり、"血の兄弟団"に次ぐ勢力を誇っていた。


 彼らは、あらゆる反社会的行為を行っていたが、当たり屋もその一つである。


 今、黒竜会の男たち数名が、ある女男爵に狙いを定め、当たり屋行為を行う算段をしていた。


 その女男爵は、しばらく前に病で家族を亡くし、若くして爵位を相続した成人したての少女であった。

 彼女は社会的な経験が不足しており、強い態度に出てこないだろうと足元を見てのことだった。

 ダリウスは、戦闘奴隷として狂戦士(ベルセルク)じみた戦い方に磨きがかかっていった。

 これは本人の願望というよりは、焦燥感の現れである。


 そして、16歳となったある日。

 ダリウスは、ついに皇帝軍カイザーリッシェ・アルメーの少将の首を討ち取った。


 さすがに当局も将官の首を討ち取ったダリウスを無視できず、彼は念願の解放奴隷となった。


 これはガードが堅い敵の本陣へ単身で突撃を敢行(かんこう)した上での結果だった。同僚の戦闘奴隷たちは、これは命を()した特攻だと見て(あき)れかえったが、成功して帰ってきたダリウスの姿を見て、驚きは極致に達した。

 帰ってきたダリウスは、敵の返り血で全身が血まみれであり、これが戦闘の激しさを物語っていた。


 敵の少将は、選び抜かれた屈強な戦闘奴隷軍団に身辺を警護させており、普段からこれを自慢していた。

 ダリウスは、この鉄壁の守りをたった一人で見事に打ち破ったのだ。


 解放奴隷となったダリウスに対し、その名声を耳にした方々の騎士団などから誘いがあった。

 しかし、ダリウスに騎士道などと甘っちょろいことをぬかしている奴らと肩を並べるつもりは毛頭なかった。


 彼の選択は、傭兵の一択だった。

 選んだのは、国内最大勢力を誇る鷹の爪(ファルケン・クラーレ)傭兵団であったことは理の当然である。


 いちおう入団試験はあったものの、入団すること自体は造作もないことだった。


     ◆


 解放奴隷となったダリウスが真っ先に向かったのが、奴隷商巡りである。

 もしデリアが転売されていれば、見つかるかもしれないと思ってのことだったが、それは虫の良い話だった。


 だが、ダリウスは(あきら)めず、暇を見つけては、奴隷商巡りを続けている。


 続いてダリウスが向かったのは、ヒーマン男爵家である。

 ダリウスは、あわよくば母の(かたき)を討ちたいと考えたのだ。


 しかし、男爵家の様子を探ったところ、なんと男爵本人やその家族はつい最近にインフルエンザに(かか)って命を落としており、ただ一人生き残った末娘がかろうじて12歳の成人年齢を迎えていたため、彼女が男爵位を継いで女男爵となっているということだった。


 ダリウスは、アンネローゼの命を奪ったインフルエンザが男爵の命を奪ったことに、不思議な因縁(いんねん)を感じた。


(もしかして、アンネローゼが俺に代わって復讐してくれたのかもしれない……)


 しかし、ダリウスは、一度振り上げた(こぶし)のやり場に困っていた。

 その挙句、女男爵となった(はかな)げな少女の姿を見たとき、思いついてしまった。


(奴に母と同じ思いを味あわせてやる……)


 とはいえ、ことはそう簡単ではない。

 少女とはいえ、曲がりなりにも当主であるから、外出するときは馬車に乗っている。


 ダリウスは、人気のない道で、馬車を襲い、彼女の身柄を強奪(ごうだつ)することを計画した。

お読みいただきありがとうございます。


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