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童話

2022年の干支はトラ! ~ 幻のハットトリックは、ヘディングとともに

年末の国立競技場といえば、冬の風物詩、干支対抗サッカーW杯決勝の舞台である。


勝ち残った2チームは、牛チームと虎チーム。


延長へと入る熱戦に、観客の声援が送られる。


そこで事件が起こった。

干支サッカーW杯決勝の舞台。


勝ち残ったチームは、牛と虎。


因縁の対決である。



一進一退の攻防。


試合は、2対2で延長戦へと入った。


牛チームのギュニューが、皆を鼓舞する。



  さぁ、延長だ。


  もう1年間、うし年をやろうじゃないかっ。



引退を決めているギュニューのためにも勝つ! と、チームメイトの士気も高い。


そうだっ。来年の干支を勝ち取るのだ。



延長後半13分。


ここまで2得点のギュニューが、ふわりとパスを前線に送る。


これを、フォワードのチーズが、ノートラップでボレー。


しかし、キーパーのアイッホンが、素早く、ボールをはじきだす。


守り切った。そう思った瞬間、走り込んできたのは、ギュニューだ。


軽く右前足を合わせる。


ちょこんと浮かしたボールが、アイッホンの右手の上をすり抜けた。



  GOAL!



ギュニューの3点目!



だが、歓喜に沸くサポーターが目にしたのは、掲げられたサイドフラッグ。


チーズへのパスが、オフサイドと判定されたのだ。


ノーゴール。得点は、幻となった。



延長後半15分。


またも、サポーターを沸かせたのは、ギュニューであった。


ペナルティエリアでギュニューが、鮮やかなターン。


得意のマルセイユターンである。


しかし、虎のマトラッテは、したたかだ。


背後から、ユニフォームを掴んで引っ張る。


だが、審判の目に届かない反則に、笛は吹かれない。



腹を立てた ギュニューは、言い放った。



  ユニフォームが欲しいのなら、試合後にくれてやるよ!



マトラッテは、老獪であった。



  それより、お前の姉ちゃんのステーキが欲しいな。



ギュニューの姉は、全国牛肉会で金賞を取っているのだ。


この言葉には、温厚なギュニューも、頭に血が上った。


角に力を込めて、頭突きを放つ。



  ドンっ



マトラッテの胸を襲う一撃。



  ピィイ



流石に これは、笛が鳴る。


しかも、審判が取り出したのは、赤札。


退場だ。



  嘘だろ。ギュニュー。



牛のアナウンサーが、絶句した。



悲しそうな瞳で、退場するギュニューを乗せた荷馬車は、ゴトゴトと市場への道を行く。



そして、再開された試合。


ギュニューを失った牛に、虎の猛攻を防ぐ力は、残っていない。


アディショナルタイム3分。


コーナーキックにマトラッテが合わせた。


まるで スローモーション。


ボールが、ゴールへ 吸い込まれる。



勝負を決める3点目は、2022年を、とら年と 決める一撃となった。



牛たちは、荷馬車に揺られながら、退場。


虎軍団は、咆哮をあげながら、道頓堀へと飛びこんで行くのであった。

文字数(空白・改行含まない):1000字

こちらは『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』用、超短編小説です。

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