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転生争奪ロワイヤル~チートが欲しけりゃ勝ち残れ!  作者: 北田 龍一
プレシーズン

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2/29

準備期間

“あーあー? 聞こえるかー? 転生希望者どもー? ゲーム主催者の神様です。今回は初開催のゲームなんで、割と無難な味付けで行くぞー?

 シチュレーションは孤島! 武器種類は近代火器! そう、大人気某バトロワゲーのイメージでだいたい合ってる。ただ……そっくりそのままじゃつまんねーから、ある程度ルールをいじってある。詳細は頭ん中でヘルプウィンドウ開いて、各々確認しな。そういう設定も慣れてんだろ?


 開催は20分後! それまで体の動かし方を確かめたり、ルール確認したりすると良い。武器演習場や、装備やアイテムも全部用意してある。要は好きなように自前で試せるってこった。この準備時間を、せいぜい有意義に使いやがれ! 一発勝負だが……リスクは無し! メリットは莫大! おまけに全員同じ条件! これで負けても文句なんざ言わせねーぞ!”


 突如として響き渡る声に、100人の人間がその場所に突如として立たされた。どうやら島のようだが、辺りにはいろいろと置かれている。

 近くを見渡すと、一定距離の的と銃器が置かれた「演習場」

 赤い袋に白い十字のついた道具に、手榴弾と弾薬が無数にある「アイテム置き場」

 ちょっとしたアスレチックめいた地形が乱立する「パルクールエリア」

 車やバイクなど、利用可能な乗り物を操縦できる「ビークルエリア」

 立て看板と矢印付きで、各種施設が示されている。突然開けた場所に投げ出され、100人の人間がざわついた。

 彼らの反応は様々だが、とりあえず目を引いたのは――


「ふ、ふざけるなー! いきなり何の権限があってこんなことを!!」

「そうだそうだ! 神様だろうと横暴だーっ!!」


 天に向かって声を上げ、口汚く神を罵る一群が現れた。

 がーがーぎゃーぎゃー喚き散らして、大きな口で唾を飛ばす。つられて何人かが騒ぎ出したが、特に何も起きない。意識が明確になるにつれ、参加者たちは別々に行動を起こし始めた。

 騒ぐものに乗っかり、グダグダと文句を垂れる者。

 演習場で、武器の使い勝手を試す者。

 現状を飲み込めず、呆然とする者。

 道具の種類や効果を確認し、足場を固める者。

 移動能力や、落下時のペナルティーを調べ、立ち回りを再認する者。

 ヘルプメニューを頭で開き、隅から隅までルールを把握する者。

 百人が、百通りに行動をとる。刻々と時間が過ぎる中で、ちょうど半分が経過したころ……再びアナウンスが入った。


“あーあー半分が経過したぞ。予定の時間になったら、島の上空にご招待だ。突然光のキューブに囲まれて、気がついたら乗ってるみたいな形になる。何してようが強制中断されっから、その前には気を鎮めとけー? 残り30秒になったら、カウントダウンのアナウンスもしてやるよ”

「おい! いい加減にしろぉ! おれ達の話を聞けェ!!」

「そうだー!」

「横暴だー!!」

「枠増やせーっ!!」

“おいおい……ちゃんとルール読めよ? 枠は一つじゃねーぞ”

「えっ!?」


 直接脳内に響くアナウンスに、天に唾を吐く集団が静まった。全体に放送されるソレに、他の数名も聞き耳を立てる。


“MVP賞も用意されてるぞ。お前らの感覚で言うなら……「取れ高」か? おもしれー場面や途方もないバカやったり、ともかく見せ場を作ったやつにゃ、チートほどじゃないが、特典をやって転生させてやる……って書いてあるんだがな。頼むから説明を読んでくれ”


 以降、神様からの声は降って来ない。しんとしたのもつかの間、何人かは再びゴネ始める。そっと離れて備える者もいるが、その方が少数派だ。

 ぴーぴー喚いても、何も誰も答えてくれない。文句そこそこに諦めた輩の中には、備える誰かに絡んでいく者もいる。


「なぁなぁ、色々と教えてくれよ」


 銃器の演習場にいる一人に、馴れ馴れしく近寄る。ハンドガンを握り、的を撃ち続ける参加者は……悉く無視し、引き金を引いていた。

 武器を持ち替え、今度はアサルトライフルを扱う。露骨な放置に声を荒げ、練習中の男に掴みかかった。


「おい! こんだけ聞いてるんだから、ちょっとぐらい答えろよ!!」


 うんざりした銃器を握る男が、その銃口を掴みかかる相手に向ける。ぎょっとしたのもつかの間、数発ハンドガンをぶち込んだ。

 痛覚はあるが、恐怖で動けなくなるほどではない。ダメージを受けた自覚と、どの方角から撃たれたか……その目安になる程度に痛みは抑えられていた。ゲームを円滑に進めるための、神様なりの配慮である。


「痛って!? 何しやがる!?」

「お前……ホント馬鹿だな。敵に教えるわけないだろ」


 銃を持ったプレイヤーが、侮蔑と共に頭へ弾丸を二発送る。一瞬でブラックアウトしたその参加者は、すぐにリスポーンよろしく最初の地点に立っていた。


 一方、だるい絡みを排したプレイヤーは、武器種の把握に努めていた。

 出現する銃器は『五種類』……さらに『Aタイプ』と『Bタイプ』に分けられている。例えば今敵に打ち込んだのは『Aタイプ』のハンドガン。よく見るオートマチックのピストルだ。

 男は『Bタイプ』のハンドガンも手に取る。リボルバー式の拳銃は『Aタイプ』と比べて、弾丸の装填数が少ない。反動も重く、連射も難しいが……弾丸一発のダメージが、非常に高く設定されているようだ。


『Aタイプ』の銃器は癖が少なく、扱いやすい。

『Bタイプ』の銃器は扱いずらいが、攻撃性能が高い。

 十種類ある武器の中から、プレイヤーは二つ装備できるルールを把握した男は、どう組み合わせるかを考える。実にゲーム的な仕様が一つ含まれていたからだ。

 どうやら……弾薬は『Aの弾』『Bの弾』と分けられているらしい。『Aの弾』は『Aタイプの銃すべての弾薬』になるようだ。ハンドガンとスナイパーライフルは、現実ではまるで形が違うのだが……同じ弾薬を使える仕様らしい。どう組み合わせていくべきか、その参加者はじっくりと考えている。

 

 そうこうしているうちに、カウントダウンが入る。百通りの時間の使い方を終え、神様の声が転生希望者に届く。まだ騒いでいる輩を放って、静かに光が舞う。本線会場の上空へ、彼らの意識を飛ばしていく……

 ついに始まるのだ。チート異世界転生を賭けた、百人の希望者による争奪戦が。

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