47.セサミの秘密
セサミには秘密があるのです…な話。
「スバルン、考えはまとまったか?」
リーマンはスバルの部屋を覗き込む。
「まあな、そういえばリーマンの研究結果を聞いてなかったな」
「おー、いくらでも聞いてくれたまえ」
「スバルさん」
リーマンが話し始めようとしたときカーチェスも部屋に入って来た。
「おっカーチェス、丁度いいところに、お前もリーマンの話を聞いとけ」
「えっ?、あっはい!」
「アマルシェからnatural-blue現象が人為的に起こせることは聞いたな」
「ああ」
「研究結果からいうと、スバルがいうように瀬戸総一郎がnatural-blue現象を発生させ、スカルオートの爆発事件を起こすことは可能だ、しかも条件を整えれば1人でもできる」
「ほんとか!」
「しかもスカルオートはその条件が整ってる、爆発事件がnatural-blue現象に関係してる可能性は100、研究を進めていくうちに俺は瀬戸がその犯人としか思えなくなった、さらにシーナの話を聞いても軍がnatural-blue現象についてかなりの知識を持っていたことが分かる」
「100%関係してるってことは機体の改造にしか興味のないレジスタンスが爆発を起こすのは無理だな」
「ああ、あとそれが自然に起こったことではなく、人為的って可能性も100だ」
「なぜ?」
「スカルで自然にnatural-blue現象が起こるのはあり得ない」
「そうなのか!」
「まず、人為的に起こす方法を説明しよう
カンデロートは、この世界のどこへ行っても、空気中に極少量含まれる、その中で空気中のカンデロートの量が少し多い場所がある、それが赤道直下でもないのに常に暖かい国だ、スバルもいくつか知っているだろう」
「サイサルニーフォートか」
「そう、そしてスカルオートも年中暖かい気候だ、その暖かい気候がnatural-blue現象に関係している、
カンデロートにはエネルギーの吸収の他に2つ作用がある、1つはこの前言った、人の皮膚を硬質化する作用、もう1つは一定の密度に達すると熱を発生させるという作用だ、後者の作用がその土地を暖かくする」
「空気中のカンデロートが少し多いくらいで温度が上がるのか?」
「違う、地下に大量のカンデロートが存在する、そういう土地が暖かく地下から漏れだすカンデロートが空気中のカンデロートの量に影響してるんだ」
「なるほどつまり、大量にあるカンデロートを地下から引っ張り出せば、人為的にnatural-blue現象を起こせると」
「そういうことだ」
「でもエンドリーコウドは暖かくなかったですよね、これはどういうことでしょうか」
咄嗟にさっきまで静かだったカーチェスが口を開く、カーチェスは昔から鋭い質問をするが今回の質問はリーマンを黙らせるほどだった。
「…」
「どういうことだリーマン?」
「…」
「リマホルさん?」
「そんなことが分かったらこの世に科学者はいらん、というかなぜ今までそのことに気づかなかったのだ私は」
「エンドリーコウドにはまだ謎がある…か」
「今すぐエンドリーコウドに行きたい」
「無理言うな、それより研究結果はそれだけか」
「いや、1つ勘違いしていたことがある、私はスカルの事件はnatural-blueで機体の動きを止めた上での爆撃かと思っていたが、そうではなくカンデロート自体を爆発させたようだ」
「できるのか?」
「おそらく、一定の密度を越えると熱を発し、さらに高い密度にするとおそらく爆発する、この現象を私はブルーディストラクションと呼ぶ…ことにする」
「ブルーディストラクション…」
カーチェスはリーマンの言葉を繰り返す。
「とにかく、瀬戸は確実に爆発事件に関わってると私は言いきる」
「そうか、そうなりゃ今すぐにでも瀬戸をぶっ倒しに行きたいな」
「行けばいいんじゃないですか?」
「それは違うぞカーチェス」
「?」
「そうだ、瀬戸が1人で事件を起こせても事件に関係してる人間が瀬戸1人とは限らない、関係してるやつを逃がさないためにも、慎重に全ての関係者を洗い出さなければいけないと言うことだ」
その後スバルは再び難しい顔をして黙りこくる。
数時間が経ったあとだ、スバルはまた皆を集める。
「あ〜、俺達のこれからの活動方針についてだが、やることは大きく分けて2つ、これまでに引き続きスカルオート爆発事件と軍の関係性を調べること、そしてもう1つはNABAに関する情報の元を断ち、それらに関わる機関、組織を徹底排除することだ」
「なんか、目的が世界平和みたいになってきましたね」
「たしかに…
今はどうにもこうにも動き出さなきゃ始まらん、とはいえ今は手がかりがないからな、とりあえず、これから1年は戦力増強をはかるつもりだ、以上解散、あとセサミは残ってくれ」
「早ッ!」
「つっこむな、解散!」
「どうした、スバル?」
皆が部屋を後にする、残ったセサミはスバルに言う。
「1つ聞いておきたいことがある」
「なんだ、急に?」
「いつからBAに乗ってる?」
「いつからって…1年ぐらい前かな、スバル達に会う前までは、本当にただ乗ってるだけだったけどな」
笑い声混じりで言うセサミだが、スバルは笑顔をみせない。
「セサミ、これは忠告だ、下手な嘘はよした方がいい」
「嘘? なんの話だ」
「わかるんだ、何年もBAライダーをやってると、ちょっとした動きの違いでそいつの力量とか何年乗ってるかとか」
「ふ〜ん」
「隠してるようだが細かい動作や咄嗟の動きは隠せない、最低でも四年は乗ってる、しかもかなりの腕だ」「ふふん、いつ気づいた?」
「ダブコンに乗るのは初めてのようだったから最初は分からなかった、だが慣れれば基本の操作は普通の機体とかわらない、正直カーチェスは天才だ、俺が見てきた中で最も才能がある、2ヶ月であの動きはできない」
「だが、自称ほぼ初心者の俺はその動きに意図も簡単に合わせた」
「普通ならあそこまで合わせられない、というよりあんたの動きの方が先行している」
「すごいなスバルは、うまく隠してたつもりだったんだけど、それだけで分かるもんなのか?」
「フェイントの入れ方かが上手かった、あの動きを自然にできるようになるには4年はかかる」
「なるほどね、けど残念
俺はもう8年乗ってる」
「目的はなんだ、なぜ俺達に近づいた?」
「心配するな、少なくとも敵じゃない」
「敵とかそんなのは関係ない!」
「要は俺にとってguardianが邪魔だった、そのguardianに敵対しているお前らが都合がよかったんで力を貸そうと思った、それだけの話だ
別に見返りを求めてる訳じゃないし、あんたらをどうこうしようなんて思ってないよ」
「ノアの至るところを爆破したのはお前か?」
「さあな、もういいだろお前らの邪魔はしない、スバルが任務をいえばやってやる、それでいいだろ」
「本当に邪魔はしないのか」
「ああ、じゃもう行くぜ」
「そうだ1つだけ言っとく、あんたは機体に関して無知すぎだ」
「じゃあ俺も言っとくぜ、スバル、この世界にはguardianより強いやつなんていくらでもいる、やつらに勝ったぐらいで浮かれないことだ」
「…」
「ちょっと、甘いんじゃないかな」
「ユノ!」
「これが心当たりか」
「ああ」
「あまり簡単に人を信用しない方がいい」
「してるつもりはない」
「仲間に何かあってからじゃ遅いんだぞ」
「…」
「まぁスバルがいいなら別にいいけど」
襲撃から3日、ノアでは総司令、副総司令、各リーダーが集められ会議が開かれていた。
「任務を切り上げ、帰ってきたがこのありさま…雷瞬は月咲に二度もやられて悔しくはないのだな」
開始早々、紫音は雷瞬に言う、が雷瞬は口論する気配はみせない。
「今回の失態は全て私の判断ミス、何を言われても返す言葉はない」
「よせ紫音、お前たちを集めたのは言い争いをするためではない」
「どうでもいいから、早く会議を始めようぜ」
「ハザック、あなたにも責任があるのですよ」
「紫音! 二度も言わせるなよ」
「すっすいません」
「さて、今回の失敗の原因はある程度聞いた、なにか他にあるか」
「いえ、報告の通りです」
「では今後どうするかを決めようか」
「総司令、ならばこれからは我が、チームsneakをスバル討伐部隊に」
「いや、今はノアの守りを固めるのが先だ、討伐はそれが一段落ついてからだ」
「いいのですか?このまま彼らを野放しにしておいて」
「やつらの目的がわからん以上どうとも言えんが、やつらには軍を完全に潰すこともできたはずだ、だがしなかった、ということは、彼らの目的は我々を倒すことではない、またすぐ攻撃してくることもないだろ、それよりも今は他勢力の方が脅威だ、そんな状況で特殊部隊を各地に飛ばすわけにはいかん」
「しかし、彼らの目的はなんだったんでしょうか?」 と副司令、それに答えたのは雷瞬。
「おそらく、シーナとリーマンといったところでしょうか」
「なぜシーナを?」
「リーマンもだ、彼を拘束したときこう言っていた、俺はやることはやったと、彼らにはなにか他に目的があるのか…」
「考えてわかるこっちゃねーだろ」
2人の会話を聞いていたハザックはどうもやる気の無い声で言う、心ここにあらずといった感じだった。
「ハザックの言う通りだ、とりあえず今はノアの修繕と防衛を徹底、その後の行動は追々決めて行こうくことにしよ」
総司令もそれ以上は何も言わなかった。
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