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46.ユノ・マギナ・エンゼルバセス

スバルが助け出したシーナについての話。


「スバルさん、これを見てくだ…さ……い」

「ん?」

「あわ、あわわ!」

 カーチェスは勢いよく扉を開けたが、直後に赤面する、後退りしたあと尻餅をついたカーチェスの前にいたのはシーナだったのだが、彼女が普通にしていたら彼もそこまで慌てなかっただろう、だが。

「おい、シーナ服ぐらい着ろ!」

 そこにいた彼女は下着すら身につけていなかった。

「スバルが脱がせたんだろー」

「いいから着ろ」




「女の裸を見るのは初めてか?」

 ベッドで足を組み座るシーナは、その前でイスにすわるカーチェスにニヤニヤしながら話しかける。

「…はい」

「初のぉ初のぉ」

「シーナしゃべり方がおっさんだぞ」

「むっスバル、その名で呼ぶなと言ってるだろ」

「ああ…、悪いユノ」

「ユノ?」

 カーチェスは聞き直す。

「私の本名だ、それより小僧まだ顔が真っ赤だぞ」

「いや、これは決してやらしいこと想像してるわけではッ!」

「ふふふんッ、面白いなお前」

「あんまからかうなよ、カーチェスは純粋なんだ

カーチェスもあまり気にするな、いずれお前も通る道だ、小春のを見ても動じないような男になっておけ」

「どういうことですか、スバルさん!」

「また顔が真っ赤になったぞ」

「う〜、スバルさん、なんでこの人が重要人物なんですか?」


「そうだな、その話もしないといけないし、またみんなを集めてくれ」

「わっわかりました、

…と、その前にこれを見てください」

 部屋を出ようとしたカーチェスは足を止め、振り返る、手に持った新聞を広げながら。

「新聞なんて見てどうするんだ」

「ここです、ここ」

 とカーチェスは指差す、そこをスバルが読み上げる。

「元軍人である月咲昴が率いるレジスタングループがノアを襲撃、軍内部のいたるところを爆破し、現在も逃亡中………

どこが変なんだ」

「僕ら、そんなたくさん爆破なんてしてませんよ、爆破したのはリマホルさんを助けたときだけです」

「……、んなもん書きようだろ」

「そうでしょうか…」

「そうだ、早くみんなを集めてこい」

「わかりました」

 カーチェスは納得いかない様子で部屋を後にする。

「本当に書きようか?」

「何がだ」

「いや、一瞬間が空いた気がしたから」

「ん〜、まぁ心当たりがない訳でもない…からな、でも余り気にする事じゃないさ」






「しっかり訳を聞かないとな」

 一番前の席に座る秀一はスバルに言う。

「まったくじゃわい、小僧の女を連れ出すためにワシらはあんな危険をおかしたのか」

 その横電蔵も言う。

「まぁ、そうだな」

「なっ!」

「冗談だ、て言っても俺も実のところよく知らん、知ってるのは彼女の名前がユノだってのと軍の秘密を知ってるってことぐらいだ」

「ユノ?彼女はシーナだろ」

 シーナを昔から知っているリーマンはどういうことだといった顔をする。


「それは偽名だ、軍のやつらに私のことを知られるとまずいからな、ちなみに記憶喪失という設定も嘘だ」

「あの〜分かるように説明してもらえませんか」

 とカーチェス、他の皆もそうだった。

「つまりだ」





「簡単にまとめると、彼女は軍にいたが、軍の秘密を知っていて、本名を教えると自分の存在がばれるから隠してたと、でその秘密っていうのはスバルも知らんのか?」

「俺も知らん」


「軍の人間には話せないことだったんだスバルも例外じゃない」


「だがもう軍人じゃない話してくれるよな」

「ああ」

「これで俺達が倒すべき敵が誰なのかはっきりする」「そうですね」



「さて、どこからはなそうか、みんなはエンゼルバセス王の娘が失踪した事件を知ってる?」

「聞いたことはあるな」

「当時私はエンゼルバセスにいた、といっても一般市民ではない、私の本名はユノ・マギナ・エンゼルバセス

エンゼルバセス国王、アル・シーバ・エンゼルバセス13世の娘だった、そして失踪事件の被害者」

 集まっていた、全員が驚く、あたり前だった、彼女の言うことが事実なら彼女は一国の姫なのだから、その後もユノは話を続ける。






 話は数年前にさかのぼる、場所はエンゼルバセス王国王宮、通称平和の宮。

当時のエンゼルバセスはguardianと提携し非武装国家へと変わったころだった、それは平和革命と言われ、国王の支持は確固たるものとなっていた。


「地下へ頻繁に出入りしているのは誰かしら、アランは知ってる?」

 私はその頃、当然だが王宮にいた。

「軍の関係者らしいです、地下で新しい資源の研究をしているとお父様は言ってました」

 私には二歳年下の弟がいた、名前はアラン・ルド・エンゼルバセス。

「アランは物知りね」

「当然です、姉さんももう少し勉強なさった方が…」

「無理、難しいことは頭に入らない作りになってるのよ、あっなんか優しそうな人が出てきたわ」

「ちょっと、姉さん!」

 地下からでできたのはメガネに白衣姿の20代女性、優しそうな人だったから話しかけやすかったわ。

「こんにちは」

「あら、これこれはユノ殿、それにアラン殿」

「ユノでいいわ、あなたは?」

「私は椎名麗美、地下で働いてる研究員よ」

「ふ〜ん、ねぇ地下ではいったい、なんの研究をしているの?」

「ある物質、まだまだ謎の多い物質なんだけど無限の可能性が眠っている物質の研究…かな」

「物質…」

「私たちはアンフェルメントと呼んでいるわ」

「アンフェルメント…実際にどのように使われるのですか?」

 

「電気やガソリンに代わる新しい原動力になる可能性があるわね、といっても正直わからないことが多くてなんともいえないけど」

「ふ〜ん、すごいねぇ」

「私たちの前にもこの物質の研究をしていた人がいたらしいんだけど、あまり成果をあげられなかったと聞いているわ」


 この時彼女が言っていたアンフェルメントがリーマンが研究していたカンデロート、あの青い気体の研究はこの頃にはもう始まっていた、いえ彼女の話からしてもっと前から始まっていた。



それからさらに数年…

椎名とは仲良くなっていたけど彼女は会う度に元気がなくなっていた気がした、実際笑顔も見なくなっていたから。

だからその日、私は地下へ忍びこんだ、彼女の笑顔を奪った何かがそこにあると思ったから。


「私がしたいのはこんな研究じゃない」

 忍びこんだ私の耳に入ったのは椎名の怒鳴り声だった。

「何を言う、永遠の命を手に入れられるんだぞ」

「永遠の命は自我を失ってまで必要なもの?」

「麗美、今さら引き返せないのだ、お前に残された選択はここに残って研究を続けるか、死ぬかだ」

「だからって、人を実験台に…仲間を実験台にするなんて私にはできない…」

「何度も言うがもう引き返せない」

 私は訳がわからなかった、あんなに荒れている椎名を見たのは初めてだった、だから後ろから誰かが近づいているのに気づけなかった。

「ちょっと、離して!」

「誰だ」

 椎名と一緒にいた男は扉を方を見る。

「シャーロットです」

 入って来た男は私を掴んで離さなかった。

「シャロ部屋に入るときはノックをしろと、ん、誰だね、その子は」

「なんか、部屋ん中をのぞいてたんで」



 私は今でも覚えてるそのときの椎名の悲痛に歪んだ表情を。

「ユノ!」

「この子が」

「どうしますか主任」

 主任と呼ばれたその男はあからさまに面倒そうな表情をしたあと口を開く。

「研究を見たものを返す訳にはいかん」

「しかし、この子は王の娘ですよ」

「麗美、例外は認められんと言っても殺すと厄介だ、軍と王国との関係に亀裂が入りかねん、シャロ、12号室に閉じ込めておけ、あとノイゼとエマを呼んでおけ」

「わかりました」




「彼女をどうするのです」

「実験台にしてあそこに送る、皆を集めろ、9時には薬を投与できるように準備をしておけ」

「しかし」

「何度も言わせるな」



 私は気を失った注射を射たれたの、目が覚めたとき目の前には椎名がいた。

「し…いな?」

「ユノ、大丈夫?」

「うん」

「ユノ、聞いて時間がないから要点だけ言うわ、混乱するかもしれないけど今から言うことをしっかり覚えて」

「どうしたの?」

「いいから聞いて、今からあなたはエンドリーコウドと言う場所に送られる」

 それから話をたくさん聞いたけど頭がボウッとしてあまり聞き取れなかった、ただ肝心なことはちゃんと覚えてて私と他に3人の科学者が実験台としてエンドリーコウドに送られること、これが実験の最終段階と言うことそしてその実験がNABAを造り出す実験だと言うことを話してくれた、その後再び薬を射たれ私はエンドリーコウドに送られた。




「NABAを!」

 スバルは驚きの声をあげる、もちろん他の皆も同じだった。

「NABAってたしか特殊部隊の人が乗っていた機体ですよね」

「そうだ、まてよ…てことは」

「そうよ、NABAは人間が元となって作られた機体」

「そんなこと可能なのか」「可能も何も、私は人がNABAになっていくところをこの目でみたわ」

「あり得ない」


 人が何倍の大きさもあるロボットになるのだ、信じられる訳がない、だがリーマンだけは違った。

「いや、あり得る」

「リーマン?」

「カンデロートには触れるだけで人の皮膚を硬質化する作用がある、そんなあり得ないことが起こっている以上、人がNABAになることがあり得ないとは私にはいえない、謎の多い物質だ、その投与された薬とカンデロートが交わると突然変異を起こす、そんなものをつくりだせる可能性は高い」

「まて、ユノもその薬を射たれたんだろ、ならなぜNABAになってない」

「椎名によると、私には抗体を射ったって、生き延びてこのことを軍関係者以外の信頼できる人に伝えてと…

3人の科学者がNABAになったあとスバルが捜索隊としてエンドリーコウドに来て私を見つけた、この後はスバルも知っている通りよ」


しばらく沈黙が続く、衝撃の事実にみな言葉がない、沈黙を破ったのはセサミだった。

「スバルの探してた答とは検討違いな秘密だが、それなら余計にたちが悪いよな」

「どういうことですか?」

「強力な機体を大量生産できるってことさ、大量の人間の命と引き換えに

もしかしたら軍のやつらはレジタンスを倒すためにそれを実行するかもしれん」

「軍はそんなことしないだろ、瀬戸のやつは少しの犠牲より平和をとるやろうだが、それだと大量の犠牲で平和をとることになる」

「そんなのはわからないだろ、人の心は変わる、それに研究を見ただけの人や研究者を実験台にしたんだ、100%しないとは言い切れないだろ

それに本当に恐いのは軍じゃないかもしれない」

「たしかにそうじゃな」

 電蔵もセサミの考えに納得がいき、そう言った。

「どういうことですか?」

「恐いのは軍の情報が外に漏れることだ」

「なるほど、そうなれば大量の殺戮をし、大量の兵器を作り、また大量の殺戮をするやつらがでるかもしれないってことか」

「そういことだよ、スバル」


「はぁ〜倒すべき敵を知ろうとして余計に分からなくなったな、俺はこれからのことを考えるよ、とりあえず解散」

 とスバル、すぐに部屋を後にし自分の部屋へ向かう。



 

「それにしても、ユノさんは軍に2年もいたんですよね、よくバレなかったですね、」

 残ったカーチェスはユノに聞く。

「運が良かったのは、軍に私が実験台にされたことが伝わって無かったことと当時の研究者がみな姿を消したということ、だから私の正体は私が言わない限りバレなかった、軍の人間もさすがに王の娘の顔まではわからなかったようね」




今話より最終話(50話)までを毎日投稿していくつもりです。

どうぞ最後までよろしくお願いいたします。

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