41.スバルVS雷瞬
メリークリスマス!
世間ではクリスマスらしいですね、恋人達のクリスマス…否! クリスマスは稼ぎ時ですよ。
ということで今回はスバルと雷瞬が戦いますよ。
白色で塗られた機体、目の前で〈白兎〉が揺れる、風が強く吹いていた。
「スバルさん!」
「よくやった、後は下がっていろ」
「はい」
スバルは〈チャトラン〉と入れ替わるようにして、前にでる。
「やはり、スバルの仲間だったか…オルガノ平気か?」
「なんとかね、だけど大ダメージ、もう動きそうにないわ」
「そうか、ビル! オルガノを頼む、すこし…本気で行く」
「了解」
〈SDX〉と〈白兎〉、
スバルと雷瞬…少しずつ近づいていく2人、互いに出方を窺っている。
「久しぶりなのに挨拶もなしかい、雷瞬」
おどけて言うスバル、間合いをはかりながら慎重に近づく。
「挨拶だと、ふん貴様に挨拶など必要か?」
「必要なんじゃないか」
「くだらんな、貴様はここで俺に敗れる、それが挨拶がわりだ」
一定まで近づいた後は同じ距離を保ったまま回る、強い風が吹き付け僚機を揺らすが距離はぶれることなく一定のまま。
「リーマンは返してもらうぜ」
「お前に? 無理だな、貴様はここで敗れて終わるのだから」
「はぁ〜、昔から変わらないな、常に自分が一番だと思ってる」
「悪いが事実だ」
「俺に負けたやつがよく言えるよな」
「いつの話だ…今はどちらが上か、はっきりわかる、1年も牢にいたやつがこの俺に勝てる訳がないのだからな」
「そんなもん、やらなきゃわからないだろ、
それに1年は調度いいハンデだ」
「口の減らないやつだ、お前こそ、自分が一番だと思っているだろ」
「俺は負けず嫌いなだけだよ、それより攻撃してこないのか?」
「お前こそどうなんだ」
「初撃はあんたに譲ってやるよ」
「俺に…ならば行かせて貰おうか」
雷瞬はブースターを緩め止まる、トリーガーを引き寄せスバルを狙う。
「行かせてもらうって言ってんのに、何で武器を出さないんだ?」
〈白兎〉は止まったまま動かないでいた。
「えっ、僕に聞かないでくださいよー!」
〈チャトラン〉の中から不思議そうに上を見上げる2人、だがスバルには確かに見えていた、〈SDX〉を横に移動させる。
目を凝らすと僅かに見える〈白兎〉の脚部から〈SDX〉へ延びる半透明の光の筋が一線、それが初撃だった。
「簡単に避けてくれる」
2人の戦いは静かな一撃で開幕となった、〈白兎〉から呼び動作なしの攻撃をスバルは簡単によけてみせる、それは雷瞬にとって相手の強さをはかる一撃。
「次は俺だぜ」
一定の間隔を保っていた、2つの機体はその攻撃を皮切りに動き出す。
「お得意のナイフ攻撃か!」
スバルは新月を機内に収納すると左肩部より、ナイフを取り出す、同時にニトロによる高速発進で雷瞬との距離を詰める。
「切り刻んでやるよ!」
正面から突っ込んでくる〈SDX〉、雷瞬は絶妙なタイミングのブースターでよけ旋回、通り過ぎて行くスバルの背後をとると左腕を前に突きだす、〈白兎〉の掌の真ん中には丸い穴、そこが光を発し始める。
「何かくる」
「スバル避けろ!」
「避けてみろ、スバル!」
雷瞬はトリーガーを引く、さっきより太い半透明の光の筋が掌より放出される。
「わかってるよ」
セサミの声に答えるように小さく呟くと、振り返りながらナイフを投げる、それと同時に無音の閃光が放出され、〈SDX〉の頭部を少しえぐった、スバルの放ったナイフは〈白兎〉の右肩部分に命中する。
「ちっ、さすがだな、やはりお前はスバルだ」
「おいおい、今まで誰だと思ってたんだ」
「すっすごすぎる月咲昴、リーダーと互角にやりあってる」
ビルはコックピットのガラス面に顔を押し付けるようにしてその攻防を目に焼きつける。
「よく見ておくことね、こんな戦い滅多に見れないわよ」
「そうだ、1つ聞いておきたいことがあったんだ、あいつはどうしてる!?」
戦闘の最中、スバルはまのぬけたような声で言う。
「あいつ…シーナのことを言ってるのか?」
「ああ」
「お前に教える義理はない!」
再び左腕のレーザーが飛ぶ。
「教えてくれたっていいじゃんかよ!」
スバルはまるで当たり前かのようにそれを避け、反撃にうつる。
「知ってどうする」
雷瞬もまた簡単によけ、三度、レーザーを放出する、スバルはそれをすれすれでかわし〈白兎〉に近づくと肩部に刺さったナイフ引き抜く。
〈白兎〉、肩部の外装が剥がれ内装が剥き出しになる。
「どうもしないよ、ただ知りたいだけだ!」
「お前を思って毎日を過ごしている…とでも言ってほしいのか!」
脚部が光を放つ。
「てめーら、見たいなやつらと一緒にいて、シーナが毒されてないか心配なだけだっての!」
スバルはまたも、簡単に攻撃を避け、腹部に蹴りを一発おみまいする。
「おかしいよあの2人、こんなの人間業じゃない」
「これがguardianで鍛えられたやつらの力なのか」
あまりに人間ばなれした2人の操作テクニックにカーチェスとセサミは圧倒される、それは勿論ビルとオルガノも同じだった。
「会話してるぜ」
「なのに、あの攻防…いったいどうなってるのかしら、あら」
「どうしたオル!」
「通信よ…こちらチームrisingどうぞ」
「…こちらチームsneakの鳳だ!これから増援に向かうので正確な位置情報を送ってほしい…」
「わかったわ」
オルガノは機械をいじるモニターにはsendの文字。
「…すぐに向かわせてもらう、でわ…」
「増援に特殊部隊を出動って豪華だな」
「それだけ本気ってことよ、瀬戸総司令もね」
蹴りを入れた瞬間に互いの機体間に距離ができる、それをみて雷瞬は言う。
「昔言わなかったか、蹴りを入れる時はブースターでの重心調節を気をつけろって」
「おいおい、教えるのは自分より弱いやつだけにしときな、それぐらいのこと、言われなくてもわかってるからよ」
「ならば、本気でかかってこい、貴様と話がしたい訳ではないのだからな!」
雷瞬は声を荒げる、普段の冷静な彼からは想像もつかない声だった
「そうだな、長引くと増援が来るし、そろそろ終わらせてやるよ」
ブースターの噴射口が轟音を放つ、スバルは新月を取りだし斬りかかった。
「紫音さん、ちょっと速くないっすか」
パパル・アブソーバは、激しく揺れる機体の制御のなか、目の前を飛行する紫音に向けて通信を送る。
「黙って着いてこい、着いてこれないのなら置いていく!」
言葉を返す紫音、その口調からいつもと様子が違うことが容易に察することができた。
「パル兄! リーダーを怒らせるなぁ!!」
「おっ俺のせいじゃナッシング」
「あんたがうるさいからリーダーが怒ってるんでしょうが」
「出しょうが? どっから出たしょうがだぁー!」
「しらないわよ、バカ兄、クズ兄、変態兄!」
「パパル、ナギサ、すこし静かにしていてくれないか」
今度は静かに言葉を発する紫音、その言葉にパパルとナギサは凍りつく、2人は紫音に少しばかりの恐怖を覚えた、普段から厳しいことは知っていた、だがいつもの厳しさとは違うものだ、沈黙状態になった機内は生唾を飲み込む音さえ聞こえそうだった。
「リーダーが押されてる」 攻撃はかわしていた、だが完全にかわせている訳ではない、かすめるだけの攻撃は〈白兎〉に微々たるダメージを与えている。
「この俺が押されてるいるだと」
雷瞬は焦っていた、それは苛立ちに近いもだった、スバル優勢、彼のプライドはそれを許さなかった。
「くそ」
スバル優勢それは事実、だがスバルもまた焦っていた、何度攻撃をしても確実な一撃が決まらない、その焦りが更なる焦りをうむ。互いに自分の力を相手より上だと思い込んでいた、それが戦いを長引かせる結果となった。
「くっ…俺としたことが、思い上がり過ぎていたようだな」
雷瞬は悟った、プライドなどちっぽけなものだと、無論手を抜いていたわけではない、彼にとってスバルは過去の人物、本気をだすまでもない、そんな思いが彼を縛っていた。
だから彼はプライドを捨てた、そして行動に移す。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。