38.決勝戦
決勝戦なお話。
薄暗い部屋のなか、PCの液晶から漏れるわずかな光が部屋の隅々を照らす、積まれた本や、何に使うのか分からない装置でごちゃごちゃしているその部屋で、キーボードを操作する手を止めリーマンは1人呟く。
「スバル、どうやらnatural-blue現象は人工的につくりだせる」
スバルの求める答えがでてリーマンは考える、本当にスカルオートの爆発事件が人為的なものなのか、もしそうなら誰が行ったのか。
「自然に発生する確率は極めて低い…となると、やはり瀬戸総一郎か」
イスから立ち上がり、リーマンは部屋から出ていく。
3人の間に会話はない、というよりも雷瞬がピリピリしていて、ビルもオルガノも言葉を発することをこまねいていた。
「降りるぞ」
やっと掴んだ手がかり、雷瞬はそれを逃がすまいと必死のようだ、だが彼は冷静さを失わない。
「すまなかったな、ビル」 降りた街はマヤサッサ、そこにはリーマンがいる、彼らが手に入れたのはリーマンの情報だった、機体から降りた雷瞬は一番に口を開いた。
「えっ、なにがですか?」
驚いた表情でビルは言う、話が見えない。
「決勝戦を見せられなかった」
「そんなのリーダーのせいじゃないですよ」
「ああ、…ここだ」
足を止める、目の前にはリーマン宅、すぐにインターホンを押す。
ガチャッとドアが開き、その隙間からアマルシェが顔をだす、そこにいた3人を見て彼女の顔は強ばる。
「なっ…なんでしょうか」
「ここにリーマンがいるだろう、だせ」
中を覗き込みながら、強い口調で雷瞬は言う、鋭い目で睨み付けるのでアマルシェはたじろぎそうになる。
「ここにはいないわ」
「なら入らせてもらうぞ」 ドアを無理に開き入ろうとするがアマルシェはそれを阻止しよとする。
「だっダメ…です」
「アマルシェ、つけない嘘はつくな」
雷瞬はアマルシェを退け中に入っていく。
部屋に入るとリーマンはリビングで紅茶を啜っていた。
「ついに見つけたぞ、リーマン・ホールソン」
「みつかったか…」
リーマンは横目で雷瞬を確認すると手に持ったカップをテーブルに置く。
「大人しくついて来てもらうぞ、抵抗するようなら」 声に力がこもる、ゆっくりとリーマンに近づいて行く、雷瞬が話し終わる前にリーマンは口を開いた。
「心配するな、やることは全て終わったし、抵抗なんてしない」
「やること?」
「連れてくなら早く」
「あっああ」
意外なリーマンの対応に雷瞬は少し戸惑う、雷瞬はさらにリーマンに近づいていく、まだ警戒しているようだ。
「おっと、その前に」
リーマンは近づいてくる雷瞬の横を通り、アマルシェの方に歩み寄っていく、そして抱きしめる。
「アマルシェ、スバルにnatural-blue現象は人為的に引き起こせると伝えてくれないか」
不安そうな表情のアマルシェ、そんな彼女の耳もとでリーマンは小さな声で囁く。
「…はい」
「それと…」
「なに?」
「また1人にしてしまうこと許してくれ」
「うん…」
リーマンはアマルシェを引き離し雷瞬の方を向く。「さぁ、連れていってくれ」
決勝戦の準備を促すアナウンスがはいる。
「ホントに決勝戦、見ていかないんですか?」
カーチェスはさらに怪しい変装をしているスバルに言う。
「仕方ないだろ、これだけビラがまかれてるんだ、見つかるのも時間の問題だよ、俺はリーマンとお前らの勝報を待ってるから」
「でも…」
「大丈夫、俺がいなくても勝てるだろ、お前らは強いんだから…」
「…はい、勝てます」
「よし、その調子だ」
「カーチェス行こう」
機内からセサミが顔を出す。
「はい、セサミさん」
「きたぜ、きたぜ、
ついにきたぜ! けっしょ〜せん、厳しい戦いを勝ち残った、これから戦うヤローを紹介してやるぜ、知ってるだろうが紹介してやるからなぁ〜!
まずは、前大会の敗戦を力に変えここまで全て圧倒的な差をつけ勝ってきた、ミスターBAファイター、クラッシャーボブこと
ボ〜ブ・アーベ〜ック!」ハデな演出とともにゲートが開き、〈クラッシャー〉がでてくる、場内の歓声は凄かった。
「そして今大会初出場ながら祈願の優勝を狙う二人組、名前はダサいが戦い方はハイセンス、みんなも名前は覚えたよな、超と書いてスーパー、さあ呼んでやろうぜ
スーパースバル爆撃団!
ちなみにここまでナイフ攻撃だけ、爆撃は一切していないぞ〜!」
同じようにゲートが開いた、奥から〈チャトラン〉に乗りゆっくりでてくる。
「あんなこと、言われてますよ」
「まあ、間違ってないしな、なんも言い返せん…それよりスーパーの表記は超だったのか!?」
「知りませんよ」
「とりあえず、レーダーの範囲を最大まで拡げとくか…はぁ〜決勝戦観たかった」
微かに聞こえる実況の声を聞きながら、森のなかに置いてあった〈SDX〉に乗り込むスバル。
機内をいじりレーダーを起動させる、その後〈SDX〉はゆっくりと飛び立つ。
「カーチェス、セサミ頑張れよ」
「レディー」
静まり返った場内にレフリーの声だけが響く。
「武器はあのでかい鉄球にレザー式の銃、いいブースターだけどあの装甲からみてかなり遅い…」
カーチェスはいつものように敵機の分析を始める。 レフリーはいつもより時間をとる、なかなか手を降り下ろさない。
「…」
両機に目をやる、そして次の瞬間
「ファイッ!」
「先に動いたのは〈チャトラン〉、どんな攻撃を仕掛けるのか!」
〈チャトラン〉と〈クラッシャー〉の距離は一瞬でつまる。
「もらったー」
セサミは力一杯ナイフを突き刺そうとする。
「セサミさん、ストップ!」
「おっ?」
ナイフを持ったまま〈チャトラン〉は〈クラッシャー〉に掴みかかる。
「どうした、カーチェス」
「向こうは見るからに装甲の堅い機体です、突き刺しは厳禁です」
「なぜ?」
「抜けなくなるからです、だから関節なんかの装甲の薄いところを斬りつけていきましょう」
「オッケー」
「相手の攻撃は中距離がメインです、このまま近距離でジワジワいきましょう」 掴んだ手を話し〈チャトラン〉は攻撃を始めだす。
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