37.トーナメント最終日
最近、話がいろんなところに飛んでかなりややこしいです、申し訳ない。
今回のカーチェス、セサミの対戦相手は長刀使いのキラージェッター
「強い、強いぞ、クラッシャーここまで3戦、全て瞬殺で勝負をつけてやがるぜー」
実況はいつも通りのハイテンション、観客もそれに負けず劣らずの大声援、今日はトーナメント最終日だった。
「カーチェス、セサミ、決勝の相手が決まったぜ」
スバルはゆっくりと、〈チャトラン〉に近づいていく。
「ほんとか!」
セサミ1人が機体から出てくる。
「あれカーチェスは?」
「さあ?」
「さあって…」
「そんなもんカーチェスの自由だろ、それより決勝戦の相手は?」
「ボブ・アーベックだ」
「あ〜あの、ゴツゴツした機体の…」
「あれどうしたんですか?」
そこにカーチェスが戻ってきた、手には食べ物、飲み物を持って。
「おお、カーチェス、決勝戦の相手が決まったぞ。」 スバルは対戦表をまるめてカーチェスの前にビシッと突きだす。
「へぇ〜」
だがカーチェスはどうでもいいかのように、返したのはその一言。
「なんだ、興味ないのか」
「いえ、でもそれより今は次に勝つことが大事です」 カーチェスは目をメラメラさせながら拳をつくる。「スーパースバル爆撃団様、キラージェッター様、準備ができしだい、ゲートに向かってください」
大会役員の放送が入る、カーチェスはスバルに手に持った荷物を渡すと言った。
「行きましょう、セサミさん」
「ああ」
「よし頑張ってこい」
「さぁ、次は今大会初参加ながら一躍大スターになりつつあるこいつらだ、スーパースバル爆撃団!」
ゲートから〈チャトラン〉が出てくる、この2日間でかなりのファンがついたのだろうか観客席からは「爆撃団!」「お前らが勝つと信じてるぜー」などと声が飛び交う。
「そして、初戦から前大会2位のアタチャと大激戦を繰り広げてきた、今大会優勝候補、前大会の覇者長刀使いキラージェッターの入場だ〜」
逆のゲートからジェッターの乗る機体〈アサシン〉が入ってくる。
深い緑色の機体、腰には巨大な刀が取り付けられている、外観からして武器はそれ1つに思える。
「セサミさん、あの刀かなり長いですよ、距離感がつかめるまでは慎重に行きましょう」
「なあ、カーチェス」
「なんですか」
「向こうはあんな長いのにこっちはナイフってせこくないか」
「たしかに…、でも長い分だけ隙も大きいはずです、そこを狙えば大丈夫ですよ」
「そう…だな、よし気合い入れていくぞ、カーチェス!」
「はい!」
「すでに勝利を決めているクラッシャーボブ、本日午後から決勝戦で彼と戦うのは、はたしてはどっちか、俺様ますますテンション上がってきてるぜ、さぁいよいよだ、みんな静粛にー」
場内が静まりかえる、2つ機体が向かいあう、カーチェスはいつもより距離をとった、敵機は長い刀に手を添える。
「レディ〜ファイッ!」
その瞬間〈アサシン〉は刀を横に一閃振り抜く、剣先は〈チャトラン〉胸部装甲をかすめていった。
「先制は〈アサシン〉だが少し距離が遠かった! すれすれで〈チャトラン〉の前を通りすぎた〜!」
「あっあぶね〜、ナイスだカーチェス」
「ギリギリでした」
〈チャトラン〉をみてみると地面がえぐれ、後ろに後退したのがわかる。
「だが〈アサシン〉攻撃を止めない!」
振り抜いた刀を持ちかえ縦に横に振り回す。
うまく避けるカーチェスだがいつの間にか回避一方になっていた。
「カーチェス平気か」
「はい! 今は我慢です、とにかく間合いを見極めましょう」
縦横無尽に飛んでくる波状攻撃を見事にかわし続ける〈チャトラン〉だが徐々に壁際まで詰まっていく。「〈チャトラン〉徐々に追い詰められる、〈アサシン〉の攻撃を止める術はないのかー!」
「カーチェスやばいぞ!」
「セサミさん、攻撃が見えますか?」
「ああ!」
「受け止められますか?」 カーチェスの手は慌ただしく動く、セサミはニヤリと笑う。
「受け止める……
ふん、やってやろーじゃねーか!」
「〈チャトラン〉ついに追い詰められた、どうする、どうする!」
壁を背に〈アサシン〉の攻撃を待つ。
振り上げられた刀は〈チャトラン〉右側斜め上方より一気に振り下ろされる。
「セサミさん!」
「甘いっての!」
鉄同士のぶつかり合う音が響く。
「アンビリーバボー、スバル団、〈アサシン〉の攻撃をなんと、なんとナイフで受け止めたー!」
見事に攻撃を受け止めたがナイフには若干の亀裂が入る。
「決着をつけましょう、セサミさん!」
長い刀をつたい、ナイフの間合いへと一気に距離を詰める。
「くらえー」
セサミは攻撃の動作に入る…が
気がつくとナイフは地面に落ち砂ぼこりを巻き上げている。
カーチェスは咄嗟に距離をとっていた。
「どっどうなった」
セサミはなにが起こったのかわからず混乱している。
「柄です」
とカーチェス、〈アサシン〉を睨み付けるようにしてみていた。
「すごい、すごいぞ〈アサシン〉、これが王者の貫禄か、スバル団の攻撃を柄で弾き落としたー!」
「全然分からんかった」
「正直僕も一瞬なにがなんやらでした、とりあえず予備のナイフを…次は簡単に受け止めさしてはくれませんよ」
カーチェスの目は依然鋭く敵機を睨み付ける。
「ああ」
「セサミさん」
「どうした?」
「まだ、三回目の闘いでこんなこと言うのは変かも知れないですけど、正直負ける気がしない」
「カーチェス…?」
「面白くなってきた、スバル団次はどうでる…
ん…ど〜うした、〈アサシン〉が武器をしまったぞ
なっなんとここにきて〈アサシン〉が途中棄権…
どういうことだ?
とっとりあえずこの勝負スーパースバル爆撃団の勝ちだー!」
「どういう、ことでしょう」
「さあ?」
カーチェスとセサミは、ゆっくりとゲートの方へ歩いて行く、〈アサシン〉を見ているだけだった。
「お疲れ…どうしたそんな顔して」
駆け寄ってきたスバルはカーチェスの浮かない顔を見て言った。
「腑に落ちません、相手の方が有利だったのになぜ途中棄権を」
「だが、あのままやってたってお前らは勝ってたんだろ?」
「そっそりゃもちろんです、まだあの刀の攻略法はいくらでもありました」
「ならいいじゃないか、次は決勝だぞ、あと2時間後だ心を切り替えとけ」
「…はい、ちょっとトイレに行ってきます」
「どうした、セサミお前も不満そうな顔だな、セサミもさっきの」
「いや、そうじゃない、カーチェスが…」
「カーチェスが?」
「負ける気がしないってさ、相手の反撃を喰らったあとにそんなこと言ってた」
「カーチェスが言ったのか?」
「ああ」
「そうか…、もしかしたらあいつは天才かも知れないな」
「天才、なぜだ?」
「いや、昔そんなこと言ってたやつがいたなぁ〜と思って」
「ん?」
「セサミさん」
薄暗い通路の奥からセサミを呼ぶカーチェスの声が壁に反響して聞こえる。
「どうした」
スバルとカーチェスは同時に声の方を向く。
「3位決定戦見に行きましょう」
「そういえば…リーダーはどこいったんだ」
ビルは次の試合の開始までの時間を退屈そうに過ごす。
「ビラ配りよ、私達は見てていいって」
とオルガノ。
「こんなとこまで来て月咲探しなんて、頑張るなぁ」
「よく考えてみると、各地から人が集まるんだから逆に人探しには好都合じゃないか! だって」
「あ〜なるほど」
「すいません、こういう人達を探しています」
スバル、リーマンの顔と指名手配の文字が書かれたチラシ配を配る雷瞬。
「ん?」
そこにカテナと小春が通りかかる。
「あなたは、カテナ殿」
「総一郎の息子じゃねーか」
「はい、お久しぶりです」
「こんなところで何してるんだ?」
「実は人探しを」
「スバルか?」
「そうです、さすがに知ってましたか」
「あたりまえよう、おっと悪いがもう行くぜ、もうすぐ決勝だしな」
気がつくと小春がかなり先の方まで行っていたのでカテナは慌て話を切り上げる。
「トーナメントですか、わかりました」
雷瞬はカテナを見送り、ビラ配りを再開する、とそこにまた1人の男が近づいてくる。
「あの〜」
「なんですか?」
「そのビラに書いてあることは本当なんですか?」
「はい、何か情報を?」
「実は…」
「おい、スバル、さっき雷瞬にあったぜ」
ドカッとスバルの横に腰かけるカテナ。
「まじで、…俺がいること教えてないよな」
「当たり前よぉ、トロパイオンは完全中立だぜ」
「その割に俺には教えてくれるんだな」
「お前は今、大切なお客様だからな」
「すまん」
「だが、ビラを撒いててたからな、あまりこの街に長居するのはオススメしないぞ」
「そうだな」
ここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。