33.大会前日、それぞれの思い
今回も短め。
「どうも前回に引続きカーチェスです、ついに明日がトーナメント、スバルさんはバランスがどうだ、とか重心がこうだとかしか教えてくれなかったけど本当に大丈夫なんでしょうか…心配です」
機体から降りたカーチェスは浮かない顔をしていた。
「どうしたカーチェス?」 それを見たスバルはカーチェスに声をかける、どうせ小春とうまくいかなくて落ち込んでるんだろうと思いながら。
「あの…こんな訓練ばっかりで大丈夫なんですか?
もっと攻撃の仕方とかやらなくていいんですか」
とカーチェス、その裏でセサミも賛同するように頷く。
「なんだ、攻撃の仕方が知りたかったのか!よし最後に教えるつもりだったが今すぐ教えてやろう、すぐに機体に乗り込め」
カーチェスとセサミは顔を向かい合わせて笑う。
「さすがスバルさんです」 そして2人は機体へと走っていった。
「いいか、まず右腕を引け」
機体は突っ立ったままナイフを持つ右腕を後ろに引く。
「そして、それを前に突きさーす!!」
テンションを上げるスバル、だが機体の中は静まり返る。
「……」
「………」
「ん?どうしたカーチェスせっかく教えてやったのになんで黙り込むんだ
わーすご〜いとか言えよ」
「すごいもなにも、こんなこと教えてもらわなくてもできます!」
カーチェスは機体スピーカーの音量を大にする。
「なっカーチェス!
今は突きができれば十分だそれに、突きは重要な技だ突きもできんやつに他の技はできん!」
そう言うとスバルは〈SDX〉の方へ歩いていく。
「心配です」
「スバルにも何か考えがあるんだろ」
「よし、次の訓練だ」
〈SDX〉に乗り込んだスバルは意気揚々と近づいてくる。
そして次の瞬間
「なっ何するんですか、いきなり」
突きだされた〈SDX〉の右腕にはビームナイフ、それが〈チャトラン〉の頭部右わずか数センチのところを突きさす。
「いい反応だ…
最後の訓練は俺の攻撃をかわしつづける、それだけだ」
「それだけって」
「同時に突きの大切さも教えてやろう、いくぞ!」
カーチェスとセサミの頭にニヤニヤするスバルの顔が浮かぶ。一呼吸置いて2撃目が突き出される。
「えっうそ、うわッ!」
その夜…
「うへ〜癒される〜」
「ほんとですね」
立ち込める湯気の中にセサミとカーチェス、2人のシルエットが写し出される。
「毎日こんな大きなお風呂に入れるなんてカテナさん達が羨ましいです」
「そうだな」
西洋式の2人で入るには大きすぎる風呂は、2人の疲れを癒すにはちょうどいいものだった、セサミは天井を見つめるように、カーチェスは風呂の縁に手をかけるようにしてつかっていた。
「なぁ〜カーチェス」
ふとセサミが口を開く、その口からでた言葉はかなり気の抜けたしゃべり方だった。
「何ですかぁ?」
カーチェスもセサミと同じようなしゃべり方でかえす。
「明日だな〜」
「明日ですね〜」
カーチェスは目を閉じる、下手をすればこのまま寝てしまう勢いだ。
「風呂っていいよなぁ」
「いいですね〜…
って明日じゃないですか!」
カーチェスは閉じた目をこじ開け、その場で勢いよく立ち上がる。
「カーチェス〜、前隠せ」「そんな呑気なこと言って場合じゃないですよ」
「いまから焦ったってどうにもならんだろ」
「でも、でも!」
「俺らはスバルに教わったことを実行すりゃいいだけだろ」
「それは、そうですけど…それが心配なんです」
「別に勝てなんて言われてないんだ気軽にやろうぜ」
「……たしかにそうかもしれませんね、明日は全力を尽くす、それだけです」
「そう言うこと、さて上がるか」
「はい」
「どうだ、あいつらは勝てそうか」
缶ビールを片手にカテナがスバルに話しかける。
「どうだろうな、だがかなり、いいところまではいきそうかな」
「ほほう〜」
カテナはスバルの横に座りスバルと同じように上を見つめる。
「それより、今日は星が綺麗だな」
天井がガラス張りになっているそこからは、夜の星空がよくみえた。
「なんだ、お前は以外とロマンチストか?」
「いや、ただホントにそう思っただけだよ…
楽しみなことがあると普段は気にならないことが気になったりするんだ、俺は」 スバルはもう一度空を見上げ、輝く星を眺める。
「…飲むか?」
カテナはもう片方の手に持った缶ビールをスバルに差し出す。
「遠慮しとく、それに一応言っとくが俺はガキだぜ、そんなもん飲むんはまだ早いよ」
「そうか、まあ覚えちまうと止められんからな」
そういって差し出した手をそっと戻す。
「ほんと明日が楽しみだ」「そうだな」
「楽しみだ…」
そう言ってスバルは深く目を閉じる。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。