2.帰郷
今回はBAを修理するお話です。
プシュー、っと列車がたまった空気を吐き出す。
スバルは故郷であるコムルルに戻ってきたのだ。
「やっと着いたぁ〜」
スバルは大きく伸びをして辺りを見まわした。
「なんも変わってねーな…当たり前か一年だもんな」
コムルルの街は小さな街だ、だがBA産業が盛んで設計士や整備士、調整士などのBA開発者が多くいる。ゆえに小さな工場も多い。軍が乗るBAもここからパーツを取り寄せたりメンテナンスをしてもらったりするぐらいだ。
街には鉄を叩く音や小型のメンテナンス用BAの機動音、工場で働く人達の話し声が響く。
そんな中にスバルが育ったBAの工房があった、それが工房豊吉、スバルの祖父が経営する工房である。
「よう、じっちゃん元気にしてたか?」
「んあぁー、誰じゃ??」
BAのエンジンシステムの横からスバルの祖父であり育ての親である豊吉が顔をだす。
豊吉はスバルの顔を見るやいなや誰と勘違いしたのか
「誰じゃ、お前は、金ならないとっと帰れ」なんて言葉を吐く。
「…おいおい、ひどいなぁ〜自分の孫の顔も忘れちまったのか」
スバル少し笑い、呆れ気味に言う。
「ぬんがぁ、もしかして、椿か?」
「はぁ〜、残念だけど、それは俺の母さんだ」
と同時に目の前の老人の一人娘でもあった、老人は口をぽかーんと開け考える、数秒後、まるで何かひらめいた科学者のように言う。
「と言うことは昴か?」
「そうだよ、じっちゃんただいま」
「お〜お〜、よう帰ってきたのー、今までどこにいっとったんじゃ」
「じっちゃん…わざと言ってねーか?」
どうやら彼は1年でかなりボケたみたいだ、スバルはじっちゃんの相手もそこそこにしないとな…と心の中で思う。
「それより、じっちゃん俺のBAはまだ置いてあるよな?」
「お前のBAなら、裏のガーレジに置きっぱなしじゃわい、メンテナンスもなにもしとらからどうなっとるかはわからんがの」
「そっかわかった、ちょっと見てくる」
「ああ、見てこい見てこい、あいつもお前がもどって来るのを心待ちにしとるわい」
「ああ、行ってくる、…あっそれとガーレジじゃなくてガレージな」
メンテナンスは言えるのになぁ~、そんなことを考えながら、ガレージを開けると1年間誰も入っていなかったせいで、積もりに積もった埃がまいあがる。
喉に直撃したそれは、ゲホッゲホッとスバルをせき込ませる、ガレージは暗くその奥には窓からのわずかな明かりがもれていた。
そのわずかな明かりがガレージ内にまう埃を照らす、まう埃の奥にBAが立っていた。
スバルがガレージの電気をつける、するとBAは明るく照らされ全体がはっきりと見えるようになった、白色をベースに黒と赤でペイントされたややスマートなタイプのBAだ。
だかスバル仕様に改造されたBAは普通のライダーが乗るには一癖も二癖もあるようなパーツがいくつもの装着されている。
「よう、久しぶりだな」
そう言ってスバルはさっそくコクピットに座り操縦桿を握る、収容される1年ほど前から乗っていなかったので乗り込むのは約2年ぶりになる。
昨日乗った機体より遥かに握りやすい操縦桿とフィットする座席がスバルを迎え入れるように感じさせた。
さっそく電源をいれエンジンをかける…が機体はエンジン音どころか操作モニターすらつかない状態だ、
「2年もほったらかしだったからな」
スバルはコクピットから降りてBAの点検を始める。
「エンジンはボロボロ、電気系統は切れてるし、なんだこの配電盤…こりゃかなり大きな修理が必要だな、パーツも新しくした方が良さそうだし、錆びもところどこにある」
一通り点検を終え、スバルはガレージから出て工房の方に戻る。
「じっちゃん、紙とボールペンかりるぜ」
スバルは紙になにかを書き始める、豊吉はエンジンの下から顔を出し
「ん、誰じゃお前は金ならない、とっ…」
「だから、スバルだよスバル」
スバルはさっきと同じことを言おうとする豊吉の言葉に被せるようにしながら言う。
「なんじゃスバルか」
「じっちゃん、カーチェスのやつはどこ行ったんだ?」
「む、カーチェスなら上で寝とるぞ」と言うと豊吉は大きな声でカーチェスの名前を呼んだ。
するとしばらくして錆びた鉄製の階段からスバルより若い少年が降りてきた。
「何ですか師匠、昨日遅かったんですからもう少し…ん」寝起きの髪をクシャクシャしているカーチェスの目に見覚えのある男の姿が写った。
「すっスバルさん」
カーチェスは半分まで降りていた階段をまるでスキージャンプかのように飛び、スバルに駆け寄った。
「いつ、戻ったのですか?」カーチェスはかなり興奮気味にスバルに話しかける。
「ほんの1時間前に帰ってきたところだ、それよりお前見ない間にずいぶんでかくなったなぁ」
「そりゃ成長期ですから」とカーチェスはスバルにVサインをして言う。
「いつまでこちらに?」
「ここにはBAを取りに来ただけだからな」
「じゃあすぐにでていくんですか?」
カーチェスは少し寂しそうな顔になる、変幻自在に変わるカーチェスの表情を見てスバルは優しく答える。
「いや、どうもBAの調子が悪いからな修理しようと思って、だからそれまではいるつもりだ」
カーチェスの顔に笑顔が戻る
「ほんとですか、それなら修理手伝いますよ」
「わるいな、まあそのつもりで呼んだんだけどな」というとスバルはさっきの紙とBA闘技場で手に入れた賞金をカーチェスに渡し
「ここに書いてあるパーツを買ってきてくれ」と言った
「了解です」
とカーチェスはすぐに工房を飛び出していく。
それからスバルは工房にある工具をいくつか選び豊吉に持って行くとつげガレージの方へ戻って行った。
ガレージに戻ったスバルはまず工具をいくつか腰につけ、BAによじ登り頭部のパーツから順に取り外し始めた。と言っても取り外していくのは使えそうにないパーツがほとんどであとのパーツは骨格が崩れない程度に外していく。
小一時間が経った、やっとのことでパーツを全て外し終えたスバルのもとにカーチェスが多くの部品を台車にのせて運んできた。
「悪いなカーチェス」
「いえ、これくらいどうってことないです、それよりこのパーツ、こんな短時間で全部外したんですか」
「ああ」とスバルは当たり前のように答える。
「やっぱり、スバルさんはすごいです」とカーチェスは目を輝かせる。
でたカーチェスの得意技とスバルは心の中で呟く。
昔からすごいものを見たときカーチェスは目をキラキラさせる、癖と言うか純粋にすごいものに感動できる彼の性格からくるものだ。
「あの僕は何をすればいいんでしょう」
そんな目で彼は尋ねる
「そうだなーとりあえず外した部品の中に修理して使えそうな物がないか見て修理できそうなやつは修理してくれ」と頼む。
「了解です」カーチェスはキラキラした目のままパーツの山に突っ込んでいった。
スバルはパーツを外されてやせたBAを見て
「すぐにキレイにしてやるからな」といった。
そんなスバルの目もまたキラキラ輝いていた。
今回も設定を少し。 開発者→BA開発者にもいろんな人がいます。設計士=機体の完成図を書いたりする人。整備士=機体の不備を調べ改善したりする人、メンテナンス。調整士→搭乗者の操作と機体の動きのズレを整えたりする人、最終確認の役割。(辞書みたいになってしまった。) 読んでくださった皆さん本当に感謝です。次話どうぞよろしく。