25.セサミ再び
燃料の残量が…なお話。
「あっ陸ですよ」
後部座席から身をのりだすカーチェスが指差す先には、まだかなり遠いがたしかに陸があった。海はスバル達のおかれている状況とは正反対で、穏やかに波打っている。
「よし、これならなんとかなる」
ラストスパートにスバルはアクセルを強く踏み込んだ、そのときリーマンが前を指差す。
「スバルンあれはなんだ」 そういわれた、スバルの目線の先には一機のBA、その機体はこちらに向かってきていた。
「あれは…」
スバルは目を凝らす、どこか見覚えのある暗い紫色でガチガチに装甲を固めたフォルム。少し考えるスバルだがすぐにその機体が誰の物かに気づいた。直後に機内通信でその男の気さくな声が響く。
「やぁスバル君」
その男は、はっきりとスバルの名を口にする。
「なんだ、知り合いか?
まさか!軍のやつ?」
「いや違うよ…
あんたセサミだろ」
スバルはすぐに通信を返す。聞き覚えのある声に内心ホッとしていた。
「ああ、そうだ」
「こんなところに、お届け物かい?」
「ハハハッ、まさか」
「そうかい、悪いが急いでるから話なら後にしてくれないか?」
「軍に追っかけられてるんだってね」
唐突にでたその言葉で機内に緊張が走った、セサミは相変わらずのしゃべり方だが今のスバルたちにとって、その言葉はタブーだった。
セサミの機体は前に立ち塞がっていたので、スバルはもしものための攻撃の仕掛け方、回避ルートを頭の中で考え始める。
「それが?」
「ほんとにレジスタンスなんだね、しかも手配レベルもそうとうだ」
「そんな話はいい!言いたいことがあるんなら、さっさと言いな、こととしだいによっちゃあんたを潰すことになるがな」
状況が状況なだけにスバルたちはかなり神経質になっていた。燃料メーターはかぎりなく0に近づいている。
「は?」
セサミは疑問の声をあげる。
「正直に言ったらどうだ?懸賞金が目当てなんだろ、やるならこい!」
残りの燃料を気にかけながら、戦闘態勢に入る。
「違うよ、誤解だ!僕はただ」
「ただ?」
スバルは半分苛立ちながら、操縦幹を握る手に力をこめる。
「君の仲間になりたい」
「は?」
今度はスバルが疑問の声をあげる。操縦桿を握る手からは一気に力が抜けた。
「つまり、君のレジスタンスに僕をいれてほしいんだ」
「そうかわかった!」
「ほんとかい!僕にできることならなんでもするから言ってくれ」
「わかった、ならすぐにそこをどけ!」
「え、あっああ」
そういってセサミが機体を横にずらすとその横を〈SDX〉がスッと通りすぎていく。
「まっ待ってくれよ、入れてくれるんじゃないのか」
「ふぅー、助かった」
「ギリギリですね」
「死ぬかと思った」
砂浜に降りた機体から3人は降り、しっかり地を踏みしめる。
そんな3人を見ながらセサミも機体をおろす。
「他にも機体に乗っていたんだね」
近づいてくる彼は笑顔だった。
「スバルン、こいつは誰なんだ?
てか…なぜスーツ」
「え〜っと、彼はセサミ、前の街で知り合った」
「セサミ・カーネルです、よろしく、それと彼は〈チャトラン〉」
そう彼は自分と自機の紹介をする。
「カーチェス・ストラムです」
カーチェスも自己紹介をする。
「リーマン・ホールソンだ、気軽にリマホルと呼んでくれたまえスーツ君」
続けて、リーマンも自己紹介をし、それぞれに握手をする。
「スーツ君?」
「人と手っ取り早く打ち解ける方法はあだ名で呼び合うことだ」
「…?」
「気にしないで下さい、セサミさん、リマホルさんは変わり者なんです」
「なんか、前にもこんなことがあったような…
いや、それよりカー君、変わり者とはどういう意味だ」
「だって変わり者じゃないですか」
「なっ!」
「よし、自己紹介はここらで終わりにして、セサミ!さっそくあんたに仕事を与えよう」
スバルは手を一度叩いて一区切りをつける。
「おぉー、何でも言ってくれ!」
「近くの街に行って、BAの燃料を買ってきてくれ」
「まかせろい」
セサミは喜びに満ちているように見える、自分の居場所ができるかもしれないという希望で胸が膨らんでいるのであろうか。
機体は飛び立ちすぐに見えなくなる。
戻ってくるまでには、さほど時間のかからない距離に街はあった、といっても時間はある、スバルは地図を広げ次の行き先の確認を、リーマンは手に入れた研究物質の入った箱を見ながらニヤニヤしている、カーチェスはすることがなくあたりをブラブラしていた。
「暇だなぁ」丁度カーチェスがその言葉を口にしたとき、エンジン音が聞こえてきた、遠くには給油パックを持った〈チャトラン〉の姿が見える。
「あっ帰ってきました」
帰ってきた機体はすぐに〈SDX〉への給油を始めた。
「セサミさんはこの機体をどこで?
特注機体ですよね」
「特注?そうなんだ」
「えっ知らなかったんですか!」
「そもそも、BAにはあまり詳しくない」
「なんか…すごく、もったいないです」
「元々、乗るつもりがなかったからね」
「でも、すごくいい機体ですよ」
「だろ!」
「ほんとに、分かってるんですか?
あっ!スバルさ〜ん、給油終わりました」
「よし、じゃあ行くか!」
「…以上だ…」
「…わかりました…」
「…あと、活動範囲を広げようと思う…」
「…了解、総司令官に伝えておきます…」
「…ありがとう…」
「…いえ、それでは以後の捜索も頑張ってくださいね…」
「…ああ…」
チームrisingがスバル達を捜索し始めて数日、いまだ、その行方をつかめないまま、地道な聞き込み捜査が多くなっていた。
「雷瞬!」
遠くから、聞き込み捜査に行っていたビルとオルガノが帰ってくる。
「どうだった?」
「まったくダメっす」
「これだけ捜してもいないのだから、もう国を出てると考えた方がいいんじゃないの?」
「そう思って、もう本部に捜索範囲の拡大については伝えてある」
「しかし、平賀組の隠れ家で押さえられなかったのは痛かったすね」
「着いた頃には、もぬけの殻だったものね」
「相手は月咲昴、軍の行動を把握してるやつだ、しかたない…とはいえ、このまま簡単に逃がしはしない、なんとしても捕まえる」
「気合い入ってるっすね」
「当たり前だ、次に行くぞ!」
「アイアイサー!」
そういうと、ビルは全力疾走とはいかないまでも、かなりのスピードで機体に向け走っていき、乗り込む。
「元気ね、若いからかしら」
そんなビルを見てオルガノのはいう。
「オルガノだって年はそうかわらないだろ」
「いいえ、6つも違うわ」
「そうか、だが年の差は関係なしに若いだろ」
「そうね…ってことはやっぱり男の子だからかしら」
「いや、オルガノも男だろ」
「あら、私はレディーよ、心とハートと心臓はね!」
「…」
自分よりでかい男がそんなことを言うものだから雷瞬は絶句する。男であるのは否定しないんだな、そう思いながら。
「笑いなさいよ」
「リーダー、オルーなにしてんだよ?
早くいこうぜー」
「…行くか」
「そうね」
なんとなくオルガノについて→性別は♂、年齢は26歳、長髪、長身、guardia通常部隊から昇格。現在は、チームrisingに所属。機体はソルファー。 ここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。