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24.エンドリーコウド後編

リングワンダリング   何も目印がない場所で方向感覚を失うと人は同一地点を円を描くようにさまよい歩くそうです。 今回は前回の引き続きエンドリーコウドでのお話

「悪い!」

 どこまで進んでも同じ景色、歩き始めて10分ほどたった頃スバルはそう言って足を止める。


「どうした?スバルン!」 スバルの前を歩いていたリーマンは振り返る、リーマンBOXをその手に持ち。

「話に夢中で方向感覚を完全になくした…」

 スバルはリーマン、カーチェスから目を反らす、頭の中はどうすればいいかでいっぱいになった。


「ハハハッ、そんなことかスバルン、

なら来た道を…も…ど…」

 笑いながら辺りを見回すリーマンだが、ようやく事の重大さがわかり、頬を冷や汗が伝う。


「きっ来た道どっちだ、スバルン」


「それが分かんねーから言ってんだろ!」

 2人は完全に我を失う、頭はどうするべきか、どうすれば助かるのか、それだけしか考えられなくなっていた。


「あのぅ〜」

 2人とは対称的にやけにカーチェスは落ち着いて、焦る2人に話しかける…

がそんな言葉は2人の耳には届かない。


「どうするんだよ、スバルン!?」


「とりあえず切り株を探すんだ、そうすればなんとか…」

「こんな変な木しかないのに何とかなるのか?」

「分からん!」

「それにその方法はあまりあてにならんらしい」

「そうなのか…じゃあ、どうすんだー!」

 スバルの声は虚しく響き、カンデロートに吸収されるように消える。喋るごとに焦りは増すばかりで解決法は一向に思いつかない。

「あのー」

 依然カーチェスは落ち着いた様子だが、やはり焦る2人の耳には届かない。


「とりあえず、かんで…」

「バカ…もし逆方向に行ったら、一生でられんぞ」

「スバルさん、リマホルさん…」

 あまりに落ち着きのない2人に半分呆れ気味になるカーチェスだがそれでも諦めず2人の名を呼んでみる、だが2人の耳には届かないった。


 と、そこで少し冷静になったリーマンは真剣な面持ちでいう。

「スバルン…男には一生に一度、大きな選択を迫られる時があるという…それは間違いなく今なのだ、私はあちらが出口だと思う」

「そうだな、ここで止まっていても、なにも始まらない、俺もそっちが出口だと思う」

 いつもならツッコミを入れそうなスバルもその考えに協賛する。


「カー君は?」


「僕はあっちだと思います…確実に」

 カーチェスは2人とは逆方向を指差す。

「よし、多数決でこっちだな」

 スバルとリーマンはついに動きだそうとする、そこでようやくカーチェスが声を荒げる。

「もういいです!僕はあっちにいきます」

「なに怒ってるんだカーチェス、こういうときに仲間割れは危険だ」

「だってスバルさんもリマホルさんも僕の意見は聞いてくれないじゃないですか」

「それは悪かった、さあ意見を」

「…」

「なぜあっちだと?」

「僕…感覚でだいたいの方角がわかるんです」

「どういうことだ?」

「小さい頃から、道に迷ったこととかがないです」


「それはつまり絶対音感ならぬ絶対方向感覚か!」

「そんな感じです」

「確実か?」

「ほぼ100%分かります」

「でかしたぞ〜、カーチェス」

「よし、早速出よう」

「…カンデロート、採取しなくていいんですか?」

「おお!そうだった…さすが方角の分かる人は落ち着いてらっしゃる」

 リーマンはおちょくるようなしゃべり方でリーマンBOXのふたに手をかける。


「あの〜もしかして、信じてないんですか」

 カーチェスはジーっと疑いの眼差しを向ける。

「信じてるさ、信じてる、でスバルンこっちでいいんだ」

 カーチェスの言葉を軽く流しリーマンは元々行こうとしてた方を指差す。


「リーマン茶化すな!カーチェスほんとなんだよな?」

「ほんとです」

「信じてるよ、俺はな」

「スバルさん…」


「あぁ〜…悪かった、ちょっと疑ってた、だがこの状況で嘘をつく意味もないしな…

私も信じるよ

さあ、採取するか!」




「よし」

「もういいんですか?」

「うむ、バッチリだ」


「じゃ行きましょうか」

 そういってカーチェスは歩きだす、そのあとをスバルとリーマンが追う、来たときと同じように代わり映えない景色が続く、だが少しずつ確実にカンデロートは薄くなっていった。

そしてついに…


「無事生還!」

 リーマンは両手を挙げていう、遠くに〈SDX〉が見える。

「カーチェスがいて助かったよ」

「すごいな、寸分の狂いもなしだ」

「えへへ」



「よし、スバルン、研究施設のあるところに連れていってくれ」

 ボートに乗り込みながらリーマンは言う。

「どこだよ」


「ん〜この近くだと…アマルシェのところぐらいしか思いつかん」

「アマルシェ?」

 とカーチェス、その後にリーマンは自慢気な顔をする。

「私の妻だ」

「えっリマホルさんって結婚してたんですか?」

「まあな」

 自慢気な顔はどんどん自慢気度を増していくような感じに変化していく。

だが…

「尻に敷かれてるけどな」 スバルのその一言にリーマンは固まる。

「しかも、今帰ったらかなり怒ってんじゃないか、犯罪者だからな」

 重しを乗せられたかのようにリーマンは、肩を落とす。スバルの言葉は幸せそうだったリーマンを一瞬にしてどん底まで突き落とした。

「やっぱ、止めよう」

「じゃあ、どこいくんだ?」

「それは…」



「よし、アマルシェのところで決定だな」

 スバルはボートのエンジンに手をかけるが、その手をリーマンの手が止める。

「ちょっと、まて!」

「なんだ」

「もし、アマルシェが怒ってたら助けてくれよ」

「助けてくださいだろ」

「なっ!研究してやらんぞ」

「無理矢理連れてくさ」

「ぐっ…………………………………………

助けてください」

「よろしい、じゃ行こうか!」


「どこにです?」

 2人のやり取りを見ていたカーチェスは、一段落ついたのを見て疑問を口にする。

「だからアマルシェのところだ」

「あっ、そうじゃなくて…そのアマルシェさんはどこにいるんですか?」


「あー、マヤサッサだ」

「マヤサッサ?」

「マニルエのフィアフィーデルア地方にある町だ」

「てことは帰国ですね」

「つってもお前の生まれた国はここだけどな…」


「そうでしたね」


「早く行こう」

「急かすなよリーマン、そんなにアマルシェに会いたいのか」

「まぁ、一応、妻だしなそれにアマルシェはほんとは優しいんだ、謝れば許してくれる」

「ほんとに」

「…はずだ」






「ふーやっぱりこんなかは落ち着くな…」

 一番に〈SDX〉に乗り込んだスバルは座席に腰掛けくつろいでいた。

「おっおちるぞ!スバルンも助けろ」

 海に止まっている機体は案外揺れる、登るのは一苦労だった。

「リマホルさん!がんばです」

 リーマンを手伝いながらカーチェスも登る、後少しでコックピットに手が届くというところで、スバルが焦りながらコックピットから顔をだす。

「なんだスバルン!もう助けは必要ない!控えおろー」

「やばい」

 そう言ってスバルはリーマンの手を持ち、強引にコックピット内へ引っ張った、その勢いでリーマンは座席で顔面を強打する。

「ぐおっ!なっ…何を…する」

「カーチェスも早くしろ!」

「無視かスバルン!」

 機体に乗り込んだカーチェスは焦るスバルを見て言う。

「どうしたんですか?」

「まずった!」

 そういいながらスバルは機体を起動させた。

「何をまずったのだ?」

「ここなら安全だと思っていたが…どうやらそうではなかったらしい」

「どういうことですか?」

「よし機体は動く!

さぁお前ら、神様にでもお祈りするんだな」

「だから何をだ!」

「燃料がない!」

「?」

 スバルがそう言うのでカーチェスが燃料メーターを見るとメーターの針は0と1の間を指していた。

「まっまずいじゃないですか!」

「だからそう言ってるだろ!」

「なるほど、natural-blue現象…これだけの微量にも関わらず燃料を持っていくとは、ふむふむ」

「感心してる場合じゃないですよ!」

「そうだ、この残った燃料で海を渡らないといけないからな、飛ぶぞ!」


 飛沫をあげて〈SDX〉は飛び立つ。







一難去ってまた一難。  ここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。

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