23.エンドリーコウド 前編
今回はスバルのいろいろ
「また随分遠くに止めたなスバルン」
「いくらなんでも、ここはまずいですよ、錆びます」〈SDX〉が止まったのは海だった、脚部の半分は水に浸かっていた。
「動かなくなるよりましだろうが、行くぞ!」
といってスバルは座席右斜め後ろ下の収納スペースからゴムボートを取り出しカーチェスに渡す。
「ああ、このための物だったんですね…」
スバルはゆっくりとコックピットを手動で開ける、コックピットを開けたとき、3人の目に映った、霧に覆われた島、霧といってもただの霧ではない。
「青い霧…綺麗です」
カーチェスは目の前に広がる景色を見て言う、淡い青は美しく幻想的、そして神秘的、この景色を見れば綺麗と自然に口からこぼれるのも無理はない。
「これがnatural-blue現象の名前をつけた理由、実のところ私も見るのは初めてだ」
「やっぱり、この島はnatural-blue現象に関係してるんだな」
「ああ、関係してるじゃない、こりゃ100%、カンデロートだ」
「カンデロート?」
聞き慣れない言葉にカーチェスが反応する。
「あの青い気体のことだ、natural-blue現象はカンデロートによって起こる現象全てを定義付ける言葉だ、定義づけたのは俺だが…
つまりこの島自体が
natural-blue現象を引き起こしてると言うことだな」
「いくぞ!
カーチェス、機材を袋に詰めてボートに積んでくれ」
ボートから降り島に立った、そのとき3人ともが感じた、ここはただの島じゃないと。機体から見るよりもさらに霧は青さを増していた、そこにある木も草も普段見る物とは違う形をしている。
「ここが…エンドリーコウド、なんか肌がピリピリします…」
人としての本能がここは危険だ、と警告してるように思えた。
「ここは、まだましだ…奥に行けばもっとすごい」
スバルはカーチェスの横でカーチェスと同じように目の前に広がる森を見て言う。
「スバルさんは中に入ったことあるんですか?」
「二回だけな…軍にいたときの話だ」
「ホントにすごいところです、電気系統が混乱するのもわかる気がします」
「ああ」
「…」
スバルは島に降りてから黙ったままのリーマンに近づいていく。
「どうした、リーマン」
黙っているように思えたリーマンだが、近づくと何かをずっとぶつぶつ唱えている。
「カーチェス!」
リーマンは急にカーチェスの名を呼ぶ、いつものようにカー君ではなく、はっきりカーチェスと
「はい!」
「もってきた機材を運んでこい」
その目はキリッと開き、まるで獲物を狩る猛獣のように思える、普段の姿からは想像もできない、その姿にカーチェスもその言葉を漏らす。
「まるで別人です」
「あれがやつの正体かな」 軍の時からリーマンを知っているスバルでさえも、カーチェスと同じように思えた。
「リマホルさん!」
リーマンに言われ道具を取りにきたカーチェスは、袋を開けたとき異変に気付く。
「どうした!」
「機材がなんか変です」
機材は電源をつけていないにも関わらず、異様な反応をしめす、リーマンはそれを見て言う。
「これがnatural-blue現象だ」
「これが…
電気系統の混乱!」
「チッ!こうなることを見越して、いろんな機材を持ってきたがほとんどダメだな…
電気機器意外のもほとんど狂ってる」
袋から取り出した機器は、ほぼ全滅であった。
「これじゃ、研究できないですね」
「いや、これだけでも、解ったことはある」
「解ったこと?」
「やはりnatural-blue現象は電気系統の混乱を起こすだけじゃないってことだ、他の原理で動く機材もダメになった、それに燃料を吸収する効果も持ち合わせている」
「でも研究は出来ないですよ…」
「大丈夫だ…元々ここで研究するつもりはない
とりあえずもっと奥に行こう、ここじゃどうやらカンデロートが薄い」
「この島は方向感覚をすぐに失うから、あまり奥まではいけないぞ」
「行けるとこまででいい、ここより濃いカンデロートがあるところまで行ければな」
「そこまで、行ってどうするんですか?」
「採取する」
「どうやってです?」
「これを使うんだ」
そう言ってリーマンは袋から四角い箱のようなものを取り出す。みためは鉄の塊。
「それは?」
「カンデロート、採取のために作った物だ、名付けてリーマンBOX
おそらく、これならカンデロートを逃がすことはない」
すリーマンのネーミングセンスについつは、さておいてカーチェスはさらに質問を続ける。
「いつ作ったんです?」
「作ったというか、気体を閉じ込める箱に電池を入れただけだ」
「それで大丈夫なんですか?」
「さあ」
「さあって…」
スバル達は腰ほどまで、伸びた草を掻き分けながら島の奥へ進んでいく、3人の草を掻き分ける音しかなく、生命を感じることはできなかった。終始無言だった3人だが唐突にリーマンは口を開く。
「前から聞いておこうと思ってたんだが、なぜスバルンはそこまでnatural-blue現象にこだわる」
「そう見えるか」
「普通、人の研究のためにここまでする、やつはいない」
「なんかしたか?」
「ぶた箱に入れられるのを承知の上で俺の研究のために上司をなぐったり、国反所を襲撃したりだ」
「大したことじゃない」
スバルはリーマンの三度の質問に対して素っ気なく返す。あまり言いたくないことなのだろうか、とリーマンは思ったがそれでも聞いておきたかった。
「大したことだっての、少なくとも私はそこまでしない…
教えてくれたっていいんじゃないか?
…
まぁ話したくないなら、もう聞かないが…」
3人はまた沈黙の中を歩く、だがすぐにスバルは喋りだす、それに合わせて歩みも少し遅くなった。
「スカルオート近郊大爆発事件が理由…」
簡潔に言うスバル、リーマンはその言葉の意味を少し考える、そんなリーマンを見て言葉を発したのはカーチェスだった。
「スカルオート近郊大爆発事件って、BA大戦を終結に結びつけたやつですよね…スカルオート近郊の平野で戦っていた、guardianの前身、世界連合軍と統合レジスタンスを謎の大爆発が襲い双方に合わせて三千人近くの死者をだしたって言う」
「ああ、リーマン…あんたはそれがnatural-blue現象に関係してるっていったよな」
「まぁ確証はないが、ほぼ確実に関係していると私は考えている、爆発の前に青い霧を見たとの報告もあるし、生き残った兵の証言が私の理論とかなり近かかったからな」
「俺はあれが人工的に起こされたことじゃないかと思ってる」
スバルは真剣にそう言うがリーマンは嘲笑うようにして言う。
「natural-blueを人工的に制御し敵の動きを止めた上での爆撃、事実なら恐ろしい兵器だな
…で爆発事件がnatural-blueと関係してると解ったとして、お前はどうするつもりなんだ」
「別にどうもしないさ、知りたいだけ、
ただ、もしそれが人工的な物なら、それを使ったやつを殺してやりたい」
「どうだろうな…正直、人工的に起こせるとは思えない、レジスタンスにarkレベルの研究機関があれば別だがな」
「別にレジスタンスが起こしたとはかぎらない」
「お前、まさか軍がnatural-blue現象を起こしたと」
「なに、可能性の話だ」
「軍に爆発を起こす理由がない、それに当時guardianは成立していないんだ、だからarkのような研究機関も存在しない」
「arkまではいかなくてもarkに匹敵するくらいの研究機関なら世界中探せばあったはずだ」
「理由は?自らの部隊を壊滅させてまで爆発を起こしたんだ、それなりの理由があると考えてるんだろ」
「guardianを作るため」
「は?」
「当時の世界連合軍は爆発をレジスタンスの最終兵器と発表した、無論今考えればあり得ないことだがな、だが当時の世界軍はそう考えその結果、常にレジスタンスに対抗する組織が必要ってことで多国家集合軍、guardianができたんだ」
「軍が軍を作るために何人もの仲間を犠牲にしたってのか?」
「同時に多くのレジスタンスを消し去った、それにguardianができ、レジスタンスに圧力をかける組織ができれば、いずれでる多くの犠牲を無くせるかもしれない」
「ありえないだろ、誰がそんなことするんだ?」
「多くを救うためには少しのぐらい犠牲は苦にしない、そんな男を1人は知ってる」
「瀬戸総一郎か!」
「ああ…結果、軍総司令としてレジスタンスから多くの人々を守り、英雄となった」
「事件で死んだ人を踏み台にして…か」
「まっ俺の勝手な想像だがな」
「今までにない面白い考えだ…だがありだな」
「あり?」
「根拠もな〜んもないが、俺もその考えに一票入れるぜ、無論俺より先にnatural-blue現象を見つけた奴がいたなんて考えにくいが、だが瀬戸のやろうなら、そんなことしそうだしな」
「じゃあ僕も一票で…間違いでもいい、でも可能性があるなら真実を解き明かさないと」
「たく、変わったやつらだ」
「…もう1つあるんだ、こだわる理由が」
「もう1つ?」
「むしろ…こっちが本当の理由
スカルオート近郊大爆発事件で俺の両親は死んだんだ、だから誰か復讐の相手を探してるのかもしれない」
「スバルン…
なら、なおさら解き明かさないとな、そして瀬戸のやろうをとっちめる」
「まだ瀬戸総一郎がやったと決まったわけじゃないだろリーマン!」
「いいんだとも、元々あの野郎はきにくわなかったんだ、むしろ無実でもぶん殴ってやりたいぐらいだ」
「リマホルさん、無茶苦茶です、でも…僕もその野郎はぶん殴らないといけないと思うです」
「たく、お前らは…」
その言葉の後にスバルは言った最高にいいやつらだなっ、と聞き取れないような声量で。
「えっ今なんて言ったんだスバルン?」
「別に」
「またまた、僕は聞こえましたよ、さぁもう一度大きなこえで!」
「うるせぇ、お前らはすぐそうやって調子に乗る、もう絶対言わねー!」
最高にいいやつら、その言葉はスバルの心の底からの言葉だ。だからこそ恥ずかしく、照れがあり、同時に仲間が大切だと思えた。
だが…このときスバル達は気付いていなかった、ある重大な事実に…
BA大戦→世界連合軍とレジスタンスによるBAを使った、過去最大の戦争、ロジリックの争乱(ロジリックは前話登場のクリスマスタウン旧名)からスカルオートの大戦までの約1年間の戦争をさす。スバルの両親は世界軍の隊員として活躍したがスカルオートの大戦で死亡。 こここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。