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21.カーチェス・ストラム

ペンネームを変更しようと思っています。ニュートリノになると思います。              今回はカーチェスの話。 個人的好きなお話。

 エンゼルバセス王国をでて数時間、ノーサイドウィッジ帝国に入りエンドリーコウドを目指していた〈SDX〉はいつもより低い高度をゆっくりと飛んでいる。


 後部座席は2人で座るには狭く、リーマンがイスを陣取っていたのでカーチェスはスバルの横でただ外を見ていた。

 そこでカーチェスは鼻歌を歌っていた、スバルにはその歌がなんなのかわからなかったがその鼻歌に耳を傾ける。


「カーチェス、よく見えるか」

 鼻歌を止め、えっ!と言うカーチェスはこちらを向いた。

「何がですか?」


「ちょっと降りるか」

 カーチェスの問いかけに答えずスバルは言う。


「あめ…降ってますよ?」

 カーチェスが言うように外は霧のような細かい雨が降っていた、曇っているのでそこに見えるはずの太陽も見えない。




 降り立ったのは小さな村が見渡せる丘の上、木でできた建物がポツポツと建っているのが見える。

〈SDX〉を降りるのはスバルとカーチェスだけ、なぜか上機嫌なリーマンは

「雨、降ってるから」と機体に残った。



 機体を降りてから、スバルは頭をかいたり、辺りをキョロキョロ見回したり、なんだか落ち着かない様子でいる。


 丘の上には大きな木があったので、雨に濡れる心配はしなくていいようだ、雨が強くならない限りは。


「さっき歌ってた、歌は何て曲なんだ」

 不意にスバルはカーチェスに話しかける。


「僕、何か歌ってましたっけ?」


「機内で鼻歌…」


「ああ…

青い夢

って歌です。

歌ってる人の名前はわからないんですけど、昔ラジオで一度聴いただけなのに、なんだかずっと忘れずに心に残ってて…まるで昔から知ってるみたいに」


「そうか」

 スバルは一層そわそわし始める。


「どうしたんですか?」

「なにがだ?」


「なんか、今日は様子がへんですよ」


「そうか?おろはいたって普通だと思うが」

「おろ?」

カーチェスは首を傾げる。

「俺はいたって普通だ」

 とスバルはすぐに訂正する。

「そうですか」



 少しの間沈黙が続く、スバルは何かを考えているように遠くを見ていた。


 カーチェスは、というと退屈そうに地面をいじりだし、また同じ鼻歌を歌い始める。



「そういえば、スバルさん」

 カーチェスは砂いじりと鼻歌を止めスバルの方をみる。

「なんだ?」


「リマホルさん、高所恐怖症、治ったんでしょうか?」

「たぶん、natural-blue現象のことで頭がいっぱいなんだろ」

 とスバルは自分の考え述べる、おそらく実際のところもその考えで間違いはなかった。

「そうですか」

 カーチェスも納得する、というよりも、様子が変なスバルのことの方が気にかかっていた。


「ああ…」



 スバルはまた遠くを見るカーチェスも砂いじりを始めた。



「…」


「カーチェス!」

 急にスバルは大きな声を出す。


「はい!?」

 カーチェスはびっくりした顔をする。


「大事な話がある」


「大事な?」




「…」



「…」




「……」




「…スバルさん?」


「やっぱ止めとく」

 ふーっ、と一息吐き出しそう言った。

「えっ…そう言うのってすんごく気になります」




「……」


「…」




「そうだな…

言わないのもあれだしな…

カーチェス…

ここは…




お前の生まれ故郷だ」


「えっ…?」


「この村はお前が生まれた村なんだ」


「本当ですか…?」


「ああ、本当だ、じっちゃんが言ってた」


「ここが…僕の…」


 カーチェスは目の前に広がる村を見渡す。そこには人の姿はないが煙突からでる煙から確かに人の気配を感じる、と同時に雨が降っていなければ外は人で賑わっていたのだろうか、と思う。


「スバルさん」

 カーチェスはスバルを見つめる。


「ああ」

 とだけスバルは言った、カーチェスは頷き、丘を下っていく。




 ゆっくりと〈SDX〉に向かうスバル…

「スバル〜ン、カー君は〜?」

「ん…ああ、村に下りていったよ」

「ふーん、そうか」



〈SDX〉に乗り込みしばらくしてスバルが口を開く。

「戦争孤児なんだ」


「なんだぁ〜いきなり〜」

 座席に浅く座りダラーとなっているリーマンは体勢と同じようにだらけた声で言う。


「カーチェスの話だ」

「よっと、カー君が…」

 リーマンは座席に深く座り直す。


「スカルオートの大戦の前だよ、カーチェスが家に来たのは、俺が三歳のときだった、軍人だった両親が連れて帰ってきたんだ」


「そうか…

ここがカー君の故郷?」


「ああ」


「大戦前からノーサイドウィッジは小さな紛争が各地で起こってたからな、この村だって被害にあうさ」


「言うべきだったんだろうか」


「何をいまさら」



「昔、カーチェスに戦争孤児だって、ことを話したとき悲しそうな顔をしていたのを覚えてる

あいつは…


それでも僕はスバルさんと師匠の家族です


って言ってた、今でもそれが正しかったのかわからない、知らない方が幸せなこともあるんじゃないかって思うこともある」


「スバルン…

…知らない不幸だってあるさ、それにカー君には知る権利があるはずだろ、幸か不幸かなんてスバルンが深く考えることじゃないと、私は思うぞ」


「そうだろうか」

「そうさ!」

 それだけ言うとリーマンはまたダラーとした体勢になり顔の上に雑誌を置く。







 雨のせいか、人があまり見えない村、家の中には明かりが見える。

「カフェ、青空」

 カーチェスは看板の文字を読みドアに手をかける、中からはラジオだろうか、音が漏れていた。


「いらっしゃい、…あら」

「どうも」


 店に入ると40歳ほどの女性がいた。店内には木製の机と椅子が置いてあり、窓際には小さな、ステレオが置いてあった。カーチェスはカウンターテーブルの方へゆっくり歩いていく。


「珍しいわねぇ、どこから来たんだい」

「旅の途中でして、いろんなところをまわってるんです、わかりますか?」


「ええ、ここは村の人以外ほとんど使わないからね、他所から人が来るとすぐわかるのよ」


「そうですか」


「あなたお名前は?」

「カーチェスです」

「私はトナミよ、よろしく」


「よろしく」

 とカーチェスは笑う、それにつられて、トナミも笑う。


「コーヒーでも入れましょうか?」

「はい、ブラックで」

「ブラックでいいの?」 「甘いのは苦手なので」

 カーチェスは椅子に腰掛けながら言う。

トナミはコーヒーをつくる機械だろ物のレバーに手をかける。




「雨、止まないわね」

 そう言いながら女はコーヒーをテーブルに置く。

「そうですね」

 カーチェスは目を窓に向ける、雨はさっきより強く降っていた。


「あっこの歌」

 カーチェスの耳にステレオから音楽が届く、さっきとは違う曲が流れていた。

「知っているの?」


「はい、青い夢ですよね」

 その綺麗な歌声は雨の音が気にならないほど、すんなりとカーチェスの耳に入ってきていた。


「あらー、なんだか嬉しいわぁ」


「え?なぜ?」


「この歌、歌ってるの

シャーリーって言うんだけどね、この村の出身なのよ」

「そうなんですか!」


「ええ」


「シャーリー…」


「そういえば、あなたシャーリーにどことなく似てるわね、目元なんてそっくりだわ、いつも目をキラキラさせて、でも雰囲気はシャーリーの旦那さんに似てる」


 カーチェスはコーヒーを啜り、そして落ち着いた声で言う。

「その話、もう少し聞かせて頂けませんか?」


「その話?シャーリーの?」


「とその旦那さんの話」


「えっええ、もちろん

何から話しましょうか…

彼とシャーリーと私は幼なじみなの、小さい頃は私と私の旦那をいれて4人でよく一緒に遊んだわ」


「どんな人だったんですか?」


「シャーリーはとってもお転婆で、考えるよりまず行動って子だったわ、私達はいつもそれに振り回されていてたわね、特にイースは」


「イース?」


「シャーリーの旦那さんよイースは大人しい性格だったけど面倒見が良くていつもシャーリーの一番そばにいた、何をするか分からないシャーリーが心配だったみたい」


「イース…」


「シャーリーが歌手になるって言い出したのは18歳のときね、ほんとはもっと小さい時から言ってたんだけど、本格的に努力し始めたのはそれぐらいのときよ」


「イースさんは?」


「イースは医者を目指していたわね、分厚い本をよく読んでいた記憶があるわ、最終的には軍医になっていたわ、時代も時代だったから…」


「BA大戦の時代?」


「いいえ、イースは大戦の前に亡くなったわ、シャーリーもね、この辺はBA大戦前から小さな争いが頻発していたの

だから軍医になってこの国を走り回っていた」


「…」


「シャーリーの歌が売れだしてきた頃、2人が結婚して、子供ができた、その1年後、その子の誕生日を祝うため村に戻ってきた時にレジスタンスと軍の衝突があった、この村の周辺で…」


「それで2人が?」


「ええ、子供を守るようにして死んでいたそうよ」


「その子供は?」


「無事だった

確か、イースの知り合いの軍医の人が引き取ったみたいだけど…詳しくは分からないわ」


「そう…ですか…

あの…その子供の名前は?」

 カーチェスはトナミのことをジッと見つめる、トナミは少し考えたあと口を開いた。

「ごめんなさい、忘れちゃったわ」


「いえ、いいです

あの…仲間を待たせているので僕はそろそろ」

 とカーチェスは立ち上がる。

「あら、そお」


「コーヒーの代金は?」

 ポケットから財布取り出す。

「うちは一杯目はただよ」 そういってトナミは指差す、その方向には紙が貼ってあり、一杯目無料と書いてあった。


「でもコーヒー常連にかぎりって書いてありますよ」

 カーチェスの言うように一杯目無料の上に、コーヒー、常連にかぎりと書いてあった。


「いいのよ、特別サービス今日は話しができて楽しかったから」


「ありがとうございます、僕も話しが聞けてよかっです、それでは、行きます」


「ええ、ありがとう」


 カーチェスはドアに手をかけたが振り返る。

「あっあと、シャーリーさんの旦那さんの名前、もう一度聞いてもいいですか?」


「イース…イース・ストラムよ」


「イース・ストラムにシャーリー・ストラム…」


「あなたシャーリーのファン?」


「そんなところです…コーヒー美味しかったです、それでわ」


「ええ、よかったらまた来てね、今度はお仲間さんも連れて」


「はい、是非」






 カーチェスが外に出ると雨は上がっていた、コーヒーをただにして、商売としてやっていけるのだろうか…などと考えながらカーチェスは丘への道を上がっていくと、〈SDX〉の脚部にスバルが、もたれかかっているのが目に入る。


「よう」

 カーチェスに気づいたスバルは手を上げ言う。


「スバルさん」


「なんだ?」


「ありがとうございます」

「なっ何がだ?」

 だがカーチェスはスバルを見てただ笑いかけるだけだった。


「…?」

「あっ見てくださいスバルさん、虹ですよ」

 そこには今まで見たこともないような綺麗な青空にくっきりと虹が架かっていた。

 カーチェスは深く息を吸い込み耳を澄ます




雨上がり、青い空


虹架かる青い空


もし私に子がいたのなら


あの丘に登り


この景色を見せてあげたい


曇一つない、綺麗な空を


それが私の青い夢



 小さなステレオからは、ただ綺麗な声が響いていた…



前回の続き       ケニオンカルバ国→小さいがguardianにも匹敵すると言われる、ユニットと言う部隊を所有する、軍事面の豊かな国        イスタニア共和国→世界最大の面積と人口をもつ国、今も毎年のように新しい資源が発見され、軍事力も上がり続けている国。   こここまで読んでいただきありがとうございます。次話もよろしくお願いします。

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