19.レッグブースター
平賀組を力でねじふせる…仲間にするお話。
「さぁこいよ」
とスバル、〈SDX〉とそのまわりには平賀組のBAが数十機。
「どうした、来ないのか?なんなら全員で来てもいいんだぜ!!」
スバルは、機体の外部スピーカーに繋がるマイクに向けて言葉を叩きつける。
「親父、俺がやる!」
機体を一歩前へ進めたのは平賀秀一が操縦する〈怪力丸〉だった。
「どっからでも、かかってきな」
余裕のあらわれなのかスバルは〈SDX〉でファイティングポーズをとり、その場でボクサーのように軽いジャブをくりだす。
「ニトロを使われると厄介だが、地上戦ならニトロは使いにくいはずだ、無理やり地上戦に持ち込む」
〈怪力丸〉は腰についたビームナイフを抜き、前に向けて走り出す。スバルはブースターを起動させ今にも飛び上がろうとするが
〈怪力丸〉は〈SDX〉の少し上を狙い肩部についたレザーを放出する。
「飛ばせない!」
「地上戦なら勝てるってかなめられたもんだ」
〈怪力丸〉はそのままスピードを上げ〈SDX〉に斬りかかろうとする。
その時だ〈SDX〉の左足側面から火が吹き出る
海上にはチームrisingの機体が三機、飛行中であった。
「…こちら雷瞬、本部へ報告、ただいまチームrisingはデロイト地方に向け飛行中、あと数分で到着
到着後は近くの街で一泊したのち平賀組の本拠地へ向かう…」
「…了解、次回の連絡は目的地到着のときにお願いします…」
「…了解!…」
「リーダー、陸だ、新大陸発見だぁ、ついにやったぞおー」
とビルは精一杯ボケてみるが
「そうだな」っと雷瞬に軽く流される、オルガノはリーダーにボケは通用しないわよと思いながら自機のなかで笑っていた。
そして雷瞬はさっきのボケがまるでなかったかのように喋りだす。
「オルガノ、ここから一番近くの街を調べてくれ」
「えぇっーと……」
そう言いながら、機内の後ろに手をのばし地図をとる。地図と言っても紙ではなく、小さな電子辞書のような形のものだ。
「一番近いのはグロズニーね、ここによらないと次は…ルノーアまで一泊できるような街はないわ」
「よし、グロズニーに行こう」
「了解!」
「イエッサー!」
「もう終わりかい?」
「強い!」
秀一は倒れていく機体の中で言う、〈SDX〉を見て力の差を実感しながら。
「すっすごい!」
平賀組のリーはそんな言葉を口にする、おそらくその場にいた誰もがそう思ったであろう。
「着地ブースターか、なんてやろうじゃ!ニトロばかり使っておるから、空中戦主体の機体じゃと思っておったが」
みな、スバルの実力に度肝を抜かれたに違いなかった。
「カー君!」
周りの
「着地ブースター」という声に反応してリーマンはカーチェスの名を呼ぶ。
「何ですか」
「着地ブースターってなんだ?」
「レッグブースターのことです」
と当たり前のように答えるカーチェス。
「レッグブースター…
で、なんなんだそれ?」
「足の側面、爪先、踵についているブースターのことです、足の裏に作動スイッチがついていて、機体の着地と同時に発動するので、着地ブースターって呼ばれてます、足ニトロなんて言う人もいますが…」
「すごいのか、それ?」
「すごいもなにも、たぶんスバルさんぐらいしか使ってない機能ですよ、たぶん」
「なぜスバルンしか使わんのだ」
「他の人は使えないんですよ、操作が難しくて」
とカーチェスはいうがそのすごさがリーマンに届いてないのではと思い、話を続ける。
「レッグブースターは両足裏に3つずつスイッチがあって、重量のかけぐあいでブースター出力、着地時の足裏、接地面の違いでどのブースターが作動するかが変わります」
「なるほど、つまり?」
「えっ…つまり…
右足の土踏まずあたりで着地すると右足の左側面からブースターが放出
爪先あたりで着地すると踵からブースターが放出されます」
「踵あたりで着地すると爪先からブースターが放出される」
「そう言うことです」
「だが、そんなことしたら機体が倒れるだろ!」
「だからスバルさん、しか使えないんですよ!!
スバルさんいわく
ニトロの3.5倍操作が難しいらしいです」
「やっぱスバルンってすごいんだな」
「そうです、すごいです」
「さぁ次こいよ」
またスバルはファイティングポーズをとる。
「いや、もういい、わしらは小僧、貴様の傘下に入ってやる」
スバルは機体から飛び降り大きな声で言う。
「ほんとにいいのかい?俺はいくらでも戦えるぜ」
すると電蔵も機体から降りる。
「ああ」
「親父、いいのか」
秀一も駆け寄る。
「秀一、お前が一番わかったじゃろう、こやつの実力が」
「正直…平賀組全員でかかっても勝てない、そう思った」
「そう言うことだ、月咲スバル」
「仲間になるでいいだな」
「うむ」
「よし、じゃあさっそくだが行こう」
「おい、guardianと戦うんじゃないのか」
秀一はスバルの口から出た予想外の言葉に驚いた顔をする。
「無駄な戦闘は避けたい、めんどくさいし」
「それはかまわんが、行くというのは、どこにいくんじゃ、普通の場所なら逃げたとてすぐに見つかるのが落ちじゃろ」
「大丈夫、軍にいたときに見つけた、いい場所があってな、あそこなら敵に見つかりにくいし、見つかっても戦闘になりにくい」
「そんな場所が…」
「あるんだよ、とりあえず軍の奴らが来る前にここを出たいから、準備をしてくれないか、できれば今日中に…」
「んむ、わかった…リー、皆に伝えよ」
「了解」
「スバルさん、上手くいきましたね」
カーチェスは駆け寄ってきていう。
「ああ」
「つくづく、スバルンという男は、恐ろしいな、いっきに数百人近くも仲間を増やすなんて」
カーチェスにつづいて歩きながら話すリーマン。
「もしかして、国反所を攻める前から、こうなることがわかってたんじゃ…」
「なに、たまたまだ」
とスバルは軽く笑う。
太陽は沈みかけていた。
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