10.戦いの次の日
スバルは19歳ですが、お酒は二十歳なってから。今回も軍での話。
翌朝スバルは軍の寮で目を覚ます。
「おう、起きたか」
声をかけてきたのはリグラだった。
「おっす、リグラさん」
やけに広い5人用の部屋、だが普段はリグラが1人で使っている。隊長の特権とういうやつだ。
「お前いつ帰るんだ?」
「みんなが起きる前に帰ろうかと」
特に決めていなかったが、とっさにそう返すスバル。
「昨日の晩飯うまかったよな」
「ああ、そうですね」 突然の質問になんだか嫌な予感がしてくる。
「ベットは寝心地よかっただろ」
「はい、とても」
リグラは不気味に笑う
「ものは、相談なんだがスバル」
「なっ何ですか?」
「お前、今日1日軍の訓練を一緒にやってかないか? そうすりゃ隊員の士気もあがって、いい一日になりそうなんだよ」 スバルの悪い予感は的中した。
「や、やめときます」
スバルの額から冷や汗が垂れる。
「そうか、止めとくか、50万セル…」
「えっ?」
「〈tyrant〉の腕つけんのに50万セルが飛んでったんだよなぁ」
スバルの額からさらに汗が垂れる。
「隊員の今月の給料カットかぁ〜、スバルが今日1日訓練していけば、特別講師って名目で上から金がおりてくるんだけどなぁ」
また汗が垂れる、リグラは怪しい目でスバルを見つめる。
「………………………
わ、わかりました。やればいいんでしょ」灼熱の太陽…
が出ているわけでもないがサイサルニーフォートは暑い、年がら年中、気温が高く、本日も3月だと言うのに気温は30度そこそこだ。
年中暑い原因は解っておらず現在も多くの科学者が研究中だ。
「お前ら、今日はこのBA隊訓練に特別講師がきているぞ」
スバルはリグラに引っ張られ前に出される。
「紹介しよう、
元guardianのエース、
そして元サイサルニー軍BA部隊の月咲昴先生だ」
30人近くいる隊員達から歓声が上がる。
「今日一日、我々の訓練に付き合ってくれるそうだから、聞きたいことがあるやつは何でも聞いておくように、以上、
じゃあ、いつも通り演習場、50週からだ」
「スバルさんまだ、いたんだ」
ヨハネがホークに話しかける
「昨日、リグラ隊長に
だいぶ飲まされてたからな、泊まって帰るとは思ってたが」
「お前ら、話してる暇があるならとっとと走れ、ただでさえイライラしてんのにさらにイライラさせるつもりか」
2人の後ろからスバルが近づく。
「大変っすね、スバルさんまた隊長に無理やり連れ出されたんでしょ」
「そうなんだよ、
ホーク、お前は昔から話のわかる、いいやつだなぁ」
午前はみっちりと体力ずくりから始まり筋力づくりでおわった。昔から変わらない訓練だ
「終わったやつは昼にしろ」
リグラの言葉で終わった人達は皆、施設内へと入っていく。
「まじ死ぬ」
久しぶりの訓練でバテバテのスバル…
「あのスバルさん質問していいっすか」
「あっ俺も」
そんなスバルに何人もの隊員が押し寄せる
「まてまて一人ずつだ」 対応に困るスバル
「姫乃ただいま戻りました」
そこに買い物袋をぶら下げた姫乃が帰ってくる
「おっスバルくん、大変だねー、はい」
そういって姫乃はアイスミルクティーをスバルに差し出す。
「おお、サンキュ、俺がアイスミルクティー好きなの覚えてんだな」
「当たり前だよ、昔は毎日買ってきてたんだよ、忘れないって」
「そうだな、姫はスバルのだけは忘れずに毎日買ってきてたよな」
そういってレチェットがスバルの横に座る
「何、いってんだみんなも買ってもらってただろ」
「…スバル、俺らは5本のコーラを30人で取り合いしてたんだぞ、今もまさにやっている」
スバルが振り返ると男どもがコーラの取り合いをしている
「姫はスバルのこと好きだから、こうやって甘やかすんだ」
「なっなに言ってんのバカ」
姫乃は顔を赤くして奥の椅子に座る。
「てかスバルは昔からモテすぎだ、男にも女にも」
ガラス張りの部屋の周りにはいつの間にか女性隊員がずらりといた。
午後からはペイント銃とペイントナイフを使ったBAの訓練だ。
「今日はスバルを相手に訓練するぞ」
「リグラさん…もしかして、30人、全員俺が相手するんですか?」
「もちろん」
「着地の影響をもろに受けすぎだ、それじゃあ次の行動が半歩遅れるだろ」
「ブースターは逃げるため、だけのものじゃないぞ」
「攻撃をよける動作が大きい、それじゃ反撃してもよけられる」
スバルの声が演習場に響く
演習場内の機体はペイント銃やペイントナイフの液でほとんどが真っ赤に染まっていたがスバルの機体はほんの一滴も液はついていなかった。
「さすがだな、跳ね返りの液までもついてない」 レチェットはリグラに話しかける。
「ああ、指摘も的確だしほんと、このまま軍にいてもらいたいよ」
「だが、あいつもやることがあるはずだ、明日は帰してやれよ」
「わかっとるよ、ほれ次はお前の番だ、しっかりしごかれてこい」
「後輩にしごかれるなんて、気分が乗らねえな」 演習場の周りはいつの間にかギャラリーで埋め尽くされていた。
翌朝、スバルは帰る準備をしていた。
「また、あの訓練に付き合わされたらたまらんからな、リグラさんが起きる前に行かなければ」
準備を終え、スバルがドアをあけた、ちょうどその時
「スバル!」
その声でスバルの背はピーンと伸びる。
「また、いつでも来てくれよ、隊員たちもよろこぶからよ」
また訓練に付き合わされるのではないかとビクビクしていた、スバルはその言葉でほっとする。
「はい」
そういい、スバルはゆっくりとドアから出て行く。
スバルが門からでるとそこには姫乃がいた。
「ずっと、ここにいたのか?」
門にもたれて座っている姫乃に、スバルはそう話しかける
「うん」
姫乃は眠そうにしながらそうこたえる。
「何時から?」
「四時から」
「もしかして、昨日も?」
「いたわよ、悪い」
不機嫌そうな顔になる
「いや、悪くないよ」
「もう…行っちゃうの?」
不機嫌そうな顔が今度は寂しそうな顔へと変化する。
「ああ」
「…次はいつくるの?」
「…わかんね、もうこないかもしれない…」
「…そっか、………………あのねスバル…………私さー、その、ね…」
「悪い、ゆうり…俺さ他に好きな人がいるから」
「そうだよね…、
って何、勘違いしてんのよ、別に私はお別れが言いたかっただけだし」
「そっか、ありがとう、じゃあな、姫」
「うん…じゃあね、スバル」
姫乃のその言葉のあとスバルは走っていった。
「ふられたな」
門の後ろからレチェットが話しかける
「盗み聞きなんて……趣味…悪いよ」
「泣くなよ、もっといい男なんて他にいるだろ」 レッチェットは姫乃の頭を撫でながらいう
「泣いてなんか…ないよ…泣いてなんか…」
姫乃は目を擦りながら涙声でそう言う。
「あっあのう」
そこに一人の少年が話しかけてくる
「なんだ」
きっ気まずい、と少年は心の中で思いながらも話を続ける。
「僕はguardian、チームeden所属、ゼロ・ショーサーというものです」
「がっguardian」
「実は現在このデロイト地方にてミッションを行っておりまして、ミッションが長期になりそうなので格納庫をいくつか貸していただこうと思い、まいりました。貸して頂けませんか?」
「とりあえず、隊長にきいてみるよ」
「感謝します」
「ねえ、レチェット」
「なんだ、姫」
「あのこ、カワイイね」
「乗り替え早いな」
そんな会話をしながら二人は施設内へと歩いていく。
ここまで読んでいただきありがとうございます。次回もよろしくお願いします。