エルフの巫女候補
それを見た瞬間、僕はノアを引き抜き、熊のような魔物に一閃、剣を振るった。
瞬時に熊のような魔物の首が落ちた。それを、呆然と見ていたエルフの子は、どすんっ、と落ちた時に我に返った。そして、
「あ、れ……?
わた、し………生きているの……どうして?」
きっとつらい目にあったんだろう。彼女は、そう小さく呟いた。その後に、彼女は「はッ」と今気づいたように目を丸くから、ゆっくり僕のもとに来て、
「あ…りが……とう」
という感謝の言葉に、
『声が小せぇぞテメェ!』
ノアが叫んだ。
◇
「ごめんね。驚かせちゃって」
「い、いえ。こちらこそ、すみません」
あの後、ノアを軽く叱って、河原に戻った。
「………」
無言で僕を睨んでいる女の子。彼女は、ノア。十の神話級の武器は、人型形態と武具形態がある。性能は、名前の通りだ。
ノアは睨んでくるが、正直怖くない。何せ、滑らか艶のある金髪に美しい宝石のような紅い瞳の童顔の美少女だ。全く怖くない!
そう考えていると、
「なんか…褒められているような、馬鹿にされているような」
おっと、勘が鋭いな。この思考は、これで終わりにして、
「それで、君はどうしてこの森に?」
「………」
その問いに彼女は黙り込み、三分ほど黙り込んでいた時、
「じゃあ、まずは私の事を話してから」
そう言って、深く深呼吸をしてから、続きを言った。
◇
私の名前は、ユズリア・ヴァールヴォン・ユグドラシル。
元々は孤児で、偶然孤児院に来た人がスキル鑑定人で、孤児院の子供たちのスキルをタダで受け持ってくれた。
その時に、私のスキルに世界樹の巫女の資格である、「世界樹の加護」があることが分かった。
そして、巫女候補の一人となった。
それからは、多忙な日々となり始めた。
巫女になるための試練に礼儀作法を学んでいたりと、大変だが充実した日々を送っていた。
しかし、三年たった頃のある事件が、私の人生を変えてしまった。
同族による、王種の復活。
それにより、国は荒れ果ててしまった。
王種の暴走に政治混乱で荒れていき、王種の攻撃により、巫女候補は私以外亡くなってしまったのだった。
その私も逃げるのが、精一杯で周りも見えず、気がついたらこの森にいた。そして、魔物に襲われて私は、ああ……私の人生はもう終わりか、と思っていたら、シンさんに助けられた。
これが、私がこの森にいる理由です。
◇
僕達は、ユズリアの話を黙って聞いていた。
彼女は、口が少ないので、繋ぎ合わせてだったが、どんな内容かは知ることができた。
「………………ねえ、これからどうするの?」
五分ぐらいたった後、僕はそう言った。
話を一旦区切ろうと思って、言ったのだが、彼女はその意図に気付いて、深く考え始めた。そして、意を決したようにして、こう答えた。
「どうか……私を貴方に……貴方達の旅に…お供させてください」
そう言って、深々と頭を下げた。
それに対して、ノアはシンの方針に従う思いでいた。そして、シン本人は、
「僕達は、この森で七年修行するつもりなんだ。それでも、ついてくるかい?」
「どの道……さっき貴方に助けられた命だから………お好きなようにお使いください」
つまりは、付いてくるということだ。その返事に、僕は息を吐き、
「じゃあ、早速修行だ」
「はい!」
そして、僕達の旅に新しい仲間が加わった。
世界観紹介
王種とは
十数種いる魔物の頂点。海のリヴァイアサン、地のベヒーモス、空のシズが有名。ユズリアの国を暴走したのは、邪竜ファブニール。