第1章 始まりの交差 -1-
2007/03/20/1300
冬雪視点
区立炎帝中等学校 屋上
菅原冬雪14歳、死ぬ1分前。
今日は中学2年生の終業式だった。
僕は男子の上位グループからいじめられている。
今なぜ命の危機におちいっているのかというとこいつらのせいだ。
「「「落ーちろ!落ちろ!」」」
「さっさとしろよ、クズ」
フェンスに押し上げられて、向こう側に立つ。
死ぬ5秒前、僕は目をつぶって飛び降りた。
「…?」
おかしい。
飛び降りたのに死んでいない。
今なぜか、小さな女の子に抱えられ空を飛んでいる。
「うわっ!なにこれ、飛んでいる?」
首をねこみたいに持ち上げられて苦しい。
お姫様抱っことまではいかなくてももうちょっと配慮が欲しい。
「あなた、あぶないのです。
あんなに高いところからおちて。
とべないくせに。」
「飛べないくせにって………。
今の状況でどうしろって言うんだよ」
「知らないのです。
あのばしょにもどるですか?
それとも、わたしと………」
「ねぇ、ちょっとギブ、息ができない。
苦しい」
少女はあわてて手を離す。
「「あ!」」
やっぱり死ぬ5秒前。
紐なしバンジージャンプは勘弁してほしい。
どうせ死ぬ運命だったのか。
最後に誰かに助けてもらって、優しくされて、嬉しかった。
「『止まれ』」
空中で止まっている。
意味がわからない。
「あいつらにはわすれてもらうです。
……、…」
誰かに心配される、ちょっと違う気もするが、心配されるのは悪くない気持ちだ。
僕のことを馬鹿にもせず気持ち悪がらないなんてこの子はいい子だ。
結構小さくて120cmくらいしかないけどいくつなんだろう。
私服だし別の学校の子だというのはわかるけど。
そして、多分人外だ。
オカルトマニアの血が騒ぐ。
「ねぇ、きいてるの?」
全く聞いてなかった。
こういうところがみんなから嫌われる原因なんだろう。
とっさにごまかす。
「あいつらどうなったの?」
「うーん。とにかくなんとかなったのです!
わたしは華宮聖愛なのです。あなたのなまえは?」
「菅原冬雪だよ」
こうして一命を取り留めた僕はなぜか誰もいなくなっている屋上に座り込んで、そして、どちらからともなく話を始めたのだった。
聖愛は来年度から初等部にあがるらしい。
思ってたよりもずっと小さい子だった。
しかし、とても賢くそして可愛い。
自分で天使を自称しているところもまた可愛い。
でも、さっき飛んでたし、魔法っぽいものも使ってたし、多分本当に天使なのかもと思いはじめている。
聖愛は宝探しをしているらしい。
「わるいやつはおしおきなのです!」
「それができたらねえ」
「聖愛がてつだうです!
だから、冬雪も聖愛のことてつだってほしいなって思うのです…」
今は僕をいじめてきてたやつらに対する作戦を立てているところだ。
1時間程話していただろうか、こんなに話をするなんていつ振りだろう。
帰ってお昼ご飯をたべるつもりだったのでなんだかお腹が空いてきた。
「そろそろお昼ご飯でもたべないか?」
「お弁当もってないのです…」
「僕も…
うちにくる?僕の分は母さんが昼食を用意してくれてるはずだからはんぶんこする?」
「そうするです。
今うちにかえるわけにはいかないのです」
なんだか訳がありそうだが、恩人を問い詰めるのも良くないと思いスルーする。
決意を秘めた碧眼は美しかった。
いや、ロリコンじゃないですよ、本当に。