遭遇
翌朝、再び海浜公園に十和子達の姿があった。
平日同様に希和は早朝覚醒し、崇の実家の皆は朝はのんびり型なので、起こさないよう程近いここに散歩することにしたのだった。
崇はあくびを噛み殺す。
夏の海には珍しく、台風でも来るかのようにどんよりした曇り空に朝焼けが反射して、なんだか不気味だった。
「しっかし叔父さんも年取ったな~公祐のこと認めるなんて」
「いいことじゃない、同じ仕事する親子で認めあえるのは」
夫婦は昨晩の酒宴の話をしながら、公園の階段を登っていく希和を見守る。今朝着せた麻のワンピースは良く似合っているけど、オムツが見えちゃうなぁ。そして膝を擦りむかないといいんだけど。
十和子が思った、その時だった。
ピシャーン!!!
バリバリバリバリバリバリ!!
突然雷鳴が響く。
閃光が走って、砂浜に墜ちる。
と、衝撃が3人を襲った。
「えっ!?」「ぅああ!!」
体が宙に浮いて、そして砂に叩きつけられる。
「わぁあああん!ままぁー!」
我にかえって、希和を抱きすくめようとした十和子が見たのは、テラテラ光る頭の大きな怪物だった。
「 」
こんな時、驚くことも、怯えることも出来ない。
脳が理解を拒絶する。異形。
トンボのような複眼が、首のない胴体に巡らされている。二メートルを越える仁王立ちする黒緑の物体。
それでも一つだけ本能で分かった。
奴は捕食者で、十和子達を、見ている。
辺りは焦げた雑草の臭いが立ち込めていた。