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森の魔物スカル

「ここが魔物が住む帰らずの森ブハッドヘイムか」


町長からいくらか話は聞いたところ、前までは魔物もほとんどおらず静かな森だったが、ある日スカルという魔物が住み初めてからは魔物の数も増え、町に度々降りてきては悪さをするようになったとか、死傷者の数も増えていき困った町民は数百人規模の討伐隊を結成しスカルを討伐しようとしたが、結局誰一人帰ってこなかったという。それ以降町で子供が生まれなくなる事が相次いだことから呪いだと思ったらしい、実際の原因は僕のソウルの無駄遣いのせいなんだけど、町の皆ごめんなさい…。


「聞いた限りでは、おそらくそのスカルとかいう魔物は人間の魂を喰らっているな、数百人死んでソウルが全く転生されないのが証拠だ」


「それより僕のソウルをどうにか出来ないのか?」


「無理だな一度そのソウルで生まれたらもう、死なない限り回収されることはない、まぁ、そのスカルとかいうやつを倒せばいからか集まるでしょう」


そうだな今はそれしかなさそうだ。しばらく森の中を歩くといかにも怪しい洞窟を見つけた。


「ここが怪しいな」


「集中すれば気配感知くらいちょちょいとできますよ」


言われた通り目をつむり集中すると、洞窟の内部が簡単に把握できた。


「いた、一番奥に一匹いる」


少し恐怖しながらも洞窟の中へと足を進めた。中は以外と広く真っ暗だが驚いたほどに鮮明に把握できた、目を閉じていても分かるほどに。水滴の落ちる音、壁に反射する足音、奥から聞こえる魔物の声、そういった情報が頭の中でうまく整理され見ると言うより感じるという例えが近いかもしれない。僕はすでにソウルの量からすると人外レベルまで到達しているはずなのでその影響かもしれない。


洞窟の突き当たりで足を止める、そこには一匹の魔物が待ってましたと言わんばかりに話しかけてくる。


「どうも人間臭いと思ったらまたわざわざ殺されに来やがったか、まぁ俺はてめぇらの魂を喰えるから大歓迎だけどなぁ」


二メートル以上はあるだろうか、緑色の体に長い白髪が腰まで伸びてギョロリとした赤い目はこちらを睨み付ける。その手には剣らしきものが見える。目を凝らすと敵のソウル値が分かる、250、それにあの刀に100それがどれ程のものかは分からないが、村の人たちが1兵士でも3~4程度だったのを見るにこの魔物かなり強い。


「この妖刀にもこの前のやつらの血を吸わせたがまだ足りないらしい、お前一人じゃ足りないだろうしてめぇを殺したら町に降りて一暴れするかぁ!」


魔物が持っていた刀を一振りすると大きな岩がまるでプリンのように真っ二つに両断さらる。


無理だ、いくら僕のソウルが多かろうとこっちは丸腰、あんなので切りかかられたら終わりじゃないか、そうだ謝ったら許してもらえないだろうか、ワンちゃん隙を見て逃げれるのではなかろうか。


「どうした、恐ろしくて声もでないかクックック、話すのも飽きたし死ね」


「ご、ごめんなさい!」


両手を顔の前に合わせて精一杯の謝罪の言葉、しかし遅かったかもしれない魔物は既に僕の頭目掛けて刀を振り下ろした後だった。



どうなった?周りからはなんの音もないゆっくりと目を開けると振り下ろしたはずの刀は僕の目の前で静止していた。否、刀を両手で受け止めていた。


「ぬぅっ、離せ!」


「馬鹿言うな離したら真っ二つになるだろ!」


しばらく二人、いや一人と一匹の引っ張りあいが始まる。


「ぐぬぬぬぬ」


「ふんんんっ」


ポキッ


まるで、木の枝が折れたようや気持ちのいい音が洞窟のなかに響いた。


「あ」


「あ」


何が起きたのか分からないが僕の手には魔物が持っていた刀の刀身が残されていた。あれ、ええ?何、折れたの?


「おのれよくも我が刀を!」


なんか全然力いれてなかったのに折れたんだけど!やはり僕はかなり強いのか?しかし刀を折られた魔物は怒っているようだ、追撃を加えんとこちらに殴りかかってこようとしているが、そのあまりに遅いパンチに目を疑う。まるで駒送りのようにゆっくりと振り下ろされている拳は僕の斜め上から向かってくる、それを目で追いながら軽々避けると確信する。僕は強い少なくともこいつよりは今度はこちらから攻撃する。といっても武器もなにもない、したがって今出せる最大の攻撃、ただのパンチだ。


「どりゃあ!」


その素人から繰り出されたパンチは目にもとまらぬ早さで魔物の体に当たると同時にただの肉塊へと変えた。


びしゃびしゃ、そんな音をたてながら辺りは赤く染まった。


「なんじゃこらー!」


そこには魔物の面影はもはや無かった。あるのはあたりに散らばった肉片のみ、パンチでこんなになるか普通!?つか気持ち悪!吐きそう、さっさと町に戻ろう…。


気分が悪くなりながらも山を降りなんとか町にたどり着いた。するとすぐに町長が近寄ってくる。その有り様に一歩下がったがしばらく様子を伺ったあと意を決したのか恐る恐る話しかけてきた。


「その返り血は、魔物のものですか?」


「はい、確実に倒したと思います」


ちゃんと確認はしなかったが(気持ち悪くて確認しなかったが)あそこまでばらばらになったら流石に死んでいるだろう。


「おおお、流石です!やはり私の目に狂いはなかった。どうぞ私の家に、お礼をさせてください」


向かう途中町の人たちが、うわぁ…、みたいな目で僕のことを見ていた、生臭いし気持ち悪いし最悪だ。


「どうぞ、風呂の準備もできております、まずはその血を綺麗にするとよろしいでしょう」


「助かります」


服を脱ぎ捨てると返り血を洗い流す、あー気持ち悪あんなおぞましいもの始めてみたよ、それにしても凶暴そうな魔物をワンパンできるとは思わなかったな、それもあの神様の無駄遣いのおかげか、そう思うと素直に喜べない。


「はっはっは、よくやった。これで少しはソウルも輪廻の輪に戻っただろう」


なんか聞き覚えのある声が曇りガラスの向こうから聞こえてくる。よく見ると小さな人影が立っているのが分かった。この声はまさか…、もう少しシャワーを浴びていたかったがそれよりも目の前の事実を確かめられずにはいられない、僕はタオルを腰に巻くとその曇りガラスを開けた。


そこには長い白髪の少女が偉そうにこちらを見上げているではないか、誰だこのガキはでもこの偉そうな態度とさっきの声は…まさかな。


「どうだ、驚いたであろう貴様がソウルを回収してくれたおかげで受肉するだけのソウルを確保できた」


「な、な…」


「ふっふっふそうであろう、そうであろう、感動して声もでなかろう」


ゴンッ


「あいた!?」


「ナイスだ神様、これで今までの仕返しができる」


「な、何をするのだ!私は神様だぞ」


「その神様がなんでまた無駄遣いしてまで僕の目の前にいるんですかねぇ」


「落ち着くのだ!だって、見ているだけではつまらないだろう?だからこうして実体化して貴様のサポートをだな」


「他に言うことは?」


ボキボキ


「ま、待て話せば分かる。暴力はよくないぞ」


「一番始めに頭叩いたのは何処の誰だったかなぁ」


「それは…、今私の頭を殴ったので帳消しだ!それに私は色々役に立つぞ?ほれ血だらけだったお前の装備もこの通り綺麗にしたし」


「洗濯機替わりにしかならんやつとか要らないんだけど、それよりその体にいくらのソウル使ったんだ?」


ボキボキ


「ご、五十くらぃ…」


ゴンッ


「きゃん」


「これはお前のせいで生まれてくることが出来なかった五十人の人達の分だ」


「いいじゃないか、五十くらぃ貴様なんか三万も使ってるくせに…(小声)」


「だ.れ.の.せいかなぁ?」


「わー!わーー!ごめんなさいもう無駄遣いはしません!これ以上殴られると頭が凹んでしまう」


はぁ、今日はこのくらいで許してやろう中身は駄神だけど、見た目は少女だしなあまり殴るのも良心が痛む。いっそ悪魔みたいな姿だったら心置き無く殴ってやるところなのに。

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