魔物退治
「大変だ、西側の平野から魔物の群れがこちらに向かってきてるぞ!」
一人の村人が慌ただしい声で叫んでいる、魔物だって?この世界にはそういったものがいるらしい、気になったので魔物が来ていると言っていた町の西側へと向かった。
門の前には幾人かの兵士が集まっており、それに混じって武装した兵士ではない人も混ざっている。
「数は30~40かなりの数です」
一人の兵士がそう言っているのが聞こえた。
「例年より多いな、ここはハンターに任せるか」
ハンター?そういう魔物を倒すのを生業にしてる奴等のことか?
「ん?君もハンター…だよな変わった格好をしているし、早くしたまえもうすぐ門も閉めるから」
「わ、えちょっと」
拒否する間もなく町の外へと連れ出された。どどど、どうしよう魔物なんて戦ったことないし、平凡なサラリーマンである僕にやれるはずがない。
「問題ない!あのような下等種族、今のお主なら小指、いや立っているだけで全滅だわ」
「んな馬鹿な」
「あそこに見えている魔物はソウル1良くて2、今のそなたとは天地いや、地上と銀河系の果て程の差がある。心配しなくともよいぞ」
そう言われても全く実感がないんだが、だいたいそのソウルっていう数値がどれ程の物なのかすら分かってない。
「そうですね、ソウル1は単純に一人と換算すると、ソウル1の人がソウル5の人に挑むとなると、五人相手に戦うのと同じ感覚、まぁ実際はソウルの強さとか色々あるんですけど、だいたいそんな感です」
本当かよぉ、上空三千メートルから落下して無傷だったから確かに強くはあるんだろうけど…。
「おいあんた」
「はい?」
「さっきから何ぶつぶつ言ってるんだ、突っ立ってないで迎撃の準備をしろ、怖じ気づいたってんなら邪魔だから引っ込んでな」
そう言ってきたのはハンターらしき大きな斧を持った熊のような奴だった。目を凝らすとその人のソウルが見えてくる。ソウル3…うっそだー、こんな熊のような奴がソウル3な訳がないやはりあてにならない。
「見た目とソウルは比例しませんから♪」
しかし、確かにここで恐れていたらこの先、生き抜いて行くのは厳しそうだ、僕は意を決してハンター達の最前に立った。
「おいおい、武器も持たずに何やってんだ坊主死にたくなかったら引っ込んでな」
確かに何やってるんだ俺は、ただ立ってるだけで倒せるとか言ってたけどそんなわけがあるはずがない、やっぱり帰ろうという思いとは裏腹に体が動かない、あれ体がすくんで動かないんだけどもう目の前に魔物が突き進んできている、あ、終わった。
「あ、あいつこれだけの魔物を前に武器も持たずに仁王立ちしてやがる。まさか余程の自信があるハンターか!?」
違うんです足がすくんで動けないんです、助けてください。魔物が衝突する瞬間思わず目をつむる。
「うわぁぁぁ!」
………………、
あれ?どうなった?なんの衝撃もないけど…、ゆっくりと目を開けるとそこには信じがたい光景があった。先程まで猛進していた魔物の群生が横たわっていたのである。
「一体何が…」
「お前すげぇな!」
「へ?」
振り替えると先程のハンターが笑顔で駆け寄ってくる。
「あいつら全部やっちまうとはなぁ」
「あの、僕何かしました?」
「何言ってるんだ、お前さんが何か叫んだと思ったら魔物がバタバタと倒れたんじゃないか、あれは何か魔法か?ともかくあんたのお陰だ」
俺がやったのか?目をつむってたからよく分からなかったけど、どうやら倒したらしい。僕は胸を撫で下ろすと、町へと引き返した。初めての戦闘で緊張したけど、なんか知らない間に終わって良かった。そういや今の魔物を倒したことで少しソウルが解放されたんじゃないか?
「されたけど、焼け石に水だねーアハハ」
「この世界についてもう少し詳しく教えてくれよ」
「いいわ、まずこの世界の生命体の約21%が人、16%が魔族、8%がエルフ5%が竜族その他が50%ってとこかしら、大まかに分けるとこんな感じ」
「その他って言うのは?」
「草木や小動物などのことよ、さらにそれぞれの保有しているソウル比率で見ると、人が16%、魔族が24%、エルフが20%、竜族が31%をしめているわ」
「人は人口は多いけど、ソウル事態はあまり保有していないんだね、逆に竜族なんかは個体数が少ないわりにソウル保有値が高いんだ」
「ピンポーン、竜族の奴はなかなか死なないおかげでソウルが返還されないのよ、全く困ったやつらだわ」
うん、それ作ったのお前だけどな。
「因みに私が保有しているソウルキャパシィは約100万とちょっとってとこね、今の魔物退治で追加された分は0.6秒で消費されました、ソウルは今順番待ち状態で早く何とかしないと新しい生命は生まれて来なくなる可能性があります」
「ソウル0の状態で、新たな命ができるとどうなるんだ?」
「その場合は肉体があっても中身の魂が宿らないため死産するでしょうねぇ」
予想以上に深刻だな、毎日何百という命が生まれてくるわけだから、その分ソウルが必要なわけか。
「すみません、そこの方」
突然話しかけられ振り替えると一人の老人がこちらを真っ直ぐ見つめている。
「僕ですか?」
「はい、先程の戦い見事でした。良かったら私のお願いを聞いていただけませんか?」
「まぁ聞くだけなら」
「ありがとうございます、立ち話もなんですから家へいらしてください」
その老人に言われるがまま町の中心にある一軒の家へと案内された。
「あ、さっきのお兄ちゃんだ」
見ると先程の話しかけてきた少女が僕の手を取り笑っている。
「これ、客人に失礼ですぞ」
「いえ、お構い無く」
「申し遅れました、私はこの町の町長をやっておりますロイドと申します」
「それはご丁寧に僕はシガミといいます」
「それではシガミ殿早速ですが私のお願いを聞いていただけませんか?」
「はい、僕にできることでしたら」
「実は、最近この町のでは子供が生まれなくなるという奇病が流行っておりましてな、産まれても死産になってしまうのです。そこで原因を考えたのですが、数ヵ月前から山の中に現れた凶悪な魔物の呪いだと思うのです」
ギクリ、ごめんなさいそれきっと俺のせいだぁー!というか馬鹿神のせいだ!俺だけで四万八千も使ってるから予備のソウルもなくなったんだきっと…。
「そこで、あなた様にその魔物の退治を依頼したいのです。実は私の娘も妊娠しておりましてな、このままではまた死産になってしまいます、どうかお願いします」
「分かりました」
僕は即答で答えた、だって僕という存在のせいでこんなことになってるんだから、断れるはずがないじゃない。
「あのね、ママもうすぐ子供が生まれるって、ミリオお姉ちゃんになるの」
あぁ、そんな眼差しで僕を見ないでくれ罪悪感で死にたくなる。
「おお、受けていただけますか」
「早速行ってきます」
「は、今からですか?」
「何か不憫なことでも?」
「いえ、その魔物はとても凶悪らしく今まで討伐に行ったものは誰一人帰ってきておりませんので、色々準備された方がいいかと思いまして」
「だだだ、大丈夫ですよ」
「流石ですな、あれだけの魔物を一瞬で倒されるのですから、そんな魔物は恐るるに足らないということですなホッホッホ」
っと話の流れで魔物退治することになったけど、凶悪な魔物か…
とはいえそれだけ強いということは多くのソウルを保有している可能性もある、それを倒せばなんとかなるんじゃないか?
「実際にその魔物とやらに会ってみないとなんとも言えないね」
「だから急に話しかけてくるなよな、実体ないんだから急に話しかけられるとドキッとするんだが」
「そんなことを言われてもな…うん、まぁ考えておこう」
なんだやけに素直だな、まぁいいとにかく今は魔物退治に集中する。