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最終話(第8話) 次へと繋がる最初の一歩

 命を、人類を、全てを懸けたゼロとの一騎打ち。

 何度も負けそうに、何度も心が折れそうになったか分からない。

 けど、その度に思い浮かべたのは、勝利を信じて外で戦う由乃の顔だった。

 白銀の翼(ホワイトネス)を通して見える由乃の瞳に曇りはなかった。その瞳が、僕に最後の力をくれたんだ。


 「由乃の元に必ず帰る」その気持ちをありったけ詰め込んだ一撃、セイクリッド・ザンバーはゼロを打ち倒した。

 ゼロが残していった黒焔(ブラックフレア)を拾い、僕は神殿を後にした。


 神殿を出て、由乃を探す。ゼロを失ったことに気がついた使徒は次々と霧散していった。この中なら紅い翼を探すのは簡単だろう。

 正直、立っているのもやっとだ。重い足を引きずりながら、僕は由乃を探し続ける。一番最初に、会いたい人だから。


「どこだ…みんな…由乃は…」


 ふと何かの気配を感じる。でもそれが仲間なのか使徒の残党なのか判別がつかない。一応、応戦出来る体勢を取ろうと足を止めた。


「……ぱい、…んぱい、先輩っ!!」


 森の中から飛び出してきたのは由乃だった。そのまま僕に飛びついてくる。


「やっと見つけた…!先輩の魔力がすごく弱くなったからあたし…もしかして死んじゃったのかと、思ったじゃないですかぁ……!」


 僕にすがり付くようにして、由乃は大泣きし始めた。

 使徒じゃなくてよかった…と思いながら、僕は由乃を優しく抱き締め返す。


「生きてるよ、由乃。僕は生きてるから…」


「生きてなきゃ許さないです!ぐすっ、もう………ばかぁっ!!」


 僕の腕の中で由乃はわんわん泣いた、由乃だって傷ついてボロボロなのに。


「帰ろう、みんなの所に」


 そういって立ち上がろうとして、ふらついた僕は由乃の胸に頭を押し付けるように倒れてしまった。


「うわわ、先輩!?」


 焦りながらも、由乃は僕を受け止めてくれた。足に力が入らず、僕の体は由乃にもたれ掛かってしまう。特に頭は由乃の胸に沈むようになる。なんて柔らかくて大きな…いやいやそんなことを考えてる場合じゃない。


「ごめん由乃、足に力が入らないんだ」


「もう先輩ったら…無茶しすぎなんですよっ!」


 由乃は僕の腕を首の後ろに回し、肩で支えるようにして立ち上がる。


「歩けますか?」


「由乃が支えてくれてるから大丈夫」


「ゆっくりでいいですからね」


 僕は由乃に支えられながら、みんなの元へと戻った。

 そこから隊舎へ戻る間も、由乃は僕に連れ添ってくれたんだ。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 ゼロを倒して、使徒が消えて、人類には空が戻ってきた。

 各地の空港もその機能を取り戻し、今では空を飛ぶ飛行機を見るのも簡単になった。


 役目を終えたACFはその技術を航空自衛隊へと引き継ぎ、解体されることが決まった。

 現段階で高校生の年齢である僕や由乃、桜、海斗の4人はそのまま高校へ通うことにした。

 「世界を救った英雄」という似合わない肩書きはあったけれど、編入した高校での生活は楽しかったし、その先に進んだ専門学校でもなんだかんだ楽しい青春が送れた。


 あの戦いから4年という月日が流れた。就職して少し経ち、少しは安定した収入と、ACF解体時に貰った報奨金もあり、僕はとある決意をして由乃を呼び出した。


「改まって伝えたいことですか?」


「ああ、うん」


 いざ、その場面になってみると頭がパンクしそうになる。あれこれ考えていた言葉もすべて吹っ飛んでしまった。

 後ろ手に隠した「箱」の存在だけを感じながら、僕は由乃に向き合う。

 こうなったら、直球ストレートど真ん中しかない。


「これまで長く付き合ってきて、この想いは変わらなかった。由乃とずっと一緒にいたいって。」


「それはあたしもそうですよ?」


「ほんとにずっとなんだ、これからもずっと。だから由乃……いや、神山由乃さん、これを受け取ってください」


 僕はその箱を開く、開かれた箱の中には小さなダイヤがはめ込まれた指輪。

 なんのことか、とその箱の中身を見た由乃は、少し止まって、見つめて、涙をこぼした。


「…これを貰った時もですけど、ズルいですよ。こんなの、受け取れないわけ、ないじゃないですかぁ…」


 由乃の右薬指には色褪せたピンクの指輪。初めてのデートの時にあげたそれを由乃は撫でながら、僕の言葉を待っている。


「君のことを絶対に幸せにする。僕と結婚してください」


「もちろんです、悠。あたしのこと、幸せにしてくださいね?」


 溢れ出る涙を必死に拭いながら、由乃は婚約指輪が入った箱を持つ僕の手を握りしめてそう言ってくれた。

大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした。

その割りに中身なくね?とか厳しい言葉もあるかと思いますが…


これにてエンカウント・マリッジ編は完結でございます。

本編の最終話終了時点で悠は17歳、由乃は16歳、そしてエンマリ編の最終話では悠21歳、由乃20歳となり、この1年後に愛娘の彩が誕生します。

本編エピローグではさらにその3年後、悠25歳、由乃24歳、彩3歳となり、託された希望編ではさらにその10年後、悠35歳、由乃34歳、彩13歳となって話が続いています。

年齢設定にはズレがないはずですが…


本当は子育てシーンも書きたかったのですが、何分経験がなくだらだらと長くなるなら切ってしまおうと決断した次第でございます。


さて、エンマリ編も完結となりましたのでこれからは託された希望編を書き進めて参りたいと思います。

相変わらず執筆が遅く、皆様の期待を裏切っているかも知れませんが、よろしければこれからもお付き合いお願い致します。

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