どスケベと呼ばれて
どスケベおじさんは48歳を迎えた。
一人ぼっちの誕生日にどスケベおじさんは、赤いスポーツタイプのキャミソールにルーズソックス、もちろんノーパンで48回目の誕生日を迎えた。
ケーキはコンビニで買った一人用のチーズケーキを用意した。
そこに48本のろうそくを刺そうとしたため、刺し終わるころにはチーズケーキはチーズケーキではなくなっていた。
どスケベおじさんはどスケベだ。
3つ年の離れた妹に、「お前はキ○ガイだよ!とっととでていってくれ」と言われ自分の実家を追い出されるほどにはどスケベだった。
ただそれはどスケベおじさんには納得のいかないことだった。
どスケベおじさんは自分のことをどスケベだとは思っていなかったからだ。
どスケベおじさんはキャミソールが好きだった。
ただそれだけだった。
姪っ子、つまりどスケベおじさんの妹の娘のキャミソールを拝借していたのが姉にバレた。
ただそれはあくまでも拝借で、返す予定だった。
それにも関わらず妹はどスケベおじさんに対して、ヒステリックとも言うべき声をあげて、どスケベおじさんを追い出したのだ。
どスケベおじさんは泣いた。行く当てもなく公園で大きな声を出して泣いた。
ただキャミソールが好きだっただけなのに。
それはイチゴが好きな人がイチゴを食べるように、テレビゲームが好きな人がテレビゲームをするように、どスケベおじさんはキャミソールを愛でただけなのだ。
春の風が吹いた。春の風にどスケベおじさんの体毛は踊る。
良いことがあれば、悪いこともある。
「そうだ、今日はボクの誕生日だ。」
どスケベおじさんはコンビニでケーキを買った。それは小さく、味の見当もつかなかったが自分ひとりを祝うのにはちょうど良かった。
どスケベおじさんは家に帰った。
ねちゃねちゃと音を立てながら、廊下を歩く。
「やはり、あれが無くちゃ」
どスケベおじさんは洗面所へと向かった。
どスケベおじさんは服を脱ぎ、洗濯機の上に置いてあった、赤く汚れたキャミソールを身に着けた。
そして目についた、洗濯かごに放置してあった白のルーズソックスを履いた。
ルーズソックスが赤黒く滲む。
台所に向かったどスケベおじさんは、祭壇用のろうそくをチーズケーキにさし始めたが、48本を刺し終えるはるか前にそのケーキは原型を無くした。
玄関の妹はまだ原型を留めていた。