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ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
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ポポ

 御母様と過ごし始めて少したった頃、ソレらの内で特別おかしな動きをするソレがいる事に、キサは気付きました。

 それがポポです。


 ぽわぽわと飛び、ほんわりと光る球体。

 ポポの事をキサは、変わったソレだなぁと思っていました。



 ポポは、当時13歳だった、キクスお兄様が領主となった日に、キサの部屋に現れました。


 ウーノ家の屋敷に、悪いモノは入って来られない。

 そう小さい頃から教えられ、事実、屋敷内にいるソレらも、キサが何かを壊してしまった時や、別の事に気を取られている時以外、友好的に接して来ます。


 だからキサはポポに対しても、全く警戒を感じませんでした。


 にも関わらず、飛ぶその姿の可愛らしさに、思わずじっと見つめていたキサに対して、ポポは非常に素っ気なかったのです。

 そんな態度だったからこそ、キサはポポについて考えました。


 ポポはウーノの屋敷に、やって来たばかりなのか?

 だから、こんなにも素っ気ないのだろうか?

 それとも、ソレらが一体どこから、どうして生じているか全く知らないけれど、ポポは生まれたばかりなのだろうか?


 ポポと勝手に名付けたのも、キサです。

 本当の名前は知りません。

 あったのか、なかったのかも知りません。


 キサはポポが、人間の言葉を理解している印象を受けました。

 勝手に付けた名前で呼び掛けてみれば、反応を返してくれるようになったので、ポポとはきっと自分の事だと、分かってくれているのだろうと、キサは考えています。


 でも、声は聞いた事がありませんので、喋れないソレらの一種なのでしょう。


 しかもポポは綺麗な球体ではなく、輪郭が揺らいで見え、しょっちゅうベットの住人にならざるを得ないキサよりも、儚く消えてしまいそうです。


 そんなポポの姿は自然と、守りたい、という感情をキサに沸き起こらせる、唯一の存在になりました。



 もちろんポポは守って欲しいなどと、思ってはいないでしょう。

 そもそも守るといっても、具体的にどうすればいいのか、当時も今も、キサにはさっぱり分かりません。

 せいぜい見掛けたら、声を掛けるぐらいです。


 それから数年間、ポポは単に暇で、たまたま出くわした人間の子供が生きているか、見回りに来ているという風情でした。


 それでも近頃は、自分を可愛がってくれるキクスお兄様と、同じ様な気配を、ポポがキサに伝えてくれる様になっていました。

 ウーノ家に仕えている様子を見た事はありませんが、少しずつポポから懐かれているはず、とキサは思っています。




 そんなポポは、御母様に対して、距離を測り兼ねている様でした。


 興味があるから見には来たものの、それ以上に警戒もしていて、人の姿を取っている御母様の、手の届く範囲へは、絶対に入るまいとしています。

 いつも通りに、ポポは一切声を出そうとはしませんでしたし、何かしら対話をしようという行動も見られません。


 ただ、ポポに気付いた御母様が、また弱々しい子がいると思ったらしく、心配そうに見始めて……。


 その途端ポポは慌てて、部屋から出て行ってしまいました。


 給餌をされては堪らないとでも、思ったのだろうか?

 それならば正解だ、ポポ。

 と、キサは思ったのでした。





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