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魔法少女キャロルスターあらわる

午後8時42分。多くの人が行き交う駅前で、夜の闇を切り裂くような鋭い悲鳴が上がる。驚いた人々が視線を巡らすと、すぐに原因は発覚した。

深くどこまでも沈んでしまいそうな黒で覆われた何か。牛に似た、だが牛とは到底言いきれないような朱色の瞳と金色の翼を持つ巨大な生き物が、唐突に存在していたのだ。スーツ姿のサラリーマンや制服姿の少女たちは慌てふためき、その生き物から離れようと必死に他者を押しのけている。パニック状態になったその場所で、牛のようなソレだけが冷静に周囲を観察しているように見えた。すると黒い生き物は自身のすぐ傍に人が倒れていることに気がついたらしく、のそりと重そうな身体を動かしてゆっくりと歩き出す。横たわっているのは驚いて気絶した女性のようだ。誰もがその生き物を止めることができず、大きく口を開けた牛のようなものに無情にも女性は――……



「待ちなさい!」



流れを変えたのは幼い少女の声だった。

声の出所は道端に停車していたタクシーの上。驚く群衆を前に、少女は不敵に笑う。

「たかだかゴミのぶんざいで、人をおそうなんてどういうつもりなのかしら? 私がぱぱっとおそうじしてあげるわ!」

鮮やかなオレンジ色の髪、黄色のワンピースの上に白いフリル付きエプロンを身につけた彼女の手にはレモン色のほうきが握られている。少女はそのほうきの先を、びしっと黒い生き物に突きつけた。

「世間を騒がす悪いゴミは、私がゴミ箱に連れて行ってあげる!」


恐怖で震えていた人々はいつのまにか安堵の表情を浮かべていた。この少女が登場すれば脅威が去ることをテレビや新聞で得た情報によって知っていたからだ。実物を初めて見た人たちは彼女の登場に盛り上がる。

「待ってたよ! 魔法少女!」

「会いたかったよぉキャロルスターたん!」

「はやくやっちゃって!」

男も女も子供もお年寄りも関係なく、一緒になって少女を応援する。



そう、彼女の正体は魔法少女 キャロルスター。

突如現れ、暴れまわる化け物たちを、ばったばったとなぎ倒す、正義のヒロインなのである。


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