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ソルトン  作者: spright
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何故こうなったんだ

 試験の時、誰かが必ずと言って良いほど質問するやつはいるだろう。

しかし、その質問に対してしっかり応えてくれない教師がいることをご存知だろうか?

あれは、高校の試験の時だった・・・・・・


「・・・筆記用具よしっと、行ってきまーす」

誰もいない家に挨拶を告げ、俺が受験する高校『私立反悠久面学園』はなんと科目が5科目の選択式だ。選択式というのは、文字だけで分かるかもしれないが、様々な科目がある中で、自分が受けたいと思う科目を選んで試験に臨むのだ。

そして、俺がここを受験する動機は、とにかく設備がすごい整っていることだ。ここに入って卒業すれば何らかの職業には高確率で入社出来たりするすごい学校なのだ。まぁ、本当の動機は家からの距離がものすごく近いからだ(笑)

だからそれなりの学力がないと入れないのだが、俺はそこそこの成績はとっていたので、合格する自信はあった。


 5分程度歩き試験会場であるこの高校に着いた。そして、教員に体育館に案内された、どうやらここで試験を受けるみたいだ。ちなみに、俺が受験する科目は『英語Ⅰ 数学A 数学Ⅰ 音楽 化学』だ。

 席に着き教員から試験の注意事項を聞き、テスト開始の合図がかかった。

一科目が終わるごとに10分の休憩が設けられた。

4科目が終わり、最後の科目化学の試験が始まった。

しばらく解いていると、「問8 塩の意味を答えなさい」という問題に差し掛かった。

(・・・これは『えん』なのか『しお』なのか?)

と、疑問に思ってしまった。これは化学の問題なのだから『えん』と読むのが常識かもしれないが、この学校は、名門高だ、もしかしたら裏をかいて『しお』かもしれない。頭の中でぐるぐると考えると分からなくなってしまった。

そして、その時男性教員が通りかかり、ふと小声で教員に話しかけてしまった。

「すいません・・・」

「なんだね?」

流石名門なだけあってしゃきっとした顔つきだった。

「あの、この問8の問題なんですが、『えん』なのか『しお』どっちなんですか?」

そう言うと、途端に顔つきが変わり、嘆息をもらした。

「君もか・・・」

「え?」

「いや、何でもない。この問題は考えればすぐ分かるよ」

と、言い残してスタスタと行ってしまった。

「それだけ?」

おもわずポツリと呟いてしまった。

考えても分からないから質問したんですが・・・。

もしかしたら、本当に考えれば分かるかもしれないが、読み方ぐらい教えてくれたって良いじゃないか!

文句を言ってもしょうがないので仕方なく、俺は化学だから『えん』のことだろうと思い解答欄に書いた。

制限時間がきて、全ての試験が終了した。後は、結果が発表されるのを待つだけだった。


数日後、結果発表当日学校に向かった。

学校には、合格して喜んでいる者、落ちて泣いている者がたくさんいた。

俺は、掲示板を見て自分の番号である『714』を探し始めた。

「707・・・709・・・712・・・715・・・」

おや?

「709・・・712・・・715・・・」

あれ?オカシイナオレノバンゴウガナイゾ・・・

掲示板には714が無かった。頭の中が真っ白になった。呆然とし、その場でしばらく立ち止まっていた。

何分立ち止まっていたのだろうか、しばらくして我に返り現実の残酷な結果に改めて打ちのめされた。

「は、はは、マジカよ・・・落ちたのかよ俺・・・」

俺は、試験の模範解答と結果が入った封筒を教員からもらい、とぼとぼと家に帰り始めた。


家に着き、封筒を開け合格通知を見たがやっぱりそこには『不合格』と書かれていた。

「は~~~・・・」

深いため息が出た。

「どこが間違っていたか確認するか・・・」

そう呟いて、模範解答と自分の答えを比べていた。

「うわぁ~数Ⅰと数Aはケアレスミスが多いなぁ・・・」

4教科確認し最後の化学に目を通し始めた。そう、あの問8に・・・

模範解答には・・・『しお』の意味が書かれていた。

「は?『えん』じゃないのか・・・?」

試験の結果は残り1点で合格だった。つまり、この問題がはっきりとしていれば俺は合格していたのだ・・・。

そう分かると、急に腹が立ってきて、


「ふざけんなァァァァァァァァァッ!!」


叫んじゃいました。

「なんだよこの問題、こんなの分かるかよっ!普通『えん』の方書くだろ!」

腹の虫はおさまらなかった。

「こぅなったら学校側に直接訴えてやる!」

そう決意した俺は全速ダッシュで学校に行った。

校門を入ってこの学校の教員らしき人に向かっていき、

「校長室はどこだ!」

すごい剣幕でその教員に怒声を浴びせた。

「な、なんだね君は、どこの誰か分からない者に校長に会わせるわけには・・・」

「いいから、教えろ!」

教員の言葉を遮りまた教員に怒声を浴びせた。

「ひっひぃ~~~こ、校長室はあちらの棟の一番奥でございます」

その教員は急にびびりだし場所を教えてくれた。

俺は、その場から去り急いで校長室に向かった。

しかし、3,4分走っても着かなかった。

「はぁ、はぁ、はぁ、距離長すぎだろ・・・まだ見えないぞ・・・さ、流石私立・・・」

そしてそれから1分少々走りやっと校長室の部屋が見えてきた。

「や、やっとか・・・」

そしてラストスパートと言わんばかりの走りで校長室に突撃した。

「ウォォォォォォォォォォォォッ!」

ドアを思いっ切り体当たりした、が!

ドアは開かずそのまま激突してしまい顔面を強打し廊下に倒れこんでしまった。

「(言葉にならない声)」

すると中から、

「そのドアは下から上に開くドアなんだよ」

(何故に!?)

まさか、そんなドアが学校にあるなんて思いもしなかった・・・いや普通はそんなドアさえも無いんだけどね・・・。

少しまだ顔がじんじんと痛むが立ち上がりドアを上から下に開けた。

中には40代半ばの男性が居た。

「どういうことだ!」

「今の出来事は無かったことにするんだね・・・」

俺はその言葉を無視して続けた

「何故この問題の答えが『えん』じゃなくて『しお』なんだよ!」

「・・・まずは自分の名前を名乗りなさい。そして、年上の人には敬語を」

「え、あ・・・すいません」

「よろしい」

にこやかな顔で言ってきた。

「お、俺の名前は『瀬野尾 昴』です。えと、コホン。そ、それでは改めまして、何故この問題の答えが『えん』じゃなくて『しお』なのですか?」

「名前も敬語もしっかり言えてよろしいっ!」

「は、はぁ~ありがとうございます・・・」

いまいちペースがつかめない人だった。

「で、その質問の答えだがね・・・実は・・・」

何だかとても緊張してきた。

「実はだな・・・」

「じ、実は・・・?」

「実は・・・ただの気まぐれだ」

場の空気が一気に変わったような気がした。

「(何でだよっ!)」

「今、『何でだよっ!』って思ったね」

「(心読まれた!)」

すごい適当に試験内容を考えていた。

そんなくだらないで落ちてしまったと思うと苛立ってきた。

「そんなの理由になりますか!ちゃんとしっかり考えてくれないと困るんですよ!」

「まぁ、でもそんなの試験の時に近くにいた教員に話しかければ解決したんじゃないのかい?」

「ちゃんと聞きましたよ!」

「それで、何て言われたんだい?」

「たしか・・・『この問題は考えればすぐ分かるよ』って言ってました」

そう言うと、全てを察したかのようにこう言ってきた。

「成る程、君が聞いた先生は中々しゃきっとした顔つきじゃなかったかい?」

「え?はいそうでした」

「そうか、それは悪いことをしたね・・・」

「どんな先生なのですか?」

「一言で言ってしまうと、見た目で接し方を変えてしまう先生なんだよ」

先生が生徒を見た目で判断するのは良いことなのか!?

「そ、そんな先生もいるんですね・・・」

そこで、俺は気付いたそんないい加減な教師の所為で落ちてしまったのなら、逆にそれを利用したら合格になるかも。

「そんないい加減な教師のせいで落ちてしまったんですから合格にしてくれませんか?」

「残念ながらそれは、無理な話だ・・・」

「どうしてですか!?」

「決まりだからだよ、この学校のね」

決まり・・・。

やっぱりどう足掻いても合格にはしてもらえないか・・・。

は~なんだか泣きそうだ・・・。

「分かりました。それでは失礼します・・・」

「・・・すまいないね」

俺が振り返ってドアを開けようとしたその時

「ウリャァァァァァァァァァァッ!」

ドアの向こうから走ってくる人の声が聞こえた。そして、その後、ドアにぶつかった音も・・・。

「顔うった~~~」

すごく痛そうな声をしていた。俺もああなったから、すごい分かる。

俺は、ドアを開けてみると一人の少女が倒れこんでいた。やっぱり・・・


少し回復し立ち上がった少女はドアをくぐり、

「どういうことなんですか!?」

まさに、今さっきの出来事のようだった・・・これがデジャヴか・・・

校長先生は引きつった顔をしていた。

これデジャヴじゃなくて、本当にあったことだったんだね・・・と理解した。

俺と校長先生は苦笑いをしていた。

少女は頭の上に?が3つぐらい並んでるんじゃないかというぐらい首を傾げていた。

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