覚醒
そして、僕は覚醒する・・・・・・はずだった。
そして、再び世界は森の中。
。。。。。。。。。
どうして。
それは僕が聞きたい。幼なじみの七瀬澪に似た女、それから僕を見て訳知り顔をした女、ラール・ヴェンドゥ。ふざけんな、ヴェンドゥなんてファミリーネームがそっちにあるもんか、これはあきらかり偽名だ、、、ラールは、ありふれてるけれど。
まだ、日は暮れていなかった。天は能天気に空から僕等を照らし、木々は喜んでその葉で木陰を作る。僕は学校の制服のままで、そして右手には剣のような石。
、、、そう、剣のような石。
なんだこれ?重い、使えない、固い、なんだこれ。
ぶんぶん、と振り回す。でもそうするにも重すぎて思うように振る舞えない。
掲げてみる。昔のゲームのような彫刻も、綺麗な刀身も、その石の塊の奥には見えてこない。
「、、、、ふん。なんだこれ。」
言うなり、僕はそれを投げ捨てた。からん、からん。と音をたて、地面の石に弾き飛ばされていくその剣の形をした石の塊。
「、、、、、なぁ。、、、。。。」
「?」
ちょっと人に警戒していたせいか、風のさえずりが声に聞こえたか?、、、誰かが僕に語りかけたような気がしたが、、、、
「いてぇっつってんだろ、、、」
いや、風の音が僕にそう聞こえさせてるんだ。僕はそれを無視しようとした。だいたい、ここはどこだ?なんなんだ?森の中だぞ、僕には夕飯を食べる義務とお風呂に入る義務がある。帰らなきゃ、、、
「だろ!!」
びくっ!?
その大声に、僕は体をふるわせた、、、何故なら、、、、
石の剣がしゃべってる!?!? こんな非現実的なことがあっていいのか!?
「おい!」
石の剣は僕に語りかける
「は、はいっ!?」
戸惑いながらも返事をする僕に石の剣は質問する
「なんで俺はこんなところにいる!?つーか、なんで俺はしゃべれる!?」
えーー・・・・。
どうしよう・・・。こんなに僕が戸惑ってるのに余計ややこしくなってきた・・・。
とりあえずなんかいっとこ・・・。そう思った僕は
「な、なんででしょうね・・・?」
・・・。われながらマヌケな発言だ・・・・。そして石の剣はまた僕に語りかけてくる「おい」
「はっはいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
この返事は確実に向こうにいい印象をもたれてないだろうと思う。絶対に。そして僕はあの剣にヘタレだと思われているだろう。絶対に。
こんなことを考えていると、また、あの石の剣が話してきた。
「ここはどこなのだ」
はい、ごもっともです。僕も分かりません。聞きたいこと聞かれた。どうしよう。
「・・・分かりません」
もう、こう答えるしかない。僕だって分かんないんだからほかに答えようがない。
「・・・お前ヘタレだな」
・・・やっぱり言われたか・・。まぁ、ヘタレなんですがね・・・。
?
そうえばこの剣、さっきよりふくらんでいないか…?
「あの・・・、あなたなんかふくらんできてませんか・・?」
「あぁ?ふくらんでねぇよ。何言ってんだお前?」
・・・・気づいて・・・ない?
そうこうしているうちに剣はどんどんふくらんでいく。
「じゃあお前に一つ大事なこと教えてやる」
「え?」
「闇はおまえのkrddっがーーーーーー」
最後まで聞き取れなかった・・・・。
剣は最後まで言う前に爆発してしまった・・・・・。
「いっ、いったい・・・。なにが・・・・。」
「完了」
「!?」
完了!?今確かにそう聞こえた・・。それも聞こえてきたのは・・・。上っ!?
そして上を見る。ちょうどバラバラになった剣の上あたりを。
やはり、今回も逆光だった。緩やかな服のラインが女性を思わせるが顔が見えない。僕は手をかざして目を凝らす。浮いている?ように見えるその女に見下されるようにされながら、今度も澪とそっくりの女の時のように流れてきた雲が影を作り初め、そして・・・
ラール・ヴェンドゥ。
僕の頭に聞いたばかりの名前が浮かび上がる。
その瞬間だった。そのラールの訳知り顔の微笑みだけ残して世界が揺れたように感じた。そして気付くと。
・・・・僕は教室で、自分の机に座っていて、教壇で先生の横に立っているその少女、、、ラールに微笑みを向けられていた。彼女の自己紹介の最中に、戻っていた。
「おい、アイチ。」
「あ、はい。」
びくん、と体が跳ねる。先生は僕を見て言った、
「お前の隣の席、あいてるよな。ラール君、君の席はあそこだ。おい、アイチ。仲良くしてやれよ!」
「えぇーーー、よりによってヘタレアイチん隣かよぅ。」
「あ、でも手出される心配なくていいんじゃねぇ!」
「もぅ、男子ったら何言ってるのよ!」
口々に回りのクラスメイトがはやしたてるのを聞きながら、僕は少女がこっちに歩いてくるのを呆然と眺めていた。
どちらかといえば、悪魔が練り歩いてくるのをただ待たされるかのような気分で。
だから、その時逆隣の澪が刺すような視線を僕に向け続けていた事にはまったく気付かなかった。
そういう事に気付くには、僕は少し混乱し、困惑し、疲弊し過ぎていた。
まだ一日は始まったばかりだと言うのに。