そして現実へ
現実に戻った、、、そう表現する事に納得いったりいかなかったりするうち、僕は夢の中の少女と瓜二つの幼なじみに困惑したり、自分の体に馴染みきれなかったりする、、、、そんな中、あらたな少女が転校生としてあらわれる、彼女はなのった、僕の方を見ながら、不敵な笑みを浮かべて、その名前を、、、、
「あの今日の朝の夢は、なんだったんだ・・・。」と、つぶやきながら僕は歩いた。今は、あのことが起こった二時間後。つまり、八時三十分となる。学校の登校時刻は、八時四十五分。家から、
歩いて十五分のところにあるので、ギリギリ間に合う。遅刻したら、担任がしつこいので走っていくことにした。担任は久保先生。数学の先生で、説教はしつこすぎて呆れてくる。
ハァハァと息を付きながら、学校に着いた。まだ、八時四十三分だった。まだ、間に合う。
そして、僕は教室へ入っていった・・・。
「おっは、どしたん。」
みんなの不審と不思議とが混じった目を感じつつ、息を切らしながら席に座ると声を掛けてきたのは隣の席の七海 澪。、、、こいつは俺の幼なじみでもあり、僕とはまぁ腐れ縁的な関係なわけだが、、、、
しかし。
「なぁ、澪。」
机を整理しながら、あるいは整理する素振りを見せながら、僕は澪にそれとなく聞いてみる。
「お前、鞭で獣と戦ったりしないよな。」
。。。。沈黙。返事が無い。僕の脳裏には夢のワンシーンがまるで現実のように浮かび上がり、そして、そのシルエットが僕の心にそろっと触る。
その沈黙に耐えきれず、僕は澪を見た。すると、澪はにんまり、と笑っていて、そして僕の視線を確認してこう答えた。
「馬鹿じゃないの、アイチ。あんなマヌケな小説ばかり、読んでるからよ。」
屈託の無い、とても大きな獣など倒せそうもない、同い年の普通の女の子の澪が、そこには居た。
そして、僕はその事に安堵のため息を付いた、それも、僕が思っていた以上に、深く、深く。
「はい、ちゅーもーーーーっく。」
そのタイミングであの気に入らない先生がいつもの気に入らない大声をあげる。先生が主導権を握ろうとするためにいつも言う歌い文句。僕等はその意味も声音も怖がらないが、その意志に逆らえず先生に注目する。
「おい、今日は特別な連絡がある。」
言うなり、先生はくるりとまるでバレエダンサーのように回り黒板に向くと、その緑色の大きなキャンパスに白いチョークでこう書き出した。
『留学生来校』 そして先生は言う。
「はぁい。今日から留学生がうちのクラスに来ることになった。みんな仲良くしてやってくれよ。」
「先生!性別は!?」
はじの方の席の男子が楽しそうに質問する。
「女の子だ」
「いっよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
心の底でてきているばかばかしい雄叫びとともにドアが開いた
「綺麗だ…」
思わず声に出てしまうほどきれいな横顔。
そして彼女は僕たちの方を向く。
「ロンドンから来たラール・ヴェンドゥです。ラールってよんでくださいー☆」
そして彼女は僕たちの方をぐるりと見渡す。そして、僕と目が合う。
僕があわてて目をそらそうとすると彼女は僕に向かって微笑んだ。
しかし、その微笑みはけっしてロマンチックな微笑みではなかった。
それはまるで闇に染められたかのような微笑みだった・・・・。