第二話
彼女はあまり学校に来ない。
体が弱いらしい。
あと、色々な意味で有名な子だった。
例えば、オタクだとか暗い奴だとかマニアックだとかパソオタだとか実は美人さんだとか眉毛が太いとかその他色々と彼女噂は多かった。
あの日、保険室に彼女を連れて行った後、こっちが居眠りしている間に彼女は家に帰っていた。
そして眠りこけて授業をサボった俺だけがこってり絞られた。
「気になる。」
「気になるって朝霧のこと?」友人の南が独り言につっこんでくる。
「うん。あいつって謎多いよな。」
「そうやな。確かに謎多いよな。前髪めっちゃ長いし。」
「確かに前髪めっちゃ長いな。ビジュアル系みたいな髪型やし」
二人で笑った
この南という男とはよく気が合った。
小学生から今まで同じ学校に通い、クラスが違っても休み時間はお互いのクラスによく行き来した。
そして俺に音楽の楽しさを教えてくれたのもこの南という男だった。無二の友という言葉がぴったりなやつだ。
「んで、気になるって事は惚れたん?」
いきなり爆撃してくる南。
「あほ。そーゆーのちゃうし。」
こいつは昔から鋭い。
ただ、まだ惚れた訳ではなくて
「気になる」
という状態だった。
「気になるだけやて。ある意味あいつは隠れキャラやんか。」
「まぁ、ええわ。確かに隠れキャラやから今日はこれ以上はつっこまんとく。」
「今日は、ってなんやねん。」
「気にすんな。もう授業始まるで。」
そう言って南は席に戻って行った。
彼女はその日、学校に来なかった。