第一話:転生
ここから改訂版です。
改訂版投稿ということで前のものは消しました。
第一話は名前の変更のみであまり変わっていません
ガッシャーン!!
そんな音とともに弾けるポリゴン。
それとともにレベルアップを告げるファンファーレが鳴り響く。
VRMMO 《Unlimited Cross World》 最初のカンストレベル者の誕生だった。
ステータスウインドを開くと表示された数値、1500Lv。
ここまで来るのに5年、やったたどり着いた最強の称号。
しかし、その数値を見た少女は少しも嬉しそうな顔をせず吐き捨てた。
「あ~あぁ、終わっちゃった。これでこのゲームも終わりかぁ」
彼女にとってゲーム最強など欲しくもなかったのだ。
暇つぶし、所詮遊びだし、死んでも多少のペナルティがあるのみ。
現実に何の影響もないのだ。
「これが現実だったら多少喜んだのだろうけど……」
そんな独り言をつぶやく。
彼女は冷めていた。現実に、ゲームに、この世界に。
御剣 結衣 18歳 大学生。
現実は酷いものだった。
何をするにも学力主義、競争の世の中。
元々あまり体が強い方では無かったことから落ちこぼれとしてよくいじめられていた。
そんな時唯一の友人からVRMMOというものを教えてもらった。
最初はVRMMOと呼ばれるものの全てが新鮮で、何もかもが楽しかった。
でも……。
ゲーム内の詐欺、無差別PK……etc
言い出したらきりがない。所詮この世界も強いものが頂点に立つ。
そして、ゲームを作ったのもプレイするのも所詮"人"なのだと思ったその時から、
全ての感情が冷めた。
ゲームはただの作業になっていった。
そして5年の月日を経ていつの間にかゲーム内最強の存在となっていた
何でここまでやり続けたかって?
それは友人からの約束があったからだ。
一緒に1500Lv達成しようね、という一つの約束。
ボスっぽいのも一通り倒したし、レベルも限界突破して約束の1500Lv。
晴れて私も約束を守れたわけだ。
「ホント、現実もこんな簡単なら良かったんだけど……。ねぇ? 咲」
そう言って猫型をした使い魔、咲に話しかける。
すると、にゃぁと鳴いて咲は足元にすり寄ってきた。
あなたは気楽でいいわね。
さて、そろそろ戻ろうかと思って立ち上がると同時に
ポーン!と音を立てて目の前にログが流れた。
不覚にも少し驚いてしまった。
後ずさったことを少し恥じながら目の前のログを見る。
「レベルMAXになったあなたに神様からのプレゼント♪ 何か願い事をどうぞ」
なるほどイベントね、納得。でも神様ってまた面白い設定にしたわね。
願い……かぁ……。
ゲームの中なのだから最強装備を授けてくれるとか、
そんな些細な願いしか聞いてくれないのだろう。
でも武器などには興味はなかった。
もうこのゲームをやることは無いからだ。
どうしようか?と色々と考えていると……。
ふと、私は試したくなった。このシステムがどこまで願いを叶えてくれるのか。
気づいたら呟いていた、この先の運命を変えるであろう一言を。
「こんな世界に転生したいなんて願いでも叶えてくれるのかしら?」
その場に沈黙が訪れる
まぁそうだろうなぁとは思っていた。
所詮ゲーム、こんな願い無理なのだ。
そう思って一応武器でも貰っておこうかと口を開きかけた瞬間それは起こった。
爆音とともに周囲は光に包まれたのだ。
「何こ……れ………………。」
その光は疑問を最後まで言わせる前に彼女の意識も刈り取った。
同時に白一面だった世界に膨大な量のログが流れ始める。
「願いを確認。……受理。
これより設定を作成。
この世界をトレース。
………………。……。
……完了。
現在の世界のバックアップ。
…………。……………………。
……完了。
対象者の器を初期化、および5歳に設定。……完了。
種族、職、スキルなどを現在の物で固定、
及び能力値を《Unlimited Cross World》内の1500Lvで固定。……完了。
人物を反映。……誤差修正。……完了。
レベル制限解除。……完了。
現在の世界との互換性の影響により一部データの書き換えを実行。……完了。
許容範囲内の誤差によりアカシックレコードの内の情報の使用は不要と判断。
β版世界データを作成、反映できるかの最終チェック開始。
………………。……。
……完了。異常なし。
このデータをマスター版とし、現在の世界に反映します。
反映開始。……現在の世界を削除。……マスターデータを反映、定着化を開始。
…………。……………………。
……完了。
対象者に該当データを反映。……記憶保持により多少の誤差、
対象者の行動に誤差が発生。……修正。
…………すべての工程を完了。
これより世界名を変更。……世界名《Unlimited Cross World》……」
全てのログが流れ終わる
世界は変わり、彼女は……18歳にして新しい世界へ転生した。