第十八章(最終章):黄金の夜明け — 悪党たちが遺した、焦土なき未来
一九四五年、八月。
史実の一九四五年は、黒い雨と絶望の煙に覆われていた。しかし、五人の「悪党」たちが書き換えたこの世界の八月は、見たこともない黄金の光に満ちていた。
1. 西洋の盾:日米英の共同デバッグ
一九四二年から四三年にかけて、世界情勢は石原(正成)と是清が描いた「設計図」通りに、急速に収束していった。
「ヒトラーに引導を渡すのは、剣ではなく『算盤』と『科学』だ」
岩崎彦弥太(弥助)は、アメリカのフォードやウォール街の資本家たちと組み、イギリスへ対空・空戦の最新テクノロジーを「商品」として輸出した。
新型機の供与: 三菱・中島・川西の技術が結晶した「烈風(輸出用)」が英空軍へ配備。ドイツのメッサーシュミットを圧倒的な格闘性能でねじ伏せる。
電探連動対空砲: 日本が先行開発した新型電探と近接信管(VT信管)の技術がドーバー海峡を「鋼鉄の壁」に変えた。
ドイツ空軍は、一機の爆撃機もロンドンへ送り込めぬほどの損失を出し、ヒトラーは戦慄した。西側にはアメリカの無限の資本と、日本の未知の兵器が立ち塞がっている。
「……西への深追いは『割に合わん』。……全軍、東へ向けろ」
一九四三年、ドイツはフランスの解放を認め、連合国と電撃的な「西部戦線休戦協定」を締結。パリの街には自由の鐘が鳴り響いた。
2. 東部の地獄:独ソ戦のミートグラインダー
西を封じられたドイツの狂気は、その全質量をソ連へと向けた。
だが、そこには川島芳子(梓)が仕掛けた「憎悪の劇薬」が待ち構えていた。
「……ヒトラーとスターリン。二人の独裁者に、握手という選択肢を与えてはなりませんわ」
梓は「数神」部隊を使い、ドイツ軍には「ソ連軍による組織的なドイツ婦女への暴行計画」の偽情報を、ソ連軍には「ドイツ軍によるスラブ民族完全抹殺の秘密文書」を、それぞれの憎悪を極限まで煽る形で流し続けた。
東部戦線は、もはや戦争ではなく「生存をかけた殺戮の泥沼」と化した。一九四四年の冬、スターリングラードからベルリンに至る大地は、両軍の憎悪が物理的な熱量を持つほどの地獄へと変貌。
弥助が供給する大慶の石油は、ソ連を「負けない程度」に潤し、ドイツ軍を「引くに引けない距離」まで誘い込んだ。
両国の国力は、極寒の平原ですべての若者の血と共に吸い尽くされ、かつて世界を脅かした二大独裁国家は、共倒れという名の「消去」へと向かったのである。
3. 帝都の栄華:一九四五年のプロメテウス
そして、一九四五年、八月。
東京の街並みは、史実を知る者が絶句するほどの輝きを放っていた。
不夜城の帝都: 弥助の三菱資本が、是清の経済特区構想と結びつき、丸の内にはニューヨークを凌ぐ高層ビル群が立ち並ぶ。夜になれば、ネオンサインと最新式の電灯が街を昼間のように照らし出した。
平和の翼: 羽田には、山本五十六(辰巳)が育てた「輸送機、旅客機部隊」が、世界中から富と文化を運んでくる。
電脳の夜明け: 梓の数学者たちが、満州の極秘研究所で世界初の「真空管式超高速計算機」を完成。日本は情報の力で世界を統治するステージへと駆け上がった。
焼夷弾の雨も、黒い雲もない。そこにあるのは、五人の悪党たちが無理やり歴史の首を捻じ曲げて掴み取った、「黄金の平和」であった。
4. エピローグ:北極星の下で
新京(満州国首都)の丘の上。
夕日に染まる「アジアのシリコンバレー」を見下ろしながら、五人の老兵が集まっていた。
「……正成。見てみろ、あの一九四五年の空を。……雲ひとつないじゃないか」
白髪の増えた山本(辰巳)が、煙草を燻らせながら笑う。
「ええ。……六百年前、湊川で死ななくて良かったと、心底思いますよ」
石原(正成)は、隣で満足そうに「大慶石油の配当金」の帳簿を確認する是清と、三菱の新型自家用飛行機を自慢する弥助、そして相変わらず若々しい不敵な笑みを浮かべる梓を見渡した。
「……我々は、歴史という名の巨大なバグを、すべて駆除しきった。……これからの時代は、あの子たちのものだ」
石原の視線の先には、平和な満州の野を駆け回る子供たちの姿。その傍らには、かつて石原が大学時代に失った愛犬と同じ名の、真っ白な犬が元気に吠えていた。
「……さあ、悪党の仕事は終わりだ。……飲みに行こう。今夜の酒は、湊川のときより旨いはずだ」
五人の影は、黄金色に輝く王道楽土の地平線へと溶けていった。
(完)
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
独ソ戦の内容が史実以上の凄惨を究める形になりましたが今後の冷戦を回避する上では必要と考えました。
このあとリクエストが多ければ
山本五十六外伝や東洋のマタハリ外伝など書けるかとおもいます。弥助の外伝は経済系の知識か少ないのでご勘弁を
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長らくのご愛読、本当にありがとうございました




