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王道楽土設計図〜滅びのシステムを書き換える逆転の兵法〜  作者: 桐生宇優


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第十六章:真珠湾の逆トラップ — 巨人の肺を射抜く

一九四一年、十二月。


太平洋の緊張は沸点に達していた。

だが、史実と決定的に違う点が二つあった。

一つは、日本が日独伊三国同盟を拒絶し、国際社会で「アジアの良心」という仮面を被り続けていること。

そしてもう一つは、日本を戦争へ引きずり込もうとするアメリカの調略を、五人の悪党が逆に「利用」しようとしていることだ。


1. 梓の「毒」:足柄、フィリピン沖に散る(演出)


フィリピン沖。一隻の日本巡洋艦「足柄」が、穏やかな海を航行していた。


ヨーロッパ親善航海を終え、最後の寄港地ドイツから帰国する途上。だが、その艦内には操船するわずかの人員。

梓は、はるか先を航行する商船で数学者部隊に「解読されやすい偽暗号」を流させていた。

内容は「足柄はドイツから受け取った『新型爆弾の設計図』を輸送中」というもの。

功を焦ったマニラの米極東空軍は、公海上の親善艦に対し、警告なしに戦闘機隊を放った。


「……さあ、最高の舞台を用意してあげたわ。いらっしゃい、愚かな巨人の子供たち」


艦橋では最新の電探で接近する米軍機(P-40など)を捉える。

乗員は小型ボートで退避、近くまで迎えに来た潜水艦伊1に乗船。紺碧の海に消えていった。


ドォォン!! ドォォン!!

米軍機の機銃掃射と爆撃が、非武装の親善艦を強襲する。

だれも乗っていない「足柄」は無抵抗のまま攻撃を受け、被弾沈没した。

台湾を飛び立った俊足の烈風が状況を撮影。


梓は、即座に暗号を送信した。

「トラ・トラ・トラ。……毒蜘蛛、網にかかれり」


2. 石原と是清の「大義名分」:世界へのハック


「先生、扉は開きました。……歴史のバグが、今、修正されます」

新京の司令部で、石原莞爾は高橋是清に頷いた。


是清は即座に、全世界の報道機関、そしてワシントンへ向けて、緊急声明を発表した。


「非武装の帝国巡洋艦(足柄は親善艦)に対し、米軍が無差別攻撃を開始した。これは明白なる国際法違反であり、帝国に対する宣戦布告と見なす。我々はこれより、自衛のための最小限の武力行使を行う」


アメリカが日本を「騙し討ち」しようとした証拠を、梓の情報戦によって世界中にバラ撒いた直後の発表だ。国際世論は一瞬にして「日本は被害者」へと傾き、アメリカ国内の孤立主義者たちさえもルーズベルトを突き上げ始めた。


3. 「眼」の力と、辰巳の「外科手術」:戦艦ではなく「肺」を撃て


真珠湾の上空。雲間を抜けて現れたのは、山本五十六(辰巳)が率いる第一航空艦隊であった。

そこで米軍が目撃したのは、見たこともない形状の悪魔たちだった。


「……何だあの速さは!? 我々のワイルドキャットが止まって見える!」


三菱・中島・川西の合同チームが心血を注いだ新型戦闘機『烈風』が、圧倒的な速度と旋回力で米軍機を次々と食い散らかす。

そして、逆ガルウィングの巨躯を持つ艦上攻撃機『流星』が、精密な爆撃を開始した。


「野郎ども、よく聴け。……戦艦『アリゾナ』や『ネバダ』には目もくれるな。あんな鉄の塊、油がなけりゃただの浮き砲台だ!」


パイロットの瞳が捉えたのは、湾の北方に並ぶ白い巨大な円筒群。太平洋艦隊の生命線、四百五十万バレルの重油タンク。そして、船を直すためのドライドックだ。


流星から放たれた爆弾が、寸分の狂いもなくタンク群を貫く。凄まじい爆発とともに、黒煙が空を覆い、真珠湾は一瞬にして「燃える黒い監獄」と化した。


4. ドックと空母の「死に体」:新型電探の無双


真珠湾が燃えているその瞬間、湾外へ逃れようとしていた米空母『エンタープライズ』と『レキシントン』の前にも、予見していたかのように山本の別働隊が現れた。


「……石原、辰巳。……君たちの『眼』は、完璧だ」


弥助(彦弥太)は東京の三菱本社で、真珠湾の混乱の中でも米空母の位置を完璧に捉え続ける新型電探レーダーの信号を見つめていた。

第十二章での「大型空母一隻分の予算」の投資が、ここで決定的な成果をもたらしたのだ。


山本の機動部隊は、電探の「眼」で空母群の位置を把握し、烈風と流星のピンポイント攻撃で「舵」と「スクリュー」を破壊。

沈没はせずとも、修理ドックが破壊された真珠湾では、これらはただの「波間に漂う鉄屑」となった。


5. 弥助の「パシフィック・ブラックアウト」


真珠湾が燃えているその瞬間、マニラ、グアム、ウェーク島でも「事故」が多発していた。

「……おっと、手が滑ったよ。アメリカの旦那」

三菱合資会社の社員に化けた岩崎彦弥太(弥助)の工作員たちが、各地の燃料デポを次々と爆破。


弥助は、冷徹に計算を弾いた。

「これでアメリカ太平洋艦隊は、カリフォルニアまで二千マイルを漕いで帰るしかなくなった。……石原さん、太平洋から米軍の『呼吸』が消えましたよ」


夕刻。真珠湾攻撃の成功を知った五人は、それぞれの場所で北極星を見上げた。


戦艦群は無傷だが、動かす油がない。直すドックがない。空母は波間に漂うだけ。


アメリカは激昂したが、同時に「戦うためのインフラ」をすべて失ったことに気づき、戦慄した。


「……さあ、ここからが本番だ」

石原は不敵に笑った。

「アメリカが本気で怒り狂って『物量戦』を仕掛けてくる前に、是清先生の政治力で、奴らに『この戦争はコスパが悪い』と分からせてやる。平和な戦後への、最短ルートの幕開けだ」


一九四一年、十二月。

歴史のシステムをハックした五人の悪党たちが、世界という盤面で、最強の「王手チェックメイト」を指した。


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※史実解説:なぜ「ロジスティクス」が致命的なのか

燃料タンクの重要性(史実のミス):

史実の真珠湾攻撃で、日本軍が「やり残した最大のミス」と言われるのが、この燃料タンクへの攻撃です。当時、真珠湾には太平洋艦隊が一年間戦えるだけの重油(450万バレル)が備蓄されていました。これが全て失われれば、米艦隊はカリフォルニアまで撤退せざるを得ず、戦争は数年長引いたと言われています。

ドライドック(修理施設):

船は傷つけば修理が必要です。ドックを破壊されると、軽微な損傷でも本国まで戻らなければならなくなります。

烈風(A7M)と流星(B7A):

弥助の資本力と石原の未来知識でこれらが1941年に揃っていることは、現代で言えば「プロペラ機の中にF-35が混じっている」ような絶望的な戦力差を生みます。

重巡洋艦「足柄」

小説とは時期がずれますが

1937年(昭和12年)の欧州親善訪問は、往復で約半年をかけたヨーロッパを周遊する大航海でした。イギリスで式典に参加、最終寄港地はドイツになります。ちなみに船長の名前は醍醐さんと言います。この小説には最適な名前ですね。



和平交渉をどう進めていくのか

楽しみにおまちください

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