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ヴァレンシア•ヴェルストレート

――アルシュトーレン公国――


その後、ルートヴィヒはアルシュトーレン公国へと戻っていた。

フラムヴァーレが、正式に同盟国となることを伝えるために。


彼が報告を行う相手は、玉座に座す若き女性。


「ヴァレンシア大公」


ルートヴィヒは、膝を折らずに一礼する。


「予想通りです。フラムヴァーレには――

ヒストリアボードを書き換えるレキシがいました」


一瞬、空気が張りつめる。


「そして、彼らは……協力を惜しまないと」


「はっはっはっ!」


玉座の女性は、豪快に笑う。


彼女の名は

ヴァレンシア・ヴェルストレート。


二十四歳という若さで、アルシュトーレン公国を束ね、ガドライア帝国を滅ぼさんとする、女帝であった。


ヴァレンシアは、声を上げて笑った。


「そうか、そうか!

つまり――我が国を侵略しようとした、

あの憎きガドライア帝国の王を“殺せるかもしれない”ということだな!」


その声は、玉座の間に響き渡る。


ヴァレンシア・ヴェルストレート。

彼女は女性でありながら、

強く、荒々しく、そして気高く、冷静であり、狂っていた。


ガドライア帝国の兵を前にしても、

一歩も引かなかった王である。


ヴァレンシアは、ぎゅっと拳を握った。


「ルートヴィヒ。

よくぞ、ここまでアルシュトーレンを守ってきてくれた」


真っ直ぐに見据え、告げる。


「私を信じ、戦ってくれたな。

……ようやくだ。ここからは、反撃だ」


「もちろんです、ヴァレンシア大公」


ルートヴィヒは即答した。

だが、続けて一言付け加える。


「ただし……フラムヴァーレのレキシは、

まだ自らの意思で歴史を書き換えられないようです」


「先に言えっ!!」


ヴァレンシアは頬を膨らませて怒鳴る。

だが、その瞳は――

すでに帝国が滅ぶ未来を見据えていた。


やがて、にやりと笑う。


「ならば、こうしろ」


彼女は、楽しげに命じる。


「中立国で、ガドライア帝国に不満を持つ国々に流言を流せ。

――アルシュトーレン公国は、

ヒストリアボードの歴史を書き換える能力を“使いこなせる”レキシを擁するフラムヴァーレと同盟を結んだ。と」


「……信用されるでしょうか?」


ルートヴィヒの疑問に、

ヴァレンシアは即答しなかった。


代わりに、別の命を下す。


「そして――帝国支配下にある《ポストエーレ》の街を、解放する」


「……正気ですか?」


「正気だとも」


ヴァレンシアは、笑みを深める。


「使いこなせないのなら、“使わなければ死ぬ”状況を作ればいい」


ルートヴィヒは軽く頭を抱えた。


「はっはっは!」


高笑いが、玉座の間を満たした。


「無論、我らアルシュトーレン公国も兵を送る!同盟国だからなぁ!」


愉快そうに、宣言する。


「解放戦だ。ここで歴史が書き換われば、中立国も信じるだろう。

無論……賭けだがな!」


ルートヴィヒは、内心で思う。


――やはりあなたは狂ってるぜ。


だが同時に、

口元は、抑えきれずに吊り上がっていた。


――フラムヴァーレ城――


シャルルたちは、アルシュトーレン公国から届いた文書に目を通していた。


ポストエーレ解放戦に参戦されたし。

無論、レキシを同行させること。


「……随分とはっきり書くな」


カイラルが、思わず眉をひそめる。


「ヴァレンシア大公は、なかなかのじゃじゃ馬ですな。それで、シャルル様。どうなさるおつもりで?」


「無論、参戦する」


即答だった。


「ここで応じなければ、アルシュトーレン公国はフラムヴァーレを敵とみなすだろう。

それに――ポストエーレを解放できれば、他の国も立ち上がるかもしれない」


その言葉に、アヴニルが口にする。


「……つまり、僕の力にかかってるってことだよね」


「ああ」


シャルルは頷き、すぐに言葉を続ける。


「だが、気負うな。気負えば、勝てる戦も勝てなくなる」


そして、視線をカイラルへと向けた。


「ポストエーレについて、説明してくれ」


「はっ」


カイラルは静かに語り始める。


「ポストエーレは現在、帝国の直轄支配下にある街の一つ。かなりの圧政を強いられていると聞きます」


場の空気が、自然と引き締まる。


「街を統治しているのは、ダヴァーラ将軍。豪傑として名高く、戦場での武勇は折り紙付きです」


そして、問題はそれだけではない。


「さらに厄介なのが――魔竜」


「……魔竜?」


ジェドが思わず声を上げる。


「先代レキシによる“歴史修正”で生み出された存在だそうです」


「おいおい……」


ジェドは頭を抱える。


「槍や剣は通用すんのかよ?」


「分かりませぬ」


カイラルは首を振った。


「ただ、飛竜と同じであれば……倒せないことはない、かと」


「やっぱりガドライアだけ、文明というか……世界が違いすぎるだろ!」


ジェドが憤ったように叫ぶ。


「ずるじゃねえか!」


沈黙の中で、アヴニルがぽつりと口を開いた。


「……僕の力なら、倒せる可能性は……ある。よね?」


シャルルは、その言葉に笑った。


「違うな」


アヴニルを見る。


「アヴニルと、俺たちならだ」


その一言で、場の空気が少しだけ軽くなった。


だが誰もが理解していた。

――次の戦いも厳しいものになると。

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