日常
――フラムヴァーレ城――
翌朝、シャルルはカイラルに叩き起こされ、そのまま朝食を取っていた。
カチャカチャ。
ズゾゾ。
音を立てて、スープをすするシャルル。
「……王子。そろそろ、食事の作法を覚えてはいかがですか」
カイラルが、呆れたように言う。
「まあまあ、いいじゃないか。作法なんて。人は中身だぞ、カイラル」
軽口を叩きながらも、シャルルの思考は別のところにあった。
――アヴニルのことだ。
カイラルは信頼できる男だ。
だが、あれは俺から話すことではない。
そう結論づけ、シャルルは胸の奥にしまい込む。
「この後、また義勇団に顔を出すよ」
「……でしょうね」
カイラルは深くため息をついた。
――フラムヴァーレ義勇団駐屯地――
アヴニルは、フラムヴァーレ義勇団の駐屯地で暮らしていた。
「アヴニル!また剣の稽古かよ、真面目だねえ!」
朝っぱらから酒を飲んでいる大男、アルドフと、
その隣でニヤニヤしている細身のジェドが声をかける。
「シャルルの力になりたいからね」
アヴニルは、以前の無愛想さが嘘のように、自然に答えた。
「すっかり無謀王子になついちまったなぁ。
ま、俺らも人のこと言えねーけどよ」
二人は酒を飲みながら、豪快に笑う。
「おう、お前ら。ちょっとアヴニルに用がある」
シャルルが駐屯地に姿を現し、アヴニルを手招きした。
二人きりになると、シャルルは切り出す。
レキシとその力について。
「ヒストリアボードを作った先代のレキシと、僕は別人だよ」
「だろうな。あれは、俺が生まれる前から空にある」
「昨日も言ったけど、今の僕は自在に未来を操れない。
それに……たぶんだけど、僕以外にもレキシはいると思う」
「……他にも、レキシが?」
シャルルは、わずかに眉をひそめた。
それ以上、話は深まらなかった。
「シャルル、剣の稽古をしてくれない?」
そうアヴニルが口にし、シャルルはアヴニルの稽古に付き合うことにした。
「おいおい!シャルルとアヴニルがやり合うらしいぞ!」
義勇団の面々が集まりだす。
「シャルルに五百ヘイルだ!」
「いやいや、アヴニルも伸びてるぞ!俺はアヴニルだ!」
二人は向かい合い、剣を構える。
アヴニルが右から薙ぐ。
シャルルはそれを受け止め、距離を取る。
猛攻を仕掛けるアヴニル。
だがシャルルは、巧みに身をかわす。
次の瞬間、シャルルは地面を蹴り、土を跳ね上げた。
アヴニルは反射的に目を瞑ってしまう。
その隙に、アヴニルの首元へ剣先を向けるシャルル。
「俺の勝ちだ。惜しかったな!」
「ずりいぞー!」
野次と笑い声が飛ぶ。
アヴニルとシャルルも、顔を見合わせて笑った。いつもと同じ平和な一日が過ぎる。
――だが、この日。
ヒストリアボードは、新たな文字を書き記すこととなる。
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