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非日常

 ――フラムヴァーレ王国――


 ハドリニアフ大戦の最中、シャルルはエレメイア兵の受け入れや再配置などを淡々とこなしていた。


 「浮かない顔ですな。シャルル様」

 「ああ……どうも、ヴァレンシア大公と考えが合わん。あのお方は素晴らしい。だが、大義のために切り捨てすぎる……」


 それはアヴニルたちも同じ考えだった。仕方のないことだと理解はできる。だが、感情はそんなに割り切れるものではなかった。


 そしてハドリニアフ大戦終戦後、アルシュトーレン公国から再び封書が届く。


 大国ハドリニアフ王国がガドライア帝国絡みの戦争から身を引くこと。補給路の貸与。砦の一時使用など、具体的な条件が書かれていた。


 「……ヴァレンシア大公はことをなしたようだ」


 本来なら喜ぶべき報せだった。だが、シャルルの胸中には、エレメイア王国のことが尾を引き、どうしても素直に喜ぶことができなかった。


  その後、フラムヴァーレ防衛戦や、ポストエーレ解放戦、エレメイア援軍要請など、戦争が立て続けに起きたため、シャルルは治安維持と内政に力を注ぐことにした。


 たとえガドライア帝国を滅ぼせたとしても、自国を蔑ろにすれば元も子もない。

 戦争が続けば民の不安を煽る。

 そして、兵士の数は無限ではない。


 「アヴニルたちもしばらくは気負わず過ごしてくれ。まあ、訓練はサボられては困るがな」

 シャルルは少し笑いながら口にする。


 「こうしてる間にもガドライア帝国が、攻めてきたりしないかな?」

 アヴニルは不安そうに尋ねる。

 

 「ガドライア帝国だって、我が国と同じで厳しいはずだ。特にガドライア帝国は内外に敵を作りすぎているだろうからな。直ぐには動けないだろう」

 あくまで憶測ではあるが、シャルルは不安を煽るような言い方はしなかった。


 「いいじゃねえか! アヴニル! 休暇だぜ!」

 ジェドが嬉しそうに声を上げる。


 戦いがないことが普通だったのに、戦いがあることが普通になってしまっていた。

 皆、どう気を晴らせばいいのか、分からなくなっているのかもしれないな。そんなとき、ジェドの軽口は助かる。シャルルはそう思った。

 

 「いいか、アヴニル! いつ死んでも後悔がないように楽しんだ方がいいんだよ! 人生なんてのは!」

 ジェドがアヴニルに人生の助言を送る。


 アヴニルは少し考え、やがて顔をあげた。

 「……確かに、ジェドの言う通りかも」


 「お、いいねぇアヴニル! じゃあ遊びに行こうぜ」

 ジェドがアヴニルの肩を組み、スキップするように去っていく。


 「ジェドには助けられますな」

 カイラルが呟く。


 「ああ」

 シャルルも静かに同意した。

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