表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

歴史に頼らぬ戦争 各国の思惑

――エレメイア国――


「アーロイ王!ガドライア帝国とハドリニアフ王国が兵を率いて進軍中との報告が入りました!」


 報告を受け、アーロイ王は愕然とした。

「な……!?ヒストリアボードには、何も書き記されていないではないか……!」


 ヒストリアボードが出現して以降、そこに記されぬ戦争などほとんど存在しなかった。

 それはガドライア帝国が、リスクを嫌っていたためである。


「すぐに間者を放て!同盟国へ応援を要請しろ!」

 アーロイ王はすぐに命令する。


「はっ!」


 アーロイ王は深く息を吸い、側近の将校へと視線を向ける。

「ヴォーバン。この戦、どう見る」


 呼ばれた男――ヴォーバン将軍。

 エレメイア王国随一の騎士であり、王の忠臣。


「……正直に申し上げます」

一拍置いて、答える。


「かなり分が悪い。ですが、応援が来るまで耐え凌げば……勝ち目は、まだあります」


 そして、苦い表情で続けた。

「それにしても……

 ガドライア帝国のファウスト王も、嫌な“成長”を遂げましたな」


「……そうか」

 アーロイ王は、拳を握りしめた。


「戦の準備をせよ。民には、避難の号令を出す!」


 命じたものの、その手は――わずかに震えていた。


「……やはり、参戦の意を示したのは、間違いだったのかもしれぬな」

 だが、王は退かなかった。


 その震えは、実のところ――ガドライア帝国側も同じだった。


 勝利を約束されはずの戦で、敗戦が二度続き、次は、ヒストリアボードに頼らぬ戦。

 震えぬはずがなかった。


 だが――

 ハドリニアフ王国だけは、違った。


 元よりレキシを持たず、属国でもなく、ガドライア帝国と対等な同盟を結ぶ大国。


 その軍を率いる将の名は――アレンツ。

 彼は、戦いそのものを――好んでいた。


――フラムヴァーレ王国――


 シャルルのもとへ、エレメイア王国からの間者が駆け込んできていた。


「シャルル王!ガドライア帝国とハドリニアフ王国が、我がエレメイア王国に侵攻しております!援軍を要請します!」


 シャルルは、間を置かずに返答する。


「……応じぬことは、正義ではない」

 即断。


「兵を率いる。すぐに向かおう」


 その場にいた者たちが、息を呑む。

「ガドライア帝国のレキシも不完全だとしたらヒストリアボードには……今は、新しく歴史を書き記せないのかもしれないね」


 アヴニルが、静かに呟いた。


 シャルルは頷く。


「だからこそだ。書かれていない未来なら――人が、選ばねばならない」


――アルシュトーレン公国――


 エレメイア王国からの同じ報せは、ヴァレンシア・ヴェルストレートのもとにも届いていた。


「はっはっはっ!」

 彼女は、心底楽しそうに笑う。


「ついに来たか。ファウスト王を――あのヒストリアボードから引き離したぞ!」


 だが、その笑みはすぐに引き締まり、思考を巡らせる。

(エレメイア王国への援軍か。エレメイア王国の戦力で大国の兵を抑えられるか……?マウリッツ王国のフランソワ王もロアルテューヌ王国のセオドア王も腰は重いであろう……)

 そして決断をする。


「兵を率いよ。そして、マウリッツ王国、ロアルテューヌ王国に間者を放て」


 ヴァレンシアは理解していた。

 両国は、すぐには動かない。


 だからこそ、催促ではなく“圧”をかける。

 その読みは――正しかった。


――マウリッツ王国・ロアルテューヌ王国――


 マウリッツ王国の王フランソワも、

 ロアルテューヌ王国の王セオドアも、エレメイア救援の要請に、即答しなかった。


――様子を見る。

 それが、彼らの選択だった。


――エレメイア王国――


 エレメイア王国は、大国二国を相手に苦戦を強いられていた。

 戦線は崩れ、ついには、ほぼ籠城にまで追い込まれている。


「ええい!!各国の応援は、まだ来ぬのか!!」

 アーロイ王が、思わず叫ぶ。


 だがその叫びとは裏腹に、希望は確かに近づいていた。

 エレメイア王国近辺にフラムヴァーレ軍の援軍が来ていたのだ。


 全軍ではない。だが、シャルルは自国で出せる最大限を率い、彼らはすでにエレメイアのすぐ近くまで行軍していた。


 その報せは、伝令によって、アーロイ王の耳にも届く。


「……フラムヴァーレ王国が、来ている……?」


 その情報は、敵陣にも伝わっていた。


 ガドライア帝国の兵は、動揺する。

――たった少数の軍勢であるにもかかわらず。


 だが。ハドリニアフ軍を率いる将、アレンツだけは違った。


「……来たか、他にも援軍が来るかもしれん。集まられると厄介だ。突撃せよ」

 その報せを受け、籠城中のエレメイア軍への突入をはやめる決断をくだす。


 数刻後。

 籠城するエレメイア城へ、ハドリニアフ軍の精兵が、なだれ込む。


 城壁の外では、剣戟と怒号が交錯し、内ではもはや退路も尽きていた。


 そして。


 エレメイア周辺を見渡しても――

 アルシュトーレン公国、マウリッツ王国、ロアルテューヌ王国の兵影は、極めて少数しか確認できなかった。


 援軍は、フラムヴァーレ王国しか来ていない。

 間に合わなかったのか。見捨てられたのか。様々な思考が兵たちに宿る。

モチベーションのためにも評価していただけると大変喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ