心証の崩壊
りんと武蔵――二つの正義が、真正面からぶつかる。
それは力の優劣を競う戦いではない。
信念と在り方、そのものを賭けた対話。
“必要悪”として秩序を守る者と、
“変革”によって未来を切り開こうとする者。
どちらが正しいのかではない。
どちらが、この世界に相応しいのか。
その答えが、今、示される。
アカデミーのメインジムは奇妙なほど静かだったが、空っぽではなかった。
スタンドには、小さなグループに分かれて、審判委員会の十五人のメンバーが座っていた。彼らの顔は期待と不安が入り混じっている。僕はスタンドの近くに立っていた。隣には佐々木がいて、彼は緊張して爪を噛んでいた。
「本当に……来ると思うか?」佐々木の声が震えていた。
「来るよ。武蔵は直接的な挑戦を決して断らない。それが彼のやり方の一部だから」
ジムの中央で、りんが立って待っていた。彼女の姿勢はリラックスしているが警戒している――弦を張ったが放たれていない弓のように。制服から、より快適で戦闘向けの服に着替えていた。標準的なものより軽く柔軟なバージョン。彼女の弓はすでに手の中で活性化していて、指が慣れた様子で弦を撫でている。
彼女は……平穏に見える。
そう思いながら、僕は彼女を観察していた。
アカデミーで最も強力な生徒と対峙しようとしている人には見えない。すでに決断を下し、その結果に平和を感じている人のように。
ジムのメインドアが開いた。
轟音ではなく、不吉な静寂とともに。
最初に入ってきたのは武蔵だった。彼の存在が即座にその空間を満たした――まるで重力が彼の周りで強まったかのように。彼の制服はいつも完璧で、すべての折り目が完全に整列し、ブレザーのすべてのボタンが人工照明の下で輝いている。
彼の後ろに、切り離せない影のように、ヨルムがいた。彼のいつもの笑顔があったが、今日はもっと……期待に満ちているように見えた。重要な実験を目撃しようとしている科学者のように。
武蔵は中央まで歩いて行き、りんから十メートルの距離で止まった。二人の目が合い、僕は距離からでもその緊張を感じることができた。
「霧崎りん」
武蔵の声がジムの静寂に響いた。
「危険な道を選んだな」
「へえ、あたしのこと調べたんだ?」
「いや。君を覚えているよ。去年のバトルイベント。君のことはよく覚えている。いつも危険な賭けをするタイプなのか?」
「危険はずっとここにあったわ、武蔵会長」
りんは冷静な口調を変えずに答えた。
「ただ、それを無視することを選んだ人たちがいただけ」
スタンドにざわめきが走った。委員会のメンバーたちが前のめりになり、やり取りに引き込まれている。
「無視だと?」
武蔵はほとんど気づかないような手のジェスチャーをした。
「俺は秩序を維持している。このアカデミーが機能することを可能にする構造を保っている。秩序がなければ混沌がある。構造がなければ無政府状態だ。そして混沌の中で、最も弱い者が最初に倒れる」
「じゃあ、この秩序って何?」
りんが一歩前に出た。
「生徒たちがただの兵士?実験対象? クラスが空っぽになっていくのに誰も質問しない?恐怖が最も価値のある交換手段になってる秩序のこと?」
「視点の問題だ」
武蔵は腕を組んだ。
「秩序は、傷つける人数より多くの人々を守る。君と君の友人たちが促進している混沌――その制御されていない理想主義――は、構造がそれらを抑制しなくなった時、強者が弱者を食い尽くすことにしかつながらないぞ」
りんはゆっくりと首を横に振った。
「それはあなたに信じさせられたことよ。でも、思いやりのない秩序は、良いマナーを持った専制政治に過ぎないわ。あたしは生徒たちがトイレで泣いているのを見たことがある。試験で一つ間違えれば下位クラスに送られることを知っているから。教師たちが虐待を無視するのを見たわ。『階層を維持することの方が重要』だからって。それが保護なの?」
「それは生存だ」
武蔵の目が細くなった。
「外の世界はさらに残酷だ。このアカデミーは生徒たちを現実に備えさせている――誰もが仲良くするおとぎ話のためではない」
「じゃあ、現実が残酷でなければならないって誰が決めたの?」
りんがさらに一歩前に出た。
「どうして新しい現実を創造できないの? 人の価値が他人を押しつぶす能力ではなく、彼らを持ち上げる能力で測られる現実を」
スタンドにざわめきが走った。委員会のメンバーたちが前のめりになり、やり取りに引き込まれている。
武蔵はまばたきしなかった。
「システムは完璧ではない。しかし必要だ。代替案は――」
「――考えたことあるの?」りんが遮った。
僕を含めた委員会のメンバー数人が息を呑むのが分かった。誰も武蔵を遮ることはしない。
「それとも、ただ目の前にあった道だから、これが唯一の道だと受け入れただけ?」
初めて、僕は武蔵の目に何かの閃きを見た――怒りではなく、もっと複雑な何か。苛立ち?諦め?
「システムの限界は知っている」
武蔵は少し声を低くして言った。
「その欠陥も知っている。しかし、構造が放棄されたときに何が起こるかも知っている。俺は見たことがある――」
彼は止まった。まるで言い過ぎたかのように。
りんはその隙を突いた。
「何を見たの、武蔵会長?どんなに腐敗していようと、どんな秩序でも変化の可能性よりマシだとあなたに確信させるほど、何がそんなに恐ろしかったの?」
続いた沈黙は、蛍光灯の音が聞こえるほど濃密だった。
「それは……」ついに武蔵が言った。「この挑戦には関係ない」
「関係あると思うわ」
りんは主張した。
「だって、もし完全には信じてもいないことのために戦っているなら……じゃあ、何のために戦ってるの?」
議論は続いた――肉体的な戦闘と同じくらい激しい言葉の決闘。僕は魅了されて観察していた。
りんは議論に勝とうとしているんじゃない。理解しようとしている。そして理解しようとすることで、武蔵に自分自身を理解させている。
ついに、ヨルムが前に出た。彼の足音は木の床で静かだった。
「魅惑的な哲学的交換だね」
声は鋼鉄の上の絹のようだった。
「でも、これらの言葉を行動に移す時が来たと思うんだが。そう思わないかい?」
「審判委員会が審判を提供すべきだ」
佐々木が席から立ち上がった。彼の声は少し震えていたが、言葉は明確だった。
「通常ならね」
ヨルムは頭を傾けて認めた。
「でも、僕が審判をするよ。公平性を保証する」
「待って!」
佐々木がスタンドから飛び降りた。
「審判委員会がこのバトルを監督しなきゃ!僕たちの義務だ!」
ヨルムは興味深そうに彼を見た――興味深い標本を観察している科学者のように。
「君たちの中で、このバトルの審判を務めるのに必要なものを持っていると思う人は何人いる?つい最近まで諦めの穴の中にいた君たちの中で、十分に公平でいられる人は?」
委員会の数人のメンバーが抗議し始めたが、ヨルムは続けた。声を上げる必要なく、異議を押し流した。
「それに」
付け加え、視線がスタンドを巡った。
「もし委員会が審判を提供して、りんさんが勝ったら、公平性について疑念が生じないか?新しい会長を贔屓したと非難されないか?一方、僕が審判をして、りんさんが勝ったら……まあ、彼女の勝利は否定できないほど正当だ」
その論理は完璧で、僕もそれが分かった。委員会のメンバーたちが視線を交わし、ヨルムの言葉の真実を認識しているのが見えた。
「あたしは構わないわ」
ついにりんが言った。
「ヨルム君が審判でいいわ」
ヨルムは微笑んだ――彼の目に本物の喜びの閃きがあった。
次の数分間は細心の準備だった。ヨルムがルールを説明した――バトルは標準ルールになる。りんと武蔵はそれに同意した。
りんと武蔵は対極の位置についた。
りんの呼吸がより深く、より集中していくのに気づいた。一方、武蔵は彫像になったようだった――すべての不必要な動きが排除され、すべての感情が抑制されている。
ヨルムが片手を上げた。アカデミーのシステムが応答し、ジムの周囲にライトが点滅した。透明なエネルギーフィールドが床から立ち上がり、りん、武蔵、ヨルムを囲むドームを形成した。外側から、僕たちは以前のバトルフィールドとは違って、中で起こることがすべてはっきりと見え、聞こえた。
「バトルスタート」
システムの金属的な声がその言葉を告げ、銃声のようにジムに響いた。
武蔵が最初に動いた。彼の銀色の剣が、まるで常にそこにあったかのように手に現れた――淡い銀色の輝きを放つ長くまっすぐな刃。派手な動きはしなかった。ただ完璧な防御姿勢をとった。彼の体のすべての角度が最大の効率のために計算されている。
りんは弓を動かして応答した。弦を引くと、光の矢が実体化し、その先端が変化する元素エネルギーで輝いていた。
武蔵は移行なしに攻撃した――銀色の閃光だけが見えるほど速い動き。剣がりんが一瞬前にいた場所の空気を切った。しかし、彼女はもうそこにいなかった。僕が知らなかった優雅さで横に移動していた。
矢が放たれた――武蔵に向かってではなく、天井に向かって。僕が彼女が何をしているのか疑問に思ったちょうどその時、矢が武蔵の上に短剣のように降り注ぐ光の結晶の雨に爆発した。
武蔵は動じなかった。左手のジェスチャーで、銀色のエネルギーシールドが彼の上に現れ、結晶を逸らした。しかし、それは陽動だった――りんはすでに三本の矢を放っていた。それぞれが不可能な軌道を描き、空中で蛇のように曲がっている。
「興味深いな」武蔵が呟いた。「しかし予測可能だ」
剣が空中に単純なパターンを描き、近づいてくる矢がただ……存在しなくなった。破壊されたのでもなく、逸らされたのでもなく――無効化された。まるで決して放たれなかったかのように。
りんが驚いて瞬きした。
僕は悪寒を感じた。
あのスキルは攻撃を否定するだけじゃない――攻撃の可能性そのものを否定している。
「幻影は自分の感覚を信頼する敵に対しては有用だ」
武蔵はゆっくりと前進しながら言った。
「しかし、俺は自分の感覚を信頼していない。論理を信頼している。そして論理は、君の矢が俺の剣が否定した空間に存在できないと言っている」
「じゃあ、論理を使わないで」りんが答え、微笑んだ。
武蔵が突進した。彼の動きは、普通の観察者にとっては銀色の閃光に過ぎないほど速かった。しかし、りんはすでに反応していた。回転しながら同じ流れるような動きで射撃した。彼女が放った氷の矢は武蔵に直接向かっておらず、彼の前の床に向かって、滑りやすい表面を作り出した。
武蔵はペースを落とさずに軌道を調整し、彼の足が本来ならないはずの場所で摩擦を見つけた。彼の剣が空中に銀色の弧を描き、突然三つの幻影の彼自身が現れ、それぞれが異なる方向に動いている。
そのスキルを覚えていた。最大五つの幻影を作り出し、彼の動きを複製するが、それぞれが元の本体をわずかに弱める。
りんは動じなかった。彼女の目が一瞬閉じられ、開いたとき、淡い銀色の光で輝いていた。
あれは彼女の新しいスキル――『狩人の目』。エネルギーの流れを見ることができ、本物と幻影を区別できる。
流れるような動きで、りんは素早く連続して三本の矢を放った――幻影にではなく、空中の特定のポイントに。それぞれの矢が小さな風の嵐に爆発し、幻影を煙のように散らした。
今明らかになった武蔵は、わずかにうなずいた――有望な生徒の仕事を承認する教師のように。
「いいだろう」彼は言った。「しかし、それはただのテストだ」
彼の剣が激しく輝き、刃の周りの空気が歪み始めた。武蔵は再び攻撃したが、今回は剣が直線に動かなかった。異なる現実の面を滑るように見え、不可能な角度から突然現れた。
あれは彼の別のスキルなのか?
りんはかろうじて避け、首から数センチのところで空気が切られるのを感じた。二人の間に炎の網を形成する火の矢の連射で反撃した。
「どうして?」
りんが息を切らしながら尋ね、距離を稼ぐために後退した。
「どうして明らかにあなたを利用しているシステムを守るの? あなたを守護者に変えながら、あなたが守るべきすべてを腐敗させているシステムを?」
武蔵が急停止し、剣がわずかに下がった。
「利用?」
彼は繰り返し、僕は初めて彼の声に苦々しさのようなものを聞いた。
「俺たちは皆利用されている、霧崎さん。君は君の理想によって。俺は俺の義務感によって。問題は、俺たちが利用されているかどうかではなく、何の目的のためかだ」
「じゃあ、あなたの目的は破壊された人生に値するの?」
りんは主張し、彼らの間に光の障壁に変わる矢を放った。
「一年生が廊下を歩くときの目の恐怖に?三年生の目の諦めに?」
武蔵が障壁を攻撃し、剣が目に見える努力で二つに切った。
「見ていないとでも思っているのか!」
彼は叫び、その音は彼の通常のコントロールから外れていて、ヨルムさえも眉を上げた。
「毎晩、転校の報告書、事件の報告書を確認しながら、次にシステムが『秩序』の祭壇で生徒を犠牲にすることを要求するのはいつかと自問していないとでも思っているのか!」
その告白は爆弾のように落ちた。
りんは弓をわずかに下げ、目を見開いた。「じゃあ……知ってるのね」
再び攻撃し、今回は武蔵が矢が腕をかすめるのを避けられなかった。深刻な傷ではなかったが、彼の完璧な制服に最初の印だった。
武蔵はその傷を見て、それからりんを見た。彼の表情に何かが変わった――怒りではなく……好奇心。
「君は権威に挑戦した他の者たちとは違う」
彼は認めた。
「権力を求めていない。君は……正確には何を求めているんだ?」
「佐々木くんがしたように、もう誰も隠れなくていいように」
りんは一時的に弓を下げて答えた。
「もう誰も、原則を裏切るか押しつぶされるかを選ばなくていいように」
武蔵はこれを考えているようだった。一瞬、戦闘が止まり、二人の敵対者はただ見つめ合った。
「知っているか」
武蔵は声を低くして言った。
「生徒会長に選ばれたとき、内部から物事を変えられると思った。ルールをより公正にできると。しかし、高く昇れば昇るほど、ルールが問題ではないことに気づいた」
りんは首を傾けた。「じゃあ、何が問題なの?」
「ルールを作る人間だ。そしてそれを執行する人間だ」
武蔵は銀色の光で輝く剣を見た。
「このアカデミーは……もっと大きな何かの一部に過ぎない。俺でさえ完全には理解していない何かの」
自分の無知を認めている。自分の無力さを。
「じゃあ、どうして助けを求めないの?」
りんの声は今や柔らかく、戦闘のものではなく、本物の質問だった。
「どうして理解さえしていない重荷を一人で背負うの?」
剣が銀色のエネルギーの渦を作り出し、りんを後退させた。
「もし俺がここにいなかったら、もし俺より……妥協していない……誰かがこの地位に就いたら、もっと悪くなるだろう。少なくとも俺は疑問を持つ。少なくとも俺は限界の中で戦って被害を軽減しようとしている」
「軽減?」
りんは別の攻撃を避け、床を転がって低い位置から射撃した。
「それで十分なの?システムが生徒を食い続けている間、軽減するだけで?」
「十分じゃない!」
その告白は窒息した叫びのように出た。
「決して十分じゃなかった。でも、これが俺にあるものだ。これが俺にできることだ」
武蔵は別のスキルを発動した――僕が見たことのないもの。剣から銀色のルーンが出現し、空中に浮かび、りんの周りにゆっくりと収縮し始める幾何学的な網を形成した。
ルーンがりんの周りを回転し、彼女を囚えるように。僕はそのスキルが何をするのか推測することしかできなかった。一見したところ、対戦相手の動きを妨げるスキルのようだった。
りんは周囲を見回し、評価した。それから予期しないことをした――弓を下ろした。
「じゃあ、システムが壊れていることを認めるのね」
武蔵の声とは対照的に、彼女の声は冷静だった。
「それを変える本当の力がないことを認める。ただの……衰退の管理者だということを認める」
武蔵は静止し、ルーンの網が不安定に点滅した。
「そうだ……」
囁き、その言葉が身体的な努力以上の代価を払ったようだった。
「すべてにそうだ。俺はシステムを破壊するほど強くない。その欠陥を無視するほど弱くもない。ただ……できるだけ長く破片を一緒に保とうとしている誰かだ」
武蔵はもう一方の手で動きをし、ルーンが強く輝き、りんが膝をついた。効果をすぐに感じ、動きが重くなった。
武蔵は前進し、剣が新たな強度で輝いていた。
「すまない、霧崎さん」
彼は言い、僕は初めて彼が本気でそう言っていると信じた。
「しかし、君の理想は現実の世界では生き残れない。そして、君がここでその教訓を学ぶことを望む。俺が被害をコントロールできる場所で。外で、君を守れない場所ではなく」
りんはフィールドと戦い、すべての動きが途方もない努力を必要とした。しかし、絶望する代わりに、微笑んだ。
「分かった?」
彼女は歯を食いしばりながら、立とうと戦いながら言った。
「今でさえ、保護について話してる。勝利についてじゃない。被害のコントロールについて。それがあなたを彼らと違うものにしているの、武蔵会長。あなたはまだ気にかけてる」
武蔵が止まった。剣が一センチ下がった。「どういう意味だ?」
「このシステムを本当にコントロールしている人たち――あなたより上にいる人たち、顔さえ見せない人たち――彼らは被害のコントロールなんて気にしてない。彼らにとって、僕たちは実験対象。統計よ」
りんは圧倒的な圧力に逆らって、一歩前に踏み出した。
「でも、あなたはまだ倒れた生徒一人一人を数えてる。強制転校の一つ一つを。涙の一つ一つを。だから、このバトルはあたしより、あなたの方が傷ついてるのよ」
武蔵は答えなかった。しかし、僕は彼の手の震えを見た。
「俺は……十分に強くない」
武蔵は呟き、その言葉が彼自身と同じくらい誰にでも驚きを与えたようだった。
突然、ルーンが激しく輝くのをやめ、りんはそれに気づいて、武蔵の隙を突いた――武蔵の物理的な防御の隙ではなく、彼の心理的な鎧の隙。その疑いの瞬間、認められた脆弱性の瞬間に。
りんの最終スキル――『誓いの射撃』。
普通の矢を使わなかった。弓から純粋な光の線が出現し、元素によってではなく、りんの決意の本質そのもので形成された――僕への、クラスへの、システムに傷つけられたすべての人への彼女の約束。
光は武蔵の体に向かわなかった。銀色の剣に向かった。
光が剣に触れたとき、何か異常なことが起こった――エネルギーの武器が異なる色――銀色ではなく、金色――で輝き始めた。そして一瞬、僕はりんが何をしているのかを見ることができた――武蔵を攻撃しているのではなく、彼の孤立を。すべてを一人で背負わなければならないという彼の信念を。
剣が消えた。武蔵は唖然として空の手を見た。
りんはすでに三本の矢を準備し、即座に射撃した。矢は武蔵の体ではなく、りんを囲むルーンの網に向かった。衝撃すると、網は壊れなかった――溶けた。
武蔵は後退し。「何を……?」
「欠陥を見てる」
りんはゆっくりと近づきながら言った。
「でも、それらを修復しようとする代わりに、ただもっとコントロールで覆ってる。もっとルールで。最初に亀裂を引き起こしたのと同じもので」
別の光の矢が弓に実体化した。
「本当の力は、壊れたシステムを一緒に保つことにあるんじゃない、武蔵会長。それを解体して、もっと良いものを構築する勇気を持つことにあるの」
武蔵は、それからりんを見て、それから自分の手を見た。僕は彼の目の中の戦いを見ることができた――彼の確信が、常に知っていたが決して完全には認めなかった真実と衝突していた。
「そして、もし僕たちが構築するものがもっと悪かったら」
武蔵は今や囁くような声で言った。
「じゃあ、もう一度構築し直すわ」
りんは単純に答えた。
「何度でも、うまくいくまで。だって、それが僕たち人間がすることだから。失敗して、学んで、また挑戦する」
永遠の瞬間、武蔵は動かなかった。
「降参する……」
とてもシンプルなその言葉が、フィールドの静寂に響いた。
科学的な強度で観察していたヨルムは、ゆっくりとうなずいた。
「バトルは終了した!」
ヨルムは宣言した。
「降参による勝利。勝者――霧崎りん!」
エネルギーフィールドが溶解した。音が突然戻った――委員会メンバーの息を呑む叫び声、りんの切れた呼吸、武蔵の触知できる沈黙。
武蔵は誰も見なかった。尊厳をマントのように拾い上げ、振り返った。
「審判委員会には今、新しい委員長がいる」
振り返らずに言った。
「合意したことを履行する」
そしてジムを出た。彼の背中はまっすぐだったが、歩みはいつもより確かではなかった。
ヨルムがそれに続いたが、りんに最後の視線を投げる前ではなかった――敬意のようなもの、あるいは賞賛……あるいはもっと別の何かを含む視線。
ジムはコントロールされた混沌に爆発した。委員会のメンバーたちがスタンドから駆け下り、りんを抱擁と背中を叩いて囲んだ。佐々木は声を上げて泣いていたが、それは安堵の涙、再燃した希望の涙だった。
「やったんだ!」
誰かが叫んでいた。
「武蔵会長を一対一のバトルで倒した数少ない人の一人だ!」
僕は近づき、あまりにも激しくて痛いほどの誇りの波を感じた。りんは僕を見て、呼吸はまだ少し荒れていたが、本物の笑顔が彼女の顔を照らしていた。
「やったわ」
彼女は言い、自分自身でも完全には信じられないかのように。
「信じられなかった」
僕は言い、その言葉が不十分に感じた。
「勝っただけじゃない。彼を……変えたんだ」
「彼がすでに知っていたことを見せただけだと思う」
りんは武蔵が出て行ったドアを見ながら呟いた。
「ただ、それを認める許可を与えただけ」
祝賀会は審判委員会の教室に移動した。数ヶ月ぶりに、その空間が生き生きとして感じられ、笑い声と活気のある会話で満たされていた。誰かが飲み物とスナックを手に入れ、一瞬、すべてがかかっていることを忘れるのは簡単だった。
僕は隅から観察し、平和の瞬間を自分に許していた。
もしかしたら、これは本当に機能するかもしれない。もしかしたら、本当に――
ドアが開いた。
力強くではなく、不穏な柔らかさで。
そして入ってきた人物が、僕の肺から空気を抜き去った。
リリス。
とても洗練され、完璧で、繊細で、その存在が教室でより不協和音になっただけだった。彼女の目が、捕食者の精度で教室をスキャンしていた。
彼女は教室の中央に向かって進み、その道で祝賀会が死に、凍りついた沈黙に置き換えられた。
「おめでとうございますわ」
リリスは言い、彼女の声は囁くようなメロディーだったが、それでも部屋を満たした。
「壊れていた……柱を取り戻されましたのね。注目に値する成果ですわ」
彼女の視線が部屋を巡り、各顔に短く止まってから、ついに僕に落ち着いた。そして彼女の目が僕のものと出会ったとき、僕は古い恐怖が戻ってくるのを感じた――彼女との遭遇の記憶、彼女の圧倒的な力、顕微鏡の下の昆虫である感覚。
しかし、今回は後退しなかった。今回は視線を保った。
佐々木が前に出て、彼の新しい勇気が震えていたが、存在していた。「何が望みだ?これは内部の問題だ」
「内部?」
リリスは微笑んだ――彼女の目には届かない表情。
「このアカデミーで『内部』のものは何もありませんわ。すべてが、生徒の反乱の夢よりもはるかに大きな利益と相互接続されていますの」
彼女の視線は佐々木の上を、まるで煩わしい蠅のように通り過ぎ、僕に落ち着いた。そしてそこに留まった。背中を冷たい汗が流れるのを感じた。
「ここで何を求めてるんですか、リリスさん?」
「ただ観察することですわ。そして……警告を提供すること」
「警告?」
「皆様に警告を」
リリスはついに僕から視線を外し、部屋を巡った。
「夏休みが数日後に始まりますわ。そして皆様がこの小さな勝利を祝っている間、はるかに大きな力が準備を整えていますの」
部屋は静寂を保ち、各人が彼女の言葉を処理していた。
「それはどういう意味だ?」僕は声を安定させようと強いた。
「その期間中、このアカデミーの物事はかなり……動きますわ。バトルに関してはね」
りんが僕とリリスの間に入り、弓が手に実体化した。
「これ以上誰も脅すことは許さないわ」
リリスは笑った――奇妙に音楽的だが、完全に温かさを欠いた音。
「脅すために来たのではありませんわ。知らせるために来ましたの。なぜなら、奇妙なことに、あなた方の利益と私のものが……一時的に一致するかもしれませんから」
リリスは完全に僕の方を向き、僕は彼女の注意の全重量を感じた。
「皆様がこれまでに経験したことは、ほんの……序章ですわ。ウォーミングアップ」
彼女は僕に向かって歩き、他の者は本能的に離れた。
「休暇中、このアカデミーに蓄積されてきたエネルギー――あなた方のスキルのエネルギー、紛争のエネルギー、希望と恐怖のエネルギー――が臨界点に達しますわ」
一メートル離れたところで止まり、僕は彼女の目に映る自分の姿を見ることができた。
「そしてそれが起こるとき、エーテリアルはより頻繁に現れるだけではありませんわ。より強く現れますの。より知的に。より……協調的に」
佐々木が抗議しようとした。
「それはただの推測だ! 知る方法がない――」
「ありませんの?」
リリスは彼を見さえせずに遮り、目は僕に固定されたままだった。
「このアカデミーのエネルギーの流れを監視していないとでも?観察し、測定し、計算していないとでも?」
彼女の笑顔が広がり、完璧な歯の閃きを見せた。
「単純に言いますわ、勇敢な男子。あなたとお友達がこのすべての……反乱……で生成してきたエネルギーは、灯台のようなものですの。そして特定のものは灯台に引き寄せられますわ」
僕は理解したと感じた。
「エーテリアルは……そのエネルギーを餌にしている」
「ブラボー」
リリスは柔らかく、皮肉に拍手した。
「そうですわ。そして休暇中、ほとんどの生徒が『リラックス』している時、エネルギーが残っている者たちに集中している時……まあ、結果は興味深いでしょうね」
彼女の視線がりんに移動し、上から下まで分析した。
「興味深いですわ」
独り言のように呟いた。
「期待していた者ではありませんが、もしかしたら必要な者かもしれませんわね」
僕に戻った。
「あなたの小さなグループは、自分たちが思っているよりも影響力がありますわ。そしてその影響力には……結果が伴いますの」
僕はついに声を見つけた。
「どうして警告するんですか?もし僕たちがあなたの敵なら――」
「敵?」
リリスは柔らかく冷たい笑いを漏らした。
「あまりにも混沌としたバトルフィールドは、どの目的にも役立ちませんわ」
ドアに向かって歩いたが、入口で止まった。
「それに、私が探しているものがありますの。そしてついにそれを見つけたと思っていますわ。でも、アレン、あなたがそれを持っているの。だから知っておいてほしかったのですわ……」
重い沈黙を残す間を置いた。
「あなたが持っているそのデータを、私は奪いますわ」
一瞬、僕は彼女の声に心配に似た何かを聞いたと思った。
肩越しに振り返り、今回は彼女の笑顔が本物に悲しかった。
「幸運を祈りますわ」
彼女は言い、一瞬、僕は彼女の目に本物の何かの閃きを検出したと思った。
「必要になりますわよ。なぜなら、『休暇』から戻るとき……知っているアカデミーはもう存在しませんから」
そして彼女は去り、その後に物理的な実体を持つように見えるほど重い沈黙を残した。
長い間、誰も動かなかった。誰も話さなかった。
祝賀会は死に、リリスの警告の冷たい現実に窒息させられた。
ついに深呼吸をし、リリスが入ってから初めて肺を満たせたと感じた。壁にもたれかかり、目を閉じた。
ついに、りんが僕に近づいた。
「彼女が言ったことは本当だと思う?」
僕はゆっくりとうなずいた。
「ああ。僕たちに嘘をつく理由がない。真実の方が恐怖を蒔くのに効果的だから」
「どうする?」
僕は周りを見回した――委員会のメンバーたち、彼らの顔は以前は希望に満ちていたが、今は恐怖で刻まれている。佐々木、また崩れそうに見える。りん、変化の一瞥のためにすべてを賭けた、最も忠実な友人。
「準備する」
僕は言い、自分の声が奇妙に聞こえた――まるでもっと年をとった、もっと疲れた誰かのもののように。
「来るものに備える。リリスは一つのことで正しいから――僕たちはエネルギーを生成してきた。注意を引いてきた。そして今……」
間を置き、午後が橙色に染まり始める窓の外を見た。
「今、その結果に直面しなければならない」
* * *
その夜、僕は眠れなかった。
寮の自分の部屋に座り、アカデミーの上にかかる満月を窓から見ていた。リリスの警告が頭の中で響き、りんのバトルの記憶、武蔵の告白、委員会の教室で短く花開いた脆い希望と混ざり合っていた。
彼女は僕たちが知らないことをどれだけ知っているんだろう?
そう考えながら、指が窓枠を不安にタップしていた。
創始者の『実験』をどれだけ本当に理解しているんだろう?
ヒカリがエーテリアルの起源について言った言葉を思い出した。
もしそのエネルギーが『臨界点』に達したら、リリスが示唆したように、どうなるんだろう?圧力鍋がついに爆発するようなものか?それとも何か……もっと悪いものを引き寄せる磁石のようなものか?
目をこすり、不十分な知識の重みを感じた。僕たちには破片がある――たくさんの破片――しかし、全体像はまだ僕たちを逃れ続けている。
初めて、僕は直面していることの規模に圧倒されなかった。
……決意を感じた。
破片を集めてきた。ありそうもない連合を構築してきた。重要な勝利を勝ち取ってきた。
そして今、次の段階に直面している。
夏休みは休息にはならない。
究極の訓練場になる。その後に来るものへの準備。
次の動きはすでに定義されている。今、アカデミーの別の障害に直面しなければならない……教師たち。
もし、すべての教師を味方につけることができれば、僕とすべての同盟者がアカデミーの物事を変えられる約束と可能性を与えれば、アカデミーのすべての基盤を支える最後の破片が不均衡になるかもしれない。
もし成功すれば、学園長と副学園長に直接対峙することだけが残る。
そしてそうすることで、もしかしたらリリスと、知らない他のすべてに公然と立ち向かう可能性があるかもしれない。
僕の家、バトルフィールド、そして大義になったアカデミーの上の月を見ながら、静かな約束をした――
何が来ようと――より強いエーテリアル、創始者の計画、5iの策略――僕たちは分かれて直面しない。
一緒に直面する。
クラスとして。同盟者として。友人として。
それが僕たちの本当のスキルだから。
剣でも、矢でも、盾でもない。
つながり。信頼。すべてが崩れ落ちている中でも、より良いものを構築する意志。
そしてその決意が第二の心臓のように胸の中で燃えながら、僕はついに横になった。夜明けが休暇の始まりではなく、アカデミーの魂をかけた本当の戦争の始まりをもたらすことを知りながら。
今回は影の中でではなく、公然と戦う戦争。
すべてのスキルを使って。すべての同盟を使って。
僕たちが今あるすべて、そして僕たちがなることを望むすべてを使って。
次回――
静寂の裏で、次の一手が動き出す。
夏休み初日。
束の間の平穏の中で、アレンは新たな標的へと目を向ける。
それは生徒ではない――教師たち。
この歪んだシステムを内側から支える存在に対し、
彼は“対話”という手段で切り込んでいく。
そして一人の教師が問われる。
従うべきか、それとも疑うべきか。
やがて明かされるすべての真実。
だがそれは、救いであると同時に――重荷でもあった。
さらに、静寂は長くは続かない。
進化したエーテリアルが、姿を現す。
次なる脅威は、もはや“無秩序”ではない。




