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歪んだ誇り、解かれる鎖

以前は、「力」ではなく「理解」による戦いの可能性だった。


そして今――その選択が、別の形で試される。


アレンが向き合うのは、副会長ではない。


一人の男子――完士。


地位と力に執着する彼の内側には、崩れかけた自我と、満たされない渇望があった。


対話か、衝突か。


その選択が、一人の人間の在り方を変えることになる。


だが同時に、戦場は拡大していく。


エーテリアルの大規模な襲撃――そして、その裏に潜む“意志”。


すべてが試される中、アレンは自らの答えを示す。

(アレン)


秘密基地の空気は古い埃と張り詰めた緊張の匂いがした。ヒカリのデータを画面で何度も確認していたが、数字や図表が目の前で踊っているだけで、実際には頭に入ってこない。意識は別のところにあった――返事のない小次郎からのメッセージ、脆い約束を残して去っていった森宮の後ろ姿、記憶の中でさえ嘲笑っているようなヨルムの永遠の笑顔。


進んでいるのか、それともただより大きな円を描いて走っているだけなのか……?


扉がきしむ音を立てて開き、思わず身震いした。小次郎が入ってきた。息を切らして、まるでずっと走ってきたかのようだ。制服は乱れ、髪は普段以上に乱れていて、その瞳には――僕が開かれたページのように読めるようになったあの瞳には――感情の嵐があった。興奮、困惑、畏敬に近い何か。


「遅れてすまない」


小次郎は息を切らしながら、向かいの椅子に腰を下ろした。


「尾行されていないか……確認する必要があったんだ」


手を机の上に落とした。「問題があったのか?」


「そう言えるかもしれない」


小次郎は顔に手を当てた。


「まず最初に――藤森しずくが白麗の知的リーダーだ」


その後の沈黙はあまりにも濃密で、自分の心臓が加速する音が聞こえた。完全に予想外というわけではなかった――断片はそこにあった――しかしそれが確認されると、盤面全体が変わった。


彼女。計算するような目で全てを観察していた、あの無口な転校生。今は小次郎と同じクラスにいて、まるで生きた方程式を研究するかのように……


「全部聞かせてくれ」


できるだけ落ち着いた声で言った。内心はそれほど落ち着いていなかったが。


小次郎は話してくれた。互いに観察し合った一週間のこと、緊張が尊敬に変わったこと、屋上での出会いで秘密が信頼の通貨のように交換されたこと。完士との戦いのこと、そして彼が介入したのは英雄主義からではなく、絶望した者たちのシンボルに変えられた彼女が一人で戦うのを見て、何かが内側で壊れたからだということ。


「スキルを発現したんだ」


小次郎は震える手で言った。


「武器じゃない……枠だ。理解の枠。分析し、文脈化し、無効化する。攻撃はしない」


身を乗り出した。興味をそそられる。


「共感に基づく能動的防御のようなものか?」


「そんな感じだ。これは……ずっと欲しかったものだ。支配するのではなく、理解することで守る……そのスキルはケン先輩のハッキングの一部なのか?」


「ああ、正確に言えば君や君のクラスは――訓練しているかどうかは知らないが――使えるスキルを持っているか使っていないかに関わらず、君が今話したように覚醒するんだ」


小次郎は、僕より早く自分の核を見つけた。僕が網を張り巡らせている間、彼は自分の魂を掘り下げていた……誇りと恐れが混ざり合った。


それから最も重要な部分が来た――同盟。しずくの条件。彼女の条件付き協力の申し出。


「彼女は白麗とAクラスの自治を維持する」

小次郎は説明した。

「しかし僕たちに情報への完全なアクセスを与える。そして僕を直接の連絡役にしたいそうだ。僕だけと」


ゆっくりと頷いた。すでに意味を処理している。


「彼女が本物だと確信しているのか」


「彼女は不必要なゲームをするタイプじゃない。協力すると言えば、そうする。ただし彼女の条件でだ」


「彼女の主体性を尊重する条件か。賢明だ。無理強いすれば恨みを生むだけだ。これは……全てを変えるかもしれない」


僕も小次郎に、会っていない間に僕がやっていたことを話した――森宮との同盟、ヒカリの情報。小次郎はエーテリアルの起源の話を聞いて、驚きと同時に考え込んでいた。


それから会話は次の行動へと移った。生徒会の別のメンバーに接近する計画を説明し始めた。戦略家の精密さで理由を列挙する。


「――そしてヨルムは最も謎めいているが、武蔵の硬直したイデオロギーに最も縛られていない。君と完士の戦いでの彼の介入は罰するためではなく、観察するためだった。まるで実験の変数を評価しているかのように。もし彼の動機を理解できれば――」


「アレン先輩」


小次郎が遮った。その声は奇妙なほど平坦だった。


止まった。小次郎は僕を見ていない。視線はどこか遠くの一点に固定され、指は机の縁をいじっている。


「小次郎?」


「すまない。ただ……ヨルム先輩について話すとき……何かが合わないんだ。戦いで彼を見た。僕の戦いに介入したとき……」


「どうした?」


「彼の話し方だ。まるでこの全ての台本を既に知っているかのようだ。まるで自分のために書かれた台詞を読んでいるかのように」

小次郎がついに僕を見た。

「もしヨルム先輩ではなく……まず完士先輩に接触してみるのはどうだろう?」


その提案は静かな水面に落ちた石のように二人の間に落ちた。胸の中で古い恨みが縮こまるのを感じた――去年のデジタルバトルの記憶、完士の毒のある言葉、敗北が完士の憎しみを煽っただけだったこと。


「完士は僕を憎んでいる」

言った。その宣言の単純さが予想以上に痛んだ。

「彼のプライドを傷つけた。ステータスと力をあれほど重視する者にとって、Fクラスの一人に敗北することは……耐え難かった」


「でもアレン先輩、彼がどう戦っていたか見たんです」


小次郎は身を乗り出して主張した。


「ただの憎しみじゃない。フラストレーションだ。まるで自分に合わない役割に囚われているかのようだった。Fクラスについてあんなことを言ったとき……そこには何か他のものがあった。何か壊れたものが」


目を閉じて、過去と現在のイメージが混ざり合うのを許した。完士――初めて会った日、廊下で傲慢で軽蔑的だった。完士――小次郎が描写した、暗黒エネルギーの怪物に変貌した姿。完士――小次郎の描写によれば、確信ではなく蓄積された怒りで戦っていた。


ヨルムは謎だ。でも謎は待てる。開いた傷は……それは周囲の全てを感染させる。


「君の言う通りだ」

ついに目を開けて言った。

「ヨルムは待てる。完士は……完士は今苦しんでいる。そして苦しみは、無視されると毒に変わる」


小次郎は頷いた。目に安堵の光が浮かぶ。


「どうやって接近しますか?」


「まず観察だ。彼のパターン、脆弱な瞬間を理解する必要がある」


タブレットを取り、新しいドキュメントを開いた。


「それと、彼との接触の詳細を全て話してくれ。彼が何を言ったかだけじゃない。どう動いたか。どう息をしたか。どこで躊躇したか」


次の一時間をかけて、戦いを一つ一つ解剖した。ついに別れたとき――また会う約束をして――新しい責任の重さと、完全に信頼できる誰かがいる軽さを感じた。


* * *


次の数日間は完士の研究になった。影から彼を観察し、小さなノートに几帳面に記録した。


東ウイングで抗議を鎮圧。彼の方法は残忍だが非効率的。力を示すために過剰なエネルギーを費やしている。生徒たちは散っていくが、その目に宿る恨みは明白だ。


別の日。科学棟の裏で一人で食事。いつも同じ場所。決して上を向かない。まるで食べ物が罰であるかのように咀嚼する。


別の日。二年生のBクラスの生徒と議論。完士が他者を強制している方法について。Bクラスの男子は完士にうんざりしている。完士は力こそがパワーだと主張し、男子は対話を訴える。ヨルムが一瞥で中断する。完士が縮こまる。


四日目。Aクラスの栄誉掲示板を見つめているのを目撃。拳は握りしめられている。その顔に見えるのはプライドじゃない……憧れだ。


五日目には十分だった。パターンは明確だった――完士は期待と現実の間、尊敬されたいという欲求とそれを得るための失敗した方法の間に囚われた少年だった。


昼休み、科学棟の裏の区画に向かった。風は湿った土と遠くの菊の香りを運んでいた。完士はいつもの場所、地面に座り、義務的な作業を行っているかのような表情でサンドイッチをかじっていた。


「同伴は期待していなかった」


完士は上を見ずに低い唸り声のような声で言った。


「話がしたいんだ、完士さん」


完士は固まった。それからゆっくりと顔を上げた。その目――もっと生き生きしていたと記憶している暗褐色――が即座に認識で細められ、それに続いて触れられるほど明白な敵意の波が来た。空気そのものが冷えたように感じた。


「お前か」その言葉は唾を吐くように出た。「何の用だ?」


「話すためだ。それだけだ」


完士は立ち上がった。サンドイッチは地面に忘れられた。


「オレたちに話すことなんて何もねぇよ、虫ケラ。お前が最後の"会話"のリベンジが欲しいってんなら別だがな」


手を見えるように、掌を上に向けた。りんから学んだ非威嚇のジェスチャーだ。


「戦いに来たんじゃない。話しに来た」


「話す?」

完士は短く苦い笑いを漏らした。

「何を話すってんだ? お前はルールを変えられると思ってるFクラスの馬鹿野郎だ。オレはルールを執行する側だ。それだけの話だ」


「そうか?」

一歩前に出て、声を柔らかく保った。

「でも僕が見ているのは、ルールを執行している誰かじゃない。ルールに囚われている誰かだ」


一瞬の瞬き。脆弱性のマイクロ秒が、軽蔑の仮面が再び張られる前に見えた。


「違う。秩序は必要なんだ。お前や他の奴らが広めている混沌は――」


「――何につながるんだ、完士?人々が自分たちがなぜ苦しんでいるのか疑問に思うこと?盲目的な服従じゃなく答えを要求すること?」


完士は歯を食いしばった。その手に、暗黒エネルギーの短剣が具現化し始めた――最初は紫の閃光、それから固体で威嚇的な刃として。


「お前のくだらない安っぽい哲学なんて聞きたくねぇって言っただろ」


「それでも」

位置を保ったまま言った。

「君は戦いで自制している。あの白麗のメンバーと対峙したときのように。彼女をすぐに止めるためじゃなく、観察するために。なぜだ?」


「黙れ!」

完士は短剣を僕に向けたが、今度はその手の震えが見えた。

「……分かった……お前はあの白麗の道化どもと一緒なんだろ!?」


「悪いけど違う。白麗は彼らのやり方でやっている……でも僕は……僕のやり方でやっている」


窒息したような怒りの叫びとともに、完士が突進してきた。短剣が来るのが見えた――暗黒エネルギーの輝く弧が、僕の心臓に直接向けられている。アヤとの訓練が、動け、そらせ、反撃しろと叫んでいる。


でも何か、もっと深いもの――完士を観察して得た理解、壊れたパターンについての小次郎の言葉――が僕を動かさないでいさせた。


完士は殺人者じゃない。暴力が理解する唯一の言語だと信じている傷ついた者だ。


短剣が止まった。僕の胸から一センチのところで、先端が震えた。紫の閃光が明滅し、一瞬その背後の完士の手を露わにした――震え、指の関節は白く、首の腱はケーブルのように張り詰めていた。


完士の目から視線をそらさなかった。そしてそこに、怒りの層の下に、別の何かを見た――混乱。パニック。戻れない一線を越えかけた者の恐怖。


短剣が消えた。暗い光の粒子に溶けて、空気中に消えていった。完士は打たれたかのように後退し、荒く息をしていた。


「なぜ……?」

完士の声はかろうじて囁きだった。

「なぜ動かなかった?」


「君が見る必要があったからだ。全員が暴力に暴力で応じるわけじゃないってことを。それに、僕が見る必要があったんだ。君の中にまだ、真の害を与える前に止まる何かが残っているってことを」


その後の沈黙は以前とは違った――敵意で満ちたものではなく、脆く露出した何かで満ちていた。完士は地面に腰を下ろし、背中を建物の壁につけた。


「お前は馬鹿だ……」


「たぶんね」

数メートル離れたところに座った。近すぎず、遠すぎない。

「でも理解したい馬鹿だ。なぜなんだ、完士?なぜこんなことを全部やってるんだ?」

一瞬、彼が答えないと思った。立ち上がって去って、この脆い橋は築かれる前に崩れるだろうと。


でもそれから、完士が話し始めた。


「覚えてるか?オレはCクラスから始まったんだ」


「ああ、覚えている」


「……オレは天才でも特権階級でもねぇ……努力が報われると信じていたただの働き者だ」


完士は視線を落とし、さらに思考に沈んでいった。


「グループがいたんだ」

完士は、まるで誰か他の人の話を語るかのような単調な声で言った。

「オレに付いて来てた馬鹿どもだ。強くはなかったが、賢かった。オレが上昇したいって飢えてるのを見て――自分を証明したいって――手を差し伸べてきた」


あの日完士に付いていた連中を思い出した……そういえば、その一度きりが完士を仲間と一緒に見た唯一の機会だった。喧嘩でもしたのか? それとも……


「利用されたんだ」

完士は続けた。目に苦い光が宿る。

「お前と――特にFクラスと戦わせるために送り込まれた。オレが勝てると信じてたからじゃない。奴らにとってオレがどんな奴か見たかったからだ」


「友達だと思っていたんだが」


「くだらねぇ!あいつらは……何でもなかった……お前との最初の戦いで負けたとき、オレはクラス内で奴らにステータスを与えただけで、オレは……」


自分に向かって漠然としたジェスチャーをした。


「その後、毎日が思い出させられた。『ほら、Fクラスに負けた奴だ』。『噛み付く以上のことができなかった飼い犬を見ろ』」


完士は拳を握りしめた。


「だからもっと頑張った。もっと勉強した。試験ごとにAクラスに上り詰めた。もしトップに立てば、もしベストになれば、そうすれば……」


「そうすれば痛みに意味があると」静かに続けた。


完士は何も言わない。視線は地面を見つめ続けた。


「でも十分じゃない。決して十分じゃねぇんだ。今トップにいるのに、まだ底にいて上を見上げているような気がする」


驚いたことに、話はさらに深まった。完士は父親について話し始めた――無から企業帝国を築き上げ、誰からも尊敬され、常に完璧で、常に最高だった男。


「母は六歳のときに死んだ」

かろうじて聞こえる声で言った。

「父は再婚しなかった。ただ働いた。そして全ての功績、全ての勝利は、母への捧げものだって言ってた。オレは……父みたいになりたかった。強く。揺るぎない。どんな痛みにも耐えて、それを成功に変えられる誰かに」


パズルがはまるのを感じた。完士がなぜこうなのか、その深さを理解し始めた。


「でも力を無感覚さと混同した。そして成功を支配と」


完士が僕を見た。本当に、初めて見た。


「どうしてそう確信できる?」


「僕も逆の間違いを犯したからだ。全てを理解することが、何も感じなくていいことを意味すると信じていた。痛みを分析できれば、経験しなくていいと」

間を置いた。

「僕も大切な人を失った。そして長い間、彼女を敬う最善の方法は距離を置くことだと思っていた」


僕はひめかとの過去、それが意味したこと、経験した全てについて話していた。


「……そういえばお前、変わったな。お前に会ったときとは違う……生徒会長選挙のあのときでさえ……お前は……違う……どうやって変わった?」


「友達のおかげで変わった。彼らが思い出させてくれたんだ。強さは亀裂がないことじゃなく、その亀裂を通して何を育てるかだって」


沈黙が戻ったが、今度は思索的だった。完士の頭の中で歯車が回っているのがほとんど見えた。再評価し、再文脈化している。


「認めたくねぇが。お前の友達は……何かを持ってる。白麗との戦いで介入したあのFクラスの男みたいに。軽蔑からじゃなかった。本当に別の方法があると信じてたからだ……苛つくぜ」


完士は小次郎のことを言った。理解した――小次郎の言葉と行動が完士に見せたものが、完士の中で響き始めているんだ。


ついに完士が心を開き、自分自身を再評価しているように見えるこの瞬間を利用して、自分がやっていることについて話した。僕の動き、クラス、知っていること、アカデミーの現状をどう変えたいか、完士に全て話した。


沈黙の後、完士は立ち上がり、伸びをした。その動きは以前より硬さがなく、まるで目に見えない重荷を下ろしたかのようだった。


「いいか、お前。オレはお前の正義の小さなクラブには参加しねぇ。お前を抱きしめて泣いたりもしねぇ」


その目が僕の目を捉えた。


「でも……取引は考えてやってもいい」


「どんな取引だ?」


「教えろ……」


その言葉は彼にとってコストがかかるようだった。


「お前がやってることをどうやってやってるのか教えろ。より強い相手を――力ずくじゃなく――お前が何をやってるのか、それで倒す方法を。あのめちゃくちゃなクラスをどうやってまとめてるのか。オレみたいな奴を見て何か他のものを見る方法を」


その申し出を考えた。完全に完士らしかった――感情的なつながりを取引に変える、自分の条件で理解できる何かに。


「いいだろう。でも引き換えに、クラスのステータスへの執着をやめること。Fクラスの生徒だって、Aクラスの生徒と同じくらい教えられることがある。君が聞く意志さえあればね」


完士は眉をひそめた。「それは――」


「――取引だ」

僕も立ち上がりながら続けた。

「受け入れるか拒否するか」


一瞬、完士は抗議しそうだった。それから、奇妙なことが起こった――歪んだ、ほとんど意図しないような笑みが唇に浮かんだ。


「お前、信じられないくらいうざいな。知ってたか?」


「そう言われたことがある気がする」


そのやり取りには友人同士の冗談のような質があった――ぎこちなく、新しいが、本物だった。予期しない希望の波を感じた。


「来週から始める。質問を持ってきてくれ。それと開かれた心も」


完士は頷き、もう身を翻して去ろうとしていた。でも数歩後に止まった。


「おい」


「なんだ?」


「……もしお前の目標がアカデミーの権力を変えることなら……これから問題が起こるぞ」


「どうしてそう言うんだ?」


「……ヨルム副会長と武蔵会長は……そんなに理性的な人間じゃねぇ」


完士は振り返らなかった。「奴らは見かけ通りじゃねぇんだ」


「それはどういう意味だ?」


でも完士はもう遠ざかっていて、その姿は建物の角を曲がって消えていった。その警告の響きが耳に残り、そして達成した脆い勝利とともに、新しい不快な真実が心に種のように植えられた。


* * *


その週は、僕を驚かせるような速さで過ぎた。クラスとの訓練セッション、今や生徒会の動きについて貴重な情報を共有する森宮との秘密の会合、そして完士との最初のぎこちないセッションの間で、日々は渦に融合していった。


第一学期の期末試験が来て、過ぎていった。期末試験が終わり、夏休みが近づいている。それが僕を恐怖させた。アカデミーの現状を考えると、夏休みはどうなるんだろう?


メインスクリーンの結果を見た。全員合格。安堵は明白だった。さらに、Fクラスへの新しい転校生はいない。


でも他のクラスに多くの動きがあることに気づいた。やがて彼らも落ちていき、もっと多くの生徒が僕たちのクラスに来るかもしれない。


アカデミー全体のパフォーマンスが低下しているのに、もっと多く受け入れるべきなのに、少なくなっている。わざとやっているのか?それとも何か他のことを待っているのか?


担任の六花先生のことを思い出した。彼女が最も怪しい。何かを報告して、だから新しいメンバーがクラスにいないのかもしれない……あるいはもっと別の何かか。


その何かは、この同じ日の後に来た。エーテリアルが現れる。


鋭く機械的な金切り声が、窓ガラスを振動させた。でも今回はいつもの音ではなかった。危機のシーケンスだった。


「みんな見て!」

りんがもう立ち上がっていた。拳が本能的に握りしめられる。

「外に……たくさん……」


廊下に駆け出し、窓に急ぐ生徒の波に合流した。見たものが息を呑ませた。


メインコートヤードは緑色の脈動する霧に覆われていて、あまりにも濃密で向かいの建物がほとんど見分けられなかった。そしてその霧の中で、形が動いていた――一つや二つではなく、数十、もしかしたらそれ以上。歪んだシルエットがエネルギーで輝き、その輪郭が悪夢のように変化していた。


様々な場所から悲鳴が響いた。ガラスが割れる音。遠くでスキルが発動する轟音。


「みんな、僕についてこい!」

命じた。芽生える パニックを切り裂く声。

「標準フォーメーション!りん、後衛をカバー!アヤ、エリザ、ポイント!他のみんな、結束を保て!」


混沌へと出た。コートヤードは生きた悪夢だった。緑色の霧は視界を遮るだけでなく――感覚を鈍らせるようで、音が消され、方向が不確かになった。


至る所で、生徒たちがエーテリアルと戦っていた。


「アレン、右!」アヤが叫んだ。


振り返った。エネルギーの糸がもう指から展開していた。壊れた鏡で作られたように見えるエーテリアルが突進してきて、それぞれの破片が歪んだバージョンの僕たちの顔を映していた。糸がクリーチャーに巻きつき、一時的に封じ込めた。


「かんな、今だ!」


かんなが銀色の稲妻のように動き、刀が氷の完璧な斬撃を描いてエーテリアルを真っ二つにした。氷の破片が地面に落ち、霧の中に消えていった。


でもすぐに別のものが取って代わった。それからもう一つ。


みんなが完璧に同期されたユニットとして戦った。


レンが手を伸ばし、炎が掌から噴き出してエーテリアルを包んだ。火はそれを燃やさなかったが、苦痛を与えているようで、身をよじらせ、ついに消えていった。


エドワーは傘を展開した――盾としてではなく、エネルギー攻撃を逸らす回転プラットフォームとして、他の者が動けるスペースを作った。


マリは爆発するとカラフルな化学薬品の雲になるクリスタルフラスコを投げた。あるものはエーテリアルを遅くし、あるものはその形を溶かした。


朋也は、普段の恐怖の代わりに決意が顔に刻まれ、正確に衝撃を与えるエネルギー弾のキャノンを展開した。


双子、テオとテアは、同じ有機体の二つの半分のように動き、素手の拳が完璧な交互に打ち込まれる――荒々しい力と優雅さの振り付け。


みこは後衛に留まり、リボルバーが複数のターゲットを貫通する純粋なエネルギーの弾丸を発射した。一発一発が最大効率のために計算されていた。


僕は全員を指揮し、糸は攻撃するだけでなく調整もした――生徒を危険から引き離し、弱点を示し、一時的なバリアを作った。


これは普通じゃない。戦いながら思った。多すぎる。協調しすぎている。まるで誰かが意図的に解放したかのように。


コートヤードを進み、悲鳴が最も鋭い場所へと道を切り開いた。そしてそこ、科学棟と図書館の交差点で、彼らに出会った。


森宮が壁を背にしていた。キャンセレーション能力が霧の中に正常性の泡を作り出し、その中でエーテリアルが混乱し弱体化しているように見えた。


完士がその隣で戦っていた。暗い短剣が次々とクリーチャーを切り裂いていたが、圧倒されていた――標的が多すぎる、エネルギーが少なすぎる。


「アレンさん!」森宮が僕たちを見て叫んだ。顔が安堵で輝いた。


「彼らの周りに陣形を!」命じた。


閉じ、森宮と完士を陣形に組み込んだ。一瞬、その動きの効率が、エーテリアルでさえ躊躇させ、突然の協調に混乱した。


「何か案は?」完士が息を切らしながら呟いた。


答えようとしたとき、空気が変わった。音ではなかった。圧力だった――空間が圧縮される感覚、重力が変化する感覚。


それから、上から銀色のエネルギーの刃が僕の周りに降り注ぎ、ミリメートルの精度で地面に突き刺さり、エーテリアルと他の誰もを遠ざける完璧な円を形成した。


一つの人影が空から降りてきた。飛んでいるのではない。まるで浮遊しているかのように、逆転した重力で落ちていた。足が音もなく地面に触れた。


制服は完璧。そしてあの笑顔……常にそこにある、常に謎めいた、異色の目――一つは緑、一つは青――には届かない笑顔。


ヨルムだ。


「ああ、なんて絵画的な光景だ」


彼は言った。声は絹のように滑らかだが、剃刀のように鋭い。


「理想主義者、脱走者、憤慨者、そして新たな改宗者。全員が共通の混沌に対抗して団結している。感動的じゃないか?」


グループの前に立った。仲間たちの緊張が高まるのを感じた。


「何が欲しい?」


「欲しい?あー、そんなありふれたものは欲しくない」


ヨルムは首を傾げ、興味深い標本を研究する科学者のように僕たちを見つめた。


「むしろ……機会を提供しているんだ」


「どんな機会だ?」森宮が問うた。声は不信で満ちていた。


「信念を証明する機会だ」


ヨルムの目が僕に固定された。


「アレン、君は面白いネットワークを張り巡らせてきた。散らばった駒を集めている。真実とより良い未来について語っている」


彼の手がわずかに動くと、僕たちを囲む刃が静かに振動した。


「でも言葉は簡単だ。同盟は便利だ。本当に重要なのは……他の全てが失敗したときに君が何をするかだ」


理解が打ちのめした。


「これは……君がこれを引き起こしたのか? これら全てのエーテリアルを?」


「引き起こす?なんて直接的な非難だ」


ヨルムは完璧な歯の閃きを見せて微笑んだ。


「言ってみれば……特定のプロセスを加速したんだ。時間や安全の贅沢なしに、選択をしなければならない環境を作り出した」


「気が狂ってる!人が死ぬかもしれねぇんだぞ!」完士が叫んだ。


「人はいつでも死ぬかもしれないよ、完士さん。問題は――自分が信じるもののために何をリスクする価値があるか、だ」


ヨルムが僕に向かって手を伸ばした。掌を上に、何かを提供するように。


「一つのバトル。君と僕だけ。ここで。今」


周囲で混沌が続いていた――悲鳴、戦闘音、緑色の霧――でも刃の円の中では、強烈で恐ろしい注意の泡を作り出していた。


「なぜだ?」


尋ねた。頭が猛烈に働いている。これは罠か?気を散らすものか?試練か?


「見る必要があるからだ」


ヨルムは言った。そして初めて、声が遊び心のある性質を失い、真剣に、ほとんど切迫したものになった。


「君が本当に違うのかを見る必要がある。それともシステムが十分に圧力をかけたときに壊れる、ただの別の理想主義者なのか」


仲間たちを見た。アヤ、バトルに飛び込む準備ができている。凛、弓はすでに引かれているが迷っている。森宮、完士、クラス全員――全員が僕を見ている。僕の決断を待っている。


武蔵ならどうする?戦うだろう。しずくならどうする?確率を計算するだろう。小次郎ならどうする?第三の選択肢を探すだろう。


でも僕は彼らの誰でもない。僕は自分自身だ。質問が答えに値すると信じて、秘密が光に値すると信じて、壊れたシステムでさえ、誰かが仕事をする意志があれば救済できると信じて、これら全てを始めた少年。


「君とは戦わない、ヨルム」

はっきりとした声で言った。

「負けるのが怖いからじゃない。これが……」

周囲の混沌に向かってジェスチャーをした。

「……本当の敵だからだ。僕たちの間じゃない」


長い間、ヨルムはただ僕を見つめていた。その表情は読み取れず、あの永遠の笑顔が仮面のようにその場に固定されている。それから、ゆっくりと手を下ろした。


「興味深い。直接的な戦闘を拒否して、より広い全体像を選ぶ。戦略か?それとも真の信念か?」


エネルギーの刃が一つずつ消え始めた。


「このラウンドは引き分けで終わるよ、アレン。でもゲームは……」

ヨルムが上昇し始めた。重力が彼を支えることを拒否している。

「……ゲームはまだ始まったばかりだ。駒を集め続けろ。代替案を築き続けろ。そして最終的に君が兵士ではなく、システム自体に直面するとき……」


僕たちの上に上昇し、霧が彼の姿を包み込み、声だけが残り、囁かれた警告のように降りてきた。


「……最も高貴なイデオロギーがしばしば最も効率的な専制政治を生み出すことを思い出せ。地獄は、結局のところ、善意で舗装されているものだ」


そして彼は去った。僕たちを継続する混沌の真ん中に残し、言葉がまだ空気中に響いていて、新しい不快な真実が心に種のように植えられた。


彼は敵じゃない。でも味方でもない。もっと危険な何か――審判だ。そして彼がまだ僕たちにどんな判決を下すかは分からない。


周囲で、エーテリアルとの戦いが続いていた。でも、これが遥かに大きな戦争の最初の小競り合いに過ぎなかったことを、血が凍るような確信とともに理解していた――味方と敵の境界線が周囲の霧のように曖昧になり、勝利がバトルに勝つことではなく、魂を救済することで測られる戦争。


「みんな、ついてこい!」


次のバトルに向かって走った。でも心の中で、ヨルムの言葉が警鐘のように響いていた。最も危険な怪物は霧の中で吠える者ではなく、影から半分の真実を囁く者――友人の笑顔を纏った者だということを思い出させていた。

次回――


すべての勢力が、ついに交差する。


Fクラス、Aクラス、生徒会、そして教師たち。


これまで対立していた者たちが、一つの場所に集結する。


それは偶然ではない。


戦うためでも、従うためでもない。


“変える”ための会合。


アレンは、停滞していた審判委員会に目を向ける。


そこにあるのは権力の空白――そして、恐怖に縛られた一人の理想主義者。


閉ざされた心は、再び開かれるのか。


そして――一人の少女が、最強へと挑む。


制度か、力か。


正当性を問う戦いが、幕を開ける。

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