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真実の重み、繋がる手

小次郎としずくの間に生まれた“感情”が描かれた。


そして――視点は再びアレンへと戻る。


彼らの前に現れたヒカリ。その口から語られるのは、これまで断片的だった情報を覆す“真実”。


エーテリアルの起源、アカデミーの存在理由、そして能力の本質。


それは、この世界そのものが仕組まれている可能性を示していた。


だが真実に近づくほど、危険もまた増していく。


混乱の中でアレンは、新たな選択と出会いに直面することになる――。

(アレン)


サーバールームの空気は、いつも独特な匂いがした。オゾンとコーヒー、そして何十台もの機械が同時に動いている静電気の匂い。でも今日は違った。今日の空気は、緊張感で満ちていた。嵐が来る前の骨に響くような静けさ……蛍光灯が長い影を作って、部屋が実際よりも深く感じられた。


青山ヒカリ、自称『衛星』は、神経質そうに指で机を叩きながら、その大きな瞳で部屋中を見回していた。まるで影から化け物が飛び出してくるのを待っているみたいに。


「ね、ねえ……アレンの友達、いっつもこげん遅かと?」


緊張が声に滲んでいるのがよく分かった。


「ケンには自分のペースがある」


僕は三度目の確認をしながら、入口に設置したセキュリティデバイスをチェックした。


「でももうそろそろ――」


言葉を終える前に、ドアが開いた。


ケンがいつものだらしない歩き方で入ってきた。でも一人じゃなかった。彼の後ろに、壁と一体化したいみたいに隠れるようにして、まいがいた。


「三人だけだと思ってた」


非難というより、観察として言った。


ケンは肩をすくめた。目は相変わらず、何時間も画面を見続けたせいで充血していた。


「まいが俺のクロスリファレンスを手伝ってくれててな。お前が言うほどデカいことなら、使える頭は全部必要だぜ」


まいは熱心に頷いて、白衣の端で指遊びをしていた。


「あたし、別に残らなくても――」


「いや、大丈夫」


僕はまいの言葉を遮って、空いている椅子を示した。


「多ければ多いほどいい。特にこれから、物事を変える真実を聞くことになるなら」


四人は中央のテーブルに座った。いくつものモニターには、コードの行とフローチャートが映っていた。


ヒカリはポケットから古めかしいUSBを取り出して、それを聖なる遺物みたいにテーブルの上に置いた。


「これが……これが、あたしが見つけたもんたい」


彼女の声は、最初に会った時よりずっと真剣だった。


「で、警告しとくけど……一度知ったら、知らんふりはできんけんね」


ケンは身を乗り出した。表情は飢えていたけど、ヒカリを見て何か言いたげだった。


「なあ、ヒカリ……アレンのメッセージに、お前が『衛星』だって書いてあったぜ。まず試させてくれ」


ヒカリはケンをじっと見つめた。緊張はなかった。彼女はケンの試験に立ち向かう準備ができていた。


「よかよ。何ば聞きたいと?」


「簡単だ。質問に答えてくれ」


「……言うてみて」


「銀太郎先輩にゃたくさん秘密があったが、特に一つ……俺に打ち明けて、他の『衛星』には教えたのにアレンには教えなかったってやつがある」


その言葉を聞いて、どう感じればいいのか分からなかった。僕も『衛星』なのに、銀太郎先輩はほとんど何も教えてくれなかった。ケンが言う秘密って、何だろう?


「『衛星』は全部で何人いるんだ?」


ヒカリは瞬きもしなかった。微動だにしなかった。緊張しているように見えるかもしれないけど、よく観察すれば分かる――ヒカリは完全に厳粛で、緊張のかけらもなかった。


「……全部で五人たい」


ケンは彼女をじっと見つめて、ゆっくりと頷いた。


「正解だ」


そうか。現在の『衛星』は僕、ケン、ヒカリ……。まいを見た。彼女はここにいるけど、ケンは彼女を『衛星』として紹介しなかった。ということは、残り二人の『衛星』がまだ見つかっていないことになる。


ヒカリは頷いて、厳粛なエネルギーがプロフェッショナルな集中力に変わった。深呼吸をして、話し始めた。


「エーテリアルは自然じゃなかよ。最初っからそうやった」


その言葉は、静かな池に石を投げ込むように落ちた。


「五十年以上前、『ドクターM』とだけ呼ばれとった科学者がおったとよ。その人は、現実に現れることができる仮想の存在を作りたかったと。街の問題を解決するためって……資料には、どげん問題かは書いとらんばってん」


僕は身を乗り出した。一言一言が心に刻まれていく。


「ドクターMのプロジェクトは失敗したと。彼はそれをアーカイブして、放棄した。ばってん何年も後に、別の科学者がその研究を見つけて、続けることにしたとよ。理論を変えて、改良して……そして成功した。最初のエーテリアルを作り出したとたい」


ケンが呟いた。


「ほぼ人間の仮想存在……か」


「そうたい」


ヒカリが確認した。


「ばってん、何かがおかしくなった。最初のエーテリアルは……暴走したと。創造主を襲った。そん時、ラボの周りの現実が変わってしもうた。『変異ゾーン』になって、誰も知らんもんになったと。そのゾーンが……今のあたしたちのアカデミーたい……」


まいは両手で口を覆った。背筋に冷たいものが走った。


「科学者のグループが研究を続けて、変異ゾーン内では人々が仮想の武装を現し、身体的・感情的な状態を見て、適切な知識があればそれを変えられることを発見したとよ。ゲームみたいにね」


「なぜ武装なんだ?」


聞いてみた。答えは何となく分かっていたけど。


「だって、その後現れたエーテリアルたちが自分たちを『敵』って宣言したけんね。人間をライバルと見とった。まるで最初のエーテリアルが、すべてを競争的なゲームとして見ることを『学習』して、その論理を他のエーテリアルに伝えたみたいやった」


ケンが割って入った。


「で、人間がその能力を互いに使えるって発見した時、エーテリアルたちは失望して、しばらく消えたってわけか」


「そうたい。ばってん戻ってきた時は、もっと暴力的やった。そして人々を心理的に傷つけることができた。それがちょうど五十年前たい」


ヒカリは一旦止まって、自分の手を見つめた。


「その時、『アカデミーの創設者の友人たち』が現れた。エーテリアルたちを倒したばってん、最初のエーテリアル――オリジナル――がまだ生きとって、隠れとって、他のすべてのエーテリアルの源やったことを発見したとよ。彼が存在する限り、脅威は続くって」


目を一瞬閉じた。すべてが繋がる。変異ゾーンの上に建てられたアカデミー。創設者が一人で責任を負ったこと。


「創設者は、これ以上友人たちを巻き込まんことに決めたと。彼が個人的に対処するって。このアカデミーを創設して、ルールを定めて……そして待った。エーテリアルたちが戻ってくるのを、いつかは必ず戻ってくるって分かっとったけん、辛抱強く待ったとたい」


「なぜ生徒を使うんですか?」


まいが震える声で聞いた。


「なぜあたしたちみたいな年齢の子供たちを危険に晒すんですか?」


ヒカリは視線を落とした。


「資料には書いとらんとよ。明確な理由はなか。ただ『現在の世代』が対峙せんといかんって書いてあるだけ。五十年の沈黙の後、エーテリアルたちは戻ってきた……そして、それがあたしたちの番やったと」


その後の沈黙は絶対的だった。すべてのピースを処理していた――ひめかのデータ、リリスの傭兵たち、秘密を守ろうとするシステムの執着。


「これで二つ目のポイントに入るけど」


ヒカリが続けて、ケンのモニターの一つに近づいた。


「あたしたちが得るスキルは、ランダムじゃなかとよ」


ケンは激しく頷いた。まるですでに疑っていたみたいに。


「アカデミーのスマホは、ただのインターフェースたい」


「そうだぜ。俺たち全員、アカデミー内にいるだけで『データ』なんだ。あたしたちの感情、性格、トラウマ、希望……すべてが変異ゾーン内の情報に変換されとるとよ。あたしたちが現すスキルは……内なる自己の反響たい。その瞬間の性格の最も強い部分、もしくは深い潜在的な変化を経験しとる時のものやね」


自分のスキルを思い出した。外科手術のような精密さでコントロールできる糸。それは僕の何を語っているんだろう?コントロール?繋がり?それとも、すべてを繋ぎ止めておきたいという願望?


まいが呟いた。


「それで、トラウマ的な出来事や重要な出来事の後に、あたしたちのスキルが変わることがあるんですね」


「もしくは、極限状況に直面するまで、まったく現れない人がいる理由もな」


ケンが付け加えて、指がキーボードの上を飛んでいた。


「これは……すげえぜ。ここにいる全員の潜在能力が、文字通り無限だってことだ」


ケンはペンを机に落としながら言った。


「これで、ひめかのデータについての俺の理論が確認できたぜ」


指が再びキーボードの上を飛んでいた。


「スキルが内なる自己の現れで、エーテリアルのデータがひめかのデータと融合したなら……」


「じゃあ、その特定のエーテリアルは、ひめかの中に何かを見たのかもしれない」


言葉を続けた。新たなレベルの心配を感じながら。


「特に彼女と融合させた何かを……」


ヒカリは深刻に頷いた。


「こげんことは初めて聞いたばい。資料には、進化したエーテリアルは人間を深いレベルで『読む』ことができるって書いとったよ」


「最後のポイントが一番直近のことたい」


ヒカリが声を落とした。


「情報は、関係者の意志だけで秘密に保たれとるんじゃなかよ。アカデミーの創設者が所有する『5i』っていうコーポレーションがあるとたい。彼らが権力の柱を支配しとる――学園長、副学園長、審判委員会の会長……そして生徒会長たい」


ゆっくりと頷いた。もう知っていた。去年、リリスがそのコーポレーションのメンバーだと告白したことを聞いた。黒服の男たち、傭兵と呼ぶべきか、彼らもきっとそのコーポレーションのメンバーだろう。


「どうやって数年ごとに入れ替わる生徒をコントロールするんだ?」


眉をひそめて言った。コーポレーションの力、アカデミー外部の力を理解しようとしながら。


「選択的記憶消去たい」


ヒカリが躊躇なく、恐ろしいほど真剣に言った。


それも知っていた。くるみの兄が、審判委員会の会長だった時に記憶を失ったこと。


「生徒が高度な秘密の役職に就く時――生徒会長か審判委員会の会長――記憶を改変する装置に連れて行かれるとよ。アカデミー外部に真実が漏れる可能性のある『キーワード』を消去するとたい。身体的な後遺症はなかばってん……」


「でも記憶が改変されている」


呟いた。すぐに現在の生徒会長が頭に浮かんだ。


「現在の人たちは?武蔵は?他のメンバーは?」


「武蔵はほぼ確実に完全な真実を知っとるとたい。他の生徒会のメンバーは……おそらく知らん。もしくは断片的にしか」


ケンが拳で机を叩いた。


「ふざけんな!生徒の心を操作するなんて……」


「効果的やけどね」


ヒカリが陰鬱に訂正した。


「そして、なぜアカデミー外部の誰も真実を知らんかを説明しとるとたい。サイクルは三年ごと、もしくはそれらの役職が変わるたびに繰り返される――新しい生徒たちが権力の座に昇って、真実を学んで、そして……忘れるとたい」


「それで、システムがこんなに長く維持されてきた理由が分かる」


自分に言い聞かせるように言った。


「各世代の生徒リーダーが卒業時に『再プログラム』されれば、秘密は決して漏れない」


部屋は重い沈黙に包まれた。画面を、コードの行を、友人たちの心配そうな顔を見つめた。嘘の上に築かれた人生。そして僕たちは、その中心に閉じ込められている。


この沈黙の中で、ヒカリにはもう言うことがないことに気づいた。彼女が発見したのはこれで全部だった。でも、小さな疑問が一つあった。


「ところでヒカリ、この情報はどこから手に入れたんだ?」


「学園長室に潜入したとよ。何度も試した後、学園長が机の上に資料を置いとった時に、全部発見したとたい」


もう驚くべきかどうか分からなかった。彼女は、友人の誰も持っていない潜入のレベルを示した。学園長のオフィスに忍び込んで、何の結果も被らずに済むなんて、相当な腕前だ。


ヒカリが去った後――もっと情報が必要なら提供すると約束して――僕はケンとまいと残った。


「どうするつもりだ?」


まいが心配そうな目で聞いた。


目の前のコンピューター画面を見つめた。


「生徒会だ。武蔵だけが全ての真実を知っているなら、他のメンバーは……僕たちと同じ被害者かもしれない。完全には理解していないシステムに閉じ込められている」


「危険だぜ」


ケンが警告した。


「武蔵がお前がメンバーを勧誘しようとしてるって気づいたら……」


「分かってる。でも、これが最初の一歩だ。権力構造全体を一度に改心させることはできない。最もアクセスしやすい人たちから始める――森宮、ヨルム、完士。武蔵は最後だ」


まいがゆっくりと頷いた。


「森宮さん……何度か見たことありますけど、いつもあんなに怯えているみたいで……」


「恐怖は、共感への入り口になり得る」


* * *


数日かけて計画を立てた。パターンを分析した――生徒会がいつ介入するか、どんなメンバーがどんな騒乱に現れるか、彼らのルーティン。でも計画の最中、一つの心配が付きまとっていた。


小次郎。


彼から数日間、何の連絡もなかった。小次郎に、シズクを一人で対処しろと言ってから。連絡を取ろうと考えるたびに、止まった。彼を信頼しなければ。リーダーになりたいなら、自分の戦いに立ち向かう必要がある。


でも心配は消えなかった。心の奥底で常に囁き続けていた。


週末が来て、休息を取ることに決めた。それと、クラス全員に発見したことを伝えることに。彼らに知らせておく必要があった。


それに、時間を……少なくとも試みることに――りん、アヤ、エリザ、かんな、ひめかと一緒に過ごす時間を。みんな一緒に、陰謀や脅威の話なしで。必要な息抜きだった。なぜこれをしているのか、その理由を思い出させてくれた。


そして月曜日の朝が来た時、準備はできていた。


月曜日の朝は騒乱が起きやすいことを知っていた。週の始まりの疲労、週末の欲求不満の蓄積……ほとんど数学的だった。


アカデミーの正門近くに陣取って、本を読むふりをした。でも感覚は、すべてに対して警戒していた。


時間はかからなかった。


明らかに怒っている五人の生徒グループが、ゴミを投げ始め、コンテナを蹴り、「システムの不正義」に対するスローガンを叫んでいた。


観察した。待った。


そして予想通り、生徒会のメンバーが現れた。


でもヨルムの謎めいた笑顔でも、完士のいつもの傲慢さでもなかった。


森宮だった。


生徒会の書記が、明らかに震える足取りで進んでいた。遠くからでも見えるほど震えていた。手はファイルにしがみついていた。まるで盾みたいに。


「お、お願いします……や、やめてください……」


彼女の声は弱々しい糸で、叫び声にかき消されていた。


生徒たちは無視した。金髪に染めた背の高い男子が笑った。


「お前に何ができるんだよ、泣き言言うのか?生徒会長の後ろに隠れてろ!」


他の者たちも嘲笑に加わった。


森宮は後退して、顔は青白く、目は涙でいっぱいだった。でも流れてはいなかった。


共感の痛みを感じた。彼女はここにいるべきじゃない。兵士じゃない。


森宮は止めるように訴え続けたけど、それは彼らの怒りを煽るだけだった。


事態は急速にエスカレートした。グループはより攻撃的になって、森宮を囲んだ。彼女は手を上げようとした。多分スキルを発動しようとしたのかもしれないけど、恐怖が彼女を麻痺させていた。


金髪の男子はうんざりして、スキルを発動して、森宮に拳を振り下ろそうとした。彼女は避けられそうになかったから、考えるより先に飛び出していた。糸を発動して、男子の腕を止めた。


「何だと!?」


全員が振り返った。冷静に計算された落ち着きで近づく僕の方を。


「彼女を放っておけ」


冷たく明瞭な声で言った。


「アカデミーで起きていることの責任は、彼女にはない」


「また英雄気取りか!」


金髪の男子が唸った。


「こいつを攻撃しろ!」


準備を整えた。五対一は悪い確率だけど、彼らのスキルを素早く分析した――二人は土を操作でき、もう一人は低強度の電気、もう一人は空気を固められる、そして金髪の男子はエネルギーの縄と、森宮を攻撃しようとした強化された拳の能力があった。


精密に戦った。糸を使って攻撃を逸らし、手足を絡め、一時的なバリアを作った。二人を倒したけど、三人目が予想外の電撃で襲ってきて、痛みで叫んでしまった。


その隙に、リーダーのエネルギーの縄が体に絡みついて、締め付けて、動けなくした。


「捕まえたぞ!」


リーダーが勝ち誇って叫んだ。


もがいたけど、縄は強すぎた。土の能力を持つ生徒が岩のような拳を上げて、殴る準備をしているのが見えた。


その時、起きた……


森宮が叫んだ――恐怖の叫びじゃなく、必死の決意の叫びだった。


「やめて!」


彼女の手が純白の光で輝いて、眩しかった。そのエネルギーは波のように広がって、僕と五人の攻撃者を包んだ。


縛っていた縄が溶けていくのを感じた。エリア内のすべてのアクティブなスキルが、単純に……キャンセルされた。


生徒たちは困惑して、自分の手を見つめていた。まるで自分の体を認識できないみたいに。


森宮は止まらなかった。彼女の表情はパニックから強烈な集中に変わった。手の周りの白い光が暗くなって、深い紫に近い闇に変わった。この新しいエネルギーは五人の攻撃者だけに向かって、一瞬包んでから消えた。


五人は地面に倒れた。意識を失っていた。


動けずに立ち尽くした。荒い息をしながら、信じられない思いで森宮を見つめた。


彼女は激しく震えていた。涙が頬を流れていた。


「ご、ごめんなさい……本当にごめんなさい……したくなかったんです……でも、あなたを傷つけそうで……」


慎重に近づいた。怯えた動物に近づくみたいに。


「森宮さん、大丈夫?」


「でも……傷つけてしまいました……彼らは……」


「呼吸してる。意識を失っているだけだ」


すぐに生徒の一人を確認した。


「君のスキル……すごい」


「違います……恐ろしいんです」


彼女が囁いて、顔を覆った。


「スキルをキャンセルして……それから神経系の一時的なシャットダウンを強制できるんです……でもうまくコントロールできなくて……使うと痛くて……」


彼女は力を失って地面に倒れた。膝を打って、震える手で顔を覆って泣き崩れた。


共感の波が押し寄せてきた。こんなに強力なのに、自分の力に怯えているこの女の子が、生徒会の書記だった。武蔵が彼女をここに置いた。なぜ?彼女を守るため?それとも利用するため?


「森宮さん」


優しく言いながら、彼女の頭にそっと手を置いた。落ち着かせようとする単純なジェスチャー。


「話す必要がある。いいかな?」


彼女は見上げた。赤く腫れた目が僕のと出会って、逸らさなかった。まるで初めて本当に見ているみたいに、じっと見つめていた。そして見たものに魅了されているみたいだった。


彼女は頷いたけど、確信はなさそうだった。


その強烈な視線に居心地が悪くなって、咳払いをした。


「もっとプライベートな場所で話せるかな?」


彼女を庭園の一つの静かな一角に連れて行った。好奇の目から離れた場所。森宮はベンチに座って、身を縮めて、自分を抱きしめていた。


直接的に始めたけど、優しく。


「エーテリアルについての真実を知ってる」


彼女は硬直した。


「え、な、なんですか?どうして?あり得ません……」


変異ゾーンについてのキーワードを口にした。最初のエーテリアルについて。創設者とそのコーポレーションについて。


一旦止まって、彼女の反応を観察した。


「生徒会がその秘密を守るために存在していることも知ってる。そして多分、武蔵だけが全てを知っている。君みたいな他のメンバーは……多分、完全な真実の断片だけを知っているんだろう」


森宮は再び震え始めたけど、今度は恐怖の涙じゃなく、もっと深い何か――認識の涙だった。


「ど、どうして……?」


「情報源はある。でも今、それは重要じゃない。重要なのは、君がこれに満足していないってことだろ?生徒会にいたくない。他の生徒を危険に晒す秘密を隠したくない」


彼女は視線を落として、指で遊んでいた。


「生徒会の一員でいたくないわけじゃ……ただ……私は適していないんです。最初からずっと……」


「どうやって生徒会に入ったの?」


彼女は深呼吸した。告白の準備をするみたいに。


「私はEクラスでした。一年生の最初の中間試験の後……Aクラスに上がったんです。当時、とても話題になった快挙でした」


言葉が今、堰を切ったように溢れ出た。


「みんなが祝福してくれました。Aクラスに行くべきだって言われました。そこが私の居場所だって。そして私は……従いました。したかったからじゃなく、そうすべきだと感じたからです。そうしなければ、みんなを失望させると思ったから」


「Aクラスに着いたら、どうだった?」


「着いた時、みんな私に優しくしてくれました。でも特に、私を変えるように押してくれた人がいました……その人はリリスさんです」


その名前を聞いて、耳が鋭くなった。


「彼女は私に目をつけました。『可能性』があるって言ってくれました。それを証明するように私を押しました。毎日、毎試験、毎演習……観察されていました」


「重圧だったろうね」


「そうでした。でも同時に……嬉しくもありました。彼女のような人が、私みたいな人に目をつけてくれるなんて」


森宮は頭を振った。まるで自分自身に嫌悪しているみたいに。


「その後、武蔵会長が生徒会の選挙に勝った時……私に書記の役職を提案してくれました。アカデミーに来てから初めて、自分で何かを決めたんです。受け入れました」


「なぜ?」


彼女は躊躇して、頬がわずかに赤くなった。


「だって……武蔵会長みたいなすごい人が、私に目をつけてくれたからです。もし彼のような人の近くにいられたら……少しでも彼のようになれるかもしれないって思ったんです」


「後悔してる?」


「毎日」


彼女が囁いた。


「真実の一部を知った時……生徒会の一員であることが本当に何を意味するのか理解した時……対処できないんです。毎回の会議、毎回の決定、誰かを裏切っているような気がします。生徒たちを。自分自身を」


彼女の隣に座った。礼儀正しい距離を保ちながら。


「私は特別じゃありません。注目されたくありません。期待されたくありません……」


自分の苦闘を思い出した。最初の女性への恐怖、観察と分析の後ろに隠れて、つながることを避けていた傾向。


「恐怖は分かる」


優しく言った。


「長い間、女性が怖かった。どんな交流も僕を恐怖に陥れた。自分の世界に隠れて、観察するだけで決して参加しなかった」


森宮は驚いて見上げた。


「本当ですか?でもあなたは……とても……」


「自信がある?いつもそうだったわけじゃない。変わったのは、隠れても何も解決しないって気づいたからだ。ただもっと孤独で、もっと怖くなるだけ。そして結局、恐怖は危険を避けない。最も行動が必要な時に、君を麻痺させるだけだ」


森宮は今、完全な注意を向けて見つめていた。まるで僕の言葉の一つ一つが、必死に解きたいパズルのピースみたいに。


「君の極度の内気さ、内向的な性格は、欠陥じゃない。でもそれを盾として使うこと、試さない理由、つながらない理由として……それは問題だ。その過程で、自分自身を失っているから」


その言葉が物理的に彼女に衝撃を与えたみたいだった。身を縮めて、それから背筋を伸ばした。目は再び涙でいっぱいになったけど、今度は違った――恐怖じゃなく、認識の涙だった。


「……なんだか、お兄ちゃんと話しているみたいです」


「お兄さんがいるの?」


「はい……あなたの話を聞いていると、見ていると……比較して失礼だったらごめんなさい、でも……お兄ちゃんを思い出します」


「彼は何て言うの?」


「『その態度を変えろ』とか『小さな変化を起こせ』とか」


「お兄さんは正しい。変えようとするべきだ」


「どうやって?」


「例えば、僕の友達になるかどうか決めることから」


彼女は瞬きした。完全に困惑していた。


「え、え!?」


彼女はじっと見つめて、その目が僕の中に誠実さを探していた。視線を逸らさなかった。言葉の真実を見せながら。


ついに、森宮は深呼吸した。


「本当に……私の友達になりたいんですか?」


「ああ。君が生徒会のメンバーで、僕が反抗的な生徒だからじゃない。森宮と僕として。隠れることに疲れた、恐れることに疲れた、理解できないルールに従うことに疲れた、二人の人間として」


彼女は躊躇した。


「でも……武蔵会長に知られたら……」


「彼が全てを知る必要はない。もし知ったとしても……まあ、いずれは彼と対峙しなければならないだろう」


手を差し伸べた。


「君の主義を裏切るように頼んでいるんじゃない。自分自身の主義に従うように頼んでいるんだ。エーテリアルの真実を隠すことが正しいと本当に思う?完全な知識なしに生徒を危険に晒すことが公正だと思う?」


森宮は差し出された手を見て、それから僕の顔を見た。彼女の目の中に、内なる戦いが見えた――武蔵への忠誠、彼女を受け入れてくれた構造への忠誠と、正しいと感じることをしたいという願望。


「私は……助けたいです」


ついに囁いた。


「でも方法が分かりません。嘘をつくのが下手で、物事を隠すのも下手で……すぐに見つかります」


「じゃあ隠れなくていい」


言った。


「公然と僕の味方になって。できる限り公然と。生徒会について共有できることを共有して。他のメンバーがどう考えているか理解するのを助けて。そして時が来たら……物事を変えるのを助けて」


森宮は一瞬目を閉じた。開いた時、そこには脆いけど本物の決意があった。


手を取った。


「分かりました。あなたの……友達になります。そして味方に」


握手は柔らかく、震えていたけど、僕にとっては、どんな劇的な誓いよりも意味があった。変化への本当の第一歩だった。アカデミー内に新しい網を織り始める、最初の糸だった。


「ところで……ごめんなさい……あなたの名前は……?」


「……」


自己紹介をした。終わった時、沈黙が僕たちの間に残った。それを破ったのは森宮の笑い声だった。アカデミーでみんなが背負わなければならない重みなしに、恐怖なしに、彼女が笑うのを見たのは初めてだった。


でも初めて、本当の地歩を得ている気がした。


腕力じゃなく、感情的なスピーチじゃなく、本物の人間のつながりで。


最初は小次郎とクラス。今は森宮。


近いうちに、多分他の人たちも。


変化は、派手な一撃で権力者を倒すことから来るんじゃない。一人ずつ、より良い方法があると人々を説得することから来る。彼らが他の誰かのゲームの駒以上の存在になれることを示すことから。


最初の動きは完了した。最初の味方を得た。

次回――


戦いは「力」から「理解」へ。


それは攻撃ではなく、相手を読み解き、状況を制御し、衝突そのものを変質させる力。


一方、しずくは生徒会の上位メンバーと激突。その戦いは単なる勝敗ではなく、抑圧された生徒たちの象徴としての意味を持ち始める。


そして小次郎は選ぶ。


観測者でいるのか、それとも――介入者となるのか。


交差する思想、ぶつかる意志。


さらに、副会長ヨルムが姿を現し、この戦いを「実験」として見つめる。


すべてが新しい段階に変わる。

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