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信頼の懸け橋

アカデミーの裏側で続く静かな戦い。

仲間は増え、情報も少しずつ集まり始めている。


しかし、真実に近づくほど新たな疑問も生まれていく。

エーテリアルの正体、過去に存在した「能力者たち」、そしてこの学園で暗躍する影。


そして今回――

新たな協力関係が動き始める。


見えない敵に対して、彼らはどこまで踏み込むのか。

沈黙が続いた。重く、触れられるほどの沈黙。同意の沈黙ではない――ゲームボードを変える情報を、ゆっくりと慎重に消化している沈黙だ。


僕は、すでに特徴的になった分析的な視線で観察した。クラスメイトたちの顔には、懐疑、好奇心、恐怖のスペクトルが映し出されていた。全員が手を挙げている。誰に発言権を与えるべきか、判断がつかなかった。


隣に立つサラが腕を組んだ。口を挟むつもりはないようだ。その表情は明確に語っていた。『あんたの番だよ、委員長。どう切り抜けるか見せてもらおうかな』


膠着状態を最初に破ったのはイワンだった。軍人のような硬直した姿勢で席から立ち上がる。肩は角張り、視線は正面を向いて鋭い。


「霧丘委員長。そのアレン先輩だが……」


低く、装飾のない声が響く。


「生徒会のリーダーシップ記録にない。知られた階級もない。資格は? 指揮の実績は? 敵対的状況の真っ只中で未知の人物に合流するのは戦略じゃねえ。降伏だ」


ゆっくりと頷いた。イワンの指摘は認めざるを得ない。彼の思考は手順書で動いている。


「確かに、正式な資格はないよ。だが、実戦経験はある。アレン先輩とそのグループは以前からエーテリアルと戦っている。非常に高度な知識を持っているんだ。彼の拠点は稼働している。それはどんな紙の上の階級よりも優れているだろう」


「未確認の実戦経験か?」


イワンが眉をひそめる。


「ただ運が良かっただけの無謀者かもしれねえぞ。父がいつも言ってた――運は使い果たすリソースだ。規律と指揮系統は違う」


僕が答える前に、涼太が席で身じろぎした。いつもの無関心な態度は、本物の不安に取って代わられている。アニメキャラクターが描かれたスマホケースを神経質にいじっている。


「ちょ、ちょっと待てよ!」


声がいつもより高い。


「罠だったらどうすんだよ? な?ゲームじゃさ、謎のNPCが『秘密のレジスタンスに加われ』とか言ってきたら、だいたいどっかのヤバい計画の駒にされんだよ! もっと悪けりゃ、ラスボス召喚の生贄とかさ!」


視線が僕からクラスメイトたちへ飛び交う。


「それにさ……あの子。めっちゃ明るかったじゃん。こんな地獄で生きてる奴にしちゃ明るすぎる。怪しいっすよ」


ため息を抑えた。涼太の妄想は彼のメディア漬けの生活から来ているが、完全に非論理的というわけでもない。


「これはゲームじゃないよ、涼太くん。結果は現実だ。アレン先輩は僕を、そして他の人たちをエーテリアルから救ってくれた。彼の行動は具体的なものだった。物語じゃない」


「味方にするために助けたんじゃねえの?」


涼太が納得せず、少し座席に沈み込む。


そこで、ひなたが背筋を伸ばした。もう激怒してはいないが、顔は威厳ある冷静さの仮面だ。以前は拳に握りしめられていた手が、今は机の上で折り重ねられ、揺るぎない礼儀正しさを示している。


「委員長……」


意図的に敬称を使い、距離を置く。


「ワトソンさんとわたくしの間に提案された戦術的配置には感謝申し上げる。水平思考を示すものでござる。しかしながら、このクラス全体の安寧を完全なる匿名者に託すことは、論理を超越している。彼の人格について何を知っているのでござろうか? 彼の原則は?エーテリアルは忌まわしき存在でござるが、隠された目的を持つ人間もまた、等しく危険な災いとなり得る。良心に照らして、我らの安全を未知数に委ねることができるのでござろうか?」


言葉は冷たく、明瞭で、信頼問題の核心を突いていた。僕はそれが自分の胸に響くのを感じた。そこには今でも最初の疑念が住んでいる。


「彼について全てを知っているわけじゃない」


認めることは脆弱性を示す行為で、代償を伴った。


「だが、彼が行動していることは知っている。僕たちが教室で手順を議論している間、彼はネットワークを構築し、情報を収集していた。混乱状況では、主導権には計り知れない価値がある。そして彼の原則は相互保護のようだよ」


ずっとやり取りを劇的な憂鬱さで観察していたマルコが、顎に手を当てた。


「親愛なるリーダー」


悲哀に満ちたささやきのような声。


「疑念は魂の毒でござるが、愚かさへの解毒剤でもある。僕の心は、いつも予期せぬ同盟の美しさを信じがちで、震えております。しかし僕の精神は……精神は徘徊する影を思い出すのです。美しきアンヌお嬢様が言及されたあの黒服の男たち。もしこのアレン先輩が彼らと繋がっていたら?もし僕たちが彼に合流することで、もっと邪悪な何かの蜘蛛の巣へ直接飛び込む蝶のようなものだとしたら?」


劇的な比喩ではあるが、有効な懸念を指摘している――陰謀の層の可能性。僕は、名前を出されたアンヌがさらに縮こまるのに気づいた。まるで消えてしまいたいかのように。


サラは彫像のように動かず、目で部屋をスキャンし、雰囲気を読んでいる。アビゲイルは謎めいた微笑みで全てを観察している。まるで討論が魅力的な社会実験であるかのように。


ルカイは……今まで一言も発していない。この場で最も静かで距離を置いているように見える。半分閉じた目、ほとんど知覚できない微笑み――まるで自分だけのプライベートシアターの観客のようだ。


積み重なる疑念の重さを感じた。それらは非合理的ではない。超自然的なものにトラウマを負わされ、不条理なシステムに投げ込まれ、そして今また別の信頼の跳躍へ誘われている人格の反映だ。


僕の論理的な議論は不十分に感じられた。ゼロから、恐怖の真っ只中で、どうやって信頼を構築する?


「君たちの懸念は全て理解しているよ」


内心よりも確固とした声で言った。


「イワンくん、正式な構造の欠如について。涼太くん、罠の可能性について。ひなたさん、道徳的な未知数について。マルコくん、隠れた繋がりについて。正当な疑念だね……」


一呼吸置き、言葉を浸透させた。教室は静まり返り、アンヌの荒い呼吸と時折のきしむ座席の音だけが聞こえた。


この沈黙の中、僕は考えた。クラスにおける自分の目標、クラスメイトたちの信頼をどう得るか、軽率なことは言いたくない――だがこの最後の点は……何か言わなければならないと感じている。


なぜなら僕にとって、アレン先輩は多くのことを象徴しているからだ。僕が成し遂げたいと思っていることの多くを。アカデミーとその機能についてより深く知るにつれ、今までの自分の努力がいつも不十分だったことにますます気づく。ここでは本当に、もっと高く登らなければならない。全ての偉大な者たちと肩を並べるために。


そしてアレン先輩は、その数多くの階段の一つを表している。彼は僕に信頼を与えてくれた。だから僕は彼についていくことを決めた。彼のグループに加わることを。それと、他のいくつかの小さな理由。しかし間違いなく、現実に挑戦する物事で満ちたシナリオの真っ只中で、僕を動機づけたのだ。


だからこそ、僕は自分が感じていることを言おうと思う。たとえそれが、皆がアレン先輩をどう認識するかに影響を与えるとしても。


「だが……代替案は不作為だ。僕たちの福祉を明らかに優先しないシステムの中で、孤立した単位として留まることだ。オズワルド先生がその例だよ。アレン先輩は、少なくとも行動の枠組みを提供してくれる。盲目的な信仰を求めているわけじゃない。僕が求めているのは……試験だ。条件付きでの現場評価だよ」


その時、ルカイが動いた。急な動きではない。単に座席で背筋を伸ばしただけ。だがその単純な動作が、全ての視線を引きつけた。部屋のエネルギーが彼へと移動したようだった。疑念の嵐の真ん中にある静けさの中心へ。


彼の微かな微笑みは消えなかったが、少し大きく開いた目は、鋭い明晰さを示していた。


「小次郎くん」


柔らかいが完璧に聞こえる声。マルコの演技じみた口調でも、ひなたの形式張った話し方でもない。観察者の中立的な声だ。


「君は聞いた。疑念を分類した。それらを認めた。いいことだ。第一歩だよ」


全員が彼を見つめ、興味をそそられている。サラまでもが僅かに頭を傾けた。


「だがここにはパターンがある」


ルカイは続け、視線はイワン、涼太、ひなた、マルコを巡る。


「彼らはアレン先輩だけを疑っているわけじゃない。このアカデミーで何かを信じる可能性そのものを疑っている。そしてその疑念は……集団的だ。Fクラスの疑念だよ」


彼は立ち上がり、教室の緊張と対照的な静けさで、ゆっくりと前へ歩いた。僕の隣ではなく、僕とグループの間の等距離の点に立つ。


「だから……問題は『アレン先輩を信じるか?』じゃない。その問いは大きすぎる。傷だらけのこのグループには抽象的すぎる。本当の問い、今答えられる唯一の問いは、もっとシンプルだ――『小次郎くんを信じるか?』」


胸が急に高鳴った。この展開は予想していなかった。


ルカイはクラスを見渡した。


「イワンくん。君は小次郎くんの戦術分析能力を信じるか? 軍事状況を評価する彼の知性を?」


イワンは一瞬の後、しっかりと一度頷いた。


「ああ。テストの結果がそれを証明してる。有能な思考者だ」


「涼太くん。小次郎くんは十分に用心深く、十分に慎重で、『NPC』の明白な罠にはまらないと思うか?」


涼太は肩をすくめたが、考えているようだった。


「まあ……そうっすね。めちゃくちゃ几帳面だし。たぶんミッションのソースコードまでチェックするタイプっす」


「ひなたさん。秩序と効率への執着を持つ小次郎くんが、その原則が公然と腐敗しているか危険な者と同盟を結ぶと思われますか?」


ひなたが僕を見た。再び評価する。その目は僕の真っ直ぐな姿勢、真剣な表情を精査した。


「いいえ」


最終的に言った。


「彼の誇りがそれを許さぬでござろう。欠点ではあるが、この場合は保証でござる」


「マルコくん。パターンと繋がりを求める小次郎くんの精神が、証拠が目の前にあるのに露骨な陰謀を見逃すと思うかい?」


マルコは演劇的なため息をついた。


「親愛なるルカイさん、僕を見抜きましたね。我らがリーダーは鷹の目を持っています。何かが彼から逃れることはほとんどありません」


ルカイは満足げに頷いた。それから完全に僕の方を向いた。


「彼らはアレン先輩を信じていない。だが、興味深いことに、君の判断は信じている。君の知性、慎重さ、誇り、観察力を。条件付きの信任投票だ。短い時間で彼らが君から見たものに基づいている――調停する能力、高いパフォーマンス、真剣さをね」


一呼吸置き、啓示を沈着させた。僕は彼を観察し、ルカイが展開している戦略を全速力で処理していた。見事だ。彼は僕たちが持つ唯一の通貨を使っている――委員長としての、あるいは個人としての、芽生えつつある信頼を。


「だから……」


ルカイはより正式な口調で宣言した。


「私は、派閥の代弁者としてではなく、このクラスの疑念の代弁者として名乗り出る。これらの正当な懸念が伝達される経路として。そして、暫定的な解決策として以下を提案する」


彼の目が僕の目に釘付けになった。今、その視線には静かな圧力があった。


「Fクラスは、小次郎くんがアレン先輩を信じ続ける限りにおいてのみ、アレン先輩に従い、彼のグループと協力する。君が繋ぎ目だ。君が保証だ。彼への君の信仰が僕たちのものになる。だが……」


ここで圧力がかかった。ルカイは僅かに頭を傾けた。


「……君が彼を疑った瞬間、君が彼の論理や道徳に受け入れられない亀裂を見た瞬間、Fクラスは撤退する。完全に。僕たちは彼に忠誠を誓うのではない。君が彼に対して行使する判断に忠誠を誓うんだ」


提案の重さが石板のように僕の上に落ちてきた。これは単なるリーダーシップではない。クラス全体の安全と決定の受託者になることだ。僕の個人的な判断が、最も重要な同盟が回転する軸になる。


クラスメイトたちを見た。イワンは頷き、条件の軍事的明確さを承認している。涼太は、最終的な責任が自分のものでないことに安堵しているようだ。ひなたは新たな尊敬の念でルカイを観察し、彼の解決策の優雅さを見ている。マルコは微笑み、劇的な転換を楽しんでいるかのようだ。


サラはついに沈黙を破り、軽く鼻を鳴らし、本物の笑みを浮かべた。『いい手だね』とでも言いたげに。


アビゲイルは独り言を呟いた。


「魅力的……リスク分散された資源としての信頼の委譲……」


ルカイは終えた。柔らかいが消えない声で。


「だから僕たちは君に、アレン先輩が信頼に値するかどうかを尋ねているわけじゃない、小次郎くん。尋ねているのは――僕たち、Fクラスがその信頼を評価するためのフィルターになることを受け入れるか?その重さを受け入れるか?」


息を止めた。頭の中で、フローチャートとリスク評価が、シンプルなイメージに置き換わった。自分からアレン先輩へ延びる細い橋。そして自分の後ろには、クラスメイト全員の重さ。その橋が壊れないことを信じて。


論理的ではない。僕への信頼の跳躍だ。


そして同時に、クラスをまとめるために与えられた最も強力な道具でもあった。


ゆっくりと息を吐いた。


「受け入れるよ」


僕の声は震えなかった。


「僕が繋ぎ目になる。そして責任を負おう」


ルカイが微笑んだ。今度はより温かい表情で。


「では、疑念の代弁者として、これらの条件を、この条件を、直接源に持っていかなければならない。それらの懸念を代表する者から聞かなければね」


ルカイはクラスの方を向いた。


「同意しますか?僕がこれをアレン先輩に提示することを承認しますか?」


承認のざわめきが起こった。最も疑っていた者たちでさえ頷いた。


「いいでしょう」


ルカイが僕を見て言った。


「彼のところへ連れて行って。今すぐに」


頷いた。教室はもはや断片化した疑念による緊張ではなく、脆いが明確な合意によって結ばれていた。完全に僕の肩にかかる合意。


ルカイと共に教室を出る時、最後にクラスメイトたちを見た。サラが親指を立てたが、その目は語っていた。『気をつけてね、もう全部あんた次第だから』


橋は架けられた。今、それが重さに耐えられることを確認しなければならない。


* * *

(アレン)


秘密基地の空気は静かな集中に包まれていた。サーバーの低い駆動音と、ケンがラップトップを叩く速いタイピング音だけがそれを破っていた。


僕は中央のテーブルの前に座り、仲間たちに囲まれていた。りんはエナジードリンクの缶を緊張した様子でいじっている。アヤとかんなは一緒にアカデミーの地図が表示された画面を確認している。エリザ、ひめか、エドワー、レン、マリは真剣な表情で耳を傾けていた。張り詰めた空気が漂っていたが、それは生産的な緊張だった。避けられない嵐に備える者たちの緊張感。


ケンが顔を上げた。眼鏡の奥の瞳には、画面からの青白い光が反射している。彼が本当に深刻な情報を持っている時にしか見せない、あの厳しい表情を浮かべていた。


「アレン、マリア先生から受け取った資料の予備分析が終わったぜ」


ケンの明瞭な声が静寂を切り裂いた。


「これは……啓発的であると同時に恐ろしいな」


全員が少し身を乗り出した。僕は頷いて、続けるよう促した。


「エーテリアルへの曝露による症状は段階別に分かれてるんだ」


ケンはデジタルメモを確認しながら、指で眼鏡を押し上げた。


「軽度の場合――めまい、極度の眠気、刺すような頭痛、急速な脱水症状。肉体的ではない何かと戦うために、身体が異常な速度でリソースを消費しているように見えるぜ」


アヤがかすかに身震いした。恐らく自身の遭遇を思い出したのだろう。その反応に気づいたが、僕はケンに集中し続けた。


「重度、または長期曝露の場合――部分的または選択的な記憶喪失、重度の時空間見当識障害……そして最も危険なのが、常識感覚の喪失だ。被害者は論理的思考が切断されたかのように、馬鹿げた、危険な決断を下し始める。先生が『心理的消耗』と呼んでいるものだな」


「治療法は?」僕は要点を突いた。頭の中では既に情報を脅威と対策として分類していた。


「二つの方法があるぜ。深刻なケースには、集中的な心理情緒的介入が必要だ。被害者と非常に強い絆を持つ誰か、または専門家が、確固たる声と継続的な身体的接触で現実へと導き戻す必要がある。深い熱に浮かされた夢から誰かを引き戻すようなもんだな」


「もう一つは……?」エリザが割って入った。いつもの実践的な口調だったが、今回は緊張と疑念に満ちていた。


「アカデミーの保健室には専門機器があるんだ。僕たちが見たやつだと思う。心理的苦痛を和らげ、脳波を安定させるが、根本的なダメージは治癒しない。あくまで一時しのぎだ。そしてマリア先生の記録によれば、限られた資源らしいぞ」


「つまり、現場で誰かが襲われて、その機械が手元にない場合……僕たちがその状態から引き戻すしかない」


「その通りだ。そして今から、攻撃のメカニズムについてだ」


全員が息を呑んだ。


「エーテリアルは恐怖を糧とする。個人の潜在的恐怖を感知し、それを利用する個別化された壊滅的な幻覚を投影する能力があるようだ。致命的な曝露時間は最小限――エーテリアルの前で最大10秒、それを超えると幻覚に捕らわれるぞ」


「10秒……」りんが青ざめながら呟いた。「そんなの一瞬じゃない!」


「物理的攻撃は二次的なもんだ。真の武器は、頭部のように見える部分が金属質または有機質の花のように開き、内部から輝く液体――発光する唾液のようなものが発せられる時だ。その液体への曝露は、直接接触がなくても心理攻撃を引き起こすんだぜ」


「作戦上の弱点は?」エリザが尋ねた。既に彼女の戦術的思考が動き始めていた。


「一度に攻撃できる対象は一人だけ……」


ケンが明かすと、安堵と新たな戦略が入り混じったため息が部屋に広がった。


「すべての報告が一致している――範囲攻撃は一度も観測されていない。グループで行動すれば、一人が脅威を引きつけるか抑えている間、大多数は安全だ。これが僕たちの最大の戦術的優位だな」


「犠牲者は?」僕の声は重かった。


「今回の出現サイクルでは、マリア先生がアクセスできた公式データによれば、致命的なものはまだないぜ。だが、すべてを変える歴史的データがある」


僕は首を傾げた。「歴史的?」


ケンは息を吸い込み、眼鏡を押し上げた。その瞬間、光が反射して眼鏡が輝き、彼の目が見えなくなった。


「エーテリアルは以前にも出現していたんだ。数年前。今回のような大規模で公然としたものではなく、孤立した封じ込められた事件としてだが。記録が曖昧だが、『能力』を持つ特別なチーム、グループが存在し、それらと戦ったらしい。だが完全には根絶できなかった。僕たちが今直面しているものは、この理論によれば、あの古代の侵略の残滓、完全に封印されることのなかったエコーだってわけだ」


その後の沈黙は絶対的だった。この啓示は問題に途方もないスケールを与えた。新しい現象ではない――決して完全には治癒しなかった古い傷の再開なのだ。


僕の頭は全速力で働いていた。『能力を持つ特別なグループ』?アカデミーの能力のような?直接的な繋がりがあるのか?


医療情報は重要だったが、今、さらに不穏な歴史的深淵が開かれた。


「ケン。ひめかのことだ。エーテリアルを倒さずに、彼女の携帯がデータを吸収した。これはどう説明できる?」


ケンは眼鏡を外し、鼻梁を擦った。彼にしては珍しい、苛立ちの仕草だった。


「そこが……そこで医療理論と衝突するんだ。整合性がない。エーテリアルはデータエンティティだが、『捕獲』のメカニズムには敵対的な相互作用、撃破が必要なはずだ。ひめかのケースは素質、異なる共鳴を示唆している。まだ確固たる仮説はないな。ただより多くの疑問があるだけだ――彼らは本当に何なのか?彼らを構成するデータはどこから来るのか?マリア先生にはその答えはなかった。彼女の専門はダメージであって、起源じゃないからな」


苛立ちは明白だった。僕たちは二つの異なる絵のパズルのピースを持っていた――一つは医療的、もう一つはデジタル的、そしてそれらは完全には一致しなかった。


その重苦しい沈思の瞬間、暗号化されたドアから柔らかな警告音が鳴った。セキュリティ画面には小次郎……そして見知らぬ男子が映っていた。黒髪で、穏やかで不可解な笑みを浮かべている。


「小次郎くんだ」りんが即座に明るくなった。


「それと誰か他に」アヤが画面を見つめて目を細めた。


「入れてくれ」僕は命じた。新入生への最初の賭けが実を結んだかどうかを見る時だ。


ドアが開き、小次郎が入ってきた。その後に見知らぬ男子が続く。小次郎はいつもの分析的な落ち着きを保っていたが、人を読むことに長けた僕には、彼の肩に追加の責任の重さが乗っているのが分かった。しかし彼に同行した少年は、ほとんど当惑させるほどの静けさを放っていた。


「アレン先輩……」小次郎が頭を下げて挨拶した。


「やあ、小次郎。お帰り。そして君の仲間は……?」


「夜神ルカイです。1年Fクラスの疑念の代弁者です」


男子が自己紹介した。その声は表情と同じく穏やかだった。


『疑念の代弁者』?興味深く、そして危険な肩書きだ。


ルカイは時間を無駄にしなかった。回りくどさなく、僕をも感心させる簡潔な明瞭さで、状況を説明した。未知の人物への クラスの不信、様々な懸念――戦略的、道徳的、罠についての懸念、そして彼らが到達した解決策。


ルカイは観察力のある目を僕の目に据えて言った。


「要するに、Fクラスは小次郎くんが君への信頼を維持している間だけ、君に従い協力します。彼が私たちのフィルター、保証人です。彼の判断が私たちの判断です。しかし……」


彼は意味に満ちた、ほんの一瞬の間を置いた。


「……小次郎くんが君を疑った瞬間、君の論理や人格に受け入れがたいと判断する亀裂を見つけた瞬間、Fクラスは撤退します。即座に。私たちは君の忠臣ではなく、私たちの代表者の判断への忠臣なのです」


提案は見事だった。信頼の問題を既に存在するチャンネル――僕と小次郎の間の萌芽的関係――に移していた。クラスを未知の人物について決定する負担から解放したが、同時に小次郎に途方もない責任を負わせた。


僕はその背後にある容赦ない論理を理解し、ルカイが単なる「代弁者」ではないことを即座に悟った。彼は恐るべき社会戦略家だ。


一秒の躊躇もなく、僕は答えた。


「承諾する」


返答はあまりにも即座で、ためらいが全くなかったため、初めてルカイの穏やかな仮面が崩れた。彼の目が少し大きく開き、本物の驚きの閃光が顔を横切った。彼は交渉、明確化、おそらくある程度の抵抗さえ予想していた。こんなにも率直で直接的な受諾ではなかった。


僕は彼の混乱に気づいたが、それに触れないことにした。ルカイにはその印象を持っていてもらおう。信頼は時に言葉ではなく、迅速で確固たる決定によって示されるものだ。


ルカイは素早く落ち着きを取り戻したが、新たな好奇心の輝きが視線に残っていた。


「わかりました。では、同盟は条件付きで発動しています」


僕は頷き、小次郎に向き直った。


「君の『フィルター』としての最初の試練は今だ。次の目標がある」


僕はケンに合図をし、彼はメイン画面に『黒衣の男たち』の目撃情報の重複した報告を投影した。


「これらの人物はエーテリアルの出現の直前または直後、重要な地点で徘徊しているところを目撃されている。生徒でも教師でもない。未知の、そして潜在的に敵対的な変数だ」


小次郎は目に見えて緊張し、姿勢がさらに硬直した。


「計画は単純だ。彼らの一人を捕獲する。尋問する。彼らが何を知っているのか、誰が彼らを送ったのか、エーテリアルとの繋がりは何なのかを発見する。そのために……君のクラスと僕のクラスの連携が必要になる。共同作戦だ。監視、陽動、封じ込め、そして捕獲」


僕が提案していることの規模は明白だった。潜在的に危険な人間の派閥に対して攻勢に出ること。二つのFクラス間の同盟の最初の本当の任務。


小次郎は乾いた唾を飲み込んだ。僕は彼の目の中の計算の渦を見ることができた。リスク、確率、仲間の安全、今彼に――そして僕に託された信頼の重さ……。


「具体的な計画はあるんですか?」


小次郎が尋ねた。声はいつもよりほんの少し低かった。


「概要はね。だが詳細は一緒に磨き上げる。君の戦略的思考と、君のクラスのアカデミーの日常力学に関する知識があれば、完璧な罠を設計できる」


僕は周囲を見回した。りんは決意を見せ、アヤとかんなは集中した顔で頷き、他の者たちは新たな決意で拳を握りしめていた。それから小次郎とルカイに視線を戻した。


「これがこのレジスタンスに参加するということだ。隠れたりしない。調査する。そして脅威を見つけたら、人間であろうとなかろうと、立ち向かう。君のクラスはそれに準備ができているか、小次郎?」


質問は宙に浮かび、医療的啓示、隠された歴史、そして今封印されたばかりの脆くも実践的な同盟の重みを帯びていた。


次の一手は盤上にあり、全員を巻き込むことになる。


僕の決意に満ちた視線は小次郎に固定されていた。黒衣の男を狩る計画が、僕たちの頭の中で形を取り始めていた。

次回――


ついに動き出すレジスタンスの作戦。

新たな仲間たちと共に、アカデミーの裏側を調査するための行動が始まる。


観察、分析、そして影の中での戦い。

だが、敵もまた静かに動いている。


黒い服の人物たちの正体とは何なのか。

そして、この学園で本当に起きていることとは――。


静かな作戦の裏で、緊張はさらに高まっていく。


次回もお楽しみに。

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