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信頼の形

信頼は、理屈よりも強いことがある。


りんの決断は、計算でも戦略でもなかった。

それは直感――

説明できないほど純粋で、少し危うい“信じる”という気持ち。


その想いに応える形で、

アレンは新たな一歩を踏み出す。


けれどそれは、

ただの挑戦ではない。


学院全体を巻き込む戦い。

価値観と立場が交差する場所。

そして、まだ見ぬ強敵の存在。


恋だけじゃない。

友情だけでもない。


物語は、次の舞台へ。

(りん)


目の前には銀太郎会長がいる。今日こそ、ちゃんと伝えなきゃ……あたしの決断を。


「会長、遅くなってごめんなさい!」


「いや、大丈夫だよ、りん。それより次期生徒会長選挙が始まる前に来てくれて嬉しいよ」


「……あたしの決断のことなんだけど……もう、決めたの……」


「それで?」


心臓がドキドキしてる。でも……もう決めたんだ。


「……会長。あたし、よく分からないんだけど、なんであたしを選んだのか……でも、ずっと考えて、同じ答えしか出てこなくて……あたし……受けられない!」


会長の表情が少し曇った気がする。


「理由を聞いてもいいかな?」


「……あたしよりもっと相応しい人がいると思うの……その人が候補になるべきだって……」


「誰か?誰のことを言ってるんだい?」


深呼吸して……言わなきゃ。


「……お願いします……アレンを候補にしてください!」


頭を下げた。深々と。


……なんでこんなことしてるんだろう、あたし。理由?たくさんありすぎて分かんない。自分に自信がないから?それとも本当にアレンに高みを目指してほしいから?全部ごちゃごちゃになってて……。


静寂の中、会長が長いため息をついた。


「頭を上げて、りん」


顔を上げると、会長は天井を見上げながら椅子に寄りかかっていた。深く考え込んでいるみたい。


「……なんでだろうね、君の答え、驚かないよ」


今度は会長の視線がこっちに向いた。何か……答えを探してるような目だ。


「教えてくれ、りん。なぜアレンなんだい?」


「……理由を一つ挙げるなら……彼がクラス全員をまとめたから」


「……なるほどね、彼が君のクラスをまとめた……でも、君はどうなんだ?」


「あたし?」


「そう、君だよ。きっと君には他にも理由があるんだろう?アレンを僕が君に提供した場所に置きたい理由が。でも、君自身が成し遂げたことはどうなんだ?」


「……あたしは……大したことなんてしてない、ただ……」


過去のことを考えた。最初、アレンに対してどう感じていたか……全部、懐かしさから始まったんだ。あたしがいなかったら、アレンはどうなってたんだろう……。


……それって、成果って言えるのかな?会長が言うように、あたし自身はどうなの?


今まで起きたこと全部思い出しても……やっぱり、何ももらう資格なんてないって感じる。


アレンにはもっと高みを目指してほしい。たぶん……これをやってるのは、彼の近くにいると感じるあの感覚のせいかもしれない……浩太を思い出させる、あの感覚……。


理由はたくさんあるのに、言葉にできない。ただ一つだけ確かなのは、アレンが次期生徒会長候補としてそこにいるべきだってこと。それだけは確信してる。


「お願いします、銀太郎会長。あたしじゃなくて……アレンを候補にしてください……」


また静寂。


会長は納得してない。というか……がっかりしてるみたい。


「……りん、一つだけ質問に答えてくれたら、君の提案を受け入れるよ」


「うん。何?」


「……個人的な質問だけど、必要なんだ」


「うーん……?」


「……最近、君をよく見かけるんだ。特にアレンの周りで……何かあったのかい?」


「えっ?……うーん……分かんない、あったって言えばあったし、なかったって言えばなかったかも」


会長はため息をついて、机に視線を落とした。少しの沈黙の後、じっとこっちを見つめてきた。


「分かった、君の提案を受け入れよう」


「本当に!?」


「ああ。でも、提案したからってだけじゃないよ。正直、僕は今でも君がやるべきだと思ってる。でもアレンに機会を与えるのは、一つの理由があるからだ」


「それって……どんな理由?」


「彼にもポテンシャルがあるんだ。初めて会った時に言ったよ」


ポテンシャル……?よく分かんないけど、今はそれでいい。


これでアレンは高みを目指せる。そして……そして……それから?


あたしは何を求めてこんなことしてるんだろう?理由はたくさんあるはずなのに、全部頭の中でぐちゃぐちゃになってて……もう何をすればいいか分かんない……ただ彼を送り出せばいいの?どうすればいいの?


「おい!どうしたんだい、ボーッとして」


「あーえ……ごめん、何て言った?」


「……これはどうかな。りん、君がアレンの選挙活動を手伝って、生徒たちの票を集めるんだ。どう思う?」


「……え?えええええっ!?」


「大げさだなあ。君が提案したんだから、責任を持って彼を助けるんだよ。僕の方は候補として入れるようにいくつか動くよ。ほら、君たち、Fクラスだからね」


あ……そうだった。下位クラスは生徒会長に立候補できないっていうルール。


でも会長は、あたしがクラスFだって知ってたのに、それでも候補にしたかったんだ……あたしのためにアカデミー中で動く気だったなんて……。


……そんなの、あたしには相応しくない。余計に疑問が湧いてくるだけ。


今は自分の行動に責任を取らなきゃ。アレンの選挙活動を手伝う。頑張るしかない!


「りん、アレンに知らせてこの書類を渡してくれ。候補者の発表は来週だ。今週はたくさんの申請を受け付けてるからね」


「はいっ!」


決意を込めて書類を受け取った。急いで生徒会室を出る。


廊下を歩きながら、ふと気づいた。


……アレンにどう伝えよう。事前に何も言ってないのに。


やばい!あたし、大変なことしちゃった。


でもアレンのことだから、きっと「え!?びっくりしたよ!でもりんがこんなに頑張ってくれたんだから……僕も頑張るね!」とか言うかな。なんちゃって。


……なんで今、アレンのこと想像してるんだろう。


っていうか、なんであたしの動機って彼だけなの?もしかして……浩太のせいなの?


罪悪感が込み上げてくる。友達を……失った弟の代わりとして見てるの?まだ?


一つ分かったことがある。このままじゃ……きっと、アレンから距離を置いた方がいいのかもしれない。


この選挙活動を手伝ってる間に……全部終わったら……あたしが何を感じてるのか分かるかもしれない。


教室のドアの前で深呼吸。


よし!


勢いよくドアを開けて、声を張り上げた――――


* * *

(アレン)


試験が終わってから、Fクラスに新しい転入生は来ていない。これは……良いことなのかな?


今日は自由時間がある。オズワルド先生が何故か「ちょっと出かけてくる」とだけ言って、皆に自習を任せて出て行ってしまった。


りんはこの時間を利用して、何も言わずに教室を出て行った。


何だか……りんは何か悩んでいるような気がする。一体何があったんだろう?


数分が経っても戻ってこない。


そろそろ探しに行こうかと立ち上がった、その時――


ガラッ!


突然、扉が勢いよく開いた。


そこには輝くような笑顔のりんが、手を高く掲げて紙を持っていた。


クラスの皆が困惑した表情で彼女を見つめる。


りんは僕に近づいてきて、突然――


「ねえねえアレン!これ、あなたが次の生徒会長になるための申込書よ!」


――え?


固まった。りんが見せてくる紙を見つめる。確かに、生徒会長に立候補するための申込書だった。


でも……どうして?


どうしてりんはこんなことを?


何か言おうとする前に、クラスの皆が僕より先に反応した。


「おおっ!!」


皆が一斉に近づいてきて、同時に喋り始める。あまりにも突然すぎて、頭がくらくらする。


でも突然、りんが声を張り上げた。


「みんな!聞いて!」


全員が彼女の方を向く。何を言うのか待っている。僕も……どうしてこんなことをしたのか知りたい。


「これは急なことだって分かってるけど、もう会長さんと話して、賛成してもらったの!」


少し落ち着いてきて、夏休みに彼女と話したことを思い出した。まさか、りんが出した結論が僕を生徒会長候補にすることだったなんて……本気で信じられない。一体どんな理屈でそうなるんだ。


りんは僕をじっと見つめて、生徒会長の申込書を持った両手を差し出してきた。


「お願いアレン。生徒会長の候補になって!」


全然理解できないけど、こんなに真剣なりんを傷つけたくない。でも、こんなことは少し……。


自分のことを考えてみる。このアカデミーに入ってから今まで、もしかしたら変わったのかもしれない。でも、それがこんな無茶なことをする理由にはならない。自分にできるとは思えない。


「……りん、気持ちは嬉しいけど、僕には――」


「ダメ!」


りんの叫びに遮られて驚く。


彼女は頭を下げて――


「お願い!わがままなのは分かってるけど、お願いだから生徒会長の候補になって!」


僕にはりんが何を考えているのか、全く分からない。


こんなに必死で、僕にそんなことをさせたくて、そのためにここまでする。


申込書を手に取った。


「分かったよ、りん。でも、どうしてこんなことをするのか、ちゃんと説明してもらうからね」


りんは安堵した表情で顔を上げて、笑顔を見せてくれた。


これが正しいのか分からないけど、とりあえずりんを失望させないように頑張ろう。


その後、申込書に記入して、放課後に生徒会室へ向かった。会長に提出するためだ。


もしかしたら、探していた答えは会長のところにあるかもしれない。


扉を開けると、そこには会長が……まるで待っていたかのように、天井を見つめて物思いに耽っていた。


申込書を銀太郎会長に手渡した。彼はそれを受け取り、目を通してから机の上に置いた。


「アレン、座ってくれ。話さなきゃいけないことがあるんだ」


椅子に座り、彼が話し始めるのを待った。けれど、会長はずっと黙ったまま、何かを考え込んでいるようだった。


「……あの、会長?」


「……あっ!ごめん、ぼーっとしてた」


「もし良ければ、僕も会長に聞きたいことがあるんですが」


「ああ、そうだよね。りんの提案の後だし、君も疑問があるのは当然だよ」


「りんが、なぜ僕を生徒会長候補に推薦したのか……会長は知っていますか?」


「……いや、彼女の動機は分からないんだ。正直に言うとね、彼女を見たとき、この決断について迷ってるように見えた。でも同時に、すごく決意してるようにも見えたんだよ」


「えっ?どういう意味ですか?」


「僕から見ると、彼女は君のことを盲目的に信じてるみたいだった」


りんの動機を理解しようとすればするほど、分からなくなっていく。直接彼女と話すしかないか……。


「アレン、僕たちが初めて会った日のこと、覚えてる?」


「はい、覚えています。それがどうかしましたか?」


「あの日から、君の中にポテンシャルの可能性を感じ続けてるんだ。でも、君には自分の問題があって、自分の可能性に気づけていない」


会長は今度は落ち着いた声で、僕をじっと見つめながら言った。


「アレン、これを真剣に受け止めてくれるって、約束してくれるかな」


なぜ疑うんだろう?


「もちろん、真剣に取り組みます」


「……うん、それが聞きたかった。でも、もう一つ質問させてくれ」


「はい、なんでしょう」


「これは自身のためにやるのか?それとも、りんのためにやるのか?」


その質問に困惑した。どう答えればいいのか、全く分からない。考えようとしても、何も明確にならない……答えられたらいいのに。


「すみません、銀太郎会長。分かりません。一部はりんに頼まれたからやっているし、一部は……これが個人的な動機になるかもしれません。今まで挑戦したことのないことをする、という」


会長は黙り込んだ。微動だにせず、思考に没頭しているようだった。


「……」


「……」


「アレン、早く自分の動機を理解できるといいね。選挙に勝ちたいなら、それはとても役に立つはずだよ」


「あ……はい……」


結局、答えよりも疑問を抱えたまま部屋を出た。実際、銀太郎会長は言っている以上のことを隠しているような気がする。


とにかく、今はりんと話さないと。彼女は入口で待っていた。


寮へ向かう道を一緒に歩いた。空気は冷たく、奇妙な静けさがあった。しばらく沈黙のまま歩く。足元の砂利が踏みしめられるたびに、りんの提案を聞いてからの時間を刻む時計のように聞こえる。


もう不確実性に耐えられなかった。


「りん」


彼女は軽く驚いたように、まるで自分の世界にいたかのように反応した。


「ん?どうしたの、アレンくん?」


「その……生徒会長のこと」


言葉が意図したよりも直接的に出てしまった。


「なぜ?」


りんは突然立ち止まった。僕も一歩遅れて止まり、振り返って彼女を見た。夕日の光が彼女の髪を赤く染めて、表情が読みづらい。


「だ、だって……正しいことだと思ったから!」


彼女は声が一段上がり、疑問のように聞こえる。指が無意識に絡まっている。


「Fクラスには……代表が必要だし。あなたは……えっと……頭がいいし……落ち着いてるし」


彼女の言葉を聞いているけれど、耳は別のものを拾っている。指の緊張した動き、視線を避ける仕草。これらはサインだ。彼女は嘘をついていないけれど、全ての真実を言っているわけでもない。戦略ではない――まるで彼女自身も完全な答えを知らないかのようだ。


「りん、いつも本能で動く。心で動くと言った方が正しいかな。それは僕が……尊敬するところの一つだ」


「尊敬」という言葉は不十分な気がするけれど、それしか見つからなかった。


「だから教えてくれ。心は何を感じて、銀太郎会長に僕の名前を言ったんだ?」


彼女の目が少し大きく開いた。僕の質問に驚いている。オレンジ色に染まった雲の間に言葉を探すように、空を見上げた。


「それは……直感みたいなものだった」


彼女は囁くように、今度はもっと柔らかい声で言った。


「閉じられた扉を見たとき……その向こうに何があるか分からなくても、開けなきゃいけないって……そう感じるときみたいな」


少し眉を寄せて間を置き、自分でも完全には理解していないことを言葉にしようと苦労している。


「それで……誰がみんなをまとめられるか考えたとき……誰があたしたちを……あたしたちみんなを安心させてくれるか考えたとき……頭に浮かんだのは……あなただった」


彼女の言葉は、とてもシンプルで不器用だけれど、予想外の力で僕を打った。論理的な議論ではない。純粋な感情だ。そしてなぜか、それが言葉をより重く、より本物にしている。


「でも自身も完全に確信しているわけじゃないんだろう?」


非難としてではなく、確認として尋ねた。


「ただ……りんが『僕じゃなきゃだめだ』って感じた、ってことなんだよな?」


彼女はついに僕を見て、その目には僕の混乱を映す混乱の海があった。そこには恐れの輝きがある――間違いを犯したのではないかという恐れ、僕に重すぎる負担を負わせたのではないかという恐れ。


「……うん」


彼女は囁くように認めた。


「そうだった。それって……それって間違ってる?」


奇妙な平和が僕の中に降りてきた。混乱は消えないけれど、内なる抵抗は消えた。彼女の僕への信頼は、盲目的で本能的であっても、暗闇の中で差し伸べられた手のようなものだ。


「いや――」


自分の声の中の確信に驚いた。


「間違ってない」


小さな微笑みを彼女に向けた。この会話が始まってから、ようやく浮かんだ笑みだった。


「もし直感だけで僕をこれに飛び込ませるほど僕を信じてくれるなら……僕もりんの本能を信じられる」


彼女の顔に安堵が溢れるのが見えた。姿勢がリラックスし、広く純粋な笑顔――知っているりんの笑顔が唇に戻ってきた。


「じゃあやってくれるんだね!あーあ、アレンくん、あたし絶対手伝うから!すっごく頑張るよ!一人じゃないからね!」


彼女のエネルギーが一気に戻ってきて、突然、前方の道が、不確実ではあっても、それほど恐ろしくは見えなくなった。彼女には確固たる計画はないけれど、決意がある。そしてたぶん、これほど大きなことには、それの方が重要なのかもしれない。


「頼むよ、りん」


それだけで十分だった。


歩き続け、間に落ちた沈黙はもう不快ではなく、心地よかった。暗黙の合意の沈黙、共有された挑戦の沈黙。そして初めて、選挙の結果がどうであれ、僕とりんの間の何かが永遠に変わったと感じた――彼女が僕に置いた、この説明のつかない信頼によって封印されて。


* * *


週は問題なく続いた。日が経つにつれ、次の生徒会長選挙が正式に発表される日が近づき、プレッシャーを感じていた。


そして、まるで瞬きのようだった……その日がついに来た。


アカデミー全体が今日、学校集会の講堂に集まっていた。銀太郎会長と生徒会の他のメンバーはステージにいて、選ばれた候補者を発表する準備ができていた。


「みんな!今日、次の生徒会長のキャンペーンが始まることをお知らせできて嬉しいよ」


周りでざわめきが聞こえる。これについて多くの議論がある。


「静かにしてくれ。候補者を発表する前に、ルールの少し変更について知らせなきゃいけない」


会長がそう言ったとき、今度は場所中で二倍の会話が聞こえてきた。


「静かに!この変更はとても重要なんだ。アカデミーで最も取り除きたかったことの一つで、学園長から承認を得たから、完全に公式だよ」


興味が全員を飲み込んでいた。僕はすでにりんと話し合っていて、何のことか知っているけれど。


「この選挙から、下位クラスは制限されない。選挙に参加できるようになる!」


そう言った途端、全員がそのルール変更について一斉に話し始めた。会長は誰も静かにしないことに苛立ち、マイクを耳障りな音で鳴らした。


「やっと静かになったね。FクラスとEクラスの制限を取り除いただけじゃない。これからは将来のどんな学校イベントにも制限されなくなる」


もし僕が生徒会長になったら、どんなことを提案できるだろう?


「じゃあ、これ以上遅らせずに、生徒会全体から選ばれた四人の候補者を発表するよ。名前を聞いたらステージに上がってきてくれ」


会長が振り返り、副会長が封筒を手渡した。おそらく候補者の名前が入っている。


「まず一人目――武蔵タロウ」


武蔵さんがゆっくりとステージに上がるのを見た。誰も彼に挑戦する勇気がないかのような静けさの中で。正直、武蔵さんが候補者になることは予想していたから驚かない。初めて会ったときから、彼の性格にもかかわらず、候補者になると分かっていた。


「二人目――高遠完士」


今度は本当に驚いた。ステージに上がってきた男子は、アカデミーでの日々が始まったばかりの頃にバトルを挑んできたあの男子だった。まだ同じように傲慢なのだろうか?彼の表情から判断すると、おそらくそうだ。


「さて、三人目はまさにルール変更の理由――ウェバーアレン」


ステージに向かうために立ち上がったとき、アカデミー全体の視線が自分の上にあるのを感じた。わずかなざわめきさえ聞こえる――おそらく僕を判断し、批判し、あるいは他の何かをしているざわめき。


でも……大丈夫だ。


どれだけ批判されても、彼らの考えを変えさせるために全力を尽くすと決めている。今はまだ計画がなくても、何かできることがあると確信している。


ステージに到着して高遠の隣に立ったとき、彼が眉をひそめて僕を見ていることに気づいた。一方、武蔵さんは無関心に前を見ていた。


「そして最後、四人目――桜井くるみ」


驚いた。リリスさんが最後だと確信していたけれど……桜井くるみって誰だ?


二年生から歩いてくる女子を見た。候補者の中で唯一の先輩で、観察を続けていると……何か奇妙なものを感じた。


――っ!?


突然、桜井先輩が歩きながら僕をじっと見つめていることに気づいた……その視線は僕の中に何か奇妙なものを呼び覚ます……今この瞬間には上手く説明できない何か。


ただ一つ確信できることがあった――桜井先輩は、悪い予感しかもたらさない人物だということを。

次回――


静かに見えて、確実に何かが動き始めている。


それぞれの想いが交錯し、ぶつかり合い、そして少しずつ形を変えていく。

言葉にした者。飲み込んだ者。まだ胸に秘めたままの者。


だが――それで終わりではない。


視線の先にあるのは、ただの青春か。

それとも、もっと大きな何かの前触れか。


そして、気づかれぬまま揺れ始める新たな火種。


近づく心。すれ違う想い。

選ぶのは、沈黙か、それとも――。


お楽しみに。

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