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爆発した想い

想いは、ぶつかり合わなければ分からないこともある。


アヤとかんな。

プライドも、不安も、恐れも――。


あれは勝敗を決めるためのバトルじゃなかった。


恋は、時に友情を壊す。

でも今回、二人が選んだのは――


そしてアレンもまた、

逃げずにその想いを受け止める覚悟を、少しだけ持ち始めています。

(りん)


アレンとアヤの演技は素晴らしかった。本当に、すごく面白くて――でも、その瞬間だった。


周りが静まり返って、アヤの声だけがはっきりと響いた。


『――あんたのことが好きなのよ!』


……っ!


思わず胸に手を当てていた。


え……なに、これ……?


胸が、痛い。


どうして?ただの演技なのに。お芝居だって分かってるのに。なんであたしの胸がこんなに……ズキンってするのよ……?


わけ分かんないわ。


ははっ……何かおかしいわね、あたし。絶対何か変よ、これ。


幕が下りた。


アヤが誰よりも先に舞台から離れていった。その背中を見て――次にアレンも彼女の後を追って行ってしまった。


……なに?


なにが起きてるの……?


どうしてこんなに、落ち着かないのかな……?


胸の奥がざわざわして、全然静まってくれない。


あたし、一体どうしちゃったんだろう……?


* * *

(エリザ)


あれは……一体何だったの?


演劇の何かが……おかしい。


りんさんの方を見ると、彼女は落ち着かない様子だった。そして何より……かんなさん。彼女は自分の手を強く握りしめている。


もう演技をしているはずよね?


でも、間違いなく、あの言葉は演技というより……本物に聞こえた。


もしそうだとしたら、アヤさんは演劇の最中にアレンさんに告白したということ?


どうしてそんなことを?


彼女はいつも考えるより先に行動してしまう傾向があるけれど……これは衝動のレベルが違いすぎる。


これは問題を引き起こす……いいえ、もう引き起こしている。


アレンさんも明らかに、あんなことを言われるとは思っていなかった様子。


今、わたしが何かしなければ。使命感がそう告げている。手遅れになる前に。


あの愛の告白が引き金となって、全てが壊れ始めるのを……防がなければならない。


何としても、それだけは阻止しないと。


* * *

(かんな)


「――あんたのことが好きなのよ!」


えー……!?


――――は!?


何……今、何て言ったの?


――――は!?嘘でしょ!?


――ちっ。


アヤが……アレンに……告白した?


これって演技じゃない……分かる。だって、アレンの驚いた顔、はっきり見えてるもん。


アヤ……台本から外れた……それで――


――くそ!


よくも……よくもそんなこと……!


アレンは……わたしが……愛してるのに。


よくも… わたしの心の縄張りに踏み込んでくれたわね――――――。



* * *

(アレン)


アヤの言葉が全身を揺さぶった。


思考が整理できない。あまりにも突然だった。演技……なのか?でも、どうして今、台本から外れる?どうしてアヤがそんなことを……?


何も理解できなかった。


どうしてアヤが僕に……?特に何もしていない。彼女の注意を引こうとしたことなんて一度もなかった。そもそも、考えたこともなかった。


じゃあ、なぜ?


……からかっているのか?


無意識に視線がアヤの方へ向いてしまう。でもすぐに逸らした。何を言えばいいのか分からない。


劇が終わった後、彼女が走り去った時――すぐに追いかけた。アヤはひどく動揺していた。


冗談……なのか?でも、どうしてそんな冗談を?アヤらしくない。


ようやく追いつき、手首を掴んで引き止めたその瞬間――


アヤはもう一度、さらに明確に、直接的に、僕に向けてあの言葉を言った。


好きだと……。


理解できない。何をしたんだ、僕は?何がアヤにそう思わせたんだ?


顔が熱い。汗をかいている気がする。手が震えている。


アヤを見た。じっと見つめた。彼女の目を直視した瞬間、そこにある情熱が――僕への想いが伝わってきて、圧倒されて視線を逸らした。


消えたい。隠れたい。言葉が出ない。


誰かに告白されるなんて、初めてで……人生で一度も予想していなかったことだ。


「アレン……わたし、冗談なんかじゃないって。本当に……本当に、あんたのことが好きなの!」


震える声が、心臓を揺さぶる。


どうすればいい?どう答えるべきなんだ?頭の中が完全に混乱している。


でも、何か言う前に――アヤが近づいてきて、突然、腰に手を回して抱きしめてきた。


胸に彼女の温かい息を感じる。


「アレン、本気で好きなの……」


今度はもっと柔らかく、脆い声で。体が固まった。


「アレンが優しいって知ってから、好きになったんだと思う……いつも周りを気にかけて、誰も傷つくのを見たくないって。他のこと全部優先して、自分のこと忘れてるみたいに見えるけど……それがアレンを前に進ませてるんだって」


そんなふうに見ていたのか……。


自分の行動をそこまで観察している人がいるなんて、思ってもみなかった。


「気づくのに時間かかったの、中学の時に嫌なことがあって……」


九条さんから聞いた話を思い出す。アヤは過去に辛い経験をした。偽りの好意に騙されて、傷ついた。


彼女をまた苦しませるわけにはいかない。絶対に。


その思いを胸に、勇気を振り絞って口を開いた。


「アヤ、僕は……」


声が震えた。どう言えばいいのか分からない。全部が処理できていない。頭が混乱している。


彼女の目を見る。正しい言葉を探そうとするけど、口まで届かない。何を言えばいいのか分からない。


恋愛の経験なんてない。


怖い。


でも……あの恐怖は、いつからこんなに薄れていたんだろう?ひめかと話してから?いつ変わったんだ?


「アヤ……君の気持ちに、どう答えればいいのか分からない……」


彼女の表情が一瞬暗くなる。目が涙で潤んでいる。


傷つけることは言いたくない。だから、全部はっきりさせないと。


「少し時間をもらえないか?何も整理できていない。君のことは嫌いじゃない、でも……自分が感じているものが、君が感じているものと同じくらい強いのか確信が持てないんだ。がっかりさせたくないし、傷つけたくない。だから、考える時間をください」


アヤはその言葉を深く噛み締めているようだった。


軽い笑みを浮かべた――でもそれは失望の色が濃かった。


「……急すぎたよね、全部。ごめん」


「謝らないでくれ。僕の問題だから、君を責めないで。ちゃんと自分の気持ちが分かったら、きちんと答えるから」


「一つだけ教えて……他に誰か考えてる人、いない?」


その質問を聞いた瞬間、さらに混乱した。


アヤの言葉が、何も考えられなくさせる。


「ごめん、分からない」


「……そっか。あ、はは、なんか変な感じ。みんなのところ戻ろ、まだやることあるし」


アヤは足早に歩き出す。


彼女が悲しんでいるのが分かる。もしかしたら、彼女好きだって言葉を期待していたのかもしれない。


でも……アヤに対して何を感じているのか、理解できない。


嫌いじゃない。愛せない相手だとも思わない。むしろ、もっと衝動的な人間だったら、告白を受け入れていたかもしれない。


頭にりん、エリザ、かんなの姿が浮かぶ。


どうして今、彼女たちのことを考えている?


何も分からない。


自分自身が理解できないなんて、恐ろしすぎる。


どうすればいいんだ?


心臓が激しく鼓動している。答えたい。何か言いたい。


でも思考は混沌としたまま。


自分の気持ちが理解できない。


――こうして、文化祭は終わった。


* * *


また時が流れ、新しい試験の季節がやってきた。でも、今回は何かが違っていた。全てが……遠く感じられた。


アヤが僕に対して、とても距離を置くようになっていた。ほとんど話しかけてくれない。これは……僕のせいなのか?彼女は傷つきたくないんだ。過去に何か辛いことがあったんだろう。だから、傷つかないように距離を取ろうとしているのかもしれない。


周りのみんなも気づいている。僕とアヤの間にある、この居心地の悪さに。それだけじゃない。何故か、かんなからも奇妙な緊張感が伝わってくる。りんからも、わずかだけど感じ取れる。


友達を失いたくない。誰も失いたくない。やっと友情の価値を知ったばかりなのに。やっと色々なことを乗り越えたばかりなのに……失いたくない。


中間試験が終わった日、僕には計画があった。


みんなが帰り支度をしている中、アヤに近づいた。


「アヤ!一緒に寮に戻ろう」


彼女は視線を逸らしたけど、頷いてくれた。


二人で黙って歩く。何か言わなきゃ。


「アヤ、最近……僕のこと避けてるよね?」


「えっ!?そ、そんなこと……ないってば……」


こちらを見ようとしない。恥ずかしそうにしている。明らかに自分の言葉に矛盾していた。


「アヤ、僕は君との友情を失いたくない。君が近くにいてくれるのが嬉しいんだ。君はとても特別で……無視されるのを見るのは辛いんだよ」


その瞬間、アヤは何かに気づいたように、慌てて振り返った。


「わ、わたし、そ、そんなつもりじゃ……ご、ごめん……」


「いいよ、責めてるわけじゃない。ただ辛いんだ。でも、君がこうなったのは僕のせいだ」


「違う!あんたのせいじゃないってば……そんな風に自分を責めないで……これはわたしが言ったことが原因で……」


「いや、僕のせいだ!」


「違う!わたしのせいだ!」


「だから違うって!僕のせいだ!」


これは永遠に終わらない。気づいた。お互いに責任を受け入れている。二人で共有している感情なんだ。


「……まあいいや、アヤ、お願いだから今まで通りにしようよ」


「……うん」


小さく頷く。


しばらく黙って歩いた後、突然彼女が振り返った。まるで昔のアヤに戻ったかのように言った。


「あーあ、めんどくさ。やっぱこういうのわたしには向いてないわ」


「そんなこと言うなよ」


「あんたこそ何も言うなってバカ。半分はあんたのせいなんだからな」


「はいはい、そうですね」


お互いに共犯者のような笑みを浮かべて、一緒に笑った。まるでこれが最高のジョークだったかのように。馬鹿げて意味不明だったけど……でも、これこそが僕たちに必要だったんだ。元通りになるために。


寮に着くと、かんなが誰かを……いや、僕たちを待っていた。寮の入り口で。


最初に思ったのは――早すぎる。僕たちより先に着いているなんて予想外だった。


かんながアヤに近づいてくる。でも何かがおかしい。気づいた。何か違うことが起きている……かんなの視線が、初めてはっきりと……怒りを表していた。それはとても明白で、アヤでさえ驚いていた。彼女が気づくということは、相当なことだ。


「どうしたの、かんな?なんでそんなに怒ってるの?」


「……アヤのせい」


「え?何を?」


「……あんたのせい、アヤ」


「……えー、何の話?お昼のプリンならりんがあんたのを取ったのよ」


「そんな話じゃない!」


「えっ?じゃあ何の話?」


「……アヤのせいで、あの日言ったことのせいで……許せない」


「かんな、説明してよ。全然わかんないんだけど」


かんなは拳を握りしめ、強い声で言った。


「アレンは優しすぎる。あんたの告白が彼に問題を起こすのは許せない」


「え、ええええっ!?」


驚いて、顔が熱くなるのを感じた……かんな、どうやって気づいたんだ?そんなに観察力があるのか?よく考えれば、彼女は僕と同じくらい観察力がある……そう見れば納得できる。


アヤは顔を真っ赤にして、あたふたとあちこちを見ている。


「どうしたのトマトちゃん?何も言わないの?」


「トマト?……わたしをバカにしてんの?」


「してる」


「はあっ!?」


かんながアヤに対してとても攻撃的だ。でもなぜ?かんなに何が起きているんだ?


近づいて落ち着かせようとした。


「かんな、落ち着いて。どうしてこんなことを言うんだ?」


彼女は僕を見たけど、鋭い視線を投げかけてきた。その目は「口出ししないで」と言っているようだった。この状況の前で無力さを感じた。


アヤが冷静さを取り戻し、今度はイライラした様子で言った。


「ねえ、何なのよ。説明してくれないとわかんないでしょ、言わなければ……」


アヤがかんなを脅し始める様子を見て、すぐに割って入った。何か悪いことが起きてほしくない。


「おい!二人とも、やめてくれ。かんな、説明してくれないか」


かんなは怒ったまま。なぜ彼女が怒っているのか理解できない。でも最初に言ったことから、漠然とした考えが浮かぶ。かんなはアヤの告白に気づいた……もしそれが理由なら……どうすればいいんだ?


「あの日の演劇で、アヤ、あんたはアレンに告白した。間違いない」


「そ、それは違うってば。あれは演技よ、そうそう、ハハ」


アヤは言い訳しようとしたけど、あまりにも曖昧で馬鹿げた言い方だったから、余計に墓穴を掘っていた。


「ふざけるな!アヤ、アレンを傷つけるのは許さない」


「あんたに何の関係があるのよ?わたしが告白したって、あんたには関係ないでしょ」


「関係ある!」


「ない!」


「ある!」


「ないってば!」


「あるっ!!!」


真面目な喧嘩というより、子供の喧嘩のようだった。少なくとも、かんなが突然僕に近づいて抱きしめてくるまでは。


「か、かんな?なんで急に抱きしめるんだ?」


体が一瞬固まった。こんなことされるとは思わなかった。


アヤが怒って、すぐにかんなを僕から引き離そうとする。


「アレンから離れろ!」


アヤがかんなの腕を引っ張るけど、彼女は僕にしっかりとしがみついていた。


全く理解できない。


目を閉じて、長いため息をついた。この不確かさを無視し続けることはできない。何が起きているのか知らないまま進むことはできない。でも、何か言う前に、かんなが完全に言葉を失うようなことをした。


抱きしめたまま、僕の目をじっと見つめて……今まで見たことのないような笑顔で、言った。


「わたしが彼女になるのはどう?」


心臓が一瞬止まった。


「ええええ―――――っ!!!」


思考が完全に霧に包まれた。ちゃんと聞こえたのか?かんなが……僕に付き合ってほしいと言っているのか?混乱に襲われた。そして彼女の言葉を処理しようとしている間、ただそこに立って、夕暮れの薄明かりの下で輝く彼女の瞳を見つめることしかできなかった。


アヤは僕の倍、いや三倍は動揺していた。


「な、な、な、な、何言ってんのかんな!?」


「聞こえた通り。わたしはアレンの彼女になりたい」


アヤももう処理できない。僕も。どうしてこうなった?


かんなの言葉は想像以上に心に響いた。倫理観が叫んでいる。これは間違っていると。まるでかんながアヤの気持ちをゴミのように捨てろと言っているようで……それはひどすぎる。


「それはできないよ、かんな……」


「どうして?迷いがあるから?」


図星だ。かんなは驚くほど僕のことを理解している……でも、そんなに理解しているなら、これが間違っていることもわかるはずだ。


「かんな、わかってくれるはずだ。今の僕は自分の感情を理解できない。アヤの気持ちを簡単に受け入れることなんてできない。もし君が彼女のためにこれをやっているなら、やめた方がいい」


かんなが突然、奇妙な嘲笑を含んだ笑い声を出した……どうしたんだ?


「ふふっ……アヤのためだって?はっ!誰がアヤのためにやってると言った?」


「え?じゃあ……」


「アレン……わたしは……」


かんなが僕にぴったりと寄りかかってくる。彼女の息遣いが近くに感じられる。胸の感触も……そして、その瞳。その瞳を見た時、奇妙な感覚が全身を駆け巡った。


「アレン、好き!好き!大好きっ!!」


世界が止まったような気がした。息が重い……二度目の告白を聞くなんて予想していなかった。


ただ、頭が真っ白になった。


体の感覚だけが残っていた。顔が熱くなる。緊張で汗が出てくる。今まで感じたことのない感覚。


アヤが言った。


「嘘でしょ?嘘だよね?ありえない!だって、あんたいつも黙ってて、こんなことするようには見えなかったのに」


かんながアヤを見て、僕から離れた。今度は完全に彼女と対決するつもりのようだった。


「わたしを甘く見た?『おとなしい子』だと思った?」


「……信じられない……」


「信じて。本当。侵入者にわたしの一番愛してる人を奪われるわけにはいかない」


「……でもわかんない。いつから?」


「知りたい?」


「……わかんない……」


「どっちでもいい。わたしは先に彼を好きになった。アレンから離れて。彼はわたしのもの!」


それがアヤを怒らせ、対決し始めた。


「わたしに指図すんな!わたしが先に告白したんだから。奪われるなんて許さない」


二人の緊迫した状況を見て、間に入った。


「ちょっと、落ち着いてよ。喧嘩する必要ないだろ」


でも、二人は同時に言った。


「あんたは黙ってろ!!」


視線が鋭くなった。


アヤが自信満々に言った。


「じゃあこうしましょう。バトルしましょ、かんな」


かんなが自信を持って微笑んだ。


「そういうことか……いいわ、受けて立つ」


緊張感が漂っていた。アヤとかんなが今、ライバルに見えた。そして二人の対決が始まろうとしていた。


僕の愛を巡るバトル?それともプライドのバトル?僕にできることは、ただこの全てを観察することだけだった。でも、もし二人がバトルするなら、多分審判を務めることになるんだろう……ああ、神様……どうしてこうなったんだ?

次回――


戦いの果てに残ったのは、

勝敗ではなく――優しさと、新しい関係。


けれど、物語は次の段階へ進みます。


アヤとかんなの関係が落ち着いた今、

今度は別の想いが動き始める。


そして――

アレンの未来を左右するかもしれない“提案”が、

ついに動き出す。



ぶつかり合ったからこそ守れたもの。

けれどその裏で、新たな波紋が広がる。


りんが下す決断。

銀太郎会長へ向けられる言葉。

そして、アレンの知らないところで進む未来。


物語は、さらに一段深く――。


お楽しみに。

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