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暴かれた策略

体育祭は続いている。

だが、ただの行事で終わるはずがなかった。


勝敗の裏で動く不正、

学年を越えて絡み合う思惑、

そして「誰が操っているのか」という問い。


アレンは、仲間とともにその糸を一つずつ辿っていく。

しかし真実に近づくほど、

アカデミーという場所そのものが、

歪んで見え始めていた。


これは勝つための物語ではない。

――“知ってしまう”物語だ。

僕は横を見た。そこにいたのはエリザだけだった。


アヤは?かんなは?


アヤがマリと一緒にいるのは知っている。でも、どこに行ったのかは分からない。そして、かんなは突然姿を消してしまった。


探しに行きたい。でも、りんを一人にしたくない。もうすぐ彼女のリレーの番だ。


選択肢はなかった。僕はりんを見守ることにした。


全ての走者が位置についていた。壁先生の合図を待っている。そして――


スタートの合図が出された。


最初の走者は真琴だった。僕はレミーが使っている戦略を理解していた。真琴を最初の走者にするのは、彼が一番遅いからだ。最初に走らせて、次の走者にバトンを渡した後、残りのメンバーが失った距離と時間を取り戻す。


でも、この戦略は一見効率的に聞こえるかもしれないが、リスクが大きい。例えば、対戦相手の走者全員が本当の走者で構成されていたら、どんなに無理をしても追いつけない可能性がある。


真琴がバトンを渡した。次は勇だ。


彼はとても速く走り、あっという間に二年生の走者と三年生の走者に追いついた。これを分析するなら――勇は距離を取り戻す最も大きな責任を負っていた。彼の表情から、他の走者に追いつくために自分を追い込んでいる様子が見て取れる。


その時、僕は気づいた。三年生の中の誰かが、走者に向かって奇妙な合図を送っていた。


あれは何だ?


勇がバトンを渡す。次はジェラードだ。


彼は他の走者よりも長く走らなければならない。りんが有利にスタートできるようにするためだ。でも――


三年生の先輩がジェラードに追いつき始めた。二人はトップを争っている。あまりにも互角だった。


ジェラードがりんに近づいた時、僕は奇妙なものに気づいた。小さくて光るものがジェラードの足元を通り過ぎ、彼を一瞬つまずかせた。あっという間に優位を失った。


でも、レースはまだ終わっていない。


ジェラードがりんにバトンを渡す。彼女はすぐに走り出した。


りんは今、最下位だった。でも、僕は彼女から目を離せなかった。彼女の走り方、前だけを見つめる視線、全力で前に進もうとする姿――息をのんだ。


りんが二年生の先輩を追い抜き始めた。三年生の先輩に追いつこうと、全力で走っている。


僕は、まるで自分もりんと一緒に走っているような気がした。彼女が三年生の先輩に追いつけるように、興奮と緊張で心臓が激しく鳴っている。


でも、その時――


もう一度、小さくて光るものがりんの足元を通り過ぎるのに気づいた。彼女は一瞬つまずいたようだったが、すぐに踏ん張って転ばなかった。三年生の先輩との距離が開き、二年生の先輩が後ろから迫ってくる。


ゴールはもう目前だ。そして――


りんは――遠くから見ていても分かる。彼女が諦め始めているのが。彼女が苛立ち始めているのが感じられる。


彼女に負けてほしくない。


全力で叫んだ。


「りん、頑張って!!」


隣のエリザが、僕が突然声を上げたことに驚いていた。


そして、りん は――


二位でゴールした。


僕は苛立ちを感じた。この結果はおかしい。何かが間違っていると分かっていた。


何も言わずに振り返り、その場を離れた。


「アレンさん、どこに行かれるんですか?」


エリザが僕を止めようとした。


「……ちょっと調べたいことがある。この結果は受け入れられない。りんに伝えてくれないか、彼女は素晴らしかった、落ち込まないでって」


僕はエリザをそこに残して、その場を離れた。


まず、いくつか確認しなければならないことがある。


最初に知る必要があるのは、アヤとマリがどこにいるかだ。もしかしたら、まだ最後に見た場所にいるかもしれない。


廊下に行ったが、誰もいなかった。自動販売機の近くの休憩所か、屋外の座れる場所にいるかもしれない。


あちこち歩き回った後、自動販売機の近くで二人を見つけた。


アヤはすぐに僕に気づき、遠くから言った。


「あ!アレン、こんなところで何してるの?」


「僕が聞きたいよ」


僕はマリを驚かせないように、少しだけ近づいた。


「マリと話してたの。会話に夢中になりすぎちゃって。きっと探されてるよね?」


「いや、単に何か起こらないか心配で」


「どうしたのアレン?元気ないわね」


「……りんが、あんなに頑張ったのに、リレーで勝てなかったんだ」


アヤはこれを聞いて落ち込んだようだった。遠くにいるマリも悲しそうに見えた。


「ところで、アヤ、かんなを見なかった?」


「かんな?うーん……見てないわ」


今、僕はかんなが危険な目に遭っていないか確認しなければならない。でも、そもそもなぜ危険なはずがある?りんがあんなに頑張って二位になるのを見たからか?それとも、レース中に気づいたあの奇妙な光のせいか?何が起こっているのか分からない。調べる必要がある。


「アヤ、マリ、みんなのところに戻ってくれ。僕はかんなを探しに行く」


僕は走り出した。周りを探す必要がある。かんなが無事か確かめないと。


なぜ彼女が近くにいないことに、こんなに不安を感じるのか分からないけど。なぜこの奇妙な感覚――何かがおかしいという感覚――を感じるんだろう?


いくつかの場所を探したが、どこにも見つからない。


もっと彼女のことを知っていればよかった。もう少しかんなのことを知っていたら、今どこにいるか分かるかもしれない。


少し前のことを思い出した。かんなはとても物思いにふけっていた。何を考えていたにせよ、それが彼女を何も言わずに去らせた。これも僕が見たものと関係があるのか?でも、そんなことが可能なのか?


もう一度運動場に戻った。次のレースがすでに始まる準備をしていた。誰にも気づかれないように、建物の間を通ってエリアを回り込み、三年生のところに近づいた。


そして、建物の裏に――かんながいた。


すぐに彼女に近づこうとした。だが、僕が話しかけるより早く、かんなは気づいて――彼女の手が僕の口を塞いだ。


「――!?」


彼女は指で覗くように合図した。


覗いて見た。三年生の先輩が何か光るものを手に持っているのが見えた。


あれは――?


囁くように言った。


「かんな、君はここで何をしてるんだ?それに……」


「……今は離れよう」


二人で離れて、話せる場所に行った。他の人の目や耳から離れた場所に着いたとき、ようやく話せた。


「かんな、何が起こっているのか説明してくれ」


「……要約する。昨日、寮で偶然、先輩たちが体育祭に罠をいくつか仕掛けていると話しているのを聞いた」


「本当か?」


「……私を信じていない?」


「そうじゃない」


なぜか、かんなが言っていることを疑っている自分が理解できなかった。深呼吸して、落ち着いた。


「ごめん。もっと聞かせてくれ。君を信じる」


「……彼らが一位を確保するために罠を準備していると聞いた」


「彼らが何をしているのを見たのか?レースで何をしたのを見たのか?」


かんなは頷いた。それから、みんながいる方向を見た。次のレースがすでに始まっていた。りんが見えない。今、彼女はどうしているだろう?でも、今はりんに注意を向けられない。犯人を暴かなければ。


「アレン、彼らが使っているのは小さなビー玉のような球体。レースで他の人を滑らせて、三年生が有利になるようにしている」


「どうやって投げているんだ?」


「よく分からない。でも、あの先輩がそれを投げる筒のようなものを使っているのを見た」


僕は考えた。おそらく、正確なタイミングでそれらを投げるための特別なものを使っているんだ。それは、誰かが彼を手伝っているということも意味する。数人の三年生の先輩だけなのか、それとも三年生全員の陰謀なのか?


かんなが僕に携帯を見せた。そこには、先輩がその奇妙な筒を使ってそれらを投げている写真があった。


証拠がある。生徒会長に報告すべきかもしれない。


「かんな、ここにいてくれ。僕は生徒会長を探しに行く」


でも、かんなが僕の腕を引っ張って止めた。


「待って。時間がない。現在のレースはもう終わっているはず。きっとまた一位を取るために何かした。私たちがすぐに行動する必要がある」


かんなの心配は理解できる。でも、僕たち二人だけで何ができる?


「計画はあるのか?」


「……あの先輩からあれを奪うことしか思いつかない」


僕はこれを考えた。直接その筒を奪って生徒会長に持って行けば説得力があるかもしれない。でも、リスクがある。あの先輩には仲間がいて、彼らに知らせるかもしれない。直接行動するのは危険だ。でも……


かんなは直接問題に対処したいと思っている。


僕も、何かをするのが遅れれば遅れるほど、罠が続くことを理解している。そして、不正を暴いても、これまでの結果は変わらないのではないかと少し疑っている。


かんなを見て、僕は自分で何かをしなければならないと感じた。不正をする人たちにこのまま逃げられたくない。


それで、アイデアが浮かんだ。


もう一度、あの三年生の先輩がいる場所に行き、かんなに迷子のふりをするように指示した。一年生だから、無知を装って彼に近づける。――かんなが彼の注意をそらした隙に、僕はその奇妙な筒を奪い、みんなの前で彼を暴露する。


かんなは周りを見回すふりをして、先輩に近づいた。


「おい!誰だお前?ここから離れろ!」


かんなは不自然に首を傾げ、棒読みで言った。


「あ。すみません、先輩。道に迷いました。助けてください」


かんなはほとんど表情を変えないから、これは複雑になるかもしれないと思ったが、その先輩は罠にかかった。


「おー!そうか、手伝ってやるよ」


かんなが先輩を別の方向に向かせた時、僕は茂みの間を走った。


「今の音は何だ?」


「何でもありません、先輩。私のエリアに案内してください」


「えへへー、いいぜ〜」


僕は先輩が使っていた筒が地面に置きっぱなしになっているのを見た。警戒心が低すぎて、あんなものを無防備にしている。


僕は飛び込んでそれを掴んだ。音を立ててしまったが、目的は達成した。この奇妙な筒を手に入れた。


先輩が振り返った。奇妙な筒を持っているのを見て、焦り始めた。


「おい!それを置け!」


「嫌だと言ったら?」


先輩は怒り始めたが、驚いたことに、かんなが彼にローキックを入れた。


「あああーーー!」


かんなが僕に近づき、僕の手を引っ張った。


「早く行こう」


二人は走り出し、その先輩を苦しんでいる状態で残した。


「かんな、生徒会長のところに行こう!」


彼女は頷き、僕たちは走った。一年生のエリアに着いた時、多くの人が僕たちが三年生のエリアに走っていくのに気づいたが、僕もかんなも気にしなかった。


三年生のエリアに近づいたとき、僕は声を上げた。


「会長!」


視線が僕に集まる。とても注目されているのを感じる。でも、話さなければならなかった。


生徒たちの間から、銀太郎会長が現れた。


「会長、発見しました。三年生の先輩が不正をしていたんです。これを見てください!」


先輩から取り上げた奇妙なチューブを銀太郎会長に見せた。会長はそれを受け取り、じっくりと分析し始める。そして周りにいる生徒たちに視線を向けた瞬間、全員が明らかに動揺した様子を見せた。


何だ?この緊張した雰囲気は……


「ちょっと君たち!誰かこれが何なのか説明してくれないかな?」


会長の問いかけに、誰も答えない。まるで全員が会長を恐れているかのようだった。話しかけること自体が不可能であるかのように。


「誰も話さないなら、もっと厳しい措置を取るよ」


会長が警告を発したが、それでも誰も口を開かない。


「僕に調査させないでくれよ。正直に話した方がいい。今は体育祭の真っ最中なんだ。不正をする者は絶対に許さない」


沈黙が続く。会長は携帯を取り出し、誰かに電話をかけた。


「ああ、すぐに来てくれ」


待っている間、画面を見ると第三レースが始まろうとしていた。りんが掲示板を見て落ち込んでいる様子が目に入る。スコアボードには三年生が一位で、一年生と二年生が同点と表示されていた。


しばらくして、会長が呼んだ人物が到着した。副会長の柳さんだ。


「アレン、柳に全部話してくれ」


かんなと一緒に、知っている全てを柳副会長に説明した。

一通り話し終えると、副会長は小さくうなずき、会長と何やら話し込み始めた。


内容までは聞こえない。


会長が近づいてきて言った。


「アレン、競技に参加する予定はないよね?」


「今のところいいえ」


「なら、これについてもっと調査してほしいんだ。安心してくれ、僕自身が各活動を監視して、誰も不正ができないようにするから」


「副会長は?」


「柳は柳でやることがある。でも君には君の仕事をしてほしい」


なぜ調査を続けなければならないのか理解できなかった。会長に報告すれば全て解決すると思っていたのに、そうではなかったようだ。


かんなが突然会長に言った。


「会長。手伝う」


「……いいよ」


かんなの態度にびっくりした。会長に対する義務は理解しているつもりだが、これ以上何をすべきなのか分からない。


「会長、何を調査すればいいんですか?」


「難しいことじゃないよ。不正をしているのは複数の生徒のはずだ。柳が君たちの説明した人物を探すけど、残りを見つける必要がある。それが君の調査だ、アレン」


会長から与えられた役割のせいで、こんなことを頼まれているのかもしれない。正直、この件にこれ以上関わりたくなかった。でも断れない。ただ、断れなかった。


仕方なく、調査を続けることにした。


障害物競走が終わり、勝者を確認するとりんだった。全力で走って勝利したのだが、遠目に見ても……りんは結果に全く満足していない様子だった。


「アレン。急ぐ。綱引きだけ。第一フェーズ、終わる」


かんなが急かす。


不正に関わっている者たちを突き止めなければならないが、見つけた先輩が素直に白状すれば簡単なはずだ。なぜ調査が必要なのか?会長の考えが理解できない。


りんに会いに行きたい。こんなことをしている場合じゃない。


そうだ、全てを加速させればいい。不正をしている者たちを見つける。できるだけ早く見つけるんだ。


すぐに不正をしていた先輩がいた場所へ向かった。もし自分が同じことをするなら……あの位置から、視野の広い誰かがグラウンド全体を見渡して指示を出していたはずだ。


周囲を観察し、状況をシミュレートしてみる。もし誰かが監視していたとすれば、答えは一つしかない。


最も視界が良いのは向かいの建物だ。屋上が開いているか、あるいは誰かが鍵を手に入れて入り込んでいる可能性がある。


かんなと一緒にその建物へ向かい、階段を上る。扉は開いていた。


逃げた?それとも罠?


それでも確認することにした。かんなが後ろからついてくる。


周囲を見渡したが、誰かがいた痕跡はない。場所もそれほど広くなく、隠れる場所もない。ここにいた人物は慌てて逃げたようだ。


フェンスの近くに立ち、予想が正しかったことを確認する。ここからならグラウンド全体がよく見える。


「アレン。見て」


かんなが床に落ちている紙切れを指差した。何か書いてある。


『1は2と同じで、2は3と同じ』


意味不明だ。暇な誰かが書いただけかもしれない。


では、犯人はどこへ行ったのか?論理的に考え、これまでの出来事を分析しなければならないが、何も思いつかない。


綱引きが始まろうとしているのが見えた。まだ誰かが不正をしようとしているなら、この位置から見えるはずだ。


開始を待った。


りんがロープを引く列の真ん中にいるのが見える。真琴が最後尾だ。


またしてもレミーの戦略は分かりやすい。勇を先頭に配置したのは、おそらく最も力が強いからだろう。真琴も同じ役割だが、彼を最後尾に置いたのはその体格と力で「錨」の役目を果たさせるためだ。チームが引きずられるのを防ぐ。


対戦相手は三年生だった。最後尾でロープを握っている先輩が、ちらりと誰かを探すように振り返っているのが見えた。


その時、あることに気づいた。


リレーの時、観客席から合図を受けた走者がいた。あの先輩も関係しているのかもしれない。


「かんな、第一フェーズの終わりを見に行こう」


二人で観戦に向かい、終了を待った。しかし二年生と三年生の対決の最中、何かに気づいた。


突然、奇妙な光が最前列にいる二年生の先輩の顔に反射した。まるで誰かが鏡を使って太陽光を反射させ、視界を妨害しているかのようだった。


その発信源を注意深く探す。遠くに鏡を持った女子が立っていた。ただの鏡ではない。改造されているように見える。


「急いで、かんな!あの人を追うぞ!」


二人で駆け出したが、気づかれた瞬間、彼女も走り始めた。


驚いたことに、かんなが加速して彼女を止めた。それも最も荒っぽい方法で。まるでプロレス技のように飛びかかった。


「痛い痛い!痛いんですけど!」


かんなが彼女のシャツの襟を掴んで言う。


「白状。不正、見た……」


「違います!何もしてません!」


落とした奇妙な鏡を拾い上げる。


「じゃあ、これは何だ?」


彼女は黙り込み、とぼけようとする。


「あたしのじゃありません」


「明らかに君が持っていた」


「ちっ……」


かんなが力強く彼女を持ち上げて言う。


「生徒会長、連れて行く」


その言葉に彼女は激しく動揺し、白状し始めた。


「待って!待ってください!それだけは勘弁してください!認めます、これを使って他の人を邪魔してました。でも、やりたくてやったわけじゃないんです!」


かんなが彼女の腕を掴んで揺さぶりながら言う。


「白状」


「ああーー先輩にこんな扱いするんですか!?」


かんなが止まり、彼女が話すのを待った。


「……強制された」


「誰に?」


「……Cクラスの委員長」


「三年生の誰か?」


「はい……その人が、情報を持っている誰かと接触して、何かと引き換えに三年生を有利にするって」


「その『何か』とは?」


「知りません!あたしは選ばれただけで、今話してることも人から聞いただけです」


今度は僕が口を挟む。


「動機は何だ?少なくともそれは聞いているはずだろう?責任者が誰か知っているなら、動機も知っているはずだ」


「……知りません!」


この先輩はまだ何かを隠している。脅しをかけることにした。


「分かった。話したくないなら生徒会長のところへ行こう」


「やめてください!」


「なら話せ」


「……馬鹿げた理由なんです。本当に言いたくありません」


「なら生徒会長に話すことになる」


「やめて!マジで!……理由は、委員長が三年生はもうすぐ卒業だから……無理やりにでも勝利させて、いい思い出を作りたかったって」


もしそれが本当なら、道徳的な問題だ。一方では体育祭のルールに違反している。でも一方では、その人物には高潔な動機があるのかもしれない。


「それでも会長のところへ連れて行く」


「えっ!?待って……やめて……」


彼女は取り乱し、声を荒げた。


「あんたたち誰なの!?何の権利があってあたしを強制してるわけ!?」


彼女はかんなを振り払おうともがいた。


遠くから、第一フェーズが終了したアナウンスが聞こえる。これから十分間の休憩があり、生徒たちがあらゆる方向へ動き始める。


すぐに好奇心旺盛な生徒たちが、かんなと僕、そしてこの先輩の周りに集まり始めた。


一瞬のうちに、彼女がかんなを押し、かんなは尻もちをついて倒れた。先輩は群衆の中へ逃げ込んだが、追いかけなかった。代わりに、かんなを立たせるのを手伝った。


事態はますます複雑になっている。それに、第二フェーズが始まる前の休憩中に、りんと話したい。


でも今はそんな余裕はなかった。


今できることは、会長に起こったことを報告することだけだ。

次回――


体育祭の喧騒の中、

ついに“名前”が明かされる。


情報は繋がり、

学年の壁は意味を失い、

一人の存在が、すべての中心に浮かび上がる。


だが、それを知った瞬間、

アレンの過去が静かに反応する。


なぜその名に、

これほど心が揺れるのか。


真実は、守るためにあるのか。

それとも――壊すために。

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